土曜日, 2月 09, 2019

アルビン・ロス Alvin Roth 2012

マッチング理論
アルビン・ロス Alvin Roth 2012

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Roth AE. The evolution of the labor market for medical interns and residents: a case study in game theory. Journal of Political Economy 1984; 92:991-1016.



アルヴィン・ロス(Alvin Elliot Roth、1951年12月18日 - )は、アメリカ経済学者ハーバード・ビジネス・スクールのジョージ・ガンド経済学・経営学講座教授(George Gund Professor of Economics and Business Administration)であった。この間、スタンフォード大学客員教授を兼ねていたが、2013年より専任のスタンフォード大学教授となる[1]
アルヴィン・ロス
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Al Roth, Sydney Ideas lecture 2012
生誕アルヴィン・エリオット・ロス
1951年12月18日(67歳)
国籍アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
研究分野ゲーム理論
マーケットデザイン
実験経済学
マッチング理論
出身校コロンビア大学
スタンフォード大学
主な受賞歴ノーベル経済学賞(2012年)
プロジェクト:人物伝
ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:2012年
受賞部門:ノーベル経済学賞
受賞理由:安定配分理論と市場設計の実践に関する功績を称えて
専門は、ゲーム理論、実験経済学、マッチング理論、マーケットデザインであるが、経済理論だけでなく、彼の理論を実社会の解決に利用するよう強調していることが知られている[2][3] 。
2012年、ロスはロイド・シャープレーとともに、「安定配分理論と市場設計の実践」の功績についてノーベル経済学賞を受けた[4]

略歴編集

  • 1951年 学校教師の夫婦の間に生まれる。
  • 1960年代後期 ニューヨーク市クイーンズの中学のとき中退する。
  • 後にコロンビア大学の週末クラスの学生となり、その後、フルタイムの学生となる。
  • 1971年 コロンビア大学からオペレーションズ・リサーチの学位をえて卒業する。
  • 1973年 スタンフォード大学よりオペレーションズ・リサーチのM.S.(修士号)をえる。
  • 1974年 スタンフォード大学よりオペレーションズ・リサーチのPh.D.をえる。
  • 1974年~1977年 イリノイ大学の助教となる。
  • 1977年~1979年 イリノイ大学の准教授となる。
  • 1979年~1982年 イリノイ大学の教授となる。
  • 1982年~1998年 ピッツバーグ大学の教授(the Andrew W. Mellon Professor of Economics)となる。
  • 1998年~2013年 ハーバード大学経済学部の教授(the George Gund Professor of Economics and Business Administration)となる。
  • 2012年 ノーベル経済学賞を受ける。
  • 2013年~ スタンフォード大学の教授。

参加・栄誉編集

ノーベル経済学賞編集

業績編集

主要業績編集

  • アルヴィン・ロスの専門は、ゲーム理論、実験経済学、マッチング理論、マーケットデザインである。特に実験経済学が専門で、具体的には医学生と病院のマッチング、公立学校選択システム、腎臓交換などが有名である。
  • 理論だけでなく、経済制度自体の設計を目指しているのが特徴である。彼は、何が可能かを示すだけでなく、「これは大半のケースでうまくいくか?」、「これが、いったい最善なのか?」という問いをたている。

研修医の問題編集

  • 医学生の研修先病院を割り振る際の問題を指摘し、解消した。例えば、結婚している医学生がいて同じ都市で暮らしたがっているといった場合の問題を解決してきた。
  • ロスが1984年に書いた全国医学実習生マッチングプログラム(NRMP)の論文は、1952年にJohn StalknakerとF. J. Mullenによって設計されたシステムを際だたせたものであり、1962年のデイビッド・ゲールロイド・シャープレーによる独立理論の基礎の上に導入されたものである。ロスは、全国医学実習生マッチングプログラムは未婚の医学実習生にとっては安定的で戦略保証つきであるかもしれないが、既婚カップルの場合はいかにすれば有効なマッチングが可能かといった問題に取り組み、将来にわたって拡張した。1999年、ロスは既婚医学生のカップルに安定したマッチングを確実にするマッチングプログラムを設計し直した。
  • これは日本の研修医マッチングでも導入されている。

公立学校選択システム編集

ニューヨークシティ公立学校システム編集

  • ロスはニューヨーク市立学校の生徒とハイスクールとをマッチングする市場設計を支援した。従来は、学校地区ごとに生徒に5つの志望校のリストを出させていた。しかし、生徒は5校というより1校を選ぶことが多いという傾向があった。そこで、ロスとその同僚は、インセンティブと両立できるメカニズムを設計した。2003年、学校局は志望校の選択方法としてニューヨーク市ハイスクール・アプリケーション・システムを採用した。

ボストン公立学校システム編集

  • 2004年、Tayfun Sonmezと共同で作業した。

腎臓交換編集

  • Tayfun SonmezとUtku Unverとともに、'ニューイングランド腎臓提供プログラム'の創設者である。
  • 腎不全患者に対して臓器供与の意思があるドナーがいても、臓器が適合しない場合がある。この場合、同様な状況にある他の組み合わせを探すことによって、患者とドナーの適切な組み合わせを探しだすことが出来るかもしれない。患者全員に適合する必要な臓器を提供できるドナーを探すことも不可能ではない。

著書編集

  • Axiomatic Models of Bargaining, Lecture Notes in Economics and Mathematical Systems, Springer Verlag, 1979.
  • Game-Theoretic Models of Bargaining, (editor), Cambridge University Press, 1985.
  • Laboratory Experimentation in Economics: Six Points of View, (editor) Cambridge University Press, 1997 (Chinese translation, 2008).
  • The Shapley Value: Essays in Honor of Lloyd S. Shapley, (editor), Cambridge University Press, 1988.
  • Two-Sided Matching: A Study in Game-Theoretic Modeling and Analysis, With Marilda Sotomayor, Cambridge University Press, 1990.
  • Handbook of Experimental Economics, Edited with J.H. Kagel, Princeton University Press, 1995.
  • Game Theory in the Tradition of Bob Wilson, Edited with Bengt Holmstrom and Paul Milgrom, 2001.
  • アルビン・ロス著『Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット)---- マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学』(日本経済新聞出版社、2016年;原著は2014年)ISBN: 978-4-532-35688-0

出典・脚注編集

  1. ^ Curriculum vitae, and consulting services Alvin E. Roth”. Alvin E. Roth. 2012年10月15日閲覧。
  2. ^ Adams, Susan (2010年8月9日). “Un-Freakonomics: A Harvard professor uses economics to save lives, assign doctors and get kids into the right high school”Forbes 2012年10月26日閲覧。
  3. ^ Neyfakh, Leon (2011年4月3日). “The Matchmaker: The Harvard economist who stopped just studying the world and began trying to fix it”Boston Globe 2012年10月26日閲覧。
  4. ^ The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2012”. Nobel Media AB (2012年10月26日). 2012年10月15日閲覧。



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マーケットプレイスがうまく機能するためにまず何より必要なのは、取引を希望する参加者を大勢集めて、彼らが最高の取引を探しあてられるようにすることだ。参加者が多く集まる市場には厚みがある
NYSEが毎日同じ時刻に取引を開始し、きっかり定刻に閉会するのにも、市場の厚みを維持する狙いがある
金銭が絡むと、それまで許容範囲だった取引が不快と見なされることがよくある。腎臓売買を禁じる法があるのに腎臓交換を禁じる法がないのも、合意のうえでの性行為が一般に受け入れられているのに売春がそうではないのも、この理由による
サルビアの花に指を深く差しこんでみた。指を引き抜くと、その背に一筋の花粉がついていた。この花は、ハチが奥深くまで入らなくては蜜を集められないような形状に進化したため、長い舌をもつ大型のハチだけがその蜜を得られるのだという
CBOTは小麦を品質等級(一等が最高級)と種類(硬質か軟質か、赤色か白色か、冬小麦か春小麦か)で分類することによって、小麦をコモディティに変えた(中略)市場をコモディティ市場に変えることによって、十分な厚みを実現できる場合がある
時限つきオファーのせいで市場は早期化するうえに厚みを失い、そのせいで参加者は市場によって与えられるマッチングの質に関する情報と、市場がほかにどんなマッチングを提供し得るのかという情報の両方を得られなくなる
価値があるのに埋もれている資源があり、それを探し当てて譲り渡すのが大変なとき、適切なマーケットプレイスを構築できれば成功できるチャンスがある
◆起業家が市場構築で考慮すべきこと
1.大勢の買い手と売り手を集め-て市場の厚みを増す方法
2.その結果起こり得る混雑を解消する方法
3.安全で信頼性の高い市場にする方法
最終的に私たちは「ロス=ペランソン・アルゴリズム」と呼ばれるようになった、混合型のアルゴリズムを開発した。この方式では、まず受け入れ保留アルゴリズムによって、医学生と研修プログラムをあらかじめマッチングさせる。このマッチングにはブロッキングペアがいくつか含まれているため、続いてそれらを一つひとつ修正していく。エリオットと私はいくつかの理由から、前に説明した受け入れ保留アルゴリズムを逆にして、雇用主が第一希望から順に応募者にオファーを出していく代わりに、応募者が第一志望から順に仕事に応募していく方式をとった
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アマゾンにしろ、Uberにしろ、Airbnbにしろ、インターネットビジネスのほとんどは、「マッチング」のためのサービス。
そう考えると、このマッチングの理論を学ぶことは、インターネットビジネスで成功するための原理原則を知ることにほかなりません。
多少記述が回りくどいところがありますが、読んでみて損はないと思います。
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『Who Gets What』アルビン・E・ロス・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆
第I部 市場はどこにでもある
第II部 挫かれた欲求──市場はいかにして失敗するか
第III部 市場をよりスマートにし、より厚みをもたせ、より速くするためのデザインの発明
第IV部 禁じられた市場と自由市場


フー・ゲッツ・ホワット アルビン・E・ロス著  マッチング理論で社会制度に示唆

2016/5/15付 日本経済新聞 朝刊
末期腎不全の患者のために、自分の腎臓の片方をあげたいドナーがいる。だがそのドナーと患者は免疫などの相性が悪く、移植ができない。これは医学的には不適合だが、経済学的には需給の不一致である。ドナーが供給する腎臓を、患者が需要しない。需給を一致させるには、ドナーと患者のペアたちを、適合するよう組み替えればよいのだ。これを腎移植マッチングという。
(櫻井祐子訳、日本経済新聞出版社・2000円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
その定式化を行い、数学的に解き、実際に制度を作ったのが本書の著者だ。2012年のノーベル経済学賞に輝いた。著者の活躍は多岐にわたり、研修医と病院を組み合わせる研修医マッチング、学生と公立学校を組み合わせる学校選択マッチングなどを生み出した。本書ではマッチングの理論と実践を平易に解説している。
マッチング理論は、金銭取引に適さないものの組み合わせを決めるのに、とりわけ有効だ。腎臓、学校の入学資格、職場の内定は、その好例である。近い将来、米国には彼が設計した学校選択マッチングを経て進学し、研修医マッチングを経て移植医になり、腎移植マッチングで手術する人が現れるだろう。
著者が実務家として細心の注意を払い、研究者として深い関心を寄せるのは「不快感」だ。腎臓でいうと、その金銭取引は多くの人が不快感を持ち、違法とされている。しかしドナーの交換であれば違法でなく、不快感も持たれにくい。腎移植マッチングは、人々の不快感を刺激しないという社会的な制約のもとで、希少資源の最適配分に挑むのだ。
彼は不快感にもとづく金銭取引の禁止を、よいとも悪いともいわない。ただしメリットとデメリットを勘案せよという。そして安易な禁止によるデメリットに注意を促す。理由の一つは、禁酒法時代にマフィアが繁栄したように、違法化による闇市場の誕生には弊害が大きいというものだ。
何を金銭取引の対象にするのか、しないならば代わりにどう対処するのか。社会制度は天や自然から与えられるものではなく、人間が作るものだ。本書はよりよい社会制度の構築に大きな示唆を与える。
巻末には、彼の弟子で、現在は米スタンフォード大学で同僚の小島武仁氏が解説を寄せている。著者の人柄や普段のエピソードなどが楽しく読め、本文の味わいが一層深まる。題名は『フー・ゲッツ・ホワット』(誰が何を得るか)だが、誰もがこの本を得るべきだ、と言ってしまいたい。
(慶応大学教授 坂井 豊貴)
[日本経済新聞朝刊2016年5月15日付]