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金曜日, 5月 09, 2008
NAM構造図
構造図解説
表紙の構造図は理想像なので現実にはN**はその有機的構成を得るにはいたらなかった。N**は2002年に代表団が選挙+籤引きで再選出された後に、代表団それぞれがその代表する関心系、階層系、地域系を離れてしまったため、代表制が空転する事態となった(代表団は代表団を代表しているにすぎなかった)。
最大の問題は、事務局のあり方だが(構造図では斜めの黒い楕円となっている)、これは各ML(関心系、階層系、地域系)が代表を排出し、センター事務局(斜めの白い楕円)へ配属させるのと同じように、各ML(関心系、階層系、地域系)が代表の委託という形で、事務員を選出し、事務局MLに配属させるのが望ましかった。このやり方だと各ML内で予算の問題が議論できる。また、対価が発生するのは事務局に対してだが、このやり方だと掲示板ではなくMLを使った議論でも十分管理及び対応ができるはずである。事務局のストレスが溜まるのは、要するに自分の所属していないMLを管理することに対してであり、少なくともそのストレスは回避できる。欠点としては事務局員が多くなることだが、これは事務局長の任命権をセンターが持っていれば、心配いらない。また、このやり方だと地域による輪番制は、責任者及び、総会開催場所の輪番ということになる。
ちなみに構造図では、それぞれの所属「系」の中にセンター評議委員と事務局員という二つの中心が存在するため、各「系」は楕円となっている。
N**は議論の場を徐々にMLから掲示板へ移行するべきだったが、時期を逸した(或いはまだその過渡期にあると考えていい)。これには通信環境がまだ整っていなかった側面が原因としてある。今ならパスワードで会員のみ書き込み可能、または会員のみ読み込み可能などそれぞれの系によって適した選択できるだろう。これは対外的、対内的説明責任を考えた時にも必要不可欠なやり方だ。
またN**では地域系の重要性があまり認識されていなかったことが欠点として挙げられる。関心系が横断的組織(ユニオン)として全国をカバーしても、その結節点たる地域系がモデルとして数カ所でもいいから存在していなければ、関心系の持つ多様性は各個人にフィードバックされない。これは地域社会へのビジョンを疎かにしてきた左翼的思考の欠点を端的に示している。また逆に、関心系が横断的に存在しなければ、地域の組織(コーポラティブ)は共同性を帯びた閉じたものになってしまうのは言うまでもない(地域系は自律分散したモデルケースになるべきだろう)。
プロジェクトに関しては、いずれ別図で指し示すつもりだが、要するに、組織に隣接する無数の輪と考えていい。センターMLへの所属はチームの時点では義務だが、独立すればHPからのリンクと総会での説明責任を負うだけになる。ちなみにN**における無記名投票は人間に自由を、籤引きは平等をそれぞれ可能にするアイテムとして考えられる。
N**の総括
要するにN**は籤引きは成功したが、地域通貨には失敗した。その失敗は理論的なものだったが、のちにその運営部に転化されることとなった。ひとつのLETSが巨大化(多様化ならまだわかる)していく方向性は、LETSの特性から考えて現実的にあり得ない。複数のLETSの設立がめざされるべきだったろう。とはいえ全国式LETSのバックアップを唯一可能にする組織としてのN**の組織構造の画期的な部分が自覚されていないのは残念だ。
地域通貨のアポリアは、多様なコンテンツが集まりにくいということだが、N**にはその多様性を関心系が集め、地域が交換の場を組織するという形があり得たからである(これは市民通貨と地域通貨の共存に関しても有効な考え方だ)。だから交換の場の組織を考えた時、事務労働対価をLETS(無償信用と交換の両側面がある)の基軸にすえるのは間違った考え方ではない。
付記:構造図は、いずれ海外において外国語版N**が成立した時に明確になるだろう。
追記(2008.5.10):
(「継続せよ」を至上命題とする)バディウは現前化されていると同時に代表(表象)されてもいる項を通常の項と呼び、代表されているが現前化されていない項を突出物と呼び、現前化されているが代表されていない項を特異な項と定義している。
その意味では、代表団は、バディウの用語で言えば「突出物」、事務局は「特異な項」だった。
(バディウ『存在と出来事』未邦訳、アガンベン『ホモ・サケル』p.38以文社、参照。アガンベンによればシュミットのいう「例外状態」は「突出物=現前化のない代表」と「特異な項=代表のない現前化」の境界が不明確になることだそうだ。だとすると後期のNAMは例外状況にあり、代表による決断を必要としたということかも知れない。)
上記論考は以下のサイトに再掲載されるかも知れません。
http://park.geocities.jp/nam_japan2008/
文責:セキモト