下の図**の右半分が黒字、左が赤字と考えてみればよい。
国家の借金にも利子はかかるから、必然的に国家の赤字も莫大になり、国民生活に影響する。
基本的にはここ100年のインフレ成長を促した複利だが、新たな植民地=フロンティアがない現在、もうこの膨張は維持できない。
ゲゼルの減価マネーが必要になる。
元の図は以下、
http://blog.livedoor.jp/jungledog/archives/414677.html
<ドクター・プライスの思いつき…
「複利を生む貨幣ははじめはゆっくりふえてゆく。しかし、ふえる率はだんだん速くなって
ゆくので、ある期間がたてば、想像もでぎない速さになる。われわれの救世主が生まれた年に
五%の複利で貨し出された1ペニーは、今ではもう、すべて純金から成っている一億五千万個
の地球に含まれているよりももっと大きな額に増大しているであろう。しかし、単利で貸し出
されたとすれば、同じ期間にたった七シリング4と1/2ペンスにしかふえていないであろう。
今日までわが国の政府はその財政を第一の道よりも第二の道によって改善しようとしてきたの
である。」>(『資本論』第三巻 第五篇利子生み資本 第24章「資本関係の外面化」より、
大月書店国民文庫7巻141頁)
s=c(1+z)^nなる数式*まで持ち出して複利を批判するマルクスはまさにに二重の態度を取る。
複利で儲けようとする人間を嘲笑するが、その現実を変えようとしないという評論家的態度だ。
複利が実体経済と合わないという指摘は正しい。しかし、短期的には複利は現実をそのシステム
にあわせようとして被害者を生む。長期的にも、現代では国家が複利による赤字を拡大させてお
り、これは社会秩序に直結する問題だ。『共産主義者宣言』が一面的なら、『資本論』は悪い意
味で二重の態度を取った書物だ。
*
s = c ( 1 + z )^n
<このsは資本・プラス・複利の合計、cは前貨資本、zは利子率(一〇〇の可除部分で表わし
たもの)、nはこの過程が続く年数である。>(上記書143頁)
**
あるいは、
企業
家計
国債_____日銀
△
バランス ↓
企業(減益)
家計(減収)
日銀
/
/
/△
国債/
NHKスペシャル「日本国債」の本当の問題 - シェイブテイル日記
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20121224
として、S&Pの日本国債格下げは非現実的想定に基づくものとして一刀両断に切り捨てています。*2
2.日本国債の分析と問題点
ロゴフ教授らの経済史分析から見ても、財務省の見解から見ても日本国債が「日本のマクロバランスや国債の保有状況などを考慮」すると破綻は考えにくい、とすれば日本国債の真の問題点とは何なのでしょう。
これを考えるためには、日本国債を含む日本の金融ストック全体を俯瞰する必要があります。
1)日本(一般政府)の粗債務と純債務
日本には1000兆円を超える政府債務があると度々マスコミ報道されています。 たた、この政府債務とは正しく言えば一般政府の粗債務です。 日本政府には資産も多額にあるため、日本政府の債務で重要なのは純債務です。
図2は日本政府の粗債務と純債務の推移です。
図2 日本政府の粗債務と純債務
出所:日銀資金循環統計から筆者作成、 縦軸:兆円。
2012年秋段階での日本の粗債務は約110兆円、純債務は約610兆円。
しばしば日本の粗債務を家計の純資産と比較することがあるが意味がない比較である。
日本の粗債務は現在約1100兆円で、純債務が610兆円となっています。
政府粗債務と家計純資産を比較して数年後にも日本経済の破綻を予測する本などは荒唐無稽であることが分かります。
ただいずれにしても政府純債務の610兆円としても、少ない債務とはいいがたいことも事実です。
2)政府債務を支える構造
図3は、日本政府の純債務プラス企業の純債務を家計の純資産を比較したものです。
図3 政府純債務、企業純債務と家計純資産
出所:日銀資金循環統計から筆者作成、縦軸:兆円。
政府純債務は図2から再掲。 家計純資産が政府純債務と企業純債務を支えている状況が分かる。
家計純資産は増大し続けており、政府と企業の純債務を足したものとの差額は日本の海外純資産にほぼ等しい。
図3を見ますと、いくつかのことが見えてきます。
1.日本の家計は政府と企業のみならず、海外の純債務をも支えている。
2.政府純債務は増大しているが、家計純資産もほぼこれと並行して増大している。
3.政府負債は1990年代後半から急増しているが、同時期に企業債務の減少が始まっている。
この状況を直観的に言えば、
「日本国債は、デフレ下で家計の純資産として凍りつきつつ増え続けている」といったところでしょうか。
この図3を見れば、日本国債売りを仕掛け、2013年7月までの日本国債破綻を予言したヘッジファンドのカイル・バス氏は恐らく深く失望することでしょう。
それはともかくとしてシェイブテイルは図3から次のようなことが言えると思います。
・日本では経常収支が黒字であり、日本全体ではその他の国々に貸し付けている状態であり、この状態で破綻はあり得ない。
・日本政府の純債務が増大しているのは、歳出の中で医療年金や政府雇用者給与のような義務的支払が増大し続けているのに対し、デフレにより法人税・所得税收入が激減したため、その差を国債などの債務で補填する必要があったため。
・日本政府の借金が急増し、企業債務が減少をし始めた1990年代後半とは、構造改革の美名のもと、デフレ環境であるのに橋本内閣が消費税増税を強行して、デフレを強化してしまった時期に相当し、それ以後、日銀がデフレ目標を守り続けて現在に至るため、企業は投資を拡大することができず、企業借入が縮小している。
1997年の橋本消費税増税、それ以降の日銀デフレの中、日本国民は浪費をせず貯蓄に努め、銀行には預貯金が溢れています。この預貯金を原資として国債が買われ、その国債で医療年金、政府雇用者給与が民間に支払われる結果、民間純資産は増大し、これと並行して政府債務が増大するということが「日本国債問題」の本質と言えるでしょう。