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参考文献
■ロバート・ソローの説明
では、資本収益率rがつねに成長率gより大きくなる必然性はどこにあるのでしょうか。
この点を理論的に明らかにしたのが、ロバート・ソローの書いた長文の書評です。ソローは「資本主義の根本的矛盾」を、彼のつくった新古典派成長理論で説明しています。
新古典派成長理論は、経済が定常状態に近づくと考えます。これは資本と労働の投入によって経済が成長した結果、その比率が一定になる状態です。ミクロ経済学で「均衡状態」と呼ばれるものに対応するのですが、ここでは労働/資本比率が最適になるので、労働が一定だと資本も一定で、成長率もゼロになります。
労働人口が一定でも、技術進歩などで生産性が上がると成長します。賃金が労働生産性で決まるとすると、生産性が上がると賃金も上がります。国民所得は労働生産性×労働人口で決まるので──人口が増えているときは──成長率は労働生産性の上昇率より高くなります。
簡単にいうと、これが資本収益の上昇率が賃金上昇率を上回る原因です。ソローはこう書いています。
経済が資本/所得比率が一定の「定常状態」に到達達したと考えよう。労働からだけ所得を得る人々の賃金は、技術進歩によって生産性が上がるのと同じぐらいのスピードで上がる。それは経済全体の成長率より少し低いだろう。なぜなら成長率は人口増加率を含むからだ*
この結果、資本収益率が成長率を上回り、格差が拡大します。これをソローは富める者がますます富むダイナミックと呼んでいます。
資本と人口を一定とすると、労働者の生産性が毎年1%ずつ上がると国民所得も1%増えますが、人口が1%増えると国民所得は2%増えます。この差の1%の部分が資本所得になるわけです。
これは海外生産を考えると、わかりやすいでしょう。
アジアに工場をつくって生産を増やした場合、その分の利益は資本家に配当として入りますが、労働者には還元されません。この部分の国民所得(GDP+海外収益)が資本所得の増加になるのです。これ以外にも、地価の上昇などの「外部性」はすべて資本家のものになります。
のちほどみるように、ピケティは新古典派成長理論を「寓話」として否定しているのですが、その元祖であるソローがピケティのデータを新古典派成長理論で説明しているのはおもしろい。
* Solow "Thomas Piketty Is Right", New Republic, April 22, 2014、強調引用者
日本人のためのピケティ入門
池田信夫
より
■ロバート・ソローの説明
では、資本収益率rがつねに成長率gより大きくなる必然性はどこにあるのでしょうか。
この点を理論的に明らかにしたのが、ロバート・ソローの書いた長文の書評です。ソロ
ーは「資本主義の根本的矛盾」を、彼のつくった新古典派成長理論で説明しています。
新古典派成長理論は、経済が定常状態に近づくと考えます。これは資本と労働の投入に
よって経済が成長した結果、その比率が一定になる状態です。ミクロ経済学で「均衡状態」
と呼ばれるものに対応するのですが、ここでは労働/資本比率が最適になるので、労働が
一定だと資本も一定で、成長率もゼロになります。
労働人口が一定でも、技術進歩などで生産性が上がると成長します。賃金が労働生産性
で決まるとすると、生産性が上がると賃金も上がります。国民所得は労働生産性×労働人口
で決まるので──人口が増えているときは──成長率は労働生産性の上昇率より高くなります。
簡単にいうと、これが資本収益の上昇率が賃金上昇率を上回る原因です。ソローはこう
書いています。
《経済が資本/所得比率が一定の「定常状態」に到達達したと考えよう。労働から
だけ所得を得る人々の賃金は、技術進歩によって生産性が上がるのと同じぐらいのスピー
ドで上がる。それは経済全体の成長率より少し低いだろう。なぜなら成長率は人口増加率
を含むからだ》*
この結果、資本収益率が成長率を上回り、格差が拡大します。これをソローは富める者
がますます富むダイナミックと呼んでいます。
資本と人口を一定とすると、労働者の生産性が毎年1%ずつ上がると国民所得も1%増え
ますが、人口が1%増えると国民所得は2%増えます。この差の1%の部分が資本所得になる
わけです。
これは海外生産を考えると、わかりやすいでしょう。
アジアに工場をつくって生産を増やした場合、その分の利益は資本家に配当として入り
ますが、労働者には還元されません。この部分の国民所得(GDP+海外収益)が資本所得
の増加になるのです。これ以外にも、地価の上昇などの「外部性」はすべて資本家のもの
になります。
のちほどみるように、ピケティは新古典派成長理論を「寓話」として否定しているの
ですが、その元祖であるソローがピケティのデータを新古典派成長理論で説明しているの
はおもしろい。
* Solow "Thomas Piketty Is Right", New Republic, April 22, 2014、強調引用者
『日本人のためのピケティ入門』池田信夫より
ピケティ『21世紀の資本』の参考文献として
ピケティ関連の書籍を一通り集めたが、これが一番重要だ(ただし、ピケティが直接言及しているのは1955年に原著が刊行されたクズネッツ『経済成長と所得格差』及び1953年刊行のデータ本[Shares of Upper Income Groups in Income and Savings(高額所得層の所得と貯蓄 )]の方で、本書の原著は1966年刊行)。
(統計データがメインの書籍ではないが)特に上巻の第4章はピケティが反駁したデータが載っている。クズネッツはフリードマンを褒めていることからもわかるように(上193頁)、自由競争が格差を是正すると考えていたのだ。
農業工業サービス業と三部門間の比較をした第3章も重要だ。
関係ないがワイン生産工場などは工業に入るのだろうか?この三部門を一括して引き受ける分業の拒絶が今後の持続的成長の鍵だろう。
(Adobe PDF)
Volume Author/Editor: Simon Kuznets, assisted by Elizabeth Jenks. Volume Publisher: NBER. Volume ISBN: 0-87014-054-X. Volume URL: http://www.nber. org/books/kuzn53-1. Publication Date: 1953. Chapter Title: Front matter, Shares of ...
Economic Growth and Income Inequality
https://www.aeaweb.org/aer/top20/45.1.1-28.pdf
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