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金曜日, 7月 24, 2015

鶴見俊輔「方法としてのアナキズム」より

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政治学:インデックス
http://nam-students.blogspot.jp/2013/01/blog-post_19.html
NAMs出版プロジェクト: 鶴見俊輔「方法としてのアナキズム」より
http://nam-students.blogspot.jp/2015/07/blog-post_24.html(本頁)

方法としてのアナキズム      

 1  

 アナキズムは、トマス・アキナスの『神学大系』とか、マルクスの『資本論』のような、まとまった理論的著作をもっていないし、もつことはないだろう。それは、人間の社会習慣の中に、なかばうもれている状態で、人間の歴史とともに生きて来た思想だからだ。習慣の中に無自覚の形である部分が大きく、自他にむかってはっきり言える部分は小さい。

 アナキズムは、権力による強制なしに人間がたがいに助けあって生きてゆくことを理想とする思想だとして、まずおおまかに定義することからはじめよう。

  人間は(おそらく人間以外の動物もそうだろうが)権力によって強制されて生きることを好まない。権力によって支配される関係から自由になることを夢みることは、あたりまえだ。このように道義感から見て自明のことに思える権力ぬきの助けあいの社会がどうして実現しないのか。このことについての認識が、多くの人に、自分の素朴な道義感のままにアナキズムにむかうことをためらわせる。また、若い時にアナキズムを自分の思想としてえらんだ人にとっても、自分の理想が実現しないということのいらだちが、アナキズムをたやすくテロリズムに転化させる。》

鶴見俊輔「方法としてのアナキズム」冒頭より


アーウィング・ホロウィッツの『アナーキストたち』(一九六四年)とダニエル・ゲランの『現代のアナーキズム』(一九六五年)とは、その後のアナキズムについて、もっとくわしくふれている。ゲランによれば、一九三一年のスペインの共和国宣言以後、「親戚の寄合い」と呼ばれる自治の習慣の保護、直接民主制による村の運営の確認、自然崇拝と菜食主義と裸体主義への好意の表現など、もとからあった社会習慣をはっきりさせて確認してゆく動きがあったという。さらに、後に閣僚となったディエゴ・アバ・デ・サンティリアンの著書『革命の経済組織』(一九三六年)は、政治権力ではなくてたんなる調整機関、経済的行政的な調節者の役を果たすべき経済連合議会の構想を明らかにしている。この評議会は、その下部機関である⑴産業別部門の組合評議会、⑵経済地方評議会の両方に連合している工場評議会からおおまかな指示をうける。この評議会にはつねに、経済の状況を知るための最新の統計資料があたえられ、みずからの判断の基礎とされる。このようにして、サンティリアンは、スペイン革命が、ロシア革命における革命政権の失敗からもマフノ運動の失敗からも多くをまなんだ新しい構想をもつことができたという。しかし、ファシスト勢力との軍事闘争の中で、スペインにたいするロシア共産党の指導は、一九二一年のソヴィエト・ロシアにおける弾圧をもう一度ここで再生させ、やがてスペイン革命はファシスト勢力に敗れてゆく。
鶴見俊輔「方法としてのアナキズム」より

鶴見俊輔集9(22頁)所収。
『身振りとしてのアナキズム』iBooks他に再録。

プラグマティズムの紹介者として有名だが、
鶴見俊輔(1922~2015)はアナキストとして重要だ。そのアナキズムは民衆の身体に宿る経験主義の擁護として展開された(『災害ユートピア』を読めばわかるようにプラグマティズムとアナキズムは親和性が高い)。
上記「方法としてのアナキズム」もスペイン革命について孫引きで触れており、短文ながら読み応えがある。
ただしプルードンについて知らないからスペイン革命についての記述における経済的側面はその後深化しなかった。
追記:
鶴見はアメリカに留学中に戦争になり、自分はアナキストだと米移民局に答えてアメリカで投獄された。




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《アーウィング・ホロウィッツの『アナーキストたち』(一九六四年)とダニエル・ゲランの
『現代のアナーキズム』(一九六五年)とは、その後のアナキズムについて、もっとくわしく
ふれている。ゲランによれば、一九三一年のスペインの共和国宣言以後、「親戚の寄合い」と
呼ばれる自治の習慣の保護、直接民主制による村の運営の確認、自然崇拝と菜食主義と裸体
主義への好意の表現など、もとからあった社会習慣をはっきりさせて確認してゆく動きがあっ
たという。さらに、後に閣僚となったディエゴ・アバ・デ・サンティリアンの著書『革命の
経済組織』(一九三六年(*未邦訳))は、政治権力ではなくてたんなる調整機関、経済的行政
的な調節者の役を果たすべき経済連合議会の構想を明らかにしている。この評議会は、その
下部機関である(1)産業別部門の組合評議会、(2)経済地方評議会の両方に連合している工場評
議会からおおまかな指示をうける。この評議会にはつねに、経済の状況を知るための最新の
統計資料があたえられ、みずからの判断の基礎とされる。このようにして、サンティリアンは、
スペイン革命が、ロシア革命における革命政権の失敗からもマフノ運動の失敗からも多くを
まなんだ新しい構想をもつことができたという。しかし、ファシスト勢力との軍事闘争の中
で、スペインにたいするロシア共産党の指導は、一九二一年のソヴィエト・ロシアにおける
弾圧をもう一度ここで再生させ、やがてスペイン革命はファシスト勢力に敗れてゆく。》
「方法としてのアナキズム」『鶴見俊輔集9』(22頁)。より
『身振りとしてのアナキズム』iBooks他に再録。

鶴見俊輔(1922~2015)はアナキストとして重要だ。そのアナキズムは民衆の身体に宿る経験
主義の擁護として展開された。
上記「方法としてのアナキズム」でもスペイン革命について孫引きで触れており、短文ながら
読み応えがある。
ただし彼はプルードンについて知らないから(日本の近代アナキズム史はクロポトキン受容
の歴史だ)、アナキズムにおける経済的側面はその後深化しなかった。

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アーウィング・ホロウィッツの『アナーキストたち』(一九六四年)これも未邦訳

http://dwardmac.pitzer.edu/Anarchist_Archives/unifiedbiblio.html

8 件のコメント:

  1. 《アーウィング・ホロウィッツの『アナーキストたち』(一九六四年)とダニエル・ゲランの
    『現代のアナーキズム』(一九六五年)とは、その後のアナキズムについて、もっとくわしく
    ふれている。ゲランによれば、一九三一年のスペインの共和国宣言以後、「親戚の寄合い」と
    呼ばれる自治の習慣の保護、直接民主制による村の運営の確認、自然崇拝と菜食主義と裸体
    主義への好意の表現など、もとからあった社会習慣をはっきりさせて確認してゆく動きがあっ
    たという。さらに、後に閣僚となったディエゴ・アバ・デ・サンティリアンの著書『革命の
    経済組織』(一九三六年(*未邦訳))は、政治権力ではなくてたんなる調整機関、経済的行政
    的な調節者の役を果たすべき経済連合議会の構想を明らかにしている。この評議会は、その
    下部機関である⑴産業別部門の組合評議会、⑵経済地方評議会の両方に連合している工場評
    議会からおおまかな指示をうける。この評議会にはつねに、経済の状況を知るための最新の
    統計資料があたえられ、みずからの判断の基礎とされる。このようにして、サンティリアンは、
    スペイン革命が、ロシア革命における革命政権の失敗からもマフノ運動の失敗からも多くを
    まなんだ新しい構想をもつことができたという。しかし、ファシスト勢力との軍事闘争の中
    で、スペインにたいするロシア共産党の指導は、一九二一年のソヴィエト・ロシアにおける
    弾圧をもう一度ここで再生させ、やがてスペイン革命はファシスト勢力に敗れてゆく。》
    「方法としてのアナキズム」『鶴見俊輔集9』(22頁)。より
    『身振りとしてのアナキズム』iBooks他に再録。

    鶴見俊輔(1922~2015)はアナキストとして重要だ。そのアナキズムは民衆の身体に宿る経験
    主義の擁護として展開された。
    上記「方法としてのアナキズム」でもスペイン革命について孫引きで触れており、短文ながら
    読み応えがある。
    ただし彼はプルードンについて知らないから(日本の近代アナキズム史はクロポトキン受容
    の歴史だ)、アナキズムにおける経済的側面はその後深化しなかった。

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  2. 鶴見俊輔「方法としてのアナキズム」より

    鶴見俊輔集9(22頁)所収。
    『身振りとしてのアナキズム』iBooks他に再録。

    鶴見俊輔(1922~2015)はアナキストとして重要だ。そのアナキズムは民衆の身体に宿る経験主義の擁護として展開された。
    上記「方法としてのアナキズム」もスペイン革命について孫引きで触れており、短文ながら読み応えがある。
    ただしプルードンについて知らないからスペイン革命についての記述における経済的側面はその後深化しなかった。

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  3. 鶴見俊輔に関して、参考までに…

    鶴見俊輔(1922~2015)はプラグマティズムの紹介者として有名だが、その思考基盤は
    アナーキズムにある。
    (鶴見はアメリカに留学中に戦争になり、自分はアナキストだと米移民局に答えて
    アメリカで投獄された。)
    浅田柄谷はアナーキズムに厳しい。そして東浩紀はアナーキズムに近い。
    複数性の模索などはアナーキズムの課題だ。
    (ただ東浩紀はマルキシズムを相手にした時思想的に独自性を主張出来る)

    《アナキズムは、トマス・アキナスの『神学大系』とか、マルクスの『資本論』のような、
    まとまった理論的著作をもっていないし、もつことはないだろう。それは、人間の社会習慣
    の中に、なかばうもれている状態で、人間の歴史とともに生きて来た思想だからだ。習慣の中
    に無自覚の形である部分が大きく、自他にむかってはっきり言える部分は小さい。
     アナキズムは、権力による強制なしに人間がたがいに助けあって生きてゆくことを理想と
    する思想だとして、まずおおまかに定義することからはじめよう。
     人間は(おそらく人間以外の動物もそうだろうが)権力によって強制されて生きることを
    好まない。権力によって支配される関係から自由になることを夢みることは、あたりまえだ。
    このように道義感から見て自明のことに思える権力ぬきの助けあいの社会がどうして実現し
    ないのか。このことについての認識が、多くの人に、自分の素朴な道義感のままにアナキズム
    にむかうことをためらわせる。また、若い時にアナキズムを自分の思想としてえらんだ人に
    とっても、自分の理想が実現しないということのいらだちが、アナキズムをたやすくテロリズム
    に転化させる。》鶴見俊輔「方法としてのアナキズム」冒頭より
    (鶴見俊輔集9所収。『身振りとしてのアナキズム』iBooks他に再録

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  4. 570 考える名無しさん[sage] 2019/03/25(月) 20:43:29.52 ID:0
    花咲政之輔(Masanosuke Hanasaki)
    @MasanosukeH

    翔んで埼玉。
    面白かった。
    エンドロールが「はなわ」ではなく「なぜか埼玉」ならさらによかったのだが…
    ブルジョワ革命の映画だが、続編はプロレタリア革命を期待したい。
    埼玉は秩父事件、千葉は佐倉惣五郎の革命的伝統合戦含めて。

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    無政府主義への傾斜、にじむ交流 幸徳秋水からクロポトキンへ書簡9通


    無政府主義への傾斜、にじむ交流 幸徳秋水からクロポトキンへ書簡9通

    有料会員記事

    2022年2月27日 5時00分

    https://www.asahi.com/articles/DA3S15217303.html?iref=pc_photo_gallery_bottom

    明治期の社会主義者、幸徳秋水(こうとくしゅうすい)が、ロシアの無政府主義(アナキズム)の代表的な思想家ピョートル・クロポトキンに宛てて書いた英文書簡、計9通がオランダとロシアで見つかった。幸徳が大逆事件で処刑される数年前のもので、無政府主義による直接行動論に傾いていく時期にあたる。海外の大物と直接…

    幸徳秋水からクロポトキンへ1906年〜09年に宛てた9通の書簡が発見されたとのこと。アナキズム再評価の新しい波にも弾みがつくか。

    https://twitter.com/kiyonobudate/status/1497738068610011137?s=21

    最近有島武郎を読み返していたら、彼は07年2月にクロポトキンをロンドン市外の自宅に訪ねた様子を16年に書いている。「日本に於ける社会主義運動の現状など事細かに尋ねられ候が、かくの如き事書き連ね候わば、本誌の発売禁止となるべき事眼前に付き〔…〕一切省略に附し申候」とある。

    クロポトキンは幸徳秋水のことも有島に尋ねたと思われるが、有島としては(というか当時は誰でも)大逆事件後の日本の雑誌にそうしたことは書くことができなかった様子が窺われる。

    幸徳秋水とクロポトキンと言えば、秋水が獄中からクロポトキンを引用しつつ自分たちアナーキストは天皇を攻撃するものではないと弁護士に書いた手紙を、新聞社にいた石川啄木が書き写している。加藤周一『『日本文学史序説』補講』文庫版所収の「もう一つの補講」における大江健三郎の発言を参照。

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