ヴァリアン『入門ミクロ経済学 [原著第9版]』:目次
http://nam-students.blogspot.jp/2015/11/9.html
グーグルを世界一にした経済学者ハル・ヴァリアン:日経ビジネスオンライン
http://nam-students.blogspot.jp/2015/11/blog-post_10.html(本頁)
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グーグルを世界一にした経済学者ハル・ヴァリアン:日経ビジネスオンライン
2014年4月14日(月)
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安田:グーグルをはじめとする検索エンジンの収益の大半は、「検索連動型広告」と呼ばれる企業広告の広告料です。よく検索結果ページの上部や脇に表示されているあれですね。ハル・ヴァリアンさんが知見を生かして作り上げた最先端のオークション理論を、グーグルが活用して大きく成長してきたことは広く知られています。オークションとは、売り手が1人で買い手が多数の取引のことで、オークション理論はその市場の仕組みを理論化したものです。
そんなヴァリアンさんがなぜ、広告オークションの仕組みをいったん作った後も、引き続きチーフエコノミストという肩書でグーグルに関わり続けることになったのでしょう。
エリック・シュミット会長の誘いで研究
ヴァリアン:私がグーグルでの仕事に関わり始めたのは2002年でした。当時の私は、米カリフォルニア大学バークレー校の情報管理学部長でした。休暇中、旧友であるグーグルのエリック・シュミット氏(現会長)に偶然会って、声をかけられたのです。
当時のグーグルはとても小さな会社でした。社員も300人程度しかいなかった。「何をすればいいんだい?」とシュミット氏に聞くと、「広告オークションについて調べてくれないか。多分何らかの収益につながると思うんだが」と言ってきたのです。
つまり、広告オークションの仕組み作りが私の最初の仕事でした。広告オークションから得られるデータを統計的に分析することなどに1年費やし、バークレーに戻りました。
その後も、グーグルへの助言は週に1度のペースで続けました。今度は、収入予測モデルの開発に携わったのです。俗に言う「クエリ予測モデル」(編集注:クエリとは、データベースからデータを抜き出したり、操作したりする命令をするための文字列や、検索のため検索エンジンに入力する文字列などのこと)です。グーグルが2004年に上場した後は、再び新たなオークション設計に取り組むことになりました。
安田:ところで、現在はどのような体制でお仕事をされているのですか。
ヴァリアン:私自身は、広告オークションの理論構築に携わっている時はシミュレーターを作って、オークションの結果を何度もシミュレーションし、修正しながら様々な分析をしたりしていました。
現在のチームは4人の経済学者、3人の統計専門家、数人のコンピューターエンジニア、その他数人で構成されています。グーグル全体では、恐らく300人かそれ以上の人たちがアナリストや統計専門家、経済学者として関わっています。
安田:よくもまあ、それだけの経済学者が集まりましたね。
ヴァリアン:ここでやっているのは、経済学者が考えるような普通の研究とは少し違います。私の場合、最初は広告オークションから始めたわけですが、今はそれはあくまで仕事の一つですね。仕事としては、単なる産業予測をするようなものから、国の政策動向の分析までいろいろです。
足元では、私たちがクエリ予測と呼ぶ収益予測の特別チームや、政策関連、例えば、独占禁止法関連の研究などにかなり時間を割いています。
政策ではほかにプライバシー保護政策、知的財産保護、情報アクセス権などのテーマが中心です。産業界で様々な別のセクターと関わり合おうとすると、常にウオッチしなければいけないテーマが本当にたくさんあるのですよ。
安田:グーグルで働いていて、一番楽しいことは何ですか?
ヴァリアン:私にとって一番面白いのは、グーグルではいつも何か新しいことが起こっているということでしょうね。様々な異なる分野に経済学的なテーマが現れてきますので、その都度新しいテーマに取り組める。
ビジネスの世界があまりに刺激的で楽しすぎた
安田:ヴァリアンさんはもともと、アカデミアを飛び出して、いわゆる一般企業で働くことに関心があったのですか。
ヴァリアン:もちろんありました。1998年に共著で『Information Rules』(邦題:「ネットワーク経済」の法則―アトム型産業からビット型産業へ…変革期を生き抜く72の指針)という本を書いたんですが、シリコンバレーであの本を読んで、内容を気に入ってくれた人がたくさんいて、その頃から少しずつ交流が始まっていましたからね。
安田:はい、その本は僕も読みました。とても好きな本の1つです。
ヴァリアン:そのような中で、冒頭ご紹介したエリックからの光栄な話がありましたから、これは大変なチャンスだと、シリコンバレーのスタートアップに1年関われるなんて大きなチャンスだと思いました。ただ、関わっていくうち、あまりに「こっち」の世界が刺激的で楽しく感じたので、ビジネスの世界にとどまることにしてしまったのです。
安田:グーグルを大企業に育て上げるうえで大きな貢献をしたヴァリアンさんは、経済学者としても多大な社会貢献をされてきました。とりわけ、複雑なことを分かりやすく説明するスキルを尊敬しています。
僕のようなまだ若い経済学者に対して、複雑なことを分かりやすく説明する秘訣をぜひ教えてくれませんか? また、経済理論を現実に応用するコツのようなものはあるのでしょうか。
ヴァリアン:それは大変素晴らしい質問です。大学院で経済学を教えていて一番問題があるなと感じるのは、学生たちがどんな科目でも枝葉末節にこだわりすぎて、大局を見失いがちなことです。
また、ビジネスの世界における1つの試練は時間的な制約です。例えばたった2週間、あるいは1カ月でいくつもの重要な意思決定をしなければいけない。ここではプロジェクトにかけられるのは数週間、せいぜい長くて数カ月です。しかし学術的な世界では、1つの論文に1年、2年とかけます。
ビジネスの現場では、短時間で英知を結集してマネジメント可能な成果にまで昇華させなければいけない。それには、仕事を効果的に進めるのに合った会話の作法もどうしても必要になります。
「ビッグデータ」かどうかは二の次
安田:ビジネスの世界では、ビッグデータの活用も大変話題になっています。ヴァリアンさんは確かビッグデータについても論文を書かれていましたね。経済学は、ビッグデータ分析にどう生かせるのでしょうか。
ヴァリアン:経済学者はひたすらデータに対峙しているので、「ビッグ」かどうかは二の次です。とはいえ「ジャーナル・オブ・エコノミック・パースペクティブス」という学術誌に、私が書いたデータ分析についての論文が掲載されます。タイトルは、「New Tricks for Econometrics」(計量経済学のための新たなトリック)。
安田:どんな「トリック」ですか?
ヴァリアン:機械学習(編集部注:人間が自然な学習で学んでいるのと同じ学習能力を、人工知能に実現させようとする技術)の「トリック」です。機械学習では実用的な因果関係の分析について多くの興味深い研究が期待できますので、そこに経済学者がもっと注視すべきだ、というのが論文のテーマです。統計分析は相関関係を見抜くことができますが、因果関係をいつも判別できるわけではないからです。
スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校、それからグーグル社内で因果関係のモデル化について講演をしてきたのですが、感触としては経済学者の間で、こうしたいわゆる実験経済学の人気がますます高まっていると感じます。
グーグルでの実証実験は年に1万件
実験経済学は、そもそもマーケティングの分野で最初に始まりました。マーケティングの効果測定をしようとする時に使うのです。しかし、マーケティングに限らず、グーグルでもさんざんこうした実証実験をしてきました。年に1万件は実験しています。
安田:年に1万件は、すごい数です。
ヴァリアン:実験は大体、研究目的が5000、自社の広告ビジネスに生かすための実験が5000という感じですね。正直、グーグルで働いていると次から次へと実験ばかりです。検索ランキングシステムのユーザーインターフェースのデザイン、あるいは広告ランキングシステムのインターフェースのデザインなどなど、やらなければならないことは枚挙にいとまがありません。
経済学の言葉で言うと、すべてのプロジェクトが、厳密なランダム化対照実験(編集部注::ランダムに研究対象を2つに分け、一方に評価する必要のある施策をし、もう一方には違う施策をする実験)の対象になると言っていいでしょう。
グーグルがここまで急成長できたのは、こうした日々の試行錯誤の積み重ねにあると思います。
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「新しい経済の教科書」は副題で「『経済学』をビジネスで使える武器にする!」とうたっている通り、グーグルなどの実例を通して、ビジネスで活用され始めた経済学の現状を明らかにしています。
一方の「最新マネジメントの教科書」は、富士フイルムホールディングスの古森重隆会長兼CEOやミスミグループ本社の三枝匡会長、ヤオコーの川野幸夫会長など5人の経営者がそれぞれの経営メソッドを語りました。
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