木曜日, 5月 11, 2017

宮尾龍蔵 マクロ金融政策の時系列分析 政策効果の理論と実証2006


                 ( 経済学リンク::::::::::
クリストファー・シムズ(1980) - 2011年 ノ ーベル経済学賞受賞:
NAMs出版プロジェクト: 経済学日本人著者入門書
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_9.html
岩村充『新しい金融理論』2004, 『中央銀行が終わる日―ビットコインと通貨の未来―』2016
宮尾龍蔵 マクロ金融政策の時系列分析 政策効果の理論と実証2006★
入門計量経済学 ストック&ワトソン Introduction to Econometrics 2006James H. Stock、 Mark W. Watson

《多変量自己回帰(VAR)モデル:Vector Autoregressive Model》



現代貨幣理論MMTを問う(下)政策の枠組み、日本と相違 宮尾龍蔵・東京大学教授 :日本経済新聞
2019/6/3
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45512980R30C19A5KE8000/ ★



官庁訪問までに専門記述問題をしっかり復習しておきましょう!

 みなさん、こんにちは。院卒区分受験の方は、政策課題討議&人物試験の準備に勤しんでいる方も多いことと思いますが、学部生については、CIMA生全員、人事院面接を終えました。あとは、最終合格発表までのんびり…なんて考えてたらダメですよ!総合職試験は、最終合格後が本当の試験なので、前回のブログにも書いたように、しっかり官庁訪問対策をしておきましょう。
 その官庁訪問対策ですが、皆さん(特に経済区分の方)、専門記述問題をほったらかしにしてませんか?今年の経済区分専門記述は、財政学で「物価の財政理論(FTPL)」、経済政策で「金融政策の時間的非整合性」というように、現実の日本経済を意識した問題が出題されました(後者については数年前にマクロ経済学で出題されていますし、択一試験では頻出論点ですが…)。
 今年の本試験について、CIMAアカデミーでは財政学の「地球温暖化と財政」、経済政策の「金融政策の時間的非整合性」を的中させたとブログやtwitterで告知してきました。2次試験直前ゼミで受講生に出した予想問題を掲載しますので、本試験問題を持っている方は照らし合わせてみて下さい。同じ問題的中でも、択一の肢1つが類似しているとかよりも、記述の大問の最初から最後までの流れが類似している方がはるかに重要だということがわかってもらえるかと思います。
【財政学】
【経済政策】 

  
 もちろん、今回のブログは、記述問題的中を誇ることが目的ではありません(就職試験ですので、常に先のプロセスを見据えましょう)。財政学記述のもう一つの大問である「物価の財政理論(FTPL)」についてです。完答出来なかった人が大半でしょうけれど、官庁訪問で経済官庁を訪問する予定のある人は、試験問題をもう一度しっかり見直して、試験問題のメッセージを掴みとる努力をしてください(官庁訪問って面接の受け答えの良し悪しでのみ評価してるんじゃないですからね!)。
 FTPL(もしかしたら「シムズ理論」といった方が通りがいいかもしれませんね)は、1990 年代から2000 年代にかけて確立していった理論ですが、我が国では、いわゆるアベノミクスへの期待とともに関心が高まったように思われます。脱デフレに関しては、2013年以降、質的・量的金融緩和政策が実施されていますが、目標とする2%の物価上昇率には現在に至るまで届いていません。さらに近年、「自国通貨を発行して借金ができる国は財政赤字を増やしても心配ない」という主張で注目を集める現代金融理論(MMT)を理論面から正当化しようとする人もおり、こうした事情が我が国におけるFTPLへの関心の高さの背景であると思われます。ただし、MMTとFTPLは全く異なります。詳細な説明はここでは省略しますが、宮尾龍蔵・東京大学教授(マクロ経済学記述の試験委員です)による日経新聞経済教室(2019年6月3日付)★を読むことをおススメします。
  話をFTPLに戻します。先日の2次試験を受験した人は試験問題を傍らにおいて、ブログを読んでください。問題を見れば明らかですが、従来の試験で財政問題について理論面から問われる場合、政府の予算制約式(たまに家計の予算制約式も登場しますが…)だけでしたが、FTPLでは基本的に政府と中央銀行の予算が統合した統合予算という考え方になります(本問もそのようになっています)。
 問題文にもあるように、統合政府では課税だけでなくシニョレージ(通貨発行益)も財源調達手段と見做されます(債務ではない!)。通貨発行益とは、中央銀行(日銀)が貨幣を発行して国債を買うことにより、節約できる金利を意味しますが、中央銀行が受け取る国債の金利が単に国に返っていく状況を考えてもらえればいいかと思います。ただし、問題では「通貨の増発により物価水準が…変化する」とあるので、各期の物価上昇率π1、π2が満たすべき等式の導出に際して、フィッシャー方程式も考慮することを忘れないでください。そうすることで小問⑤の等式が得られるだけでなく、⑥の答えである「π2上昇」も容易に確認できます。
 なぜ、そんな結果になるのかというと、本問では実質利子率、各期の課税および政府支出は定数となっています。この状況でπ1を引き下げる政策は、統合政府の予算制約式において通貨発行益の減少を意味します。そして、式より国債発行増が期待されます。こうした債務先送りが将来における通貨発行益の増加、ひいては将来の物価上昇率(π2)の上昇へとつながります。この小問は、今の日本経済のことだと私は理解しています。すなわち、マイナス金利や長短金利操作など、金融政策は超低金利誘導策を実施している一方で、債務返済は先送りをしていることで、現在のデフレ状況と将来のインフレ要因を形成してしまっている…。
 いずれにせよ、FTPLにおいて物価水準は、統合政府の予算制約式の帳尻が合わせられるように決まるというわけです。こうした、中央銀行が公債を購入し通貨発行益を増やすことにより、結果として物価が上昇する、すなわち、財政当局ではなく中央銀行が通貨発行益を出すという形で帳尻合わせをするというメカニズムこそが、ウォレス=サージェントのいう「マネタリストの不愉快な算術」なのです。
 これで小問⑦までの解説および答えが終わりました。受験生の多くは、「財政再建を(一時的に)しないとコミットすることにより、脱デフレが実現する」と読み解いたのかもしれません。この辺りが、もしかしたらMMTとFTPLをセットにして基礎的財政収支を重視する人への攻撃材料になっているのかもしれません。ですが、そもそも両者は全く異なるものですし、ここまでの話をきいてくれれば、FTPLのカギになっているのは、人々の期待形成であるということは明らかです(統合政府の予算制約式にフィッシャー方程式を忘れないで!と書いたのはそのためです)。問題は、人々の期待ってそんな簡単にコントロールできるものなのか?という点です。2013年以降、あれだけ大規模な質的・量的金融緩和政策が実施されていますが、人々の期待形成は中央銀行の想定通りとは到底言えません。金融政策で上手くいかないものが財政政策ならば上手くいくなんて、私の口からはとても言えません。それに、モデル式の通りもし期待の変化により将来の物価が上昇に転じたとき、今度はどうやってコントロールしていくのでしょうか…。
 最後の小問⑧「短期的にも長期的にもインフレを抑制するには政府はどういった政策を実施するべきか」という質問は、まさに不安を象徴しているように思われます。式およびこれまでの小問の流れを踏まえれば答えはもう明らかですね。財政収支健全化こそが、長期に渡るインフレ抑制すなわち物価コントロール手段に他ならない、ということです。近年、注目されているFTPLですが、決して「財政再建を棚上げしても大丈夫!」なんていう無責任な理論なんかではないということです。打ち出の小槌を見つけ出したような気になっている人には、この記述問題を解いてみてほしいと思います。キーワードだけで全体像を分かった気になっている人の頭を冷やすに十分意義のある問題です。
 私が何故、経済官庁を訪問する予定ならばこの問題をちゃんと復習しておくべきだ、と言っていたのかブログを最後まで読んでくれた方にはわかってもらえたと思います。専門記述問題、特に財政学や経済政策は例年、出題者のメッセージ性が強い傾向にあります。「試験終わったからもう関係ない!」では、様々な経済事象に対して問われた時に何も答えることができなくなりますよ。官庁訪問はパンフレットの丸暗記力を試す場ではないことを忘れずに!それでは、また。

現代貨幣理論MMTを問う(下)政策の枠組み、日本と相違

米国を中心に「現代貨幣理論(MMT=Modern Monetary Theory)」を巡る論争が熱を帯びている。「自国の通貨を発行して借金ができる国は財政赤字を増やしても心配ない」とする主張は、主流派の経済学者や政策当局トップから「大惨事を招く」「全くの誤り」と痛烈に批判されてきた。
この論争が分かりにくいのは、批判する主流派学者もインフラ投資の拡大や医療保険の充実など積極的な財政支出を提唱する点だ。政策の内容だけをみれば、伝統的なケインズ経済学とMMTは共通点が多い。
われわれ日本人が困惑するのは、提唱者のステファニー・ケルトン米ニューヨーク州立大教授が「日本はMMTを実践してきた」と、最近の財政金融政策をMMT理論の実践と位置付ける点だ。政府・日銀は明確に否定するが、公的債務は膨張を続け、日銀による大規模国債買い入れや長期金利をゼロ%程度にコントロールする政策は、MMTの政策提案に重なってみえる。
MMTの理論は経済学の中にどう位置づけられるのか。そしてそれはどう誤りで、日本の財政金融政策の枠組みと何が異なるのか。議論の整理を試みたい。
経済学の中の位置づけから考えたい。伝統的なケインズ経済学では、不況や失業を克服する手立てとして政府の介入を是とし、処方箋として財政金融政策を提唱する。簡単に確認すると、金利が短期・長期とも十分なプラス領域にあれば、金融緩和で金利を引き下げ、企業の設備投資や家計の消費支出、住宅投資などを刺激する。公共投資や減税などの財政の拡張はより直接に支出に働きかけられる。
一方、財政赤字は国債の増発と長期金利の上昇を招き、民間支出を締め出す恐れがある。ただし深刻な不況などの場合には、積極財政と金融緩和を同時に実行して金利上昇を抑制し、より大きな支出創出効果を目指すという選択肢もある。
主流派経済学には政府の介入に慎重な新古典派経済学もある。景気減速や失業は人々の最適な行動の結果である一方、政府の財政出動には無駄が多く含まれ、経済の生産性や効率性をむしろ阻害する要因とみる。政府サービスは国防や法制度など必要最低限とし、小さな政府に通じる減税は容認しても、公共投資や社会保障など大きな政府につながる財政赤字は容認しないというのが基本姿勢だ。
MMTは伝統的ケインズ経済学との親和性が高いようにみえる。失業や需要不足を前提としたモデルで議論する点、公共投資や社会保障など積極財政を支持する点、金融緩和と組み合わせて金利上昇を抑制する点など、多くの面で共通する。
ではなぜローレンス・サマーズ米ハーバード大教授などケインズ派の重鎮たちがこぞってMMTを批判するのか。それは理論の背景で想定される政策レジームの違いにある。政策レジームとは、一連の政策が将来にわたり繰り返し実行される制度的な枠組みを指す。
表1は政府と中央銀行の政策レジームの組み合わせを表したものだ。主流派経済学では、政府は財政収支の均衡を目指し、中央銀行は物価の安定を目指すことが想定される(表1のA)。
新古典派では財政バランスを短期かつ厳格に守り、ケインズ派では中長期かつ緩やかに目指すといった違いはあるが、収支の帳尻という制約があることに変わりはない。中央銀行は政府・財政とは独立した法制度のもと、物価安定を目標として金融政策運営を行う。これらは現代の先進国に共通する政策レジームだ。
一方、MMTでは財政収支の均衡を目指さない政府と、物価安定を目指さず政府・財政に従属する中央銀行の組み合わせを想定する(表1のB)。政府は無規律・無制約に財政赤字の拡大を続け、中央銀行は物価安定でなく、財政をサポートするための金融緩和と金利抑制が義務づけられる。
MMTが異端で誤りとされる理由はまさにここにある。財政拡張や金融緩和という政策行動は同じにみえても、それを実行する政策レジームの組み合わせが異端なのだ。MMTの世界では、中央銀行は枠組みとしての財政従属に取り組む責任があるため、それが実行可能となるように中央銀行法や財政法は改正される。インフレ率をコントロールする責務は、中央銀行ではなく政府と議会が担う。
景気過熱や高インフレが懸念されれば、増税により抑え込むとMMT論者は主張する。しかしただでさえ増税は不人気であり、合意形成に時間がかかる。機動的かつ十分な増税ができなければインフレが高進し、「インフレ税」により人々の生活は圧迫される。
政策レジームという観点からとらえれば「日本はMMTを実践してきた」との主張が誤りなのも理解できよう。政府と日銀による機動的な財政政策と大規模な金融緩和というポリシーミックス(政策行動の組み合わせ)は、MMTが想定するような政策レジームの下で実施されたものではない。
すなわち日本政府は中長期の財政再建を国際的な公約として表明している。膨張を続ける社会保障関連支出も、保険料引き上げ、年金のマクロ経済スライド、消費税増税などの取り組みを伴っている。決してフリーランチ(ただ食い)で運営されているのではない。
日銀は物価の安定を政策目標とし、その政策運営の独立性と透明性は日本銀行法により規定されている。国債引き受けも財政法で禁じられている。大規模な国債買い入れや長短金利をコントロールする政策は、政府と合意した2%の物価安定目標のもと、日銀自らの判断で実施してきた。
政策レジームは一連の政策行動が将来にわたり繰り返され、そして当局がそれにコミットするという意味を持つ。そのためには制度的な枠組みも必要となる。同じ財政赤字と金融緩和でも、日本は通常のレジームを堅持しているからこそ経済の安定が保たれている。
かつてデフレ脱却の処方箋として「ヘリコプターマネー」(貨幣発行でファイナンスされる減税政策)や「インフレが2%に達するまで財政再建を棚上げにして消費税増税を延期すべきだ」との議論(物価水準の財政理論)といった提案がなされた。それぞれが依拠するレジームは表1のBおよびCに分類できる。仮に各提案を実行すれば、法制度など枠組みの変更を伴う点に留意する必要がある。
MMTを巡る論争に意義があるとすれば、財政政策の選択肢を再考するきっかけになったことだ。主流派の学者の間でも、財政赤字や公的債務のメリットが見直されるようになった(オリビエ・ブランシャール前米国経済学会長の講演)。これまでの前提が近年変化し、安全資産である国債の金利が成長率を持続的に下回っている(図2参照)。
仮にこの状態が持続すれば、公的債務の国内総生産(GDP)比率の発散は抑えられ、財政政策の余地は広がる。MMTのようなフリーランチは仮定せず、しかし分断された社会の声にも応えていく知恵が主流派経済学にも求められる。
<ポイント>
○伝統的なケインズ経済学と多くの共通点
○政府・中銀、財政均衡や物価安定目指さず
○日銀は金融緩和策を財政に従属せず実施
みやお・りゅうぞう 64年生まれ。ハーバード大博士。専門はマクロ金融。元日銀政策委員会審議委員


マクロ金融政策の時系列分析 政策効果の理論と実証
 著者名等  宮尾龍蔵/著  
 著者等紹介 1964年大阪府生まれ。87年神戸大学経済学部卒。94年ハーバード大学大学院経済
学研究科修了。現在、神戸大学経済経営研究所教授。
 出版者   日本経済新聞社
 出版年   2006.6
 大きさ等  22cm 281p
 NDC分類 338.3
 件名    金融政策-日本  
 要旨    日本の景気変動メカニズムをデータから精緻に検証。量的緩和やゼロ金利など、総需要サイドの金融政策によって経済が好転したというわけではなく、経済の供給サイドや構造問題に本質的要因があることを、時系列手法を駆使して浮き彫りにする。

 目次     
序章 本書の問題意識と要約
第2章 金融政策の効果
第3章 インフレ目標政策
第4章 貨幣需要の関係と流動性のわな
第5章 為替レート政策;第6章 経常収支と財政収支の持続可能性
第7章 マネーサプライの役割
第8章 日本の長期停滞と経済の供給サイド
終章 今後のマクロ政策運営に向けて

 内容
日本の景気変動メカニズムをデータから精緻に検証。総需要サイドの金融政策によって経済が好転したというわけではなく、経済の供給サイドや構造問題に本質的要因があることを、時系列手法を駆使して浮き彫りにする。〈受賞情報〉日経・経済図書文化賞(第49回) 

構造VAR分析を説明した#2と日本を分析した#8が興味深い。生産性の低さに不況の原因を見るのはHayashiと同じ結論。

参考:

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非伝統的金融政策 政策当事者としての視点
 著者名等  宮尾龍蔵/著  
 著者等紹介 1987年、神戸大学経済学部卒業。94年、ハーバード大学大学院修了。神戸大学経済経営研究所助教授、同教授、同所長、日本銀行政策委員会審議委員(2010~15年)を経て現職。現在、東京大学大学院経済学研究科教授、神戸大学名誉教授 主要著作『マクロ金融政策の時系列分析』(日本経済新聞社、2006年、第49回日経・経済図書文化賞受賞)など。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
 出版者   有斐閣
 出版年   2016.10
 大きさ等  20cm 244p
 NDC分類 338.3
 件名    金融政策-日本  
 件名    日本銀行  
 要旨    非伝統的金融政策の効果はあるのか、2%物価安定目標は妥当なのか、懸念すべき副作用
は何か、マイナス金利政策の影響は何か―「理論」と「実証」から答える。

 目次
第1章 非伝統的金融政策とは何か
第2章 非伝統的金融政策の効果はあるのか(1)理論的なメカニズム
第3章 非伝統的金融政策の効果はあるのか(2)実証的な証拠;
第4章 2%物価安定目標は妥当なのか
第5章 懸念すべき副作用は何か
第6章 マイナス金利政策の影響は何か
第7章 日銀での5年間と今後の展望

 内容
非伝統的金融政策の効果はあったのか?2%物価安定目標は妥当なのか?懸念すべき副作用は何か?マイナス金利政策の影響は何か?政策決定に携わった著者が、非伝統的金融政策の特徴と課題を理論と実証の両面から答える。

Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: 非伝統的金融政策 -- 政策当事者としての視点
https://www.amazon.co.jp/product-reviews/4641164908/


5つ星のう


ち4.



2016年12月11日
経済学者であり、日本銀行政策委員会審議委員を2010年~2015年の間務めた宮尾龍蔵氏による非伝統的金融政策の解説と政策の効果の実証分析をまとめたものです。

宮尾氏の分析手法は時系列分析の構造ベクトル自己回帰(Structural VAR)モデルを利用したものです。構造ベクトル自己回帰モデルとは、複数の経済変数の相互依存関係をシンプルな(主として各変数の過去の値に依存するような)連立方程式体系で描写し、各式の誤差項を「構造ショック」とみなします。

宮尾氏は構造VARモデルで日本の非伝統的金融政策の効果を分析した結果、「2001年から2015年初めまでの日本のマクロ経済データを用いて検証した結果、マネタリーベースの増加は、長期金利の低下と資産価格の上昇 ―株価の上昇やドル/円為替レートの上昇(ドル高・円安)― を通じて、日本のGDPを持続的に引き上げ、また消費者物価上昇率にも持続的なプラスの効果をもたらすことが確認された」と結論づけています。

一方で「本章で示される分析結果が、日本の非伝統的金融政策の効果に関して確定的な最終結果を表すというものではありません。今後のデータの蓄積によって、また潜在的に起こりうる経済構造の変化によって、実証的な評価は変わりうるものです。むしろ、ここでの検証は、シンプルかつ再現可能な科学的分析を示すことで、今後のより詳細な分析につながり実証結果が蓄積されていく、そして非伝統的金融政策の効果の全体像に少しでも近づく、そうした試みの1つとして位置づけられるものと考えます」と断り書きをしており、経済学者としての真摯な姿勢が感じられます。

分析結果については日銀審議委員だった立場上、全く効果がなかったという結論は出しにくいでしょうし、VARモデルは使う変数の選び方やデータ期間によって結果が変わってくるので、いろいろと議論はあるかと思います。ただ、一流の経済学者が日本の金融政策の実証分析の手法を分かりやすく説明し、分析結果の見方を解説してみせた意義は大いにあるのではないかと思います。

なお、構造ベクトル自己回帰(Structural VAR)を使った分析については、前著の『マクロ金融政策の時系列分析』の方がより詳細に書かれているので、興味を持たれた方は『マクロ金融政策の時系列分析』を読むことをお勧めします。

また、アカデミックな参考文献をきちんと紹介されているのも大変参考になります。


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コア・テキストマクロ経済学 (ライブラリ経済学コア・テキスト&最先端)  宮尾 龍蔵  2015/10

株式会社サイエンス社 株式会社新世社 株式会社数理工学社
http://www.saiensu.co.jp/?page=book_details&ISBN=ISBN978-4-88384-091-5&YEAR=2005
<内容詳細>
気鋭の著者がマクロ経済学の基礎から中級までの内容をオリジナルな統計資料を基に丁寧に説き明かした最新テキスト.日本の長期デフレ停滞に対し,マクロ経済学がどのような分析と処方を示せるかという問題意識に立ち,マクロ経済の学習と日本のマクロ経済の理解とを一体化して解説.初学者でもマクロ経済の全体像と,現実の経済問題へのアプローチが捉えられるように配慮されている.

<目次>
第1章 マクロ経済学の基本的な考え方
    1.1 マクロ経済変数と相互依存関係
    1.2 人々の合理的な経済行動
    1.3 経済の豊かさとは
    1.4 理論と実証はマクロ経済学の両輪
    1.5 日本経済とマクロ経済学
  練習問題

第2章 GDPと物価
    2.1 GDPとは
    2.2 物価指数
    2.3 GDPと物価の同時決定:基本フレームワーク
    2.4 均衡GDP,完全雇用GDP,「短期」と「長期」の均衡
  練習問題
  コラム:GDPデフレ一夕ー算出の「連鎖方式」

第3章 消費の決定
    3.1 ケインズの消費関数
    3.2 フィッシャーの2期間モデル
    3.3 消費のライフサイクル・恒常所得仮説
  補講 家計の効用最大化行動‥必要条件式の導出
  練習問題

第4章 投資の決定
    4.1 投資の役割
    4.2 投資決定の基本モデル
    4.3 投資の調整費用とトービンのq理論
  練習問題
  コラム:フィッシャー方程式

第5章 貨幣の需給関係
    5.1 貨幣とは
    5.2 貨幣の供給
    5.3 貨幣需要の関係
  補講「貨幣の入った効用関数」モデル:予算制約式と必要条件式
  練習問題

第6章 経済の供給サイドと総需要・総供給分析
    6.1 企業の労働需要
    6.2 家計の労働供給
    6.3 資本ストックと技術進歩の役割
    6.4 ここまでのまとめ:IS−LM分析と総需要・総供給分析
  練習問題

第7章 国際マクロ経済と為替レート
    7.1 国際マクロ経済:基礎的な概念と考え方
    7.2 為替レートの決定
    7.3 為替レートのマクロ経済効果
  練習問題

第8章 景気循環と経済成長
    8.1 景気循環
    8.2 経済成長
  練習問題
  コラム:ルーカス批判

第9章 マクロ経済の金融的側面
    9.1 資産価格の役割
    9.2 銀行貸出の役割
  練習問題
  コラム:負債デフレーション

第10章 マクロ経済政策の役割
    10.1 マクロ政策分析の全体像
    10.2 財政政策
    10.3 金融政策
  練習問題

第11章 日本のマクロ経済政策
    11.1 日本の財政と財政政策
    11.2 日本の金融政策
    11.3 おわりに
  練習問題

参考文献
練習問題略解
索引
                
形式: 単行本
本書は、入門書を一度読み終えた学部生にとって、非常に良い本だと思います。マクロ経済学の仮定や考え方に関する記述がきちんと書いてあるところも良いです。また、上級マクロの入門書として、上級マクロの概念がイマイチシックリこない人向けの本としても、非常に良いと思います。動学マクロの基本概念も分かりやすく書いてあるので、これを読んでから上級書に入れば、理解が促進されるとような気がします。レベル感としては、『The Foundations of Modern Macroeconomics』よりも易しく、MankiwやBlancharとほぼ同程度はないかと思います。このレベルの類書は少ないので、ありがたい一冊です。


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入門 計量経済学 単行本 – 2016/5/25


5 Comments:

Blogger yoji said...

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EViewsで学ぶ実証分析の方法 [単行本]

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目次
はじめに i

第1章 GMM
1 モーメント法(Method of Moments)
2 GMM推定量の考え方
3 GMM推定量の一致性と漸近的正規性
4 最適GMM推定量
5 GMMによるVasicekモデルのパラメータ推定

第2章 VARモデル
1 VARモデルの推定とインパルス反応分析
2 政策ショックと構造VARモデル
3 ベイジアンVAR
4 VARモデルの分析例:金融政策効果の実証

第3章 DSGEモデル
1 DSGEの基本モデル
2 DSGEモデルの解法
3 シミュレーション分析
4 カルマン・フィルタ
5 ベイズ統計学の基礎
6 Markov Chain Monte Carlo法
7 MCMCによるDSGEモデルのパラメータ推定
8 より進んだトピック:DSGE-VARモデル

第4章 ボラティリティ分析
1 ARCHモデル
2 GARCHモデル
3 拡張モデル
4 多変量GARCHモデル

第5章 質的選択モデルとトービット・モデル
1 質的選択モデル
2 トービット・モデル(途中打ち切り回帰モデル)
3 サンプル・セレクション・バイアス

第6章 ダイナミック・パネル分析
1 ダイナミック・パネル分析とは
2 VAR計測上の問題
3 モデル定式化の問題
4 Arellano-Bond操作変数について
5 その他の推計方法
6 時系列分散不均一性に関して
7 実証例:Dahlberg and Johanssonによる地方政府行動の分析
8 Anderson-Hsiao推定と実証
9 まとめ

第7章 最適化アルゴリズム
1 非線形推定の具体例
2 数値微分
3 最適化アルゴリズム
4 EViewsの非線形推定法と最適化アルゴリズム
5 非線形最適化アルゴリズムの応用

索 引

著者紹介

1:07 午前  
Blogger yoji said...

EViewsで学ぶ実証分析の方法
著者名等  北岡孝義/著  ≪再検索≫
著者名等  高橋青天/著  ≪再検索≫
著者名等  溜川健一/著  ≪再検索≫
著者名等  矢野順治/著  ≪再検索≫
著者等紹介 【北岡】神戸大学大学院博士後期課程中退。広島大学経済学部教授を経て、2000年よ
り明治大学商学部教授。専門は金融論。著書「EViewsで学ぶ実証分析入門基礎編・
応用編」「証券論」。
著者等紹介 【高橋】米国ロチェスター大学博士課程修了。カナダ・サスカチュワン州立大学経済学部
講師等を経て、1996年より明治学院大学経済学部教授。専門は成長理論、動学ゲーム
理論、公共経済学。著書「EViewsによるデータ分析入門-計量経済学の基礎からパ
ネルデータ分析まで」など。
出版者   日本評論社
出版年   2013.12
大きさ等  22cm 312p
NDC分類 331.19
件名    経済分析‐データ処理  ≪再検索≫
要旨    最新のデータ分析の手法を網羅!GMM、ベイジアンVAR、DSGE、動学的相関係数
(DCC)、ダイナミック・パネル等をわかりやすく解説。EViews Ver.8に
完全対応!
目次    第1章 GMM;第2章 VARモデル;第3章 DSGEモデル;第4章 ボラティリ
ティ分析;第5章 質的選択モデルとトービット・モデル;第6章 ダイナミック・パネ
ル分析;第7章 最適化アルゴリズム
内容    EViewsを操作しながら、より発展的な実証分析の手法を学ぼう。GMM、ベイジア
ンVAR、DSGE、動学的相関係数、ダイナミック・パネルなどをわかりやすく解説。
EViews Ver.8に完全対応。
ISBN等 4-535-55736-5

1:09 午前  
Blogger yoji said...

以下同様に,第2式のインフレ率πrの式,第3式のマネタリーベースれの式を表すと,π′=[3つの変数のラグで説明される頂]+zπ,′%′=[3つの変数のラグで説明される頂]+z″″となります。各式のカギ括弧内は(A3.2)式のカギ括弧と同様の表現が入り,“πル%zノはそれぞれの誤差項です。以上の3つの式をまとめて表現すると,最終的に,ベクトル自己回帰モデルは,Xr=41Xr lキスメ_2+%`は3.3)と表されます。(A3.1)式の1変数の自己回帰モデルと見た目にはまったく同じですが,ベクトル自己回帰モデルは,3つの変数をそれぞれの過去の値で説明する式体系となります。るは3つの変数からなるベクトル,ム,42は3行×3列の係数の行列,“′も3つの誤差項(ら`,%π,`,%",Dからなるベクトルになります。(3)構造ベクトル自己回帰モデルの導出ベクトル自己回帰モデルによく似た表現で,経済構造に基づいて政策効果などを議論するフレームワークが「構造ベクトル自己回帰(structrual VAR)モデル」です。ここで,典型的な構造VARモデルを,上記の3変数モデルで考えると,光=E3つの変数のラグで説明される頂]+ε″π′=α力+[3つの変数のラグで説明される項]+επ,′協′=βヵ+νπ′+[3つの変数のラグで説明される項]十εz,′と表されます。第3章 非伝統的金融政策の効果はあるのか(■) 117第1式は産出量(実質GDP)を説明する式です。GDPを説明する要因は,家計の消費や企業の設備投資行動など多岐にわたりますが,特定のモデルや定式化を仮定せず,過去のGDP,インフレ率,マネタリーベースがさまざまな構造的な関係式を経由して現在のGDPを説明すると想定します。特定のモデルに依拠して,各支出項目の説明式を詳細に設定するのは,伝統的なマクロ計量モデルのアプローチですが,その際にはシステムが大規模になるとともに数多くの制約が仮定されます。ここでは,そうした特定モデルに基づいて数多くの想定を置くことはしないという意味で,分析者の恣意性をできるだけ排除した制約の緩いモデルと解釈できます。第2式はインフレ率を説明する式で,基本的にはGDPと同様に(緩い制約のもとで)各変数のラグが説明変数として入りますが,それに加えて,インフレ率とGDPとの間に同時点の相関を容認しています(π′=α光)oこの関係の傾きが正であれば,標準的な右上がりの総供給関数もしくはフイリップス曲線の関係を表すことになります。第3式はマネタリーベースを説明する式で,同じく各変数のラグに加えて,同時点の関係として産出量とインフレ率にも依存することを容認しています。これは経済活動に依存してマネーが供給される「内生的な貨幣供給」の面と,景気やインフレ動向に金融政策が反応する「政策反応関数」の面の両方を含んでいる可能件があります。各式の誤差項は,各変数の変動を引き起こす「構造シヨツク」として解釈されます(それぞれの説明される変数に対応して「GDPショック」,「インフレ・シヨツク」,「マネタリーベース・シヨツク」と呼ばれます)。以上の3つの式と構造シヨツクをまとめて表現すると,構造ベクトル自己回帰モデルは

1:11 午前  
Blogger yoji said...

宮尾非伝統116-8

以下同様に,第2式のインフレ率πrの式,第3式のマネタリーベースれの式を表すと,
  π′=[3つの変数のラグで説明される頂]+zπ,
  ′%′=[3つの変数のラグで説明される頂]+z″″
となります。各式のカギ括弧内は(A3.2)式のカギ括弧と同様の表現が入り,“πル%zノはそれぞれの誤差項です。
 以上の3つの式をまとめて表現すると,最終的に,ベクトル自己回帰モデルは,
  Xr=41Xr lキスメ_2+%`は3.3)
と表されます。(A3.1)式の1変数の自己回帰モデルと見た目にはまったく同じですが,ベクトル自己回帰モデルは,3つの変数をそれぞれの過去の値で説明する式体系となります。るは3つの変数からなるベクトル,ム,42は3行×3列の係数の行列,“′も3つの誤差項(ら`,%π,`,%",Dからなるベクトルになります。

 (3)構造ベクトル自己回帰モデルの導出
 ベクトル自己回帰モデルによく似た表現で,経済構造に基づいて政策効果などを議論するフレームワークが「構造ベクトル自己回帰(structrual VAR)モデル」です。
 ここで,典型的な構造VARモデルを,上記の3変数モデルで考えると,
  光=E3つの変数のラグで説明される頂]+ε″
  π′=α力+[3つの変数のラグで説明される項]+επ,
  ′協′=βヵ+νπ′+[3つの変数のラグで説明される項]十εz,′
と表されます。

第3章 非伝統的金融政策の効果はあるのか(■) 117


 第1式は産出量(実質GDP)を説明する式です。GDPを説明する要因は,家計の消費や企業の設備投資行動など多岐にわたりますが,特定のモデルや定式化を仮定せず,過去のGDP,インフレ率,マネタリーベースがさまざまな構造的な関係式を経由して現在のGDPを説明すると想定します。特定のモデルに依拠して,各支出項目の説明式を詳細に設定するのは,伝統的なマクロ計量モデルのアプローチですが,その際にはシステムが大規模になるとともに数多くの制約が仮定されます。ここでは,そうした特定モデルに基づいて数多くの想定を置くことはしないという意味で,分析者の恣意性をできるだけ排除した制約の緩いモデルと解釈できます。
 第2式はインフレ率を説明する式で,基本的にはGDPと同様に(緩い制約のもとで)各変数のラグが説明変数として入りますが,それに加えて,インフレ率とGDPとの間に同時点の相関を容認しています(π′=α光)oこの関係の傾きが正であれば,標準的な右上がりの総供給関数もしくはフイリップス曲線の関係を表すことになります。
 第3式はマネタリーベースを説明する式で,同じく各変数のラグに加えて,同時点の関係として産出量とインフレ率にも依存することを容認しています。これは経済活動に依存してマネーが供給される「内生的な貨幣供給」の面と,景気やインフレ動向に金融政策が反応する「政策反応関数」の面の両方を含んでいる可能件があります。
 各式の誤差項は,各変数の変動を引き起こす「構造シヨツク」として解釈されます(それぞれの説明される変数に対応して「GDPショック」,「インフレ・シヨツク」,「マネタリーベース・シヨツク」と呼ばれます)。
 以上の3つの式と構造シヨツクをまとめて表現すると,構造ベクトル自己回帰モデルは


8ДOXr=BIXr_1+B基_2+ε′
と表されます。ここでXrは3つの変数からなる人夢iル,32は3行×3列の係数の有力,ε′は3つの構造ショッεπ″,ε物″)からなる人夕iルになります(構造ショックは,れ系列相関がなく,互いに無相関と仮定されます)。
 ここで同時点の関係を表す係数島は,

(A3.4)30,Bl,ク (ε″,それぞ二0=I11ク

となり,下三角行列になります。データからlA 3.3)式を推定し,とで求められます。 
 構造モデルを導出する際,(A3.5)式の同時点の制約(下三角の形になるように島の上三角の要素にゼロを仮定)が用いられます。たとえば30行列の3列目に置かれている「2つのゼロ制約」は,マネタリーベースの変化は同時点では産出量とインフレ率には影響を及ぼさない(金融政策の効果波及には時間がかかる)という仮定を意味します。構造モデルを求める際に課される制約は,一般に「識別制約(identiting resmc●。ns)」と呼ばれます。3。のように,変数間の同時点の依存関係が1つずつ(つまり「逐次的(リカーシブ)」に)拡大していく制約は「リカーシブな識別制約」と呼ばれ,構造VAR分析の基本的な制約としてしばしば用いられます。4変数日,5変数日に金融部門の変数(長期金利と資産価格)を追加して,同様のリカーシブ制約を仮定するアプローチは,「ブロック・リカーシブ制約」(chnstianO,Eichenbaum andい、s,1999)と呼ばれ,本文の分析で用いられる識別制約に当たります。

2:06 午前  
Blogger yoji said...


NEW MEDIA (月刊ニューメディア) 2019年 08月号 「特集 MMT入門 -注目の異端経済学、その理論と政策-」 [雑誌] (Japanese) Print Magazine – July 2, 2019
https://www.amazon.co.jp/-/en/gp/product/B07STB7PJR/ref=ox_sc_act_image_3?smid=AN1VRQENFRJN5&psc=1

【特集】MMT入門 -注目の異端経済学、その理論と政策-
米中ハイテク覇権争い・米中貿易摩擦による景気悪化、消費増税、米大統領選挙などでさらに注目されそうなのが、「自国通貨を発行する国家は、財政赤字をいくら増やしても問題なく、財政再建は必要ない」と主張する経済理論「MMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)」だ。異端経済学とも言われ、賛否両論の論争を巻き起こしているMMTとは何か。その理論、政策、事例、結果予測を気鋭の経済学者が解説する。

・論点1
MMTと主流派経済学の理論を比較する
(佐藤主光 一橋大学 国際・公共政策研究部 教授)
MMTの本質は、主流派経済学の各学派の理論と比較することによって明らかになる。佐藤主光・一橋大学 国際・公共政策研究部 教授に聞いた。主流派経済学の中でもMMTと類似性があると捉えられることの多い長期停滞論やヘリコプターマネー論との違いも解説する。さらに、MMTと主流派経済学を隔てる貨幣に対する認識の違いも見ていく。

・論点2
政策レジームの観点でMMTを考察する
(宮尾龍蔵 東京大学 大学院 経済学研究科 教授)
MMTが主流派経済学の各学派と異なるのは理論だけではない。政策レジーム(政策の枠組み)でも大きな違いがある。日本銀行政策委員会審議委員も務めた宮尾龍蔵・東京大学 大学院 経済学研究科 教授に聞いた。政府は財政収支の均衡を目指すのか、中央銀行は政府・財政に従属せず物価安定を目指すのか、といった政府と中央銀行の政策レジームの組み合わせから、MMTと主流派経済学の各政策を考察する。

・論点3
アベノミクスはMMTの成功事例なのか
(宮尾龍蔵 東京大学 大学院 経済学研究科 教授)
MMTを提唱しているステファニー・ケルトン米国ニューヨーク州立大学教授は、「日本政府と日銀はMMTを長年実証してきた。日銀は日本国債の40%を買い上げ、金融政策で長期金利も抑制している。政府債務が問題なら、実体経済に問題が出るはずだ」(「日本経済新聞」2019年4月13日朝刊)と述べている。日本はMMTの成功事例という指摘は正しいのか、再び宮尾龍蔵・東京大学 大学院 経済学研究科 教授に聞いた。

・論点4
MMT政策の実施結果を予測する
(佐藤主光 一橋大学 国際・公共政策研究部 教授)
「政府は自国通貨建て国債を増発し、中央銀行が財政ファイナンスで引き受け続けるが、財政再建は行わない」というMMTの政策を実践した場合、どのような結果に至る可能性が高いのか。インフレ率や金利の変化、民間の資金需要への影響などについて、佐藤主光・一橋大学 国際・公共政策研究部 教授が予測する。また、米大統領選挙、米中貿易摩擦、日本の消費増税がMMTの影響力に及ぼす変化も聞いた。

3:43 午前  

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