土曜日, 8月 18, 2018

ボワイエ(レギュラシオン学派)



ロベール・ボワイエ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%
83%BB%E3%83%9C%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%82%A8

ロベール・ボワイエ(Robert Boyer、1943年3月25日 - )は、フランス経済学者レギュラシオン学派の一人。
エコール・ポリテクニークパリ政治学院国立土木学校で学ぶ。数理経済計画予測研究所(CEPREMAP)、国立科学研究所(CNRS)、社会科学高等研究院(EHESS)などで教鞭をとる。マルクスケインズの流れを汲むレギュラシオニストだが、ソ連スターリン主義(中央集権的計画経済)やレーニン国家独占資本主義論を批判している。




畠山ボワイエ関連論考

ボワイエ=ロベール(山田鋭夫訳)(1990a)『新版レギュラシオン理論―危機に挑む経済学―』藤原書店(La thorie de la regulation: une analyse critique, Collection Agalma, La Dcouverte, 1986, Paris)。
Boyer, Robert(1988a)“Formalizing Growth Regimes”, In Dosi, G., Ch. Freeman, R. Nelson, G. Silberberg and L. Soete eds.(1988)Technical Change and Economic Theory: The Global Process of Development, Pinter, London.


第3項(d)は「カルドア・フェルドーン効果」(カルドア 2003),つまり総供給=総需要の増加によって生み出される生産性の上昇効果


カルドア=ニコラス(笹原昭五・高木邦彦訳)(2003)『経済成長と分配理論―理論経済学続論(オンデマンド版)―』(ポスト・ケインジアン叢書12)日本経済評論社(FurtherEssayson Economic Theory, Collected Economic Essays, Vol. 5, Gerald Duckworth, 1978, London)。



上記各式についての仮定は以下のごとくである(図1)8)。69まず,生産性は次の3つの要因によって決定される。すなわち,(1)式の右辺第2項・b・は資本深化による効果を,第3項・d・は「カルドア・フェルドーン効果」(カルドア 2003),つまり総供給=総需要の増加によって生み出される生産性の上昇効果を,第1項・a・は研究開発支出,特許数,労働節約的技術革新等で計測されるイノベーションその他の効果を表す。次いで,投資は次の3つの要因によって決定される。すなわち,(2)式の右辺第2項・v・はサミュエルソン型の「加速度係数」(消費の増加が誘発する投資増加分による効果)を,第3項・u・は利潤シェアの効果(古典派的投資決定効果)であり,利潤シェアの変化率を「賃金ギャップ」(生産性変化率と実質賃金変化率の差)(Boyer1988a:611)として表す。そして,第1項・f・は技術革新の利用可能性と関連したシュンペーター効果を含むその他のすべての効果を表す。次いで,消費の変化率は雇用と実質賃金の変化率の関数であるが,2つの要因によって決定される。すなわち,(3)式の右辺第1項・c・は労働者の限界消費性向を,第2項・g・は労働者の基礎消費部分の成長率を表す。最後に,実質賃金は次の3つの要因によって決定される。すなわち,(4)式の右辺第2項・k・は生産性上昇率に対する実質賃金弾力性,つまりインデクセーション率による効果を,第3項・l・は雇用変化率に対する実質賃金弾力性,つまり雇用増減による効果を,第1項・h・は生産性上昇率および雇用変化率以外による実質賃金弾力性への効果を表す。以上が4本の方程式の仮定である。モデルを閉じるために必要な2本の恒等式の仮定は以下である。第1に,総需要は消費および投資からなり,政府支出や純輸出は捨象される。なお,・は前期の総需要に占める消費の割合であり,したがって1・・は前期の総需要に占める投資の割合である。第2に, 雇用変化率は,産出量成長率と生産性上昇率との差として定義する。以上のボワイエ・モデルの雇用変化率に対する実質賃金弾力性が非負・l・0・という仮定はフォード主義的成長体制の場合の仮定であり,名目賃金が雇用変化率に対して伸縮的に決定され,インフレーション率が名目賃金変化率を上回る場合には負・l・0・となる場合もあり得る(この問題は第Ⅳ節で検討する)。次項(2.1.2項)では上記モデルにおける生産性曲線および需要曲線の

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ロベール・ボワイエ(Robert Boyer、1943年3月25日 - )は、フランス経済学者レギュラシオン学派の一人。
エコール・ポリテクニークパリ政治学院国立土木学校で学ぶ。数理経済計画予測研究所(CEPREMAP)、国立科学研究所(CNRS)、社会科学高等研究院(EHESS)などで教鞭をとる。マルクスケインズの流れを汲むレギュラシオニストだが、ソ連スターリン主義(中央集権的計画経済)やレーニン国家独占資本主義論を批判している。 

著書編集

  • 『世紀末資本主義』、山田鋭夫ほか訳、日本評論社, 1988年。
  • 『レギュラシオン理論――危機に挑む経済学』、山田鋭夫訳、新評論, 1989年。
  • 『入門・レギュラシオン――経済学/歴史学/社会主義/日本』、山田鋭夫・井上泰夫編訳、藤原書店, 1990年。
  • 『第二の大転換――EC統合下のヨーロッパ経済』、井上泰夫訳、藤原書店, 1992年。
  • 『レギュラシオン――成長と危機の経済学』、清水耕一編訳、ミネルヴァ書房, 1992年。
  • 『現代「経済学」批判宣言――制度と歴史の経済学のために』、井上泰夫訳、藤原書店, 1996年。
  • 『世界恐慌診断と処方箋――グローバリゼーションの神話』、井上泰夫訳、藤原書店, 1998年。
  • 『資本主義vs資本主義――制度・変容・多様性』、山田鋭夫訳、藤原書店, 2005年。
  • 『ニュー・エコノミーの研究――21世紀型経済成長とは何か』、中原隆幸新井美佐子訳、藤原書店, 2007年。
  • 『金融資本主義の崩壊――市場絶対主義を超えて』、宇仁宏幸ほか訳、藤原書店, 2011年。
  • 『作られた不平等――日本・中国・アメリカ・そしてヨーロッパ』、山田鋭夫訳、藤原書店, 2016年。

共著・編著編集

  • 『レギュラシオン・コレクション(1)危機――資本主義』、R・ボワイエ、山田鋭夫編、藤原書店, 1993年。
  • 『レギュラシオン・コレクション(2)転換――社会主義』、R・ボワイエ、山田鋭夫編、藤原書店, 1993年。
  • 『レギュラシオン・コレクション(3)ラポール・サラリアール』、R・ボワイエ、山田鋭夫編、藤原書店, 1996年。
  • 『アフター・フォーディズム』、ロベール・ボワイエ、ジャンピエール・デュラン著、荒井壽夫訳、ミネルヴァ書房、1996年。
  • 『レギュラシオン・コレクション(4)国際レジームの再編』、R・ボワイエ、山田鋭夫編、藤原書店, 1997年。 -
  • 『市場原理を超える農業の大転換――レギュラシオン・コンヴァンシオン理論による分析と提起』、G・アレール、R・ボワイエ編、津守英夫ほか訳、食料・農業政策研究センター国際部会, 1997年。
  • 『戦後日本資本主義――調整と危機の分析』、山田鋭夫、R・ボワイエ編、藤原書店, 1999年。
  • 『脱グローバリズム宣言――パクス・アメリカーナを超えて』、R・ボワイエ、P-F・スイリ編、山田鋭夫・渡辺純子訳、藤原書店, 2002年。


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☆☆
レギュラシオン理論 théorie de la régulation)とは、1970年代ロベール・ボワイエミシェル・アグリエッタのようなフランスの官庁エコノミストたちによってつくられた経済学の理論。
レギュラシオン理論の文脈における「レギュラシオン」は英語と異なり「規制」の意味ではなく「調整」の意味で用いられている。ここでいう「調整」は労使間の賃金交渉(個人交渉/団体交渉)、年金・医療等の社会保障、政府による裁量的財政・金融政策といった、社会全体を通じた経済主体間の利害調整のあり方を示しており、政府による「規制」のみを単純に示すものではない。「レギュラシオン」を「規制」ととらえ、「規制緩和」に反対し、政府による「規制」を重視する立場とするのは誤解である。ちなみに「調整」という概念を最初に使用したのはグルノーブル大学教授のジェラール・ド・ベルニス(Gérard Destanne de Bernis)である。
レギュラシオン理論ではマルクス経済学の立場を継承し、経済は賃労働関係を重要な柱とする生産体制(「蓄積体制」)により規定されると考える。ただし、マルクス経済学においては下部構造である「蓄積体制」に応じて、社会保障制度・経済政策といった上部構造である社会制度が一方的に規定されると考えるのに対して、レギュラシオン理論においては、ある蓄積体制は、その蓄積体制に応じた経済・社会制度(「調整様式」)が成立し、その調整を受けることで初めて十分に機能すると考えられており、蓄積体制と調整様式の関係は相互的ないしは補完的である(ただし、蓄積体制が経済におけるもっとも本源的な要素であるとする立場には変わりは無い)。これは政府の機能を重視したミハウ・カレツキケインズ経済学の影響によるものと考えられる。
この考え方で1920年代1960年代資本主義を俯瞰し、1920年代までは熟練労働・低賃金・生産部門生産中心を特徴とする「外延的蓄積体制」が、自由競争市場を前提とした「競争的調整様式」によって調整されていたとする。また、アントニオ・グラムシの「フォーディズム」に基づき、調整様式にボルボイズムトヨティズムを加え、特に後者をバンジャマン・コリアは評価して大野耐一から「オオノイズム」と名づけた。
この理論は、一般均衡理論の批判から始まり、ルイ・アルチュセールの構造主義批判、ピエール・ブルデューのハビトゥス概念の吸収など、新たな理論の構築を目指している。経済理論の構築にあたっては、経済モデルとしての操作性が高い「中理論」の構築を目指し、モデルのミクロ経済学的基礎付けについては消極的である。これに対してはモデル構築がアド・ホックだとする批判もある。