10日の欧米市場は、さながら「中央銀行の日」の様相を呈した。
まず欧州中央銀行(ECB)理事会でドラギ総裁が欧州経済について悲観的な見通しを披瀝(ひれき)した。そして米連邦準備理事会(FRB)は3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を発表。市場の想定通りハト派的な内容であった。
さらに、FRBが緩和傾向を強める最大の理由である「低インフレ」が3月の米消費者物価指数で再確認された。全体では前年同月比で1.9%上昇して市場予測の1.8%を上回ったのだが、エネルギーと食品を除いたコア指数が前月比0.1%、前年同月比で2.0%の上昇にとどまったことが重視されている。
とはいえ、ECBのドラギ総裁が景気下振れリスクに言及したのと対照的に、FOMCでは「次の一手が利上げか利下げかの見極めがつかず様子見」との議論が目立つ。ニューヨーク市場ではトランプ大統領が「量的引き締めより、量的緩和すべきだ」と記者会見で語った影響も依然として残る。
なお、ECB理事会については、さらなる緩和策としてマイナス金利を深掘りする可能性が市場で注目された。記者会見では「株式購入も選択肢か」との質問も出た。ドラギ総裁は「議論されておらず、選択肢はオープン」と答えている。市場では「社債まで購入しているのだから、次は株式か」との観測がくすぶる。
そして"次は日銀"とばかりに、ヘッジファンドは日銀への関心をますます強めている。「次の日銀政策決定会合はいつか」などの質問が目立つ。
総じてヘッジファンドの通貨の投機ポジションはユーロ売り・ドル買いが積み上がり、混み合ってきた。そこで、まだ混み合っていない円ポジションが注目されるのだ。日銀の追加緩和策に関して手詰まり感が強まれば、円買い・ドル売りに動く姿勢が透ける。
ドル円の変動幅が限られる傾向にあるので、想定レンジ内の短期売買が中心だろう。1円でも利ざやが取れれば御の字という感覚である。
限られた値幅の中でボラティリティーは高い、という状況が続きそうだ。
豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org
0 Comments:
コメントを投稿
<< Home