「意味のないクソ仕事」をしてる風な人に、高い給料が払われる理由
それ、本当に「ブルシットジョブ」?
本当に「意味のないクソ仕事」なのか?
「ブルシットジョブ」という言葉が日本でも人口に膾炙しはじめているようである。イギリス在住の人類学者デヴィッド・グレーバー氏によって使われ始めたもので、「ブルシット」=牛の糞ということから「意味のないクソ仕事」、とりわけ、何のためにあるのかわからないような管理・事務仕事を指す。
具体例を挙げるのは忍びないので控えるが、他人はおろか自分でもその仕事が何かの役に立っているとは思えないような仕事、と言ったら誰しも心当たりがあるだろう。同じイギリスの大学で働くものとして、私も彼の論考で引き合いに出されるイギリスの大学の実例には逐一首がもげるぐらいうなずいたものである。
グレーバー氏(2014年撮影)〔PHOTO〕Hiroyuki Ito/Getty Images
とはいえ、人類学者としての彼の主張を全てそのまま受け入れるわけにもいかない。彼は現代ビジネスに掲載されたインタビューで
いちばんの近道は、(保育園の先生のような)人の役に立つ仕事の賃金を上げることでしょう。至極わかりやすい解決策です。
と言うが、上げろと言って上がるんならとっくに上がっているし、下げろと言って下がるんならとっくに下がっていることだろう。
ということをつぶやいたら現代ビジネス編集部の丸尾氏に捕捉されて、経済学の立場からブルシットジョブについて語って欲しいという依頼が来てしまった。不用意な言及だったと後悔するしかないが、かといって引き下がるわけにもいかない。
話を戻そう。私みたいな経済学者よりもはるかに長い歴史的射程を持つ人類学という分野からの指摘のわりには、グレーバー氏のこの結語は「人は命令では動かない」という人性の大本を踏まえない、いささか短絡的なものと言わざるをえない。
「この仕事は無駄だ」と言えば「おおそうか、無駄だな、みんなやめよう」となるわけでもあるまい。さながら、「みんなが気をつければいいと思います」で終わってしまう小学校のホームルームのごときである。だが、ある問題が解決しないのは果たして「みんなが気をつけ」ていないからなのか?
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