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火曜日, 4月 21, 2020

Minsky by Keen


以下はキーン『次なる金融危機』邦訳第1章より。

…彼ら[主流派]の基本想定状態は均衡であって、危機ではなかった。どんな 
「外生的ショック」であっても、そのあとでは均衡へ戻ると想定された。また
金融部門が欠けていた。そのためミンスキーは彼自身の理論を生み出さねば 
ならなかった、それを彼は「金融不安定性仮説」と命名した。それによって彼は、
資本主義は「本質的に欠陥を持つ」という結論に到達した。
ミンスキーは「負債が資本主義経済の本質的な性質だ」(Minsky,1977b)と主張し
た。というのは、利潤を内部留保した上で、残った額を投資するように求められる
が、それには借入れが当てられるからだ…。これが資本主義に中期的な循環過程をも
たらし、それが多数回にわたって繰り返され、過大な民間負債を蓄積させる長期的
傾向をまねくのだ。
 
「…経済の具合がよい期間が長くなると、会社の重役室では、二つのことがはっきり
してくる。まず負債の存在が容易に正当化され、負債が重い部門が好調になる。
つまり、レバレッジ(てこの原理を使うこと。元手の何倍も借金して投資額をふ
やし、利得を大きくふくらませること)が引き合うようになる」(Minsky,1977b)

 その結果、穏やかな成長の時期は、期待の増大をもたらす。そしてレバレッジ
を増大させる傾向がある。その点についてミンスキーは、彼のもっとも有名な
文章でつぎのように述べている。「安定~つまり平穏~は、循環的過去と資本
主義的金融制度を持つ世界では、不安定に他ならない」(Minsky,1978)。

ブームの時期の金融需要によって、資金市場の金利を上昇させ、そうでなけれ
ば実行可能だった保守的な投資を減らしてしまう。ブームの頂点で、株の過大
評価を予感して、株式市場への参加者は株を売り払う。そのため信用崩壊の
引き金が引かれる(Minsky,1982)。》

Minsky, H. P. (1977b) The Financial Instability Hypothesis: …
Minsky, H. P. (1978) The Financial Instability Hypothesis: …
Minsky, H. P. (1982) Can ‘It’ Happen Again? …

ミンスキーは(「過去三回の大規模金融危機のうち、およそ九回を予言していた」と
揶揄されるが)代替案も持っていて、1965年実質的にJGPを創案しているとされる*。
bill mitchell blog  

循環はミンスキーが彼の指導教諭であるシュンペーターから受け継いだ視点。
ちなみにミンスキーはケインズに多くを負うが、不安定性に関する指摘は、フィッシャー、
特にカレツキ に近く、何回かカレツキに言及している。

Minsky, H. P. (1969) Private Sector Asset Management and the Effectiveness of Monetary Policy: Theory and Practice. Journal of Finance, 24, 223–38.
 Minsky, H. P. (1972) Financial Instability Revisited: The Economics of Disaster. In: Reappraisal of the Federal Reserve Discount Mechanism. Washington, DC: Board of Governors of the Federal Reserve System. 
Minsky, H. P. (1977a) A Theory of Systematic Fragility. In: Altman, E. I. and Sametz, A. W. (eds), Financial Crises, New York: Wiley-Interscience. 
Minsky, H. P. (1977b) The Financial Instability Hypothesis: An Interpretation of Keynes and an Alternative to ‘Standard’ Theory. Nebraska Journal of Economics and Business, 16, 5–16. 
Minsky, H. P. (1978) The Financial Instability Hypothesis: A Restatement. Thames Papers in Political Economy, Autumn. 
Minsky, H. P. (1982) Can ‘It’ Happen Again? Essays on Instability and Finance, Armonk, NY: M.E. Sharpe. 
Minsky, H. P. (1986) Stabilizing an Unstable Economy, New Haven: Yale University Press.

Fama, E. F. & French, K. R. (1999a) The Corporate Cost of Capital and the Return on Corporate Investment. Journal of Finance, 54, 1939–67. 
Fama, E. F. & French, K. R. (1999b) Dividends, Debt, Investment, and Earnings. Working Papers, University of Chicago. 
Fama, E. F. & French, K. R. (2002) Testing Trade-Off and Pecking Order Predictions about Dividends and Debt. Review of Financial Studies, 15, 1–33.



…………


以下はキーンの邦訳より。#1がミンスキーの総括になっている。

 ミンスキーの最終的結論は、完全な自由市場資本主義のもとでは、危機を避けることはできないが、原因は、その金融システムのため、資本主義は「本来的に欠陥を持ち、ブーム・危機・恐慌に落ち込みやすいからだった」。

「私の考えでは、この不安定性は、金融システムが成熟した資本主義と矛盾していなければ、必ず持つている特徴に起因する。そうした金融システムは、一方では、投資への欲望を加速するように信号を発し、他方では、加速する投資に資金を融通できるだろう」(Minsky,1969)
  …

…彼ら[主流派のモデルー‐とくにDSGEモデル]の基本想定状態は均衡であって、危機ではなかった.どんな「外生的ショック」であっても、そのあとでは均衡へ戻ると想定された.また金融部門が欠けていた.そのためミンスキーは彼自身の理論を生み出さねばならなかった,それを彼は「金融不安定性仮説」と命名したそれによって彼は、資本主義は「本質的に欠陥を持つ」という結論に到達した.


ミンスキーは「負債が資本主義経済の本質的な性質だ(Minsky,1977b)と主張した.というのは、利潤を内部留保した上で、残った額を投資するように求められるが、それには借入れが当てられるからだ(Fama1999…)。これが資本主義に中期的な循環過程をもたらし、それが多数回にわたって繰り返され、過大な民間負債を蓄積させる長期的傾向をまねくのだ。
 
「…経済の具合がよい期間が長くなると、会社の重役室では、二つのことがはっきりしてくる.まず負債の存在が容易に正当化され、負債が重い部門が好調になる。つまり、レバレッジ(てこの原理を使うこと.元手の何倍も借金して投資額をふやし、利得を大きくふくらませること)が引き合うようになる(Minsky1977b)

 その結果、穏やかな成長の時期は、期待の増大をもたらす.そしてレバレッジを増大させる傾向がある。その点についてミンスキーは、彼のもっとも有名な文章でつぎのように述べている。「安定―つまり平穏ーは、循環的過去と資本主義的金融制度を持つ世界では、不安定に他ならない(Minsky1978)。

JGPの草案はミンスキー1965と言われる。
過去の七回の恐慌のうち九回ミンスキーは予言していたと揶揄されるミンスキーだが
代替案も持っていた。


。。。。

以下はキーンの邦訳より。#1がミンスキーの総括になっている。

3:
 ミンスキーの最終的結論は、完全な自由市場資本主義のもとでは、危機を避けることはできないが、原因は、その金融システムのため、資本主義は「本来的に欠陥を持ち、ブーム・危機・恐慌に落ち込みやすいからだった」。

「私の考えでは、この不安定性は、金融システムが成熟した資本主義と矛盾していなければ、必ず持つている特徴に起因する。そうした金融システムは、一方では、投資への欲望を加速するように信号を発し、他方では、加速する投資に資金を融通できるだろう」(Minsky,1969)

12: …

「新古典派総合の抽象モデルでは、不安定性を発生させることができなかった.新古典派総合の学説がつくられるとき、資本資産、銀行とマネー創出にまつわる金融の取り決め、負債によって課せられる制約、不確定な将来にたいする認識の問題などは、すべて捨て去られた。経済学者や政治家がより良くありたければ、新古典派総合を放棄しなければならない(Minsky,1982)強調は筆者)。

…彼ら[主流派のモデルー‐とくにDSGEモデル]の基本想定状態は均衡であって、危機ではなかった.どんな「外生的ショック」であっても、そのあとでは均衡へ戻ると想定された.また金融部門が欠けていた.そのためミンスキーは彼自身の理論を生み出さねばならなかった,それを彼は「金融不安定性仮説」と命名したそれによって彼は、資本主義は「本質的に欠陥を持つ」という結論に到達した.
 この不安定性は、ミンスキーの博士論文の指導教授だったシュンペーターが主張したようにテF一こc計,3¨”3∞一)、好況と不況の循環を生じさせたが、だが、もうひとっ別の資本主義本来の性質、つまり、民間の負債、が存在しなければ、深刻な破綻にはならなかった,民間の負債を無視した主流派マクロ経済学品記oテ6)”ど,こ一日F」0●3〓ヽ‐o‐じとは対照的に、ミンスキーは「負債が資本主義経済の本質的な性質だ}二・´∽F〓0「ぴつ8)と主張した.というのは、利潤を内部留保した上で、残った額を投資するように求められるが、それには借入れが当てられるからだ■〔´E”「こ口,30F88,買)、.これが資本主義に中期的な循環過程をもたらし、それが多数回にわたっ


15:

て繰り返され、過大な民間負債を蓄積させる長期的傾向をまねくのだ。

 したがつてミンスキーは、経済の循環する傾向と民間負債の双方が、マクロ経済学の理論では中心的役割を果たさねばならないと、つぎのように主張した.

「負債と収益の関係を分析する際に、自然な出発点は、現在は好況だとしても、その過去の循環と、経済とを結びつけることだし受け継がれた負債は、経済の過去を投影するで,そこには、経済がかんばしくなかった、それほど遠くない過去の時期が含まれる。受け容れ可能な負債の構造は、ある安全な幅の上につくられる.それによって、経済の具合がよくない時期でも、期待されるキャッシュ・フローが、負債にたいする契約した支払額を満たす。つまり、日銭で要返済額を満たせるようにする。経済の具合がよい期間が長くなると、会社の重役室では、二つのことがはっきりしてくる.まず負債の存在が容易に正当化され、負債が重い部門が好調になる。つまり、レバレッジ(てこの原理を使うこと.元手の何倍も借金して投資額をふやし、利得を大きくふくらませること)が引き合うようになる(Minsky1977b)

 その結果、穏やかな成長の時期は、期待の増大をもたらす.そしてレバレッジを増大させる傾向がある。その点についてミンスキーは、彼のもっとも有名な文章でつぎのように述べている。「安定―つまり平穏ーは、循環的過去と資本主義的金融制度を持つ世界では、不安定に他ならない(Minsky1978)。

JGPの草案はミンスキー1965と言われる。
過去の七回の恐慌のうち九回ミンスキーは予言していたと揶揄されるミンスキーだが
代替案も持っていた。


1:
経済学者は金融危機克服を宣言

 この本が提起する問題は、経済学界のリーダーたちから冷笑された。そんな時代が確かにあった。それも遠い昔ではなかった。ノーベル経済学賞を受けたロバート・ルーカスが、二〇〇三年一二月、アメリカ経済学会の会長挨拶で、もはや大恐慌のような経済危機は起こり得ないと、つぎのように勝利を宣言した。

「マクロ経済学という分野は、大恐慌にたいする知的対応として、一九四〇年代に確立されたのその呼称は専門知識の集まりを指し、あのような経済破綻がまた起こるのを防いでくれると、我々は期待した。ここで私が主張するのは、マクロ経済学が、その本来の意味で成功したことである。その中心課題である恐慌の防止は解決された。すべての現実の目的に照らしてだけでなく、事実として、何十年にもわたつて解決済みだった旨すo3SPo}強調は筆者)



2:
だが、四年後に、この宣言は砕け散った。最初はアメリカの、ついで世界の経済が、大恐慌以来もっとも深刻な、もっとも長い危機に落ち込んだからだ。それからほぼ一〇年が経っても、危機からの回復は弱々しい。それ以上の評価はできない。つぎの金融危機が起こるかどうかの問題は、もはや気軽に見逃すわけにはいかない。
 この問題が初めて提起されたのは何十年も前で、当時は無名だったが、今では有名な、 一匹狼のアメリカの経済学者、ハイマン・ミンスキーによってであつた。ルーカスよりも二〇年前にミンスキーは、第二次大戦後もっとも重大な経済上の事象は、何も起こらなかったことだと述べた。深刻(1)な、長期にわたる恐慌がなかったのだ2諄打・PΦドや3。それに反して第二次大戦前には、「定期的に激しい不況が生じていたから……三五年以上も激しい継続的な不況がないのは、驚くべき成功だった」。それはミンスキーにとって、経済でもっとも重要な問題は、つぎのことであるのを意味していた。

「それ――つまり、大恐慌‐‐―がまた起こり得るだろうか。もし再び起こり得るならば、なぜ第二次大戦後には起こらなかったのだろうか。これこそが、歴史的記録と過去三五年の成功から当然引き出される問題だ(Minsky.1982)

3:
 ミンスキーの最終的結論は、完全な自由市場資本主義のもとでは、危機を避けることはできないが、原因は、その金融システムのため、資本主義は「本来的に欠陥を持ち、ブーム・危機・恐慌に落ち込みやすいからだった」。

「私の考えでは、この不安定性は、金融システムが成熟した資本主義と矛盾していなければ、必ず持つている特徴に起因する。そうした金融システムは、 一方では、投資への欲望を加速するように信号を発し、他方では、加速する投資に資金を融通できるだろう」(Minsky,1969)

 第二次大戦以降、深刻な危機は起こつていなかつたoというのは、戦後の経済は、純粋な自由市場システムではなく、むしろ市場と国家(民営と国営)の混合経済で、国家が大恐慌前の五倍も大きかったからだ。危機が避けられたのは、「長期の深刻な落ち込みを起こすのに必要な条件である利潤の崩壊」を、「大きな政府」による支出が防いできたためだ、とミンスキーは論じた(〓』●∽辱・い0郎も X一じ。そうした結論に・一九八二年にミンスキーが達し、そして二〇〇三年にルーカスが「何十年も、恐慌の問題は解決済みだつた」と主張したoだから、ミンスキーのようにルーカスも「大きな政府」が恐慌を防いだと考えたが、そうした考えは二〇〇八年の危機によつて誤りだと証明されたと、こんなふうに読者の皆さんは思うかもしれない


11:
 ハイマン・ミンスキーが化きていて■九九六年没)、これを目撃したとしても、驚くことはなかっただろう。というのは、主流派の経済学者たちは説明できなかったが、この危機こそは、彼の反主流的な経済観の中心的な予言だったからだ(.
 ミンスキーは、経済学の主流の外側で研究した「t流派の経済学の基礎は健全ではないと、いつも彼は見ていたからだ。主流派の基礎は「新古典派的(ネオクラシカル)な」アプローチだった.それは一人七〇年代にレオン・ワルラスによって始まった.非協訓的な市場から成り立つシステムであっても、すべての市場で供給と需要が一致し、彼が「一般的均衡」と呼んだ状態に到達することを、彼は示そうと試みた.彼を初めとする現在の主流派経済学の父祖たちは、現実世界の中心的な多くの性質から抽象して、モデルの構築を容易にした.だが、現実世界の特徴を欠いたため、ポール・サミュエルソンが「新古典派総合(ネオクラシカル・シンセシスこと呼んだ学説では、資本主義の不安定性を説明できなかった¨だが、その不安定性こそ、ミンスキーにとっては、現実世界の特徴だった

「新古典派総合の抽象モデルでは、不安定性を発生させることができなかった.新古典派総合の学説がつくられるとき、資本資産、銀行とマネー創出にまつわる金融の取り決め、負債によって課せられる制約、不確定な将来にたいする認識の問題などは、すべて捨て去られた。経済学者


12:
や政治家がより良くありたければ、新古典派総合を放棄しなければならない(Minsky,1982)強調は筆者)。

 主流派のまったく外側で研究したため、そしてつぎの大恐慌が起こり得るかどうか解明するのが彼の関心事だったため、崇高な深い真実から彼は出発していた.再び大恐慌が起こり得るかどうかの問題に答えるためには、恐慌を起こせるような経済モデルを必要とする´で」れらの問題に答えるためには、ひとつの経済理論が求められたGそれは大恐慌をひとつの可能な状態として起こせなければならなかった,その状態のなかに、資本主義のひとつの型を見出せねばならなかった」Ξテ打8ヽし4.だが、主流派のモデルー‐とくにDSGEモデルーーでは、それが不可能だった.彼らの基本想定状態は均衡であって、危機ではなかった.どんな「外生的ショック」であっても、そのあとでは均衡へ戻ると想定された.また金融部門が欠けていた.そのためミンスキーは彼自身の理論を生み出さねばならなかった,それを彼は「金融不安定性仮説」と命名したそれによって彼は、資本主義は「本質的に欠陥を持つ」という結論に到達した.
 彼は、それが極端な主張だとすすんで認めていた。「国内的であれ国際的であれ、金融危機は、歴史を通じて資本主義と関係していた」が、しかしそれは歴史的偶然かもしれない。だから、金融危機が起こったことは、「資本主義にとって金融危機が本質的なことを証明しない―‐―歴史的危機は、無知と人間の誤りと回避可能な金融システムの性質などの組み合わせかもしれない」と認めて


13:

いた,F∽辱・】8Φもヽ主)だが、結局それとは逆にミンスキーは、資本主義が本来的に景気循環と危機を起こす傾向を持つと主張した.彼の主張は、資本主義の多くの弱点ではなく、その核心の力に向けられた.資本主義は、リスクを冒すのを奨励し、その楽天主義が生産と社会そのものを変える革新へ導くとした.この点こそが、二〇世紀を通じて資本主義が社会主義との競争で容易に勝てた理由のひとつだつた.ソビエトは、フルシチヨフが言ったように、「我々があなたたちを征服する」と信じていたが、ソビエトの「供給に制約された」生産モデルよりも、「需要に制約される」西側のほうが容易に成長し、完全に革新を遂げた員3ユ〓)尋層β〓〓し.
 だが、革新と成長は広範囲にわたる不確定性という環境をもたらした.というのは、革新の過程そのものが未来を変えてしまうため、未来を論理的に予測することができないからだっケインズが注目したように、「未来についての我々の認識は変動し、漠然としていて、不確かだ……どんなことであれ、計算可能な確率を生み出す科学的な基礎など存在しない‐ただただ我々には分からないのだ旨層百βもヽフ』E.こうした現実を前にして、ミンスキーが率直に述べたように、「世界の未来にたいする展望は過去の評価に基づくようになる」2,F33・こに「ヽ他方、ケインズは、広範囲にわたる不確定性に対処するため我々が採用した手順のひとつは、つぎの通りだと、挑戦的に述べた。
「過去の経験の公平な吟味がこれまでそうであつたと示す以Lに、現在は未来にたいする、は


14:
るかに役に立ち得る導き手だ、と我々は想定する.つまり、我々がまったく知らない現実の性質 4が将来どう変化するかの見通しを、我々はほとんど無視するのだ}で1,3ヽフド
 そうした過去の条件を先へも延ばすことが、投資における集団現象を起こすと、ミンスキーは論じた.,この点についてヶインズは、みごとにつぎのように述べていた,「自分の個人的な判断は無価値だと認識して、おそらく知識がより豊かな、自分以外の世界の判断にまかせようと努める」(層198ヽ「』〓.その結果として、危機に先立つ比較的平穏な成長の時期が、資本主義を、未来にたいする失望状態から、危機にたいする記憶が遠のくにつれて、「幸せな期待」を抱く状態ヘと変える.「そのため資本主義経済の根本的な不確定性が浮上する.うまくゃっていくことを投機的な投資ブームヘと変える傾向が、資本主義経済の基本的な不安定性なのだL‘】一′,一0「「Fしい))
 この不安定性は、ミンスキーの博士論文の指導教授だったシュンペーターが主張したようにテF一こc計,3¨”3∞一)、好況と不況の循環を生じさせたが、だが、もうひとっ別の資本主義本来の性質、つまり、民間の負債、が存在しなければ、深刻な破綻にはならなかった,民間の負債を無視した主流派マクロ経済学品記oテ6)”ど,こ一日F」0●3〓ヽ‐o‐じとは対照的に、ミンスキーは「負債が資本主義経済の本質的な性質だ}二・´∽F〓0「ぴつ8)と主張した.というのは、利潤を内部留保した上で、残った額を投資するように求められるが、それには借入れが当てられるからだ■〔´E”「こ口,30F88,買)、.これが資本主義に中期的な循環過程をもたらし、それが多数回にわたっ


15:

て繰り返され、過大な民間負債を蓄積させる長期的傾向をまねくのだ。
 したがつてミンスキーは、経済の循環する傾向と民間負債の双方が、マクロ経済学の理論では中心的役割を果たさねばならないと、つぎのように主張した.

「負債と収益の関係を分析する際に、自然な出発点は、現在は好況だとしても、その過去の循環と、経済とを結びつけることだし受け継がれた負債は、経済の過去を投影するで,そこには、経済がかんばしくなかった、それほど遠くない過去の時期が含まれる。受け容れ可能な負債の構造は、ある安全な幅の上につくられる.それによって、経済の具合がよくない時期でも、期待されるキャッシュ・フローが、負債にたいする契約した支払額を満たす。つまり、日銭で要返済額を満たせるようにする。経済の具合がよい期間が長くなると、会社の重役室では、二つのことがはっきりしてくる.まず負債の存在が容易に正当化され、負債が重い部門が好調になる。つまり、レバレッジ(てこの原理を使うこと.元手の何倍も借金して投資額をふやし、利得を大きくふくらませること)が引き合うようになる(Minsky1977b)

 その結果、穏やかな成長の時期は、期待の増大をもたらす.そしてレバレッジを増大させる傾向がある。その点について、ミンスキーは、彼のもっとも有名な文章でつぎのように述べている。「安定―つまり平穏ーは、循環的過去と資本主義的金融制度を持つ世界では、不安定に他ならない(Minsky1978)。
16:

 ブームが破裂する原因は多く存在する。万事うまく行くという期待によって、失敗すると運命づけられている計画に投資をもたらす。銀行には、「負債構造‐―‐銀行自体の、そして借り手の負債構造‐‐‐つまり、期待するのがきびしい時期であれば拒否されるような負債構造」を押し付ける。そうした万事うまく行くという投資が、ブームの期間に損失を蓄積する。ブームの時期の金融需要によって、資金市場の金利を上昇させ、そうでなければ実行可能だった保守的な投資を減らしてしまう。ブームの頂点で、株の過大評価を予感して、株式市場への参加者は株を売り払う。そのため信用崩壊の引き金が引かれる(Minsky1982)。
 もうひとつの要素は、ミンスキーが考慮しなかったが、循環的経済で鍵となる性質だ(Goodwin1967)。それは、ブームが所得の配分を変えることだ。ブームが始まると、投資の伸びのお蔭で、一雇用率が高まり、原材料にたいする需要が増大するこそのため賃金や投入材料の価格を上昇させる。内部留保を上回る投資は負債によるから、負債の比率もブームの期間に伸びる.だから、負債にたいして手当するコストも増大する。これらの高賃金、増大する投入、高い利子コストなどは、究極的には、ブームが始まったとき資本家が期待した利潤は実現されないことを意味する。産出の増した分は、労働者、コモディティ(千不ルギー、原材料、食糧など)の生産者、そして銀行などによって持ち去られ、資本家には利潤として期待されたものが、より少なくなる。投資が低下し、経済の成長率がぶれて、ブームがスランプに道をあける。
 スランプは、万事うまく行くという期待を不況感に変えるcそして利率、土地や株などの資産価値、収入の分配の変化など、ブームが継続的に大きくしたのを、逆向きにする。総需要は減少し、一雇用は低下し、労賃や原料コストを引き下げる。だが、同時につきを意味する〔.危機のあとのキヤッシユ・フローの減少のため、負債返済を計画通りに達成できないことになる。危機から回復しても返済されない負債が残り、(ブームによる短期間の高一雇用のあと)スランプと回復の時期の低一雇用が長く続くことで、しばらくインフレ率が低下する.産出に占める利潤の割合が最終的にある基準に戻ると、再びつぎの万事うまく行く期待と高い率の負債を背負った投資の時期が始まる)だが、今度の出発では、以前にくらべGDPにたいする負債の比率がより高くなつている。また格差も大きくなっている.というのは、負債の水準がより高いため、所得からより大きな割合が銀行へ行き、労働者(そして原料生産者)の取る割合が少なくなる´だから、つぎのブームは、高い負債比率と低いレベルのインフレから始まる。そのようにして、つぎが、そしてそのまたつぎが始まる.そうしたレベルの負債が引き受けられる結果、スランプの期間の低下した金利、低下した賃金、低下した原料コストでは、利潤に及ぼす負債返却の影響を相殺できない.破産がなければ、負債が永遠に複利で大きくなり続けるだろう´逃げようがないこ破産によつて、負債は減る。だが、資金供給の減少という代価をともなう.そのため需要も減る.利潤は回復せず、投資は止まり、経済は  大規模な政府文出がなければ――大きな恐慌に落ち込み

ミンスキーの金融不安定性仮説 - ミンスキーの金融不安定性仮説とはど... - Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1443896734

ベストアンサーに選ばれた回答

経済主体が、利益目的で資産を購入するとき、
借入をすることがある。

しかし、資産を購入しても、
その資産からのキャッシュフローにより、
借入の返済が賄えている間は、それほど問題はない。
というより、これは資本主義の普通の活動。

景気が良くなるにつれて、
資産から得られるキャッシュフロー自体よりも、
資産自体が値上がりすることによる
将来のキャッシュフローを当て込んで、
資産が取引されるようになる。(投機的取引)
この取引のための、資金が、短期貸付で行われるようになってくると、
貨幣供給量は中央銀行の制御が
難しくなる。(主流派経済学と違って、貨幣供給量は
取引によって生み出されるのであり、逆ではない)

こうなってくると、社会全体が「金融的多幸症
といわれる状況を呈するようになる。
資産の価格自体が、取引を促進し、それにより
短期貸付が増加し、それにより、資金供給が増えて、
社会全体の雰囲気が「多幸症」的になること。
取引が活発化すれば、景気が良くなる、というのは主流派経済学と同じだが、
ミンスキーの場合、取引自体が短期貸付を通じて
景気を向上させる資源となる資金を供給し、それがふたたび
景気を刺激し、資産価格を引き上げることになる。
この点は、資金供給を一定(外生変数)としたうえで、取引が増えれば、物価・金利が
上昇するという主流派経済学の考え方とは、まったく違っている。
だから、主流派のように、金利・物価が上昇することにより、
マーケットメカニズムを通じて、自然と均衡状態に戻ってゆく経路は
想定されていない。というより、
「複雑に金融が絡み合う現代資本主義においては」(これ、ミンスキーの
枕ことば)、マーケットには、
均衡を破壊するメカニズムが内在しているのであり、
均衡を導く機能はない。

で、資産価格上昇・金融的多幸症の発展の中で、
資産を購入した際に発生した借り入れの返済や支払いを
資産からのキャッシュフローだけでは賄うことができず、
資産の価値が将来上昇するという期待だけを根拠に
再借り入れすることができる可能性にのみ依存して
短期借り入れを繰り返す企業が急増する。こうした
企業の資金調達の在り方を「ポンツイ金融」と呼ぶ。

当然のことながら、こうしたことが可能なのは、
借入れ増加による金利支払いの増加が
資産の価格上昇予想によって支えられる間のこと。

他方で、貨幣供給量の急増とインフレ率の
急上昇に中央銀行が危機感を持てば、
中央銀行は政策金利を引き上げざるを得ない。

ほんのわずかな金利引き上げであっても、
ポンツイ金融の状況にある企業は
短期資金の調達が一気に困難化し、
破産が急増し、資産市場が一気に崩れる。
そうなると、ポンツイ金融に至る前の状況(とりあえず、
投機的的金融状況と呼ぶが)にあった企業が
資産価格の急落に伴い、次から次と、ポンツイ金融化し、
連鎖的に破たんする。

こうなったときに、中央銀行にできることは、
企業間の支払い困難の連鎖を最小にするため、
銀行に対する引き出し要求に応じられるように
市中銀行に資金を供給し続けること(レンダー・
オブ・ラストリゾート政策)だけであるが、
その結果、不況下の持続的物価上昇である
スダグフレーションが発生する。

というわけで、

・ポンツイ金融
・金融的多幸症
・短期貸付・借入による資産売買の取引
・内生的貨幣供給(要するに、貨幣は取引により生まれるのであって、
中央銀行などによって、外生的に決められるわけではない)
・レンダー・オブ・ラストリゾート政策
・「複雑に金融が絡み合う現代社会においては」

といった言葉・表現が用いられていれば、
テスト的には、一定の点数が取れるか、と。

7 件のコメント:

  1. 「複雑に金融が絡み合う現代資本主義においては」(これ、ミンスキーの
    枕ことば)、マーケットには、
    均衡を破壊するメカニズムが内在しているのであり、
    均衡を導く機能はない

    返信削除
  2. (主流派経済学と違って、貨幣供給量は取引によって生み出されるのであり、逆ではない)


    「複雑に金融が絡み合う現代資本主義においては」(これ、ミンスキーの枕ことば)、マーケットには、
    均衡を破壊するメカニズムが内在しているのであり、均衡を導く機能はない。

    返信削除
  3. ミンスキーの金融不安定性仮説 - ミンスキーの金融不安定性仮説とはど... - Yahoo!知恵袋
    https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1443896734


    (主流派経済学と違って、貨幣供給量は取引によって生み出されるのであり、逆ではない)

    「複雑に金融が絡み合う現代資本主義においては」(これ、ミンスキーの枕ことば)、マーケットには、
    均衡を破壊するメカニズムが内在しているのであり、均衡を導く機能はない。

    返信削除
  4. *循環はミンスキーが彼の指導教諭であるシュンペーターから受け継いだ視点。
    ちなみにミンスキーはケインズに多くを負うが、不安定性に関する指摘は、フィッシャー、
    特にカレツキ に近く、何回かカレツキに言及している。

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  5. https://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0862-4.html

    ポスト・ケインズ派経済学

    マクロ経済学の革新を求めて
    鍋島直樹 著
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    価格 5,400円
    判型 A5判・上製
    ページ数 352頁
    刊行年月日 2017年
    在庫状況 在庫有り
    ISBNコード 978-4-8158-0862-4
    Cコード C3033
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    内 容
    資本主義経済の不安定性を解明したミンスキーなど、近年あらためて注目を集めるポスト・ケインズ派。その核心をなす貨幣・金融理論および成長・分配理論の着想源や展開過程を解き明かし、最新の動向を踏まえて学派の全体像に迫るとともに、新自由主義に代わる経済政策を展望する挑戦の書。

    目 次
    序 章 正統派経済学への挑戦
         1 本書の目的
         2 経済学史というアプローチ
         3 ケインズ経済学の興隆と退潮、そして再生へ
         4 本書の構成

      第Ⅰ部 ポスト・ケインズ派経済学の歴史と現状

    第1章 ポスト・ケインズ派経済学の史的展開
          —— ケインズとカレツキの統合に向かって
         はじめに
         1 ポスト・ケインズ派経済学には一貫性があるのか
         2 ケインズとカレツキの現代的加工
         3 ケインズ = カレツキ総合の可能性
         4 ポスト・ケインズ派経済学の将来

    第2章 ポスト・ケインズ派経済学の方法と理論
         はじめに
         1 異端派経済学としてのポスト・ケインズ派経済学
         2 ポスト・ケインズ派の経済理論
         3 ポスト・ケインズ派経済学の進路
         補論 日本におけるポスト・ケインズ派経済学

    第3章 ケインズおよびポスト・ケインズ派の経済政策論
          ——「投資の社会化」論を中心に
         はじめに
         1 ケインズにおける「投資の社会化」論の展開
         2 21世紀のケインジアン経済政策に向けて
         おわりに

      第Ⅱ部 ポスト・ケインズ派における貨幣・金融理論の展開

    第4章 ポスト・ケインズ派貨幣経済論の回顧と展望
         はじめに
         1 「生産の貨幣理論」に向かって
         2 貨幣経済における失業の原因
         3 内生的貨幣供給理論の展開
         4 内生的貨幣の一般理論
         5 今日の課題 ——「ニュー・コンセンサス」への対抗

    第5章 現代主流派マクロ経済学の批判的考察
          ——「貨幣的分析」の視点から
         はじめに
         1 ニュー・コンセンサス・マクロ経済学の基本的枠組み
         2 ニュー・コンセンサスに対するポスト・ケインズ派の批判
         3 「自然利子率」の概念をめぐって
         おわりに

    第6章 金融化と現代資本主義
          —— 新自由主義の危機をどう見るか
         はじめに
         1 アメリカ資本主義の歴史的進化
         2 金融化とマクロ経済
         3 新自由主義の危機
         4 グローバル・ケインジアン・ニューディールに向かって
         おわりに

      第Ⅲ部 ミンスキーの金融不安定性理論の可能性

    第7章 ミンスキーの逆説
          —— 金融不安定性仮説の射程
         はじめに
         1 ミンスキーの投資理論
         2 安定性が不安定性を生み出す
         3 経済政策の費用と便益
         おわりに

    第8章 金融的動学と制度的動学
          —— ミンスキーの資本主義経済像
         はじめに
         1 資本主義経済の金融的動学
         2 不安定な経済を安定化する
         3 抑止的システムの二面的性格
         おわりに

    第9章 金融不安定性仮説の意義と限界
          —— アメリカ・ラディカル派の視角から
         はじめに
         1 「ハリネズミ・モデル」の限界
         2 新自由主義時代における経済危機の基本的性格
         3 世界金融危機をどう解釈するか
         4 経済危機の理論の統合に向けて

      第Ⅳ部 カレツキと現代経済

    第10章 カレツキの資本主義経済論
         はじめに
         1 カレツキによる「一般理論」の発見
         2 価格と分配の独占度理論
         3 利潤と国民所得の決定
         4 投資と景気循環
         5 完全雇用のための政策とその障害
         6 カレツキ経済学の可能性
         補論 カレツキの生涯

    第11章 カレツキのマクロ経済学の核心
          ——「有効需要の理論」の意義と可能性
         はじめに
         1 カレツキの先行性に関する問題
         2 パティンキンの異議ををめぐって
         3 カレツキの「擬似均衡」モデル
         4 経済成長の源泉はどこにあるのか
         おわりに

    第12章 カレツキの経済政策論
          —— 完全雇用の政治経済学
         はじめに
         1 カレツキと社会主義
         2 完全雇用の実現のために
         3 ケインズ主義との交錯
         4 資本主義のもとでの永続的な完全雇用は可能か
         5 カレツキの教訓

    終 章 ポスト・ケインズ派経済学の課題と展望
         1 ケインズ主義から新自由主義へ
         2 ケインズとカレツキを超えて
         3 ポスト・ケインズ派経済学の到達点
         4 現在の危機にどう立ち向かうか

     参考文献
     あとがき
     初出一覧
     人名索引
     事項索引

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  6. 5つ星のうち4.0 経済学の一派を知るために
    2018年5月6日に日本でレビュー済み
     ゴールデンウィークということで、前々から読もうと思っていた『ポスト・ケインズ派経済学』に手をだしてみました。でも、こういった本は少し割高ですよね。5千円を超える本を気軽に買って読めるのは、社会人の特権ですな。学生時代なら、図書館に入るまで待つパターンですから。
     貨幣供給、「有効需要の理論」、ポスト・ケインジアンが共有している核心的な命題、「ホリゾンタリスト」(horizontalist)と「構造論者」(structuralist)、長期における「粗調整」(coarse-tuning)と短期における「微調整(fine-tuning)、「機能的財政」(functional finance)アプローチなど、ポスト・ケインズ派の重要な用語の概要を手っ取り早く知ることができて有益です。
     ポスト・ケインズ派には、参照にすべき見解が多々あるのですが、やはり異端派にとどまっているのもやむを得ないという面も見えてきます。正統派もおかしいですが...。経済学って、学者の変なこだわりが、全体の見通しを悪くしている感じですよね。正統派も異端派も、互いへの批判にはうなずけることが多いのですが、固執しているところは、何を言っているのだろう?って感じを受けてしまいます。
     経済学って、どの派閥も一理はあるけど、それだけでは本質を見失うように感じられます。異なる学派の見解を知っておくことは重要かもしれません。内容的には、マルク・ラヴォア『ポストケインズ派経済学入門』や、内藤敦之『内生的貨幣供給理論の再構築』などと重なるところが多いです。合わせて読むと理解が深まりますが、どれか手に入りやすいものから読めば良いと思います。
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  7. sorata31@財務省から国民を守る党 (@sorata311)
    2020/09/06 1:40
    民間主導の投資は、供給>需要と需要>供給の2ケースがある。
    前者はレイの指摘から、更なる投資が抑制されて持続不可能。
    後者はミンスキーの指摘から、高インフレと格差で持続不可能。
    民間投資主導の経済成長は持続不可能、という結論。
    持続可能な経済成長の唯一の道は政府支出が主導すること。 twitter.com/kenta460/statu…
    https://twitter.com/sorata311/status/1302285527404535808?s=21

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