ロバート・シラー、
— luminous woman (@_luminous_woman) January 2, 2021
ケインズ『平和の経済的帰結』1919を語る。 pic.twitter.com/HqP7Q0BPYp
17)Robert J. Shiller, Irrational Exuberance 2nd ed., Doubleday, 2005, p. 11.
やや皮肉屋のシラ ーは 、このころから始まっていた住宅バブルも見逃すことはなく 、鋭く警告を発するようになったので 、住宅業界からは 「ドゥ ームズデイ ・エコノミスト (裁きの日の経済学者 ) 」と嫌われるようになった 。二〇〇五年に刊行した 『根拠なき熱狂第二版 』は 、バブル一般についての研究を深めると同時に 、ピ ークを迎えようとしていた住宅バブルについての章をつけ加えている 。 「不動産ブ ームは 、株式ブ ームと同様に 、ミステリアスであり理解困難なものである 。いつそれが起こるのか 、常によく知られた理由がいくつも述べられるが 、それらは必ずしも正しいとは限らない ( 1 7 ) 」よくいわれる理由に 、人口圧力 、金利の低下 、建設コストの下落などがあるが 、シラ ーが掲げている一八九〇年から二〇〇四年までの超長期グラフでは 、これらの数値を住宅価格の推移と重ねてみると 、住宅バブルとは関係ないことが歴然としている 。しかも 、興味深いことに 、シラ ーによれば 、アメリカではこれまで何度か住宅ブ ームが起こっているが 、それは常に地域的なものであって 、今回のようにアメリカ全土に広がったことはなかったという 。たとえば 、一九世紀に鉄道が西海岸に到達した後に 、カリフォルニアの住宅地が高騰したことがあった 。また 、一九二〇年代にはフロリダが住宅バブルに見舞われたことがある 。さらに 、第二次世界大戦が終わった後に 、ほぼ全国的に住宅価格が上昇したが 、これは戦時中に住宅建設を抑えていたためであり 、しかも 、ベビ ーブ ームという人口増の実需に支えられたものといえる 。しかし 、二〇〇〇年代の住宅バブルは地域的なものではなく 、実需とはいえず 、全国的な広がりをもっていた 。シラ ーによれば今回の場合 、住宅が住む対象としてではなく 、投機の対象となったことによって 、全国に波及した 。すでに世界各地で住宅価格の急上昇が見られたが 、この世界的な価格上昇が住宅に対するボ ーダ ーレスな投機を促したというのだ 。 「住宅の投機的市場が巨大化することで 、他の投機的市場と同じように 、私たちの生活を根本的に変えてしまう 。かつてはきわめてロ ーカルで 、高速道路 、運河 、鉄道などの建設といった状況に限定されていた価格の変動は 、国家的規模になり 、さらには国際的規模にすらなる 。 … …住宅価格についての反応の変化は 、人々が抱く資産価値のイメ ージを変えてしまい 、投機的な価格変動に注目するよう人々を促すのである ( 1 8 ) 」シラ ーはこの本を刊行した後 、 『週刊ダイヤモンド 』二〇〇六年一〇月一四日号に登場してインタビュ ーに答えている 。 「正直なところ 、非常に心配している 。住宅市場の動向は 、景気サイクルと非常に密接な連動性を示す 。過去の例を見ると 、中古住宅の改装投資を含む住宅投資額は必ずといっていいほど不況の前にピ ークを迎えていた 。ちなみに 、〇五年の民間住宅投資の水準 (対 G D P比 )を凌ぐのは一九五〇年だけだ 。したがって 、すでにピ ークアウトしたと見るのが妥当だろう 。だとすれば 、二年以内に 、米国経済はリセッションに突入する可能性が高い ( 1 9 ) 」この年 、アメリカでは 、新規住宅購入のうち四〇 %が住居以外の目的で 、内訳は二八 %が投資 、一二 %がレジャ ーだった 。翌年夏にはサブプライム問題が顕在化することになる 。 「裁きの日の経済学者 」はシラ ーを称賛する言葉となった 。サブプライム問題を解決する二〇〇七年夏 、アメリカの投資銀行子会社が次々と破綻し 、それはやがて投資銀行や商業銀行に波及し 、翌二〇〇八年九月には投資銀行リ ーマン ・ブラザ ー…
(18)Ibid., p. 27.
(19)「住宅指標と景気は密接に連動 二年以内の後退局面入りが濃厚」『週刊ダイヤモンド』2006年10月14日号 144頁★
(20)Robert J. Shiller, The Subprime Solution: How Today’s Global Financial Crisis Happened, and What to Do About It, Princeton University Press, 2008, p. 29.
シラー教授、アベノミクスを語る
ノーベル経済学賞学者の視点
ITバブルの崩壊やサブプライム危機へ警鐘を鳴らしたことで知られるロバート・シラー教授が、バークレイズと共同開発したCAPE株式指数のセミナーで来日。アベノミクスへの評価などを聞いた。
――アベノミクスへの評価は?
最も劇的だったのは、明確な形で拡張的な財政政策を打ち出し、かつ、増税にも着手すると表明したことだ。
日本政府は対GDP(国内総生産)比で世界最大の債務を負っているので財政支出を批判する人が多いが、ケインズ政策によって最悪の事態が避けられてきた面もあるのではないか。一方で、安倍晋三首相は消費増税も行うと明言しており、財政均衡を目指した刺激策といえる。私は、このような債務に優しい刺激策を欧米も採用すべきだ、と主張している。
現在、米国では拡張的な財政政策を提案しても政治的に阻止され、困難な状況にある。「増税」という言葉は忌み嫌われている。世界中で財政緊縮策が広がる中で、日本の積極策がどういう結果になるか注目している。
期待は実現しないと持続しない
──「大胆な金融政策」についてはどう見ますか。
日本銀行は量的緩和の発明者であり、ゼロからマイナスレンジのインフレ率が続いていることを考えると、政策がさらに一歩進んだことは驚くに当たらない。
ケインズ経済学に立ち返れば、「流動性のわな」(ゼロ金利となり、貨幣の需要が無限大になること)に陥ると、金融政策は刺激的な効果を持ちえなくなる。現在の量的緩和策はこれを超えて、長期金利も下げようとする政策だが、やはり金融政策だけでは効果は出ず、財政政策と併せるべきだということになる。
──日本銀行のインフレ目標2%の達成は難しいとの見方も多い。「期待を変える」ことに成功するでしょうか。
「期待」は、経済のダイナミクスへの影響という点で非常に重要だ。ただ、日本で「期待」を変えるには長い年月が必要だ。期待は「実現」しないとその効果が持続しない。ある程度短期間で期待の一部が現実のものになれば、効果が出てくるのではないか。
かつて1929年の大恐慌時にハーバート・フーヴァー大統領は「景気回復はそこまで来ている」と言い続けたが、彼の任期中には回復せず、後に楽観主義に取りつかれていたという評価になり、さらに失望感が広がった。結局、10年経っても恐慌は続き、残念ながらこれを脱したのは戦争によってだった。
スランプの時間が長く続く可能性はあり、アベノミクスは財政拡張でこれを脱しようとしている。
──「アニマルスピリット」(起業家精神)は日本で復活しますか。
アベノミクスの第3の矢に当たる民間投資の活性化が極めて重要だ。これほど長い期間、日本の株価や地価が下がり続けたことのほうがむしろ驚きだ。何もしなくても、アニマルスピリットが戻ってもいい頃だ。自律的回復の時期に来ているのではないか。
──米国で金融政策が出口に向かい、金利が上昇してくれば、住宅市場にマイナスの影響が出るのではないですか。
住宅ローン金利の水準は量的緩和第3弾(QE3)でかつてない低水準になり、住宅市場の回復に寄与した。ただ、ローン金利と住宅市場の動向は必ずしも密接に関係しているわけではない。住宅価格を予測するのは難しい。投機資金も入っている。一部の都市ではバブル的な投機の兆候が起こりつつあるので、金利が上昇すると、投機熱が冷めて急に落ち込むという可能性はある。
──日本の株価についてどう見ますか。
CAPEレシオ(景気循環調整後の1株当たり株価収益率)で見ると、それほど高くない。低い水準から短期間で大きく回復したのでバブルのように見えるが、歴史的にはまだ低水準だ。
(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2013年7月6日)
2021.1.1
返信削除欲望の資本主義に出演
ケインズの平和の経済的帰結に着目