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金曜日, 4月 12, 2019

今井賢一 【世界はまだ近代を終えていない 「マルチスカラ ー 」分析でやり 直 せ 】



・今井賢一「世界はまだ近代を終えていない。「マルチスカラー」分析でやり直せ

《私淑していた故木村尚三郎先生 (西洋史学 )は 、 『歴史の発見 』という名著の中で 、 「今日まず必要なのは 、異質社会 ・過去社会との対比を通してみずからを発見することだ 」と書かれていたが 、いま日本の経済危機の処方箋を探るには 、この意味での歴史的視野が不可欠である。》

《…文明 (シビライゼ ーション )は普遍性を持つ概念であるが 、前述の攻撃的な性質によってグロ ーバルに横に拡張する性質を持つ 。それに対して 、文化 (カルチャ ー )は 、字義通り 「培養 」することであり 、地域や場所の特色を 「縦に深める 」という理念を持っている 。その組み合わせ方で 、危機の内容も処方箋も異なるのである 。
 あえて単純化して言うと 、現在の経済危機は自然な状態の市場経済の危機ではなく 、文明的な資本主義の危機である 。自然な状態の市場経済とは 、交換という人間の本質的な欲求に基づいて 、 「過去社会 」にも 「異質社会 」にも自然発生的に成立してきた 「交換の場 」のことであり 、交換とか貿易という普遍性 (文明 )と 、交換される財 ・サ ービスの地域による固有性 (文化 )の結合には 、危機の要素は存在しない 。むしろ危機を脱却する 「場 」を提供することも多い 。
 例えば 、産業革命前のイギリスでは …》

《…かつてケインズが述べたような 、 「われわれは経済問題を解決する手段を 、あらゆる衝動と最も根深い本能を働かせながら 、自然に進化してきた 」という根本的な視野が欠けていたからである 。》


《「マルチスカラ ーの世界 」とは 、抽象的に言えば 「個人 、ロ ーカル 、地域 、国家 、国際連合 」などの 「異質な単位 」を 、 「新たなネットワ ーク 」で結びつけるグロ ーバル世界のことである 。ここで 「スカラ ー 」とは 、ベクトルに対比して使われる用語で 、方向性を持たない 「量 」という意味である 。》

この意味でのマルチスカラ ー分析は 、これからのグロ ーバルな世界で最も困難な課題である 「水問題 」や 「食糧問題 」の解決策に 、有効に使われ始めている 。最近の世界におけるエネルギ ー 、水 、食糧問題の混乱と危機をみれば 、われわれはまだ近代を終えていないし 、再び暗黒時代に戻る可能性すらある 。ケインズの言う 「あらゆる衝動と最も根深い本能 」を働かせながら 、それと相性の良いマルチスカラ ー分析を駆使して 、 「近代 」からやり直すという覚悟が必要なのではないだろうか 。》



世界史に学ぶ経済vol.2 (週刊エコノミストebooks) Kindle版 2014

「歴史は繰り返す」と言います。だからこそ、現代の問題を解く鍵を、我々は歴史に求めます。
 喫緊の課題でいえば、ウクライナ問題は国際秩序にどんな影響を及ぼしていくのか、経済格差や急速な高齢化問題を抱える中国で経済発展は続くのか、という疑問があります。こうした問いへのヒントが、古今東西の歴史の中に眠ってます。川北稔・大阪大学名誉教授は週刊エコノミスト編集部のインタビューに答えて、こう述べています。「歴史学とは過去の学問ではなく、本質的には未来学である」と。
 週刊エコノミストebooks「世界史に学ぶ経済vol2」の本書は、2012年6月19日号の特集「世界史で学ぶ経済」を電子版化したものです。国債、恐慌、通貨、金、宗教の現代的課題を歴史に学んでいます。

 本書の主な内容は以下のとおりです。
Part1 歴史に求める危機の処方箋
【国債】国債は民主主義の健全性を映す
【恐慌】恐慌伝播のルートはいつも同じ
【通貨】貿易・金融の中心が基軸通貨に

Part2 宗教、金、移民と経済
【金】経済の価値尺度となった金本位制
【移民】表面化する多文化主義への反動
【宗教】欧州危機で明らかになった倫理観の差

■特別インタビュー 歴史の中のいま
・今井賢一「世界はまだ近代を終えていない。「マルチスカラー」分析でやり直せ
・川北稔「日本は欧米に追いついたのではなく、東アジア世界システムの先頭にいた」
歴史の中のいま ①今井賢一 【世界はまだ近代を終えていない 「マルチスカラ ー 」分析でやり直せ 】

今井 賢一(いまい けんいち、1931年8月7日 - ) は、日本経営学者スタンフォード大学名誉シニアフェロー一橋大学名誉教授一橋大学商学部長等を経て、一橋大学学長選挙で落選し、スタンフォード大学教授に転身。東京大学エッジキャピタルシニアアドバイザー、京都府特別参与等を務めた。紫綬褒章受章。

指導学生に佐久間昭光(一橋大学名誉教授)[1]伊丹敬之(一橋大学名誉教授)[2]岸田民樹(元名古屋大学教授)[3]など。


同シリーズ:

世界史に学ぶ経済 (週刊エコノミストebooks) Kindle版

リーマン・ショック後、日米欧の果敢な金融緩和や財政出動によって、世界経済は壊滅的な状況になるのを回避しました。しかし今後、金融緩和の縮小段階に入っていくなかで、各国の経済や市場に大きな影響を及ぼすことが予想されます。ただし、何が起きるのか、それがどれぐらいのマグニチュードで起きるのかは、誰にも正確な予測はできません。
 同様に、中国の台頭で世界の覇権構造はどう変わるのか、動力革命・インターネット革命に続くイノベーションは何か----といったことは、誰もが最も知りたいところでありますが、予測も困難です。ただし、現在の世界は、過去の歴史の積み重ねでつくられています。世界経済のさまざまな歴史を知ることは、今の時代を読み解くカギになるでしょう。
 本書は、「中国は経済発展を持続できるか」とか「シェール革命で何が変わる」など、現代人がいま気になっていることを、過去の類似の事象などと比較して考えてみました。社会制度や科学技術も異なる時代の事象との安易な比較は慎むべきとしても、思わぬ示唆が得られるはずです。

 本書の主な内容は以下のとおりです。
Part1 歴史で今を読み解く
疑問1 米国の金融政策はなぜ市場を乱す?
疑問2 中国の「影の銀行」は破綻する? 
疑問3 アルゼンチン危機はなぜ頻発? 
…他

Part2 これが世界史を変えた
砂糖と紅茶
気候変動
麻 薬
…他

Part3第一次世界大戦から100年
①「デモクラシー」と「ナショナリズム」
②『八月の砲声』
③孤立したドイツ


世界史に学ぶ経済vol.3 (週刊エコノミストebooks) Kindle版


週刊エコノミストebooks「世界史に学ぶ経済vol.3」の本書は、2014年5月6日/13日号の特集「歴史に学ぶマネーと経済」をまとめた電子書籍です。
「世界は低成長期に入ったのか?」「日本をはじめ先進国は巨額の財政赤字を減らせるのか?」「ビットコインは通貨として認められることになるのか?」「中央銀行は本当に物価を動かすことができるのか?」など、多くの読者が気にしている問題のヒントを歴史に求めています。


主な内容は以下のとおりです。
【ここが気になる】
1.世界は低成長時代に入ったのか?
2.日本は巨額債務を減らせる?
3.株式の高速取引は悪者か?
4.中国金融危機は過去にもある?
5.デフレの原因は分かったか?
6.プロなら株式運用がうまい?
7.ビットコインは通貨になる?
8.中央銀行は物価を動かせる?
9.為政者はなぜ紙幣を刷りすぎる?

【知っているつもり?!】
1.相場格言「セル・イン・メイ」は150年前から
2.シカゴマーカンタイル取引所は半世紀前は閉鎖寸前だった
3.超インフレのジンバブエのその後

【江戸・幕末維新の通貨史】
1.見直される荻原重秀の元禄貨幣改鋳
2.昔は「悪札」とされた藩札の再評価
3.明治日本の統一通貨「円」誕生の紆余曲折



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