「追われる国 」の経済学 ─ ─目次
まえがき
第 1章マクロ経済学の 〝残り半分 〟へようこそマクロ経済学の基礎 ─ ─ある人の支出は別の人の収入借り手が消える二つの理由貯蓄のパラドックスと合成の誤謬問題借り手不在にはじめて気づいたのは 2 0 0 8年以降債務の最小化が引き起こす不況には名前がなかった産業革命前は貯蓄のパラドックスこそ経済の常態だった貸し手 、借り手の四つの状態
第 2章バランスシ ート問題が引き起こした借り手不足バランスシ ート不況下の日本欧米のバランスシ ート不況借り手消滅の最初の犠牲者 ─ ─金融政策大不況はバランスシ ート不況だった !ケ ース 4 =必要なのは最後の貸し手ケ ース 3 、 4 =政府は最後の借り手になれバランスシ ート不況における経済の自己復元メカニズム四つの中央銀行による金融政策の実績日本 、英国 、欧州では Q Eでもマネ ーサプライは伸びなかった F R B幹部はマネ ーサプライの拡大でインフレ率を高めるとは語っていない恩師の見解と反する政策で米国を救ったバ ーナンキ元 F R B議長財政緊縮を支持した他の中央銀行実体経済の人々は Q Eが無意味なことを完全に理解している市場参加者はインフレが貨幣的現象であるという幻想に基づいて行動している財政政策の実績バランスシ ート不況下の財政乗数の計測は難しい減税か 、歳出拡大かバランスシ ート不況下の原油価格の下落
バランスシ ート修復後も残るトラウマ公的債務が拡大しても財政刺激策は維持すべし
第 3章借り手を萎縮させる投資機会不足借り手の利用可能性と経済発展の 3段階ルイスの転換点より前の段階では経済成長が所得格差を拡大させる工業化の第 2段階 ─ ─ルイスの転換点後の成熟経済工業化の第 3段階 ─ ─追われる経済欧米に変化を迫った日本の台頭 L T P以降の追われる段階では不平等は拡大する日本の工業化の 3段階戦争を 「時代遅れ 」にした自由貿易体制現在の中国はルイスの転換点後の成熟段階にあるルイスの転換点後の中国は 〝中所得国の罠 〟に直面する国の経済成長 、幸福 、そして成熟脱工業化社会の夢と被追国の現状共産主義の興亡トマ ・ピケティの不平等 ─ ─その本当の原因
第 4章被追国のマクロ経済政策被追国の労働者は自力で頑張るしかない経済発展の 3段階における消費者の進化経済発展の 3段階におけるインフレの違い被追国と過剰貯蓄 ( S a v i n g s G l u t )発展段階によって異なる金融政策の効力発展段階によって変化する 「中立金利 」発展段階によって異なる財政政策の効力黄金期の記憶から抜け出せない政策論争追われる国々の基本的なマクロ政策債務限界説は 、債務は貯蓄の裏側であることを見落としている共産主義者の過ちを繰り返す基本的問題への基本的な解決策プロジェクトの選別と監視には独立した委員会が必要被追国政府の不作為で発生しやすくなるバブル被追国が金融政策に頼るとバブルとバランスシ ート不況の往復に
被追国では金融政策を主軸にすること自体に無理がある優れたプロジェクトを待つべきでない場合伝統的な信念ほど往生際が悪く犠牲も大きい追われる立場の経済では 2 %インフレ目標は百害あって一利なしフィリップス曲線は黄金期の産物国内インフレが増やす海外生産民間投資が回復しても黄金期は戻らない
第 5章先進国から落ちこぼれないために米国は日本の追い上げをいかにかわしたか構造改革は結果が出るのに時間がかかる課題はイノベ ータ ーの発掘と奨励正しい教育の必要性学生のドロップ ・アウトを減らす努力をせよ適正な税制と規制は不可欠だ国民の合意形成は難しい悪い課税のケ ース ・スタディ ー ─ ─日本の相続税相続税や贈与税を 1 0 %まで引き下げた台湾被追国の社会をどう改革するかに定説は存在しない新興国が将来に備えるために人類発展の経済的な帰結
第 6章ヘリコプタ ー ・マネ ーと量的緩和の罠ヘリコプタ ー ・マネ ーの四類型 ─ ─ ( 1 )空中からおカネをばらまくヘリコプタ ー ・マネ ーの四類型 ─ ─ ( 2 )中央銀行による財政赤字の直接ファイナンスヘリコプタ ー ・マネ ーの四類型 ─ ─ ( 3 )現金を消費者に直接渡すヘリコプタ ー ・マネ ーの四類型 ─ ─ ( 4 )政府紙幣とゼロ ・ク ーポン永久債過剰流動性をどう回収するか ?まだ正攻法はない緩衝器が必要だ F R Bの心配は株式より不動産金融正常化が始まる当局と市場との闘いは続く 〝量的緩和の罠 〟の復習 ─ ─その 1世界的な量的緩和の罠新興国を直撃した逆ポ ートフォリオ ・リバランシング効果 ─ ─中国を減速させた人民元高
高くついた人民元の米ドルとの決別中央銀行のバランスシ ートを正常化する困難 Q Eの出口問題に真正面から取り組む F R B F R Bの希望通り出口戦略は順調に進むのか Q E巻き戻しについて理論的なコンセンサスはないゼロ ・ク ーポン永久債や政府紙幣からの正常化は問題だらけ F R Bが期待するのは 〝知らぬが仏 〟シナリオ対 F R B比で見た日英欧の Q E解除 Q Eの出口戦略で日本は深刻な問題に日銀が逡巡するほど日本国債の魅力は下がる Q Eの総費用はその便益を上回っているか ?ヘリコプタ ー ・マネ ーはどうして人気があるのか財政の限界に凝り固まることはきわめて危険民間の貯蓄余剰を無視した経済政策は成功しない金融緩和も財政刺激も安上がりのものはない
第 7章 1 9 3 0年代の過ちを繰り返す欧州 1 9 3 0年代の経済学の失敗と国家社会主義の台頭 2 0 0 8年世界金融危機以降 、歴史は繰り返すドイツは他国より 8年先にバランスシ ート不況に突入していたユ ーロ圏の構造的欠陥予見できたユ ーロ圏の悲劇反 E U躍進の理由を政策立案者は自問せよユ ーロ圏各国の国債は 、実際は地方債の位置づけでしかないユ ーロ圏の各国政府は金融政策だけでなく財政政策も失ったユ ーロ圏では国債を自国民しか買えないようにするべき財政赤字の自国消化で財政問題を各国の内政問題へ財政赤字の自国消化は資本効率の上昇と矛盾しない財政政策の有効化が同圏の政治経済情勢を安定化させる国内のデフレが欧州の回復を主導している負のフィ ードバック ・ル ープを恐れる必要はない一度流出した資金を元に戻す ?ギリシャ問題は喧嘩両成敗でユ ーロ圏経済の再建へミルトン ・フリ ードマンが提唱する自由市場経済には三つの問題がある
第 8章銀行問題とマクロ経済の残り半分銀行制度の二つの外部性ユ ーロ圏の銀行問題は未解決銀行問題に関する二つの誤解日本の銀行は早い段階から不良債権の償却を始めた貸倒引当金が増えたのになぜ不良債権は減らなかったのか日本経済が停滞した原因は貸し手ではなく借り手不足にある米国政府の市場原理に反する商業用不動産市場の救済は景気回復には役立ったボルカ ー議長の 〝先送り 〟政策は 、中南米の債務危機で世界経済を救った銀行のシステミック危機に苦しむユ ーロ圏資本注入の正しい方法米国アセット ・ストリッパ ーの亡霊が欧州の銀行を殺す 〝大き過ぎて潰せない 〟は世界的金融危機とは無関係準備預金制度や貨幣乗数は時代遅れ ?個々の銀行は金融仲介者に過ぎないが 、銀行システム全体で見ると貨幣の創造主となる第 9章トランプ現象 、そして自由な資本移動と自由な貿易の衝突被追国に見られるグロ ーバリズムへの反動不均衡を放置した自由貿易体制の終焉なぜ貿易と経常収支は重要か失われた貿易不均衡是正のメカニズムグロ ーバル化の中にある二つの自由化貿易と資本移動が為替市場に及ぼす影響 I Sバランスだけで貿易収支は決まらない供給力があっても輸入品の方が安ければ輸入は増える貿易収支を考える上で為替レ ートほど重要な要因はない実際の貿易の現場では売り込みの方が大きな原動力に資本移動の自由化といってもたかが 4 0年間の歴史貿易を歪める資本移動資本移動で効率性が高まるか ?金融政策の有効性を殺ぐ資本移動独立した国家と統合された金融市場間の矛盾金融関係者にも選択肢はない最適通貨圏理論と正反対の理論が必要外国為替市場への政府介入
貿易不均衡是正の側に立てば中央銀行の介入は必ず効く為替レ ート調整における資本逃避のリスク 〝父親世代の恩を返す 〟完全ではないが現状よりはまし資本移動の内容と投資家の質も重要新興国も困る勉強不足の資本流入不勉強な投資家を撃退するチリの解決法資本市場の自由化を見直そう G A T Tと W T Oのル ールは新参者に有利に働く自由貿易は帝国主義に止めを刺したが … …米国労働者には所得停滞の始まりとなったトランプ政権は W T Oの二つの原則を現状にそぐわないと見なしている米国は貿易黒字国に対して関税の平等化を求めている第 1 0章経済学の再考構造問題か 、バランスシ ート問題か構造改革は新たな説得力が必要だサマ ーズの長期停滞論偽の 〝外的ショック 〟に注意せよ ! 〝期待 〟への偽の言及には気をつけようマクロ経済学の再考伝統的なモデルでは突然の反転行動も取り扱えない数式にとらわれ過ぎると信頼が失われる分かりやすい言葉には威力がある一時的な流行の繰り返し発展段階が変われば政策の内容も変わる平和時に財政刺激を継続するのは難しい中途半端な知識こそ危険借り手に関する優れた調査や資金循環統計の精度向上が必要だ要約と結論あとがき用語一覧
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