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水曜日, 5月 08, 2019

信用創造




キーン邦訳では12頁


That question was first posed decades earlier by the then unknown but now famous maverick American economist Hyman Minsky. Writing two decades before Lucas, Minsky remarked that ‘The most significant economic event of the era since World War II is something that has not happened: there has not been a deep and long-lasting depression’ (1982, p. ix). 1 In contrast, before the Second World War, ‘serious recessions happened regularly . . . to go more than thirty-five years without a severe and protracted depression is a striking success’. To Minsky, this meant that the most important questions in economics were: 


Can ‘It’ –a Great Depression –happen again? And if ‘It’ can happen, why didn’t ‘It’ occur in the years since World War II? These are questions that naturally follow from both the historical record and the comparative success of the past thirty-five years. (1982, p. xii)

ミンスキー邦訳『投資と…』1頁

「それ」―一大恐慌の悪夢――は再び訪れるであろうか。 もしそうだとすれば,大戦以降これまで「それ」が訪れなかったのはなぜであろうか。歴史に残る記録と過去35年間の相対的成功を見比べれば, こうした疑間がわくのはごく自然であろう。このような疑間に答えるためには,大恐慌といえども,それはわれわれの資本主義経済がとりうる状態のうちのごく当り前の一つにすぎないととらえるような経済理論が必要である。1980年の経済と1930年の経済との間に存在する多くの相違のなかで,何が戦後の成功を最も良く説明するかを認識できる経済理論が必要なのである。

(2)最大総供給量(‐生産能力ないしシーリング所得)を決定する関係――これはハロッド=ドーマーの成長モデルのから導出される。(3)最小総供給量(=フロアー所得)を決定する関係――



キーン77~9頁


 銀行は貯蓄者と借り手の間の「単なる仲介者」で、銀行貸付とマネー供給の間につながりはなく、
単に銀行は中央銀行のマネーに「乗数をかけて」新しい貸付と預金を生むだけ、といった主張は、
イングランド銀行(イギリスの中央銀行)によって、「現代経済におけるマネー創出」という論文の
なかで、つぎのようにすべて誤りだと指摘された。

「現代経済では、ほとんどのマネーは、銀行預金の形をとる。だが、どのようにして銀行預金
がつくられるかについて、誤解が多い。主な方法は、商業銀行経由で融資される。銀行が融資す
るとき、必ず同時にそれに対応する預金が借り手の口座に創出される。このようにして新しいマ
ネーがつくられる。
 現在のマネー創出の実態は、いくつかの経済学教科書に見られる記述と異なる(つぎが正しい)。


・家計が貯蓄すると、銀行がそれを預金として受け取り、ついでそれを貸し出すのではなく、銀
行の貸付が預金をつくる。
・通常、中央銀行は、流通するマネーの量を定めない。中央銀行のマネーに「乗数がかけられ、
より多くの貸付と預金がつくられることはない」(McLeay et al., 2014, p. 1,強調は原典)

イングランド銀行の事実に基づく記述~~銀行が貸し付けるとき、同時に借り手の口座に対応す
る預金が創出され、新しいマネーがつくられる~~は、重要な推論を導く。つまり、マネーは借り
られて存在するようになり~~商品なり、サービスなり、資産なりに~~支出され、既存のマネー
の総額によって融資された額の上に加えられ、総需要を構成する。このように経済の総需要は、既
存のマネーの合計と貸付の総和なのだ。
 これが図14の背後にある論理に他ならない。総支出を正確に計測するには、既存のマネーの合計
を貸付に加えねばならない。貸付に関するデータは存在するが、既存のマネーの合計に関するデー
タは存在しない。記録されているのはGDP~~商品とサービスを売って得た所得と総支出~~で
あって、一部は既存のマネーによって、また一部は貸付によって融資されたものだ。だが、現在で
は貸付のほとんどは資産購入のための(GDPのなかに記録されない)融資だから、GDPと貸付の
合計が、経済における総支出をほぼ示す。

 このことが、民間負債のレベルとその変化率が問題になるのを説明してくれる。アメリカの慈善
家リチャード・ヴェイグが、重要な経験的規則性を発見した。それによると、過去一五〇年間のい
ずれの経済危機でも、つぎのようなことを示していた。GDPに占める民間負債の率が150%以上、
そしてその五年間の伸び率が17%という組み合わせだ(Vague, 2014)。この経験的規則性は、
負債の伸び率の低下の影響が、そのレベルと変化率に依存するためだ。


McLeay, M., Radia, A. & Thomas, R. (2014) Money Creation in the Modern Economy. Bank of England Quarterly Bulletin, Q1, 14–27.
Vague, R. (2014) The Next Economic Disaster: Why It’s Coming and How to Avoid It, Philadelphia: University of Pennsylvania Press.

McLeay, M., Radia, A. & Thomas, R. (2014) Money Creation in the Modern Economy. Bank of England Quarterly Bulletin, Q1, 14–27.
(a) Balance sheets are highly stylised for ease of exposition:  the quantities of each type of money shown do not correspond to the quantities actually held on each sector’s balance sheet. 
(b) Central bank balance sheet only shows base money liabilities and the corresponding assets. In practice the central bank holds other non-money liabilities.  Its non-monetary assets are mostly made up of government debt.  Although that government debt is actually held by the Bank of England Asset Purchase Facility, so does not appear directly on the balance sheet. 
(c) Commercial banks’ balance sheets only show money assets and liabilities before any loans are made.
 (d) Consumers represent the private sector of households and companies.  Balance sheet only shows broad money assets and corresponding liabilities — real assets such as the house being transacted are not shown.  Consumers’ non-money liabilities include existing secured and unsecured loans.



Vague, R. (2014) The Next Economic Disaster: Why It’s Coming and How to Avoid It, Philadelphia: University of Pennsylvania Press.


McLeay, M., Radia, A. & Thomas, R. (2014) Money Creation in the Modern Economy. Bank of England Quarterly Bulletin, Q1, 14–27.
(a) Balance sheets are highly stylised for ease of exposition:  the quantities of each type of money shown do not correspond to the quantities actually held on each sector’s balance sheet. 
(b) Central bank balance sheet only shows base money liabilities and the corresponding assets. In practice the central bank holds other non-money liabilities.  Its non-monetary assets are mostly made up of government debt.  Although that government debt is actually held by the Bank of England Asset Purchase Facility, so does not appear directly on the balance sheet. 
(c) Commercial banks’ balance sheets only show money assets and liabilities before any loans are made.
 (d) Consumers represent the private sector of households and companies.  Balance sheet only shows broad money assets and corresponding liabilities — real assets such as the house being transacted are not shown.  Consumers’ non-money liabilities include existing secured and unsecured loans.


貨幣に循環というイメージがなくなるのは危険だ
それは複数通貨の認識より重要だ


(a)貸借対照表は、説明を容易にするために高度に様式化されています。表示される各種類の金額は、各部門の貸借対照表に実際に保持されている数量と一致しません。
(b)中央銀行の貸借対照表は、ベースマネー負債および対応する資産のみを表示しています。 実際には、中央銀行は他の金銭以外の負債を抱えています。 その非貨幣性資産は大部分が政府債務で構成されています。 その政府債務は、実際にはイングランド銀行資産購入ファシリティによって保有されていますが、貸借対照表には直接表示されません。
(c)商業銀行の貸借対照表には、貸付が行われる前の貨幣資産および負債のみが表示されます。
  (d)消費者は、家庭および企業の民間部門を表します。 貸借対照表には、広義のマネー資産とそれに対応する負債のみが表示されます。取引されている家などの実物資産は表示されていません。 消費者の金銭以外の負債には、既存の担保付および無担保ローンが含まれます。


済を救う最善の方法は、
(Obama, 2009)。
国民にマネーを直接与えるのではなく、
銀行に与えるというものだった
主流派の経済学者がこれらの命題を妥当視すればするほど、
どちらもますます間違っているのだ。
最初の命題、すなわちすべての価格と所得を二倍にしても、「実」規模--経済学者には経済で
生産され消費される商品とサービスを意味する が変わらないという命題は、負債の存在という
否定できない事実を受け容れるならば、ありきたりの吟味にさえも耐えられない。
負債が存在すれば、ある「行為者」は借り手で、他は貸し手だろう(それに銀行の負債なり非銀
行の行為者の間の負債が含まれようが、問題ではない)。「すべての所得とすべての価格を二倍にす
る」とき、マネーの価格1111金利にたいする影響は何か。借り手にはそれはマネーのコストだが
貸し手には所得源だ。もしあなたがそれを二倍にすれば、借り手を貧しく、貸し手を豊 。
それにともなって所得の配分が変わり、需要に変化が生じ、産出にも変化が起こる。つまり、経済
の実規模が変わる。だから、マネーの価格とマネーの所得の変化は、「実効果」を持つことが可能
で、事実持っているのだ。したがって、マネーの変化が実効果を持つと主張する者は、「金銭幻想」
に患わされているわけではないのだ。逆に、主流派経済学者が「バーター幻想」--マネーを考慮
しなくても資本主義は分析できるとする誤った信念 にとりつかれているのだ。
カにする
 銀行は貯蓄者と借り手の間の「単なる仲介者」で、銀行貸付とマネー供給の間につながりはなく、
単に銀行は中央銀行のマネーに「乗数をかけて」新しい貸付と預金を生むだけ、といった主張は、
7


キーン78頁より

イングランド銀行(イギリスの中央銀行)によって、「現代経済におけるマネー創出」という論文の
なかで、つぎのようにすべて誤りだと指摘された。

「現代経済では、ほとんどのマネーは、銀行預金の形をとる。だが、どのようにして銀行預金
がつくられるかについて、誤解が多い。主な方法は、商業銀行経由で融資される。銀行が融資す
るとき、必ず同時にそれに対応する預金が借り手の口座に創出される。このようにして新しいマ
ネーがつくられる。
 現在のマネー創出の実態は、いくつかの経済学教科書に見られる記述と異なる(つぎが正しい)。

・家計が貯蓄すると、銀行がそれを預金として受け取り、ついでそれを貸し出すのではなく、銀
行の貸付が預金をつくる。
・通常、中央銀行は、流通するマネーの量を定めない。中央銀行のマネーに「乗数がかけられ、
より多くの貸付と預金がつくられることはない」(McLeay et al., 2014, p. 1,強調は原典)

イングランド銀行の事実に基づく記述~~銀行が貸し付けるとき、同時に借り手の口座に対応す
る預金が創出され、新しいマネーがつくられる~~は、重要な推論を導く。つまり、マネーは借り
られて存在するようになり~~商品なり、サービスなり、資産なりに~~支出され、既存のマネー
79
の総額によって融資された額の上に加えられ、総需要を構成する。このように経済の総需要は、既
存のマネーの合計と貸付の総和なのだ。

これが図14の背後にある論理に他ならない。総支出を正確に計測するには、既存のマネーの合計
を貸付に加えねばならない。貸付に関するデータは存在するが、既存のマネーの合計に関するデー
タは存在しない。記録されているのはGDP1111商品とサービスを売って得た所得と総支出11で
あって、一部は既存のマネーによって、また一部は貸付によって融資されたものだ。だが、現在で
は貸付のほとんどは資産購入のための(GDPのなかに記録されない)融資だから、GDPと貸付の
合計が、
経済における総支出をほぼ示す。
このことが、民間負債のレベルとその変化率が問題になるのを説明してくれる。アメリカの慈善
家リチャード·ヴェイグが、重要な経験的規則性を発見した。それによると、過去一五○年間のい
ずれの経済危機でも、つぎのようなことを示していたo GDPに占める民間負債の率が一五○%以
炫上、
そしてその五年間の伸び率が一七%という組み合わせだ(Vague, 2014)。
負債の伸び率の低下の影響が、
この経験的規則性は、
そのレベルと変化率に依存するためだ。
は その意義を理解するために、つぎのような経済を想像しよう。民間負債がGDPの11倍の速度で
勩伸びー111負債が名目年二〇%で伸び、GDPが年一0%で伸び-そして貸付が、商品やサービス
ではなく、資産購入のために用いられるとしよう。またとりあえず貸付とGDPの伸びとの間のフ
ードバックも無視する。もし負債の伸び率が遅くなり、GDPの伸び率と同じになれば、商品と







4 件のコメント:


  1. https://4.bp.blogspot.com/-eYFtOCTp68M/XNNhLSwPsVI/AAAAAAABitM/RIuolJmyyHsgGmyifqNsedF39KWiLWDgACLcBGAs/s1600/IMG_5538.PNG
    図14 危機の引き金としての日本の貸付

    キーン『次なる金融危機』77~9頁より

     銀行は貯蓄者と借り手の間の「単なる仲介者」で、銀行貸付とマネー供給の間につながりはなく、
    単に銀行は中央銀行のマネーに「乗数をかけて」新しい貸付と預金を生むだけ、といった主張は、
    イングランド銀行(イギリスの中央銀行)によって、「現代経済におけるマネー創出」という論文の
    なかで、つぎのようにすべて誤りだと指摘された。

    「現代経済では、ほとんどのマネーは、銀行預金の形をとる。だが、どのようにして銀行預金
    がつくられるかについて、誤解が多い。主な方法は、商業銀行経由で融資される。銀行が融資す
    るとき、必ず同時にそれに対応する預金が借り手の口座に創出される。このようにして新しいマ
    ネーがつくられる。
     現在のマネー創出の実態は、いくつかの経済学教科書に見られる記述と異なる(つぎが正しい)。

    ・家計が貯蓄すると、銀行がそれを預金として受け取り、ついでそれを貸し出すのではなく、銀
    行の貸付が預金をつくる。
    ・通常、中央銀行は、流通するマネーの量を定めない。中央銀行のマネーに「乗数がかけられ、
    より多くの貸付と預金がつくられることはない」(McLeay et al., 2014, p. 1,強調は原典)

     イングランド銀行の事実に基づく記述~~銀行が貸し付けるとき、同時に借り手の口座に対応す
    る預金が創出され、新しいマネーがつくられる~~は、重要な推論を導く。つまり、マネーは借り
    られて存在するようになり~~商品なり、サービスなり、資産なりに~~支出され、既存のマネー
    の総額によって融資された額の上に加えられ、総需要を構成する。このように経済の総需要は、既
    存のマネーの合計と貸付の総和なのだ。
     これが図14の背後にある論理に他ならない。総支出を正確に計測するには、既存のマネーの合計
    を貸付に加えねばならない。貸付に関するデータは存在するが、既存のマネーの合計に関するデー
    タは存在しない。記録されているのはGDP~~商品とサービスを売って得た所得と総支出~~で
    あって、一部は既存のマネーによって、また一部は貸付によって融資されたものだ。だが、現在で
    は貸付のほとんどは資産購入のための(GDPのなかに記録されない)融資だから、GDPと貸付の
    合計が、経済における総支出をほぼ示す。
     このことが、民間負債のレベルとその変化率が問題になるのを説明してくれる。アメリカの慈善
    家リチャード・ヴェイグが、重要な経験的規則性を発見した。それによると、過去一五〇年間のい
    ずれの経済危機でも、つぎのようなことを示していた。GDPに占める民間負債の率が150%以上、
    そしてその五年間の伸び率が17%という組み合わせだ(Vague, 2014)。この経験的規則性は、
    負債の伸び率の低下の影響が、そのレベルと変化率に依存するためだ。


    McLeay, M., Radia, A. & Thomas, R. (2014) Money Creation in the Modern Economy. Bank of England Quarterly Bulletin, Q1, 14–27.
    https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/quarterly-bulletin/2014/money-creation-in-the-modern-economy

    Vague, R. (2014) The Next Economic Disaster: Why It’s Coming and How to Avoid It, Philadelphia: University of Pennsylvania Press.
    https://www.amazon.co.jp/Next-Economic-Disaster-Coming-Avoid-ebook/dp/B00LA94AT2/


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  2. 110
    いとする。それによって、ミアンとスフィの提案のように、負債が直接低減されるが、借金する者
    が貯金する者よりも得することはないだろう。
     この提案は、言うはやすしだが、行うはかたしなのだ。家計の負債は、企業の負債よりも捕捉し
    やすい。だが、負債契約の多くは、早期の返済を、不可能ではないにしても、困難にするような契
    約になっている。そして負債の証券化(金融商品化)が法的な地雷原をつくる。だが、ミアンとスフ
    ィの法的な救済方法よりも、こちらのほうが柔軟な方法だ。純粋のヘリコプター·マネー方式にっ
    いてまわる規模よりも、小さな規模で試みることができるだろう。
     だが,「現代の負債特赦」だけでは充分ではない。それで可能なのは、時計をリセットして、つ
    ぎの投機的な負債バブルを始めることでしかない。現在では、民間のマネー創出は、「カジノのよ
    うな営みの副産物」だ(Keynes, 1936, p. 159)。本来あるべき形~~企業の投資や事業活動のための金
    融の結果(Schumpeter. 1931, p. 74) ~~ではない。我々はバブルを起こす銀行貸出しを止めねばならな
    い。そして銀行が、会社や事業家に貸すことで利益があがるようにしなければならない。
     現行のシステムの最大の弱点は、実際に人々により高いレバレッジを求めさせてしまうことだ。
    同等の所得がある二人が、もし一軒の家を競って買おうとすれば、勝者はより多額の銀行ローンを
    得たほうだろう。これを防ぐには、買う資産にたいする銀行の融資額を、所得を稼ぐ能力の何倍か
    に限定すればよい。例えば賃貸による年収の一〇倍(実所得あるいは帰属所得)という具合だ。この
    規則を実施すれば私はPILL Property Income-Limited Leverage,資産 所得制限倍率と呼ぶ)、

    ある資産を買うためのローンの最高額はどの購入者にとってる

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  3. ある資産を買うためのローンの最高額はどの購入者にとっても同じになり、所得が同じ購入者にた
    いして、より多額のローンを得るよりも、より多額の貯蓄をするようなインセンティブ(動機づけ)
    になるだろう。
     だが、このような改革だけでは、銀行にとって利益が出るビジネス·モデルとはならない。そし
    てマネー供給の伸び率も低下するだろう。というのは、政治家も市民も「健全財政」の神話にとり
    つかれているからだ。それは政府が「収入の範囲で生活し」、つまり、税収以上に支出しないこと
    を主張する。確かに、「モダン·マネタリー·セオリー(MMT、現代金融論)」この提唱者たちが正
    しく指摘するように(Wray, 2003)、社会で収入に制約されない唯一の機関は政府だ。というのは、
    社会で「自分自身の銀行~中央銀行~~を所有する」唯一の機関だからだ。中央銀行が財務省債
    券(国債)を買うことによって、政府支出は融通される。その程度に応じて、マネーが創出され、そ
    れによって政府支出は税収を超えることが制度的に可能となり、それでいて現世代にも将来世代に
    も負担をかけないでも済むのだ。
     政府がマネーをうまく使うかについて、あなたがどう思おうが、政府が税収以上を支出するとき
    には、流通するマネーの量が増えて、それが民間部門の活動へ融資される。長期的に政府の収支が
    均衡しなければならないという信じ込みは、実は、中央銀行がマネー創出の役割を放棄し、もっぱ
    ら民間銀行にそれをゆだねるべきだという信じ込みに他ならない。ところが、この一〇年ないし二
    〇年我々が見てきたのは、中央銀行がその責任をみごとに果たした結果だった。

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  4. つことができる。つまり、「EEL」の発行によって、起業家のためマネーを創出し、銀行にとっ
    ては、融資先のヴェンチャーの株を持つことになる。それでも五つのうち四つの起業家が失敗する
    しかし、銀行は、銀行は、成功した1社から配当とキャピタル·ゲインを得るだろう。
     ところで、仮にすべての貸付が信頼できるとしても、資本主義が金融危機を起こすことを、我々
    は受け容れねばならない。ミンスキーが主張したように(そして私の簡単なマクロ経済モデルが証
    明したように)、仮にすべての投資の目的が生産のためであったにしても、危機は起こり得る。と
    いうのは、金融システムは、「投資意欲を加速させる信号を発生し、加速する投資にたいし金融を
    つけることが可能だ」(Minsky, 1969, p.224)からだ。ブームと破綻は資本主義の特性に他ならない。だ
    から、民間負債の対GDP比の上昇傾向が予想できるのだ。一九四五年からアメリカの民間負債が、
    金融システムを改善したにも拘わらず、伸び続けてきたのがその例になる。これに対処する唯一の
    方法は、現在インフレや失業率がそうであるように、民間負債の対GDP比を経済運営における重
    要事項に指定し、そしてマクロ経済の統𨨶の道具として、国家がマネーを創出する権能を行使する
    ことだ。とりわけ、民間負債が危険なレベルへと近づき始めたとき、つまり、まだ対GDP比が一
    00%よりもかなり低く、つまり、手綱が効かなくなった金融によってもたらされた現在のレベル
    国家のマネー創出権を行使することだ。
    よりもまだはるかに低い時点で、
     そうした銀行業務とマク다経済運営にたいする改革が、よりよい銀行システム、そしてより安定
    した、だが活力のある資本主義経済をもたらすと、私は信ずる。だが、そうした改革が実行される

    :113

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