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月曜日, 5月 20, 2019

景気が悪化する中、朝日新聞がMMTを「曲論」と断定しました | BEST T!MESコ ラ ム 中野剛志氏による反論 2019年5月20日



景気が悪化する中、朝日新聞がMMTを「曲論」と断定しました | BEST T!MESコラム 中野剛志氏による反論

2019年5月20日



景気が悪化する中、朝日新聞がMMTを「曲論」と断定しました

アベノミクスでMMTを実践しているのに、どうして超インフレになっていないのでしょうか?

政府はいくら借金をしても財政破綻は起きない――米国で話題沸騰し、日本に上陸した「MMT」(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)。日本で最初にMMTを紹介したのが評論家の中野剛志氏。米国では主流派経済学者から異端視され、すでに論争の的だ。当然、日本でもMMTの破壊力は凄まじく、否定論者がわんさかと出始めた。そのうちのひとりが朝日新聞編集委員の原真人氏だ。まるで納得できない、と。お金とは? 税金とは? さらに、MMTとは何か? をこれ以上なく分かりやすく解説した新刊『目からウロコが落ちる  奇跡の経済教室【基礎知識編】』が売れまくっている著者の中野剛志氏に再度緊急寄稿をお願いした。

■ 財政赤字の問題は「大きさ」ではない!?

中野剛志氏。 

 よっぽど気にくわないのでしょうね。
 朝日新聞の原真人・編集委員が、またMMT(現代貨幣理論)をメッタ斬りにしています。

日本は「放漫財政」の実践国か アベノミクス化する世界

 原氏は、MMTについて、「さぞ理路整然とした経済論文があるのだろうと思われがちだが、体系だった理論はない。いわば「放漫財政のススメ」とでもいうべき曲論である」と言いたい放題。

 いくら嫌いだからって、これは、ちょっと、ひどいなあ。

 少し調べれば、MMTの「理路整然とした経済論文」がけっこう出てきますよ。例えば、ステファニー・ケルトン(旧姓ベル)教授の論文とか。

(Stephanie Bell, ' Do Taxes and Bonds Finance Government Spending?', Journal of Economic Issues, Vol. 34, No. 3 (Sep., 2000), pp. 603-620.)

論文も一切読まずに「曲論」と決めつけるというのは、ケルトン教授らMMT論者に失礼です。

 それはともかく、原氏は、MMTは「自国通貨を発行できる政府は、通貨を際限なく発行できるから財政赤字の大きさは問題ないという主張」だと言っています。

 これは、まあ、間違いではありませんね。

 確かにMMTによれば、自国通貨を発行できる政府にとって、財政赤字の問題は「大きさ」ではありません。

 財政赤字の問題は、「インフレ率」です。

 つまり、「高インフレ」になってしまったら財政赤字は過剰、逆に「デフレ」になってしまったら財政赤字は過少ということになります。

 日本はデフレなので、日本の財政赤字は過少ということになります! 政府債務が1000兆円になろうが、GDP比政府債務残高が240%になろうが、デフレであるうちは、財政赤字は過少なのです!

「じゃあ、政府債務が5000兆円になったら?」

 そう聞かれたら、MMTは、こう答えるでしょう。

「まったく問題ないですよ。高インフレでない限りはね」

 ところが、そう答えると、「へぇ~、5000兆円でも問題ないんだって~。い~いこと聞いちゃった♪」とか言いふらす生意気な小学生みたいなのが大人でもいるので、困ったものです。

 繰り返しますが、円を発行できる日本政府の円建て国債はデフォルトしないので、財政赤字の「大きさ」を問題にしても意味がない。「大きい」か「小さい」かは、インフレ率で判断するしかないのです。

 ちなみに、日本の国債がデフォルトしないというのは、財務省も認める事実です。その証拠に、2002年に、財務省が格付け会社宛に出した質問状に、こう書かれています。

「(1) 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」

 しかし、原氏は全然納得せず、こう主張します。

「こんな政策をやって通貨価値が急落して超インフレになったらどうするのか、という批判に、MMT論者たちは「簡単には起きない。兆しがあれば、すぐに正常な財政に戻せばいい」とおおまじめに答える。放漫財政に陥った政府が一瞬にして堅実財政に立ち戻るなど、ありえそうもない。」

続けて原氏は、「どこからどう見ても、<アベノミクス=異次元緩和>はMMTの実践だ」と断定します。

 実際には、MMT論者は「量的緩和ではデフレ脱却はできない」と分かっているので、これは正確ではありません。MMT論者を、リフレ派と一緒にしないでください。

 もっとも、原氏は、日銀が国債を購入して財政赤字をファイナンスすること(財政ファイナンス)を指して「アベノミクスはMMTの実践」とも言っているので、その意味では、まあ確かに、アベノミクスはMMTの実践と言えなくもない。

というわけで、原氏の主張をまとめると、こうです。
MMTを実践すると超インフレになる。
しかも、超インフレは簡単には防げない。
アベノミクスは、MMTの実践である。

■そこで、原氏にお聞きします。

 日本はアベノミクスでMMTを実践しているのに、どうして超インフレになっていないのでしょうか? 2%という控えめのインフレ目標ですら、6年たっても、まったく達成できていないのですよ。

 要するに、日本は、超インフレを起こさずにMMTを実践できることを証明してしまっているのです。

 超インフレどころか、日本は、二十年もデフレのまま経済は停滞。普通に考えて、インフレを心配しているような場合ではないでしょう。そんなに超インフレが怖いなら、せめてデフレを脱却するまででいいから、財政支出をもっと拡大して、貧困対策でも防災対策でも教育政策でも、やればいいではないですか。

それとも、何かずっとデフレのままでいたい理由でもあるのでしょうか。

「財政支出を拡大すると超インフレになるから、国民はデフレを我慢しろ」というのは、それこそ「曲論」でしょう。

「武力をもつと戦争になるから、自衛隊はなくせ」という往年の左翼の「曲論」を思い出しますね。

「曲論」と言えば、原氏は、こんなたとえ話を持ち出します。

「想像してほしい。あなたのマンションの管理組合の理事長がある日突然、「これから毎月の管理費と積立金は半額でいい」と言い出したら――。「不足は銀行から借金すれば問題ない」と説明されても誰だってあり得ない話と考えるだろう。いま国家レベルで起きていることは、その種のことだ。」

「想像してほしい」って…。これは、さすがに、ひどい想像ですね。

 マンションの管理組合のような民間主体は、通貨を発行できません。だから、銀行からの借金が返せなくなることも、あり得ます。

 しかし、日本政府は、円を発行できるので、円建ての債務を返済できなくなることはあり得ません。日本政府とマンションの管理組合は、その点で、根本的に性格が異なるのです。

 この根本的な違いを無視して、国家財政を家計や企業会計になぞらえるというのは、経済学において、最も初歩的な間違いの一つです。こんな基本のキも知らずに、「マンションの管理組合の理事長がある日突然・・・」なんていう変な想像をしていれば、MMTが「曲論」に見えるのも当然でしょう。

 ちなみに、原氏のように、マンションの管理組合など、たとえにならないもので国家をたとえて想像すると、こんな恐ろしいことになります。

「想像してほしい。あなたのマンションの管理組合の理事長がある日突然、「これから、拳銃で武装する」と言い出したら――。「最近は、凶悪犯罪が多いから」と説明されても誰だってあり得ない話と考えるだろう。いま警察レベルで起きていることは、その種のことだ。」

 こんな変な想像をして、「警察官を丸腰にしろ」なんて言い出したら、危ないですよね。

 それと同じです。

 これは、冗談を言っているのではありません。変な想像をして「日本政府は財政破綻する」と思い込んだら、貧困対策、防災対策、教育、震災復興など、大事な財政支出すらもケチるようになってしまうのです。変な想像のせいで貧しく、苦しくなってしまうのは、われわれ国民なのですから、シャレになりません。


 論より証拠。

 原真人氏は、東日本大震災が起きた2011年の8月24日、朝日新聞に「記者有論 復興予算「土建国家」に回帰の足音」という論説を書き、こんな主張をしました。

「「復旧・復興」の大義名分の下で予算のバラマキやむだ遣いが横行してはいないか。」

「民主党は、需要も波及効果もない道路や空港を乱造した「土建国家」との決別を訴え、政権についた。復興の名の下で再びコンクリートを聖域化させては元の木阿弥だ。」

 この頃は、大震災の発生から半年ほどしか経っておらず、復興の目途はまだ立っていませんでした。

 復興予算もまったく足りない状況でした。そんな時に、なんと原氏は、復興予算を「土建国家」呼ばわりして、予算のバラマキやむだ遣いの批判をしていたのです!

 この原氏の論説は、当時、被災地のために必死に働いていた多くの土建業者の心を深く傷つけました。

 というわけで、うっかり変な想像をして、原氏の「曲論」に惑わされないよう、くれぐれも気をつけてください。

 『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』には、「正論」と「曲論」を見分けるコツが、とってもわかりやすく書いてあります。

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14.よく分からない理由で、消費増税を叫ぶ経済学者

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