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土曜日, 8月 10, 2019

ベルクマンの法則



ベルクマンの法則と中国人

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ふと適当にググっていると、「ベルクマンの法則」という、少し聞き慣れないものにぶつかりました。
ベルクマンの法則とは一体なにか。

「同じ種類の生物であれば、寒い地域にすんでいるほうが体が大きい」

平たく言ってしまえばこういうことです。

 これは、体温の維持にかかわる体長(身長)と表面積の関係とされています。
恒温動物は、体温を調節するために体の表面から熱を放出し、体温を下げます。
しかし、寒い地域では、できるだけ体温が下がるのを防がなければいけないので、熱の放出を抑えなければいけません。
発熱量は身体の体積(立法メートル)に比例し、熱を失う速度は表面積(平方メートル)に比例するとされています。
よって、体積が広い方がより熱を産み、表面積が狭い方が熱を放出する働きをより抑えることができます。つまり、「寒い地域で生きるには体の大きいほうが適している」ということになるのです。

欧米人は、若い時は目が覚めるような美人でも、年をとると脂肪がつき目が冷めるような姿になっていくことが多いですね。

これは、欧米人はそもそも人間の寒冷地仕様なので、遺伝子スイッチがONになると脂肪を貯め始め、体積を増やし始める(=太る)のではないかなーと、勝手に思ったりします。

なお、ベルクマンの法則はあくまで「恒温動物」である鳥類と哺乳類にのみ適用の法則です。「変温動物」である爬虫類や両生類などは適用外です。もちろん、恐竜も。
昆虫や植物になると、逆に熱い地方ほど大きくなる傾向があるそうで、それを冗談で「逆ベルクマンの法則」と呼ばれています。

ベルクマンの法則の例

ベルクマンの法則の例としてよく出されるのが、

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クマです。
クマは、日本でもヒグマツキノワグマがいるのでお馴染みと言えばお馴染みですが、北極のホッキョクグマ(白クマ)から熱帯雨林のマレーグマまで、種類は少ないものの生息場所によって個体の個性が強い動物です。香香(シャンシャン)で盛り上がったパンダも、あれクマですからね。

ベルクマンの法則クマ

「寒ければ寒いほど体長が大きくなる」というベルクマンの法則に、すっぽりとあてはまります。くどいようですが、パンダもれっきとしたクマ科のクマですからね。
表にしてまとめると、パンダはクマにしては全然小さい方だということがわかります。ツキノワグマも平均値を取るとそんなに大きくない。
ただし、ヒグマとホッキョクグマはクマどころか、哺乳類の中でもかなりの大型。森の中で突然こんなんに出くわしたら、そりゃ怖いわな。

ちなみに、調べてみて驚いたのですが、クマって動物学的には・・・

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犬の遠縁なんですね。

ベルクマンの法則はサルにも当てはまります。

ベルクマンの法則サル

ニホンザルはサル(オナガザル科マカク属)の中では大型な方で、熱帯に向かうにつれて小さくなっていき、カニクイザルになると3分の2以下の大きさとなります。

ベルクマンの法則は中国人に適用されるのか

ベルクマンの法則はわかった。ここである疑問が浮かびました。このベルクマンの法則、果たして人間に適用されるのだろうか

私がサンプルとしてすぐ思いついたのが、中国人
私の記憶が確かならば、20数年前の中国には、公共料金や観光地の入場料に「外国人料金」なるものが存在していました。

外国人料金は中国人料金*1の2倍から、紫禁城は最高14倍という、国家公認の大々的ぼったくりが行われていました。22~3年以上前に中国を旅行した人は、如何に中国人に化け「人民料金」をGETできるか、狐と狸の化かし合いが中国旅最大の思い出だったという人もいるはず。

そんな外国人泣かせの外国人料金ですが、「外国人料金適用外」の例外がいくつか存在しました。その代表が留学生。航空料金などの例外はあったものの、留学生は学生証提示で「人民料金」だったのです。
一部観光地では、
「お前は留学生だけど外国人だから外国人料金適用!」
「なんでやねん!おかしいやないかい!」
外国人料金との差額をポケットに入れ、今日のお小遣いにしたい窓口との口撃バトルが行われますが、鉄道は学生証提出で難なく人民料金。そうなると鉄道料金がクソ安くなり、日本の常識では信じられないほどの長距離を、信じられないほどの安さで旅することができたのです。
その上、外国人には変わりないので、主要駅にあった「犬と中国人入るべからず」という外国人専用待合室を使う権利もありました。実は、昔の在中国外国人や留学生ってちょっとした特権階級だったのです。
逆ぼったくり人民料金の恩恵を受けた私の留学時代は、東西南北旅から旅へ。授業?ああ、聞いた話ではそんなのがあったそうですな。

そうして中国各地をさまよっているうちに、あることに気づきました。
伊藤博文が暗殺されたハルピンが控える黒竜江省は、当然すべてではないものの、背が高い人が多く見受けられました。
ソースは偶然見たナショジオなので裏を取る必要がありますが、ハルピン女性の半分は背が170cm以上なんだそう。
それを無条件で信じてしまうほど、みんな背が高い。それがハルピンの印象でした。
ハルピンに限らず、いわゆる「旧満洲」の地域の人々は比較的背が高い傾向がありました。特に女性の背の高さが目立っていました。
中国の北方は有史以来、数々の民族が絡まった糸のように複雑に混在し、時にはロシア人の血を引いていることもあるので。

中国大陸を南下し、ほぼ常夏の広東省にやって来ると、ハルピンのような背が高い人たちは鳴りを潜め、男女問わず日本人とほぼ同じ体格の人がメインとなります。
同じ「中国人」「漢民族」でも、北と南では背格好が全く別民族なほど違ってくるのです。
まとめるとこういうことです。

「中国は、北へ行くほど人民の背が高くなり、南へ行くほど背が低くなる」

この仮説は、感覚では間違いありません。同じことを思っている人は必ずいるはずです。しかし、それって何故?ということが漠然として、よくわかりませんでした。
そのまま忘れて時が経ったのですが、このベルクマンの法則を知った時に、「あ!」という声とともに思い出すこととなりました。

私の感覚だけでは中国人の身長の北高南低は説明しづらいので、あるデータを持ち出します。

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中国各省の身長のデータから、北方のものを抜粋してみました。
中国の方の対象年齢・調査年などのデータがないので単純に比較するのは危険ですが、平成28年(2016)の17歳の日本人の平均身長は、
男性170.7cm、女性157.8cm
そうして比べると、女性の背の高さが際立っています。ハルピンの女性の半分は身長1.7m以上はまんざらでもないかも。

中国人の平均身長第一位は、表のいちばん上の山東省です。
山東人は紀元前から背が高かったことで有名で、「山東大漢」(山東の大男。男らしさ、たくましさの象徴)という言葉も残っています。
ジャッキー・チェンのある映画で、
ジ「お前、どこ出身だ?」

男性「山東だよ」
ジ「やっぱりな」
男性「でかいからって言いたいんだろ?」
というパロディーのやりとりがあるほど、中国人の中では「デカい=山東省」が定着しています。日本で言えば「秋田県には美人が多い」という風でしょうね。

ここ出身である儒教の孔子は、210mだったと言われています。さすがに2m以上は眉唾伝説でしょうが、それだけ背が「ずば抜けて高かった」ことは確かなようです。

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伝説抜きで実際高かったのが、『三国志』の諸葛孔明。この人も山東省出身で、背は8尺と記録にあります。メートル法に直すと約184cm(数え方によっては190cm)。かなりの大男です。

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正史『三国志』記載の最高身長は、魏の曹操に仕えた知将、程昱(ていいく)「八尺三寸」(約192cm。数え方によっては2m)

この人もやはり山東省出身。山東大漢おそるべし。

ちなみに、三国志に詳しいとこういう疑問が浮かびます。
「あれ?関羽は?」
関羽は身長2m以上あったとされていますが、これは小説である『三国演義』のフィクション。
正式な歴史書である『三国志』には記載がありません。

北方に対して南方はどうか。こちらも表にしました。

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開けてビックリ調べてビックリ。平均身長が全く違います。これでも同じ「中国人」です。
この数字、私が感じた中国人の身長感にピッタリ合致します。
南方は北方のような民族シャッフルをほとんど経験していません。よって「古い血」を残している確率が高いのですが、
中国南方の「古い血」とくれば東南アジア系。
上海より南、今の浙江省あたりは、古くは「越」と呼ばれていました。春秋戦国時代の「呉越の戦い」は有名ですし、「呉越同舟」という四字熟語にも残されています。
その「越」の人は、今の漢民族とは全く違う別民族だったと言われています。彼らを「越族(仮名)」としておきます。
春秋戦国時代以降、北方系中国人、便宜上「漢民族」としておきます、が長江を越えて流入し、元いた「越」の人々はところてんのように南へ追いやられます。

戦国時代終盤あたり~漢の始めあたりの広東省では、「南越国」という国が興っていました。「越」と「南越国」との関連は不明ですが、同じ「越」と名がついているだけに、故郷を追い出された「越族」が南へのがれた国なのかもしれません。
その広東省も「越族」の安住の地ではなく、漢民族の流入でまた南へ逃れ、今のベトナム人に。

・・・というのが、ベトナム人の民族伝説です。ベトナムは漢字で「越南」と書きますが、読んで字のごとく「南の越国」。じゃあ「越の南」の「越」ってどこよ?というと、今の中国浙江省あたりだと言われています。

広東省にずっと暮らしていた感想では、中国南方人、特に広東人は北方系とは違う民族だろうなと。背は低く、肌はやや褐色。やたら背が高い北方系には違和感を感じるけれども、南方系には違和感なし。
言葉を取っても、「形容詞+名詞」の北京語に対し、彼らが話す広東語は「名詞+形容詞」と修飾・被修飾の語順が逆*2

他にもパクチー大好きだったり米が南方系だったりと、文化圏が東南アジア系だなと、私は思っています。今は知りませんが、『地球の歩き方』の東南アジアには、なんちゃって広東省である香港も入っていましたし。

白人にも当てはまるのか

コーカソイド、我々が「白人」と呼んでいる人種も、細かく見ていくといろんな種類がいます。寒冷地仕様の北欧系から小麦色のマーメイドこと南欧系まで多種多様ですが、一般的には北欧系は背が高く太りやすく、イタリアやギリシャなどの南欧系は背が低い。コーカソイド南端のインド人も、背は低くはないかけれど太っている人が少ない傾向にあります。

旧ユーゴスラビアやアルバニアあたりのスラブ系やグルジアあたりのコーカサス(「コーカソイド」の語源の地方)に至っては、「白人」って言いながら我々と背格好はそんなに変わりません。かつて旧ユーゴスラビアやグルジアを見て回った時にいちばんビックリしたことと言えば、彼らの背が案外低かったこと。どうでもいいけれど、背が低いコーカソイドの女性は、西洋人形のようでかわいいです。日本に持って帰りたいく(以下自粛

そういう意味でも、白人世界にもベルクマンの法則ありですね。

私がぼんやりと感じていたささやかな疑問が、何気なく見つけたベルクマンの法則で解決しようとは、
ぼんやりでも疑問はさらなる知への深みへといざなう種となることが、今回で再確認しました。知の探検はこれだからやめられない。

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*1:我々は「人民料金」と言っていました

*2:ベトナム語やタイ語も同じ。ただし「形容詞+名詞」になることもある。広東語はこの語順の法則がないのでちょっと難しい。

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