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木曜日, 10月 22, 2015

クールノー『富の理論の数学的原理に関する研究』岩波文庫:目次

経済学リンク::::::::::
クールノー『富の理論の数学的原理に関する研究』岩波文庫:目次
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/blog-post_29.html(本頁)
『総力ガイド! これからの経済学』日本評論社:書評&目次
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/20150907-1600-httpwww.html 
NAMs出版プロジェクト: マルコフ連鎖:メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/blog-post_54.html

スピリチュアリスムとクールノーのエピステモロジー
https://kwansei.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=15832&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=30&block_id=84

富の理論の数学的原理に関する研究 (岩波文庫)
クールノー著 中山伊知郎訳 
251ページ 出版社: 岩波書店 (1936/6/30) 1994復刊 

"Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses"
 Augustin Cournot
1838 
目次
訳者小引
原著序文
第一章 交換価値或は富一般に就いて
第二章 価値の絶対的及び相対的受動に就いて
第三章 為替に就いて 2
第四章 需要の法則に就いて☆1
第五章 独占に就いて 
第六章 独占生産商品に對する租税の影響に就いて 3
第七章 生産者の競争に就いて☆☆ 4
第八章 無制限の競争に就いて 
第九章 生産者の相補闘係に就いて 5
第十章 諸市場の連絡に就いて
第十一章 社会所得に就いて
第十二章 通商より生ずる社会所得の変動に就いて
附 録 数學に對する註解

 《…『研究』の功績を丸山徹氏に従って5つ挙げる。1.需要函数概念を初めて明示的に表現したこと。2.ワルラスの一般均衡体系を 予示したこと。3.独占生産者の均衡条件を示したこと。4.寡占市場のクールノー均衡(今日的には、非協力ゲームとされるナッシュ=クールノー均衡解)を 求めたこと。5.独占、複占から初めて、企業の数が増えるに従って企業は市場支配力を失い、極限には完全競争に至るクールノーの極限定理の証明。である (『ワルラスの肖像』丸山徹,2008,p.79)。》丸山徹『ワルワスの肖像』第三章がクールノーに関する考察で占められ図解入りでわかりやすい。

「(1) F(p)+F’(p)=0

F’は、ラグランジの符号法に従って、函数Fの微係数を示す‥」83頁:



☆☆
117頁:

最終章は比較優位を主張していると読める。クールノーは、1838年刊行の著書で、自由貿易の擁護、函数を基数ではなく序数的に展開、ワルラス等限界革命より先に近代経済学を創始した。効用、逓減なる概念を用語を使用せずに展開した。4:74頁に限界価格なる概念がある。4:75頁では,一般という言葉を一般均衡の一般と同じ意味で使っている。4:8頁の連続に関する認識は現代数学的には厳密ではないが、ドブリューに先行する。3:59頁の三つの市場のバランス考察はワルワスの均衡、ヴィクセル理論、スペルナーの補題、スカーフのアルゴリズムに繋がる。


別訳:
日本経済評論社 - 富の理論の数学的原理に関する研究〔オンデマンド版〕
http://www.nikkeihyo.co.jp/books/view/1625

1838年 
『富の理論の数学的原理に関する研究』("Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses")
Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses, par Augustin Cournot
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k6117257c/f17.image
Table des matières
Aller à la page de la table des matières
Préface. V
CHAPITRE I. De la valeur d'échange ou de la richesse en général. 1
CHAPITRE II. Des changements de valeur, absolus et relatifs.15
CHAPITRE III. Du change.28
CHAPITRE IV. De la loi du débit.46
CHAPITRE V. Du monopole.61
CHAPITRE VI. De l'influence de l'impôt sur les denrées dont la production est en monopole.74
CHAPITRE VII. De la concurrence des producteurs.88
CHAPITRE VIII. De la concurrence indéfinie.101
CHAPITRE IX. Du concours des producteurs.112
CHAPITRE X. De la communication des marchés.134
CHAPITRE XI. Du revenu social.146
CHAPITRE XII. Des variations du revenu social, résultant de la communication des marchés.173
FIN.
http://www.amazon.co.jp/dp/4003411013


原書220頁巻末図表集より

下記の方が本文ダウンロードは簡単だが図表が不完全。

Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses - Antoine Augustin Cournot - Google ブックス
https://books.google.co.jp/books/about/Recherches_sur_les_principes_math%C3%A9matiq.html?id=K2VHAAAAYAAJ&redir_esc=y

投稿者 k 投稿日 2011/6/13
  ゲーム理論にもそのアイディアが活用されている経済学者、クールノーが1838年に刊行した著書。リカードウとマルサスそれぞれの「経済学原理」から20 年弱あと、限界効用学派に先立つこと30年弱の著書としてはそのレヴェルの高さに一読して驚く。いま経済学のテキストを開けば出来合いの数学的分析がわか りやすく要約されてまとまっているが、先立つ著書がおしなべて記述的分析に終始して、数学的な操作も四則演算程度だった現状において、しっかり事前に諸前 提を手早く提示した上で、代数的な処理や微積分を中心とした解析手法を用い、経済学的な意味づけをそのあとに言葉で解釈してみせるという、リカードウやマ ルサスの著書の記述から見れば抜群に話が早いまとめ方は、本格的な数理分析の創始者としてのクールノーの明晰さを遺憾なく示している。その質の高さを考え ると、数十年後にワルラスやジェヴォンズが再評価するまで理解されなかったのもよくわかる。

  内容を見ていくと、データベースのコメントにあるように独占(monopoly),複占(duopoly),寡占(oligapoly)と進んでその極限 として完全競争の場合にまで利潤最大化の議論を進めていく様子が醍醐味になっていて、複占のときの議論、反応曲線やクールノー均衡については昔授業で聞い てぼんやりしていたのが、本人の説明をたどっていくとわかりやすい。
 巻末にはフィッシャーによる数学的注もついて理解を助けてくれる。ただ、漢字が旧字体で文章も旧仮名遣いなのが、読む人にとっては難解に感じるかもしれない。経済分析に数学的手法をどうやって当てはめるかという例として参考になることもあるのではないか。



ア ントワーヌ・オーギュスタン・クールノー(Antoine Augustin Cournot, 1801年8月28日 - 1877年3月31日)はフランスの哲学者、数学者、経済学者。彼は「限界革命」より半世紀も前に数学的モデルを用いて複占の理論を展開した数理経済学の 始祖と評される。 
1838 年 『富の理論の数学的原理に関する研究』("Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses")を出版する(この本は今日でも経済学に影響を保っている。この本の中で彼は、経済分析において数学の公式や記号の適用を行い、強く 非難された。この本はクールノーの存命中はあまり成功したとは言えず、彼は二度も書き直そうとした)。 

一般的評価

  • クールノーは主として数学者だったが、経済学に対して重要な貢献を行なった。彼の独占複占に関する理論は今なお有名であるが、今日では多くの経済学者がこの本を近代経済分析の出発点であると信じている。クールノーは関数確率の考えを経済分析に導入した。彼は価格の関数としての需要と供給の一階の条件を導出した。
  • クー ルノーは、経済学者は数学の道具を、理論がもっともらしい範囲を確定し、より絶対的な条件の中に不確かな事実を表現することにのみ活用しなければならない と信じていた。彼はさらに、経済学における数学の実用的使用が必ずしも正確な数字による精密さと関係しないとの立場を保った。
  • 今日では、クールノーの研究は、計量経済学(エコノメトリクス)の中でも認知されている。また、「クールノーの複占モデル」では、競争的立場にいる両企業がお互いの存在を無視して自企業の行動が相手の反応をあらかじめ計算に入れていなかったが、相手の反応を十分考慮して行こうとする人々の試みがゲーム理論の発展につながっていった。
  • ケインズ『確率論』#24でもその『偶然の理論の説明』が言及、引用されている。

クールノー均衡

  • 2 つの企業しかない複占産業で、各企業がライバル企業の供給量(産出量)が変わらないという仮定のもとで、自企業の供給量(産出量)を決定するモデルを 「クールノーの複占モデル」という。すなわち、複占状態の場合、1つの企業が選ぼうとする産出量に応じて、他企業が産出量を変えてくるといった戦略上の相 互依存関係がありうる。しかし、企業1の産出量の変化によって企業2の産出量が変わらない推測があるという仮定をすると、どの企業にも産出量を変更しよう とする誘因は存在しない。このような点を「クールノー均衡」と呼ぶ。
  • 独占企業の最大利潤になる産出量と価格の点を、「クールノーの点」と呼ぶ。
  • 経済学の分野において、彼は寡占理論の分野での研究(クールノーの競争)で最もよく知られている。


西洋経済古書収集ークールノー,『富の理論の原理』
http://www.eonet.ne.jp/~bookman/gennkaisyugi/cournot.htm
  まず、本書の前提となる主著『研究』の功績を丸山徹氏に従って5つ挙げる。1.需要函数概念を初めて明示的に表現したこと。2.ワルラスの一般均衡体系を 予示したこと。3.独占生産者の均衡条件を示したこと。4.寡占市場のクールノー均衡(今日的には、非協力ゲームとされるナッシュ=クールノー均衡解)を 求めたこと。5.独占、複占から初めて、企業の数が増えるに従って企業は市場支配力を失い、極限には完全競争に至るクールノーの極限定理の証明。である (丸山徹,2008,p.79)。
 「これを出版した年がリカードゥの死からわずか15年後であり、ミルの『経済学原理』(1848)が現れる 10年も前であるとはおよそ信じがたい。」(ブローグ,1989,p.67-68)とされるほど時代から屹立した『研究』であるが、その独創性の故か世に は受け入れられなかった。そして、『研究』出版の25年後にその第二版とも称すべき『原理』、さらにその13年後に第三版ともすべき『概説』を上梓してい る。いずれも、『研究』から数学を除く無駄な努力をなしたとして後世の評価は低い。『研究』とは比べようもない書物とされている。
  それでは、なぜ、クールノーは、これらの本から数学を排除しようとしたのか。晩年盲目となってから、数学を使えなくなったためとする論文も見たことがあ る。これは、盲目の数学者コルモロゴフなどを見ても眉唾である。一般には、『研究』が世間の注目を引かず、出版物としての失敗したことにその理由を求め る。クールノー自身『概説』の序文に書いている。「基礎的な思考かあるいは単にその形式か、どちらに誤りがあったかを、1863年の時点で、知りたいと 思った。そのため、1838年の仕事に戻り、必要な箇所を拡張し、とりわけ、これらの主題において、こけ脅しの代数的用具を完全に削除した。こうして、そ の本は「富の理論の原理」と名付けられた。その(『原理』のこと:記者)序文で述べたように、「元の文章を知らしめるのに25年を要したから、何が起ころ うとも、他の方法に助けを求めるつもりはない。再度の試みに失敗するならば、不名誉な著者をも見捨てることのない慰めだけが残るだろう。」」 (Corot,1877,p.ii)。
 後述するように、もとより『原理』、『概説』は『研究』よりも広範な問題を扱っている。しかし、共通する 領域である「交換価値の理論」においても、後の二著が数学を使用しなかった理由として、中山は上記の理由だけで満足しない。さらに具体的に次の二理由をあ げる。第一は数学的方法の不毛性である。よく指摘されるように、クールノーの需要曲線は、ゴッセン・ジェヴォンズの如く効用函数を基礎にして導出されたも のではない。ただ価格と需要量をグラフでいえば右下がりの連続的な函数関係として捕らえたのみである(クールノーにおいては、横軸が価格)。観察不可能な 理論には、基づかない、事実としての「需要の法則」なのである。逆にいえば、客観的事実に集中し、その需要者を考察外とすることは、理論を正確にはするが 著しく一面的にもする。価格論が所得分配論と結びつかず、その適用には限界がある。これが中山の云う不毛性である。第二は、部分均衡理論であることの限界 の自覚である。「需要の法則」はマーシャル流の部分均衡を表現したものである。一方、クールノーは、全経済組織の相互依存関係を充分に認識していた。他の 商品を切り離した数学的な表現方法では、全体観察が不可能であると自認していた。

 次に、具体的に本書全四編の内容を、編をおって見てゆく。主として中山に従って記述するものである。
  第一編は「富」である。この編が主として『研究』に該当する部分である。まず富の概念を明らかにするために、歴史的に法律学と経済学を比較する。法律学 は、経済学よりはるかに古からある。人は富なる抽象的概念を有する以前に(私有)財産なる概念を有すること。および、法律学が個人的利害に関係するのに対 し、経済学は個人ではなく全体、総量を問題とするからである。経済学の対象は法律学との関係で確立される。広義の経済学は「統計学」、「貨殖学あるいは富 の理論」、および「警察・財政・行政」なる三つの部門から構成される。狭義の経済学はこの中、第二の富の理論である。富の理論は数学的法則の概念を適用で きる場合にのみ、科学的理論となりうる。しかしそのためには、社会が自由な生産と流通が行われる産業的・市場的段階に達する必要がある。こうして後、生産 は力学と比較可能となるのである。
 次いで生産の意義を問う。生産は蒸気機関になぞらえられる。ただし、機械はその能力の最大化を図るに対し、生 産は費用の最少化を図る違いがある。生産面から考えると、価格は賃金・利子・原料費等からなる生産費によって構成されるとされるものの、実際流通する商品 の価格は、別に消費側の要素にも影響される。こうして、クールノーは需要の法則に辿り着く。
 需要の法則は、前述のごとく、列挙することも測定す ることもできない多数の精神的原因を排除した、単なる価格と需要量の関係である。『研究』では、「一般に、商品が安価になるほどそれに対する需要は大いに なる。…販売量あるいは需要量は一般に、価格の減少に応じて増加する」(クールノー,1936,p.71)函数関係D = F (p) あるいは幾何学的図形で表現したものである。しかし、数学的方法を使用しない本書では、それは価格と需要の相関を表す「表」の形で示される。と いっても、この需要表には具体的な数字が書かれているのではない。第一列が価格、第二列が対応する需要、第三列が第一列と第二列を乗じた価値額、よりなる 所与の商品の需要表を考える。そうすれば、第三列における需要額が最大となる第一列の価格が存在するであろう…との抽象的な表で論じているのである(本 書、p.103)。数学的に最大収益を求めた『研究』に比すべきもない(注3)。
 第二編が「貨幣」である。交換価値の概念、価値標準及び貨幣の 経済的機能を論じることは『研究』の第二章・三章に同じ。ただし、『研究』では、進歩した文明状態における理論の理解には不要として歴史的研究の記載はな かった。本書では、古代の貨幣の歴史とフランスの貨幣発達史の記述に第二編の1/3の分量を割いている。歴史が理論を補うものとして、拡充されているので ある。
 第三篇「経済体系」は、所得論である。価格論では当該商品以外の商品価格一定とする部分均衡が仮定されている。しかし、実際はすべての商 品価格は相互依存し連動している。そして、これら価格は生産者の所得となる。相互依存の経済体系の中での、所得とその変動が論じられている。価格は需要の 法則と生産費で決定するので、価格騰落が何れの原因かによって所得に及ぼす影響も異なる。そして、所得の変動を名目的所得変動と実際所得の変動に区分して みている。本編のその後には、内国市場間の流通、国際貿易、課税、人口、労賃と題されている章が続くが、内容に緊密な関連はないとのことである。この第三 編は、『研究』の最後の二章(第11,12章)に該当する部分であると思われる。
 第四編は「経済的楽観論」である。内容は国民性から見た経済政策及び自由貿易・保護貿易論の批評で、中山によると形而上学に類するとの評価であるので略する。

  1. クールーノ 中山伊知郎訳 『富の理論の数学的原理に関する研究』 岩波文庫 1936年
  2. 中山伊知郎 『数理経済学研究』 日本評論社、1937年(引用は、『中山伊知郎全集 第二集 数理経済学研究 Ⅰ』 講談社、1973年 で示した)
  3. 根岸隆 『経済学の理論と発展』 ミネルヴァ書房、2008年
  4. マーク・ブローグ 中矢俊博訳 『ケインズ以前の100第経済学者』 同文館、1989年
  5. 丸山徹 『ワルラスの肖像』 勁草書房、2008年
  6. ヘンリ・エル・ムーア 山田雄三訳 「アントアヌ・オギュスタン・クールノーの人物」
    (クールーノ 中山伊知郎訳 『富の理論の数学的原理に関する研究』 同文館 1927年所収)
  7. Cournot, A Revue sommaire des doctrines economiques, Paris: hachette, 1877
  8. Shubik, Martin “Cournot, Antoine Augustin (1801-1877)” in The New Palgrave Dictionary of Economics, Macmillan, 1998

吉川洋も以下の書籍の中でクールノーを絶賛している。
『総力ガイド! これからの経済学』日本評論社:
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/20150907-1600-httpwww.html 




米虫論考
52
このように「秩序」と「理由・理性」の概念を導入した上で,言語体系の側にしか属さないものと,自然の秩序の側に属するものと合致するもの,クールノーはそれらを「論理的秩序l’ordre logique」と「合理的秩序 l’ordre rationnel」と名付ける。「論理的秩序」とは,「一般的に人工的秩序でしかなく,我々の精神の或る見方に由来する」(III, 47),「諸命題の構成に,我々にとって思考の道具でありそれを表す手段である言語の諸形式と秩序に由来する」(III, 45)ような秩序,つまり我々の使用する言語形式に相関的な思考上の秩序である。我々の認識の体系が整合性なものであってもそれはあくまで論理的なものでしかなく,それが事物の秩序を現に再現しそれに対応しているかどうかとは無関係である。また「合理的秩序」とは「それ自身において考察された
諸事物に由来し」(III, 45),「諸事物がその本性と固有の本質によってそれらの間で有する諸関係の忠実な表現」(III, 47~48)であるような秩序,つまり人間による思考の構造と自然の秩序との間の同型性,諸科学による認識と実在の秩序との間の対応や調和が存在している場合の秩序のことである。合理的秩序を形成している場合,認識能力としての理性は諸事物の理由を正しく見いだし,諸事物の秩序を局所的,断片的にではあれ再現し得ていることになる。すなわち適切な条件の元で我々の科学の体系は諸事物の秩序を捉え得るということである。我々の使用する言語形式に相関的な思考の「論理的秩序」と,諸事物それ自体における秩序に対応する「合理的秩序」。理性的認識としての科学の体系が諸事物の秩序を捉えていると言うためには,「偶発的にしか一致しない」(III, 47)これら二つの秩序を,「外的世界の構成と,外的世界を反映する鏡の布置を(共に-引用者)考慮に入れる」「哲学的批判」(IV, 101)によって正しく弁別しなければならない。「精神が自らに作り上げる記号から,自然が我々に提供する諸事物へと進む」(IV, 405)道筋を,科学という合理的活動の営みに寄り添いつつ解明すること,クールノーにとって哲学の任務とはこの点に存する。「科学がそれによって人間の認識の一般体系に結びついている根本諸概念,その批判が哲学に固有の領域に属する根本諸概念を扱うことなく,科学の基礎原理を説明することはできない」(II,383)。したがって哲学の課題とは二重である。すなわち科学的活動に即した諸事物の秩序・理由の探究と,それを探究する人間精神の認識構造や様式の探究を同時に行なわなければならず,しかも後者には認識の構造や様式に相関的な言語形式についての探究も含まれる。つまり実在の探究は,言語や記号についての研究と切り離せない。「本質的に哲学的などんな問いも,これら二つの側面から提示され得るのでなければならない。逆にいえばこの局面の二重性は他を差し置いて哲学的問いを特徴付けるものである」(II, 384)。諸事物の秩序の探究という点では,哲学は科学的活動と共に歩まねばならない。






九鬼が『偶然性の問題』で引用、



III

Traité de l'enchaînement des idées fondamentales dans les sciences et dans l'histoire 



Published 1861



科学と歴史の中における基本的な観念の連鎖の論考

4 件のコメント:


  1. 例えば以下のビル・トッテンの著作はピケティに近い。

    『アングロサクソン資本主義の正体 ―「100%マネー」で日本経済は復活する』ビル・トッテン 2010
    http://www.amazon.co.jp/gp/product/4492395350
    各章冒頭の名言集も興味深い。
    信用創造を禁止する100%マネーには賛否両論あるだろうが、陰謀論ではなくちゃんと数値を出
    している。
    特に日本のGDP分析などは有益だ。
    ラビ・バトラ(というよりサーカー)のような長期的な視野はないが、より具体的だ。

    『課税による略奪が日本経済を殺した 「20年デフレ」の真犯人がついにわかった! 』– 2013/2/27 ビル・トッテン (著)
    http://www.amazon.co.jp/gp/product/4864710988
    こちらの方が上よりも読みやすい。トービン税を主張しつつも政府に頼らず自分で出来ること
    をやろうというアナーキズムが著者の立場だ。
    所得ごとの累進性に基づいた消費税案も興味深い。
    また、戦後の日本は裕福な立場の人間が貧困層に階級闘争をしかけているという。これは階級
    闘争の新しい見方だ。上位30社が政治家への献金によって自分たちの会社に有利な社会にし
    ようとしているというのは正確な指摘だ。法人中心社会への警鐘においてピケティより日本の
    問題としては的を射た指摘だ。搾取される系列中小会社などの分析も必要だろうが。
    ウォルフレンと合わせて読みたい。

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  2. 5つ星のうち 4.0 目次, 2015/10/23


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    レビュー対象商品: 富の理論の数学的原理に関する研究 (岩波文庫 白 110-1) (文庫)
    富の理論の数学的原理に関する研究 (岩波文庫)
    クールノー著 中山伊知郎訳 
    251ページ 出版社: 岩波書店 (1936/6/30) 1994復刊

    目次
    訳者小引
    原著序文
    第一章 交換価値或は富一般に就いて
    第二章 価値の絶対的及び相対的受動に就いて
    第三章 為替に就いて 2
    第四章 需要の法則に就いて 1
    第五章 独占に就いて 
    第六章 独占生産商品に對する租税の影響に就いて 3
    第七章 生産者の競争に就いて 4
    第八章 無制限の競争に就いて 
    第九章 生産者の相補闘係に就いて 5
    第十章 諸市場の連絡に就いて
    第十一章 社会所得に就いて
    第十二章 通商より生ずる社会所得の変動に就いて
    附 録 数學に對する註解

    以下、西洋経済古書収集サイトより
     《…『研究』の功績を丸山徹氏に従って5つ挙げる。1.需要函数概念を初めて明示的に表現したこと。2.ワルラスの一般均衡体系を 予示したこと。3.独占生産者の均衡条件を示したこと。4.寡占市場のクールノー均衡(今日的には、非協力ゲームとされるナッシュ=クールノー均衡解)を 求めたこと。5.独占、複占から初めて、企業の数が増えるに従って企業は市場支配力を失い、極限には完全競争に至るクールノーの極限定理の証明。である (『ワルラスの肖像』丸山徹,2008,p.79)。》

    丸山『ワルラスの肖像』第三章がクールノーに関する考察で占められ図解入りでわかりやすい。
    クールノーは、1838年刊行の著書で、自由貿易の擁護、函数を基数ではなく序数的に展開、ワルラス等限界革命より先に近代経済学を創始した。
    3:59頁の三つの市場のバランス考察はワルワスの均衡、ヴィクセル理論、スペルナーの補題、スカーフのアルゴリズムに繋がる。
    効用、逓減なる概念を用語を使用せずに展開した。4:74頁に限界価格なる概念がある。4:75頁では,一般という言葉を一般均衡の一般と同じ意味で使っている。4:8頁の連続に関する認識は現代数学的には厳密ではないが、ドブリューに先行する。最終章は比較優位を主張していると読める。

    別訳に、日本経済評論社 - 富の理論の数学的原理に関する研究〔オンデマンド版〕がある。

    "Recherches sur les principes mathématiques de la théorie des richesses"
    Augustin Cournot 1838
    la table des matières
    Préface. V
    CHAPITRE I. De la valeur d'échange ou de la richesse en général.
    CHAPITRE II. Des changements de valeur, absolus et relatifs.
    CHAPITRE III. Du change.
    CHAPITRE IV. De la loi du débit.
    CHAPITRE V. Du monopole.
    CHAPITRE VI. De l'influence de l'imp t sur les denrées dont la production est en monopole.
    CHAPITRE VII. De la concurrence des producteurs.
    CHAPITRE VIII. De la concurrence indéfinie.
    CHAPITRE IX. Du concours des producteurs.
    CHAPITRE X. De la communication des marchés.
    CHAPITRE XI. Du revenu social.
    CHAPITRE XII. Des variations du revenu social, résultant de la communication des marchés.

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  3. 九鬼が引用

    Traité de l'enchaînement des idées fondamentales dans les sciences et dans l'histoire
    by Cournot, A. A. (Antoine Augustin), 1801-1877

    Published 1861
    Topics Philosophy, French

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  4. 米虫論考
    52

    https://kwansei.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=15832&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=30&block_id=27


    このように「秩序」と「理由・理性」の概念を導入した上で,言語体系の側にしか属さないものと,自然の秩序の側に属するものと合致するもの,クールノーはそれらを「論理的秩序l’ordre logique」と「合理的秩序 l’ordre rationnel」と名付ける。「論理的秩序」とは,「一般的に人工的秩序でしかなく,我々の精神の或る見方に由来する」(III, 47),「諸命題の構成に,我々にとって思考の道具でありそれを表す手段である言語の諸形式と秩序に由来する」(III, 45)ような秩序,つまり我々の使用する言語形式に相関的な思考上の秩序である。我々の認識の体系が整合性なものであってもそれはあくまで論理的なものでしかなく,それが事物の秩序を現に再現しそれに対応しているかどうかとは無関係である。また「合理的秩序」とは「それ自身において考察された
    諸事物に由来し」(III, 45),「諸事物がその本性と固有の本質によってそれらの間で有する諸関係の忠実な表現」(III, 47~48)であるような秩序,つまり人間による思考の構造と自然の秩序との間の同型性,諸科学による認識と実在の秩序との間の対応や調和が存在している場合の秩序のことである。合理的秩序を形成している場合,認識能力としての理性は諸事物の理由を正しく見いだし,諸事物の秩序を局所的,断片的にではあれ再現し得ていることになる。すなわち適切な条件の元で我々の科学の体系は諸事物の秩序を捉え得るということである。我々の使用する言語形式に相関的な思考の「論理的秩序」と,諸事物それ自体における秩序に対応する「合理的秩序」。理性的認識としての科学の体系が諸事物の秩序を捉えていると言うためには,「偶発的にしか一致しない」(III, 47)これら二つの秩序を,「外的世界の構成と,外的世界を反映する鏡の布置を(共に-引用者)考慮に入れる」「哲学的批判」(IV, 101)によって正しく弁別しなければならない。「精神が自らに作り上げる記号から,自然が我々に提供する諸事物へと進む」(IV, 405)道筋を,科学という合理的活動の営みに寄り添いつつ解明すること,クールノーにとって哲学の任務とはこの点に存する。「科学がそれによって人間の認識の一般体系に結びついている根本諸概念,その批判が哲学に固有の領域に属する根本諸概念を扱うことなく,科学の基礎原理を説明することはできない」(II,383)。したがって哲学の課題とは二重である。すなわち科学的活動に即した諸事物の秩序・理由の探究と,それを探究する人間精神の認識構造や様式の探究を同時に行なわなければならず,しかも後者には認識の構造や様式に相関的な言語形式についての探究も含まれる。つまり実在の探究は,言語や記号についての研究と切り離せない。「本質的に哲学的などんな問いも,これら二つの側面から提示され得るのでなければならない。逆にいえばこの局面の二重性は他を差し置いて哲学的問いを特徴付けるものである」(II, 384)。諸事物の秩序の探究という点では,哲学は科学的活動と共に歩まねばならない。



    Cournot traite de l'enchainement des idees

    III
    Traité de l'enchaînement des idées fondamentales dans les sciences et dans l'histoire
    by Cournot, A. A. (Antoine Augustin), 1801-1877

    Published 1861
    Topics Philosophy, French

    https://ia802308.us.archive.org/15/items/traitdelencha00cour/traitdelencha00cour_bw.pdf

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