ビル・ミッチェル「貨幣乗数 ― 行方不明にて、死亡と推定」(2010年7月16日)
Bill Mitchell, “Money multiplier – missing feared dead“, Bill Mitchell – billy blog, July 16, 2010.
今日はブログ記事を書くつもりではなかったのだが、気が変わった。短い記事を一つだけ書こうと思う。主流派経済学者によって今なお生き残り続けている教条的主張として、「中央銀行が未だにマネーサプライをコントロールしており、貨幣乗数は生きているが、少しの間消えているだけなのだ」というものがあるように思う。この最近の主流派のポストは、金融システムとその運用機関に関して、主流派マクロ経済学者が未だ継続中の誤った主張の典型例である。貨幣乗数は死んだわけではない、というのが事実だ――私はそれを確信を持って言える。なぜなら、貨幣乗数などそもそも存在したことがないということを知っているからだ!
主流派の理論では、貨幣乗数mがマネタリーベース(MB)(準備預金と発行通貨(currency at issue)の合計)の変化をマネーサプライ(M)の変化へと波及させるということが主張されている。学生たちは、彼らの学習レベルに合わせた様々な複雑さの代数学の計算をさせられてmを導出する。(学生たちは、典型的な経済学学位の過程で、このように無意味に何度も虐められる) mは、最も簡単な形では、法定準備率の逆数で表現される。だから、もし中央銀行が民間銀行に対し、預金総額の10%を準備預金として保持しなければならないと指示したら、そのときの法定準備率は0.10であり、mは1/0.1=10となる。人々が銀行預金を一部現金で持とうとした場合は、求められる公式はもう少し複雑になる。しかし、そうした複雑化には話の大筋への影響はない。
マネーサプライを決定する公式はM=m×MBとなる。したがって、もし銀行が新たに1ドルの準備預金を得たら、マネーサプライは(乗数倍されて)増加して、10ドルに増えることになる。(法定準備率が0.10の場合) 貨幣乗数がどのように働くと主張されているかについては、以下のように説明される。(預金総額の10%を準備預金として持つように銀行が要求された場合)
・ある人が銀行に100ドルを預ける。
・貨幣(money)を創造するために、銀行はそのうちの90ドルを顧客に貸し出す。
・その貨幣は支出され、受け取り手が自身の銀行にその90ドルを預金する。
・その銀行は、90ドルのうち0.9倍の81ドルを貸し出す。(法定準備率0.10を維持するため)
・融資がゼロになるほど小さくなるまで続く。
こうしてあなたは、マネタリーベースとマネーサプライ指標との間に極めて安定した関係を予想することになるだろう。実際、主流派の理論は、中央銀行がこの関係を用いてマネーサプライをコントロールすると主張している。
マンキューのPrinciples of Economics(邦題:マンキュー入門経済学)では(私は初版を持っている)、チャプター27で ”金融システム” について論じられている。最新版ではチャプター29だ。いずれにせよ、それを読んで学べることはほとんどないだろう。
連邦準備制度(アメリカの中央銀行)についてのセクションでは、マンキューは連邦準備制度が ”二つの関連した職務” を担っていると主張している。第一の職務は ”銀行を規制し、金融システムの健全性を確保すること” だ。であるならば、私が思うに、マンキューは、大規模金融崩壊を看過した連邦準備制度職員上層部を首にすることを要求すべきではないだろうか。
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