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財政拡大で財政が健全化する! -シミュレーションで明らかになった驚きの事実- |
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出口の見えない不況と言われているが、本当にそうなのか。私は我が国で最も信頼されている機関の一つに5年間毎年50兆円減税をしたらどうなるかを、マクロ計量モデル【注】を使ってシミュレーションして頂くようお願いした。このような大規模な減税で、日本経済は大変なインフレになると考える人が多いと思う。しかし、実際のシミュレーションの結果では、経済状態は劇的に改善されるが、インフレ率は年率0.6%にしかならなかった。この結果を直ぐにノーベル経済学賞受賞者であり現代最高の理論経済学者サミュエルソン氏に送ったところ、「インフレ率は気にしなくて良い。需要を回復し、デフレから脱却できればよいのだから。」という激励の手紙が私に返って来た。やはりノーベル経済学賞を受賞し計量経済学の世界的権威であるペンシルベニア大学のクライン教授にも送ったところ、「2%位のインフレ率が適当なのではないか。経済状態が改善されるのは本当によいことだ。教育にもお金を使ったらどうだろう。」という返事がきた。何と二人共、50兆円×5という巨額の財政出動に賛成して下さった! |
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これに大変元気づけられ、今度は日経にお願いしこのプログラムを自分のパソコンで使わせてもらい、どんどんシミュレーションを進めることにした。このような財政拡大を行えば、借金の重みが相当増加するだろうと覚悟していたのだが、なんと実際は逆だった!計算された借金の重みである長期債務残高/GDPの比は、財政を拡大するときのほうが、現状維持の政策より小さくなった。その理由は借金/GDPが現在は700兆円/500兆円だが、直接借金を減らそうとして予算削減すると、同時にGDPも減ってしまい、結果としては借金の重みが増えてしまう。逆に財政を拡大すると、分子分母共に増えるが、GDPの増加率の方が借金の増加率より早いために、この分数(借金の重み)は小さくなったのだ! |
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注: | 本稿の試算には日本経済新聞社のNEEDS日本経済モデルが使用されていますが、その評価には日本経済新聞社は関与していません。 |
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財源はいずれのシナリオも国債発行によるものとし、最初に次のシナリオを考えよう。 |
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このシナリオは、減税だけでなく公共投資も並行して行うものである。過去に行われた、あるいは現在行われている政策に追加して次のような財政出動を行うものとする。計算上公共投資としたが、それ以外の政府支出でも、結果には大きな影響は無いものと思われる。政策開始は計算の都合上2000年からとする。 |
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2) | 次のように法人税減税をする。 | | 2000年 20兆円、 2001年 25兆円、 2002年 25兆円、 2003年 25兆円、 2004年 25兆円 |
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図1に実質GDPの推移をグラフで示した。この種の財政拡大政策に対しては、円や国債の暴落の問題が必ず指摘される。そこで現状維持の場合に加え、次の3つの場合のグラフを示した。現状維持とは、現在の政策を変えなかった場合の経済予測をそのまま使うものである。過去のものは、ほぼ正確に過去の実際の経済データに一致している。 |
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ケース1: | 対ドル円相場も長期金利も現状維持のものに固定する。つまり、中央銀行が介入し現状維持の水準にまで買い支えると仮定するものである。 |
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ケース2: | 円の暴落を仮定。対ドル円相場を内生化(シミュレーションで求める)する。このとき2004年には円は1ドル277円まで暴落する。長期金利は現状維持で固定。 |
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ケース3: | 円も国債も暴落することを仮定。10年物国債の金利は3.86%まで上昇する。 |
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この図より分かることは、『円や国債の暴落』は実際はそれほど重要でなく、円や国債の暴落があろうとなかろうと、現状維持の場合よりはるかに実質GDPは増加することである。 |
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図2では失業率の推移を示した。現状維持だとどこまでも失業問題は解決しないが、財政拡大策なら3つのケース共に急速に失業率が減少していることが分かる。要するに景気は一直線に回復に向かう。 |
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図3に国・地方の債務残高/GDPをグラフで示した。借金の重み(国・地方の債務残高/GDP)は5年後には現状維持政策では1.62になるのに、財政拡大をした場合1.20までに落ち財政は急速に健全化する。それは、税収が伸びて財政赤字が3分の1にまで減ったのに加え、GDPが大きく伸びたことが原因している。要するに財政を拡大しGDPを借金に見合うまで拡大させれば借金地獄は終わるのである。 |
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図4に財政赤字の推移をグラフで示した。財政を大規模に拡大したときは最初は赤字幅が増えるものの、その後急速に赤字幅は縮小し、2004年には財政黒字化の一歩手前であることが分かる。初年度も、赤字幅は増大するが、名目GDPが大きく伸びるために、財務残高のGDP比は、初年度ですら現状維持の場合より低く抑えられていることが分かる。 |
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このシミュレーションでは200以上の経済指標が常に計算されている。ケース1、2、3のすべてで、経済状態は著しく改善されることが分かる。図1-4を見れば円や国債が暴落するかどうかは重要でないし、恐れる必要は全くなく、むしろそれより遥かに恐いのは、現状維持の場合の経済停滞と国・地方の債務の増加だということが分かる。2004年度の計算された経済データをケース2の場合以下に書く。括弧内の数字は現状維持の場合のデータである。 |
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名目GDP 696兆円(487兆円) 実質GDP 685兆円(537兆円) 実質民間消費支出 336兆円(301兆円) 実質民間設備投資 201兆円(81兆円) 法人企業経常利益 96兆円(32兆円) 失業率 2.11%(5.32%) 一人当たりの雇用者報酬(年収)649万円(496万円) 財政赤字 11兆円(33兆円) マネーサプライ 942兆円(716兆円) 名目民間住宅投資 19.7兆円(16.4兆円) 稼働率91%(67兆円) 日経平均株価 32451円(8324円) 企業のキャッシュフロー 155兆円(87兆円) 市街地価格指数・6大都市 55(27.2) 対ドル円相場 269円(120円) 経常収支 -22.0兆円(14.2兆円) 貿易収支 -16.4兆円(10.6兆円) |
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これらのデータはケース1~3のすべてで、大きな差はないが消費者物価指数だけは。微妙な違いがある。1999を100とすると2004年は96(現状維持)、106(ケース1)、113(ケース2)、111(ケース3)となっている。 |
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この積極財政策の場合、例えばケース2で現状維持の場合に比べ5年後、実質GDPは28%増加、名目GDPは43%増加、民間設備投資は2.5倍、法人企業利益は3倍に激増、失業率は2.1%まで下がり、インフレ率は2.6%、日経平均は3万2000円にもなる。デフレからは完全に脱却に成功するし、ここまで来れば不良債権問題や金融危機など、とっくに消え去ってしまっているに違いない。税収を比較すると、現状維持の場合、法人税13.2兆円、所得税24.1兆円、消費税11.9兆円でこの3つの合計が49.2兆円であるのに対し、積極財政策を取った場合法人税15.4兆円、所得税39.1兆円、消費税16.4兆円となり3つの合計が70.9兆円だから、21.7兆円の税収増となる。これは、25兆円の法人税減税を行ってこの税収だから、もしも法人税減税が無かったら、46.7兆円の税収増となる。これに非常によく似た例は、昭和恐慌からの経済復興であり、そのことは付記で触れることにする。政府バランスは図4に示した。 |
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これより現状維持の政策では、じりじり財政が悪化し続けるのに対し、財政拡大策であるケース1~3はいずれも急速な財政赤字の縮小が見られ、5年後には黒字になる一歩手前にまで改善する。これは景気回復による税収の増加からくる。 |
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マネーサプライが、現状維持より32%も増加していることに注意しよう。『お金』はもう十分あるから、これ以上お金を市中に流しても無駄だという論理が正しくないことを示している。経済活性化のためには、32%という大幅なマネーサプライの増加が必要だということである。 |
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唯一、気になることがあるとすれば、貿易収支の赤字だろう。しかしながら民間企業設備投資が2.5倍にもなっているのだから、技術進歩は大幅であり、次々と魅力的で国際競争力のある製品が次々と生まれてくる。それにより、徐々に改善するのは間違いない。 |
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毎年60兆円もの財政出動をさせたにも拘わらず、国・地方の債務残高のGDP比が図3で示されたように、現状維持の場合より劇的に減ってしまったが、これはほとんどすべての人の予想とは大きくかけ離れたものであるに違いない。これを読んでいる人はまだ半信半疑の人が多いかもしれない。その一方で、合成の誤謬という経済用語を知っている人もいるだろう。ミクロ経済では正しくてもマクロ経済では正しくないということで、この場合だと緊縮財政策を取ると逆に借金が膨らむというもので、まさにこのケースにぴったりの用語である。 |
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ケース2では、財政赤字が急速に減少し2004年には財政が黒字になる一歩手前の状況であり、債務残高のGDP比が減少するのは理解しやすい。しかし初年度はかなり大幅な財政の悪化があるのではないかと思うかもしれない。しかし実際は債務残高のGDP比が初年度から改善が見られたのはなぜだろうか。例えばケース2で考えてみよう。2000年のGDPは現状維持の場合515.48兆円、ケース2の場合557.67兆円であり、8.2%だけケース2のほうが多い。ところが債務残高は現状維持の場合666兆円、ケース2の場合60兆円の追加支出にも拘わらず、税収の伸びのお陰で債務残高の伸びは43兆円に留まり、債務残高は709兆円となった。つまり債務残高は6.5%しか伸びていない。結局、GDP比で見たときの債務残高は、現状維持のときは1.292だが、60兆円の財政出動をしたケース2のときは1.271となり、現状維持のときより少ない!2年目以降はこの傾向はいっそう顕著化する。つまり、財政出動によるGDPの伸び率のほうが、借金の増加率を上回っているので、GDP比での借金の負担は軽くなるのである。借金の重圧を減らそうと思うとき、借金を減らすことより、GDPを増やした方が遥かに効果的だということだ。 |
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平成15年1月20日経済財政諮問会議は『改革と展望-2002年度改訂(内閣府作成)』という資料を提出した。それは1年前に提出されたものより、見通しはかなり後退した内容になっている。 |
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2010年の名目GDP 584.6兆円 2010年の公債等残高のGDP比 2002年の1.21倍 失業率 4.4% |
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これを我々の財政拡大策であるシナリオAケース2と比べてみよう。 |
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財政拡大後 名目GDP 債務残高のGDP比(1年目を1とする) 失業率 1年目 558兆円 1 4.2% 2年目 586兆円 1.06 3.6% 3年目 624兆円 1.06 3.1% |
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この比較から、政府が2010年に目標としているものは、この政策が開始後僅か1~2年程度で達成でき、しかも「国の借金の重み」を示す債務残高のGDP比はずっと少ない値に収まることが分かる。 |
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→ | 国債残高もGDP比で考えなければ意味がない。GDPが十分大きければ少々の国債残高は問題にならない。図3で明らかなように、GDP比で考えたとき国債残高が増え続けるのは、現状維持の政策を取ったときであり、大規模な財政出動をすればそれを減らすことが出来る。むしろ国債の暴落を心配しなければならないのは現状維持の政策を取り続けたときであろう。 |
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→ | このように誇張されて言われることが多いが、上記のケース1,2,3で国債が暴落したときと、しなかったときを比較した。いずれも現状維持の場合よりはるかに経済は改善している。銀行の保有している国債が暴落し、銀行が破綻し、それにより何年も金融がマヒする可能性があるのだろうか。 |
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例えばシナリオAケース3を考えると、初年度長期金利は3.4%に上昇する。これにより国債は約16%暴落する。銀行は1%長期金利が上がると2.6兆円の損失が発生するから、2.6%の金利上昇で約6.8兆円の損失となる。これに対し、どのように対応すべきだろうか。 |
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1) | 日銀が買い切りオペを行い、金利を買い支えるのであれば、全くそのような損失は発生しない。もっとも、これは暴落の後で売却した場合であり、暴落前に売り抜けるケースもあるわけで、6.8兆円は上限といえる。 |
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過去の金融支援は、預金者保護に17兆円、一時国有化の金融再生に18兆円、預金保険機構に25兆円で計60兆円の公的資金が投入されており、もし現状のまま放置すると、この程度の公的資金による金融支援を繰り返し行わなければならない。6.8兆円(あるいはそれ以下)の金融支援は一回限り。これでデフレから脱却できるなら安い。 |
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この政策によるGDPの増加は、初年度40兆円、2年目77兆円、3年目111兆円、4年目150兆円、5年目190兆円で総額568兆円であり、これを得るためであれば6.8兆円の損失は小さいと言える。 |
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法人企業の経常利益が3倍にもなっている好景気の下では、たとえ銀行が破綻したとしても、別な企業が銀行業務に乗り出すことは確実であり、金融システム再建も間違いなく進むから何の心配もない。銀行が少々の利ざやを稼いでも、企業は融資を受けることができる体力ができている。つまり、国債の暴落に関する影響が誇張されすぎて語られている。 |
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→ | 多くの経済学者が指摘するように、円安は日本経済にプラスとなる。このシミュレーションでも、ケース1,2,3の比較からそれははっきりしている。昭和恐慌からの立ち直りも円安が追い風となった。ただし、対ドル円相場を120円から269円まで変化させてみたが、それほど大きな影響はない。つまり、円の暴落に関する影響が誇張されて語られている。 |
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● | 財政規律を守るという観点からすれば大規模な財政出動は許されない。 |
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→ | 大規模な財政出動をしたときより、現状維持の政策のほうがGDP比で国・地方の借金が遥かに多くなるということは、現状維持政策のほうが財政規律を守っていないということになる。 |
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→ | インフレによる借金帳消しという説明はここでは当てはまらない。インフレ率は低いままであるがGDPが大きく伸びているために、借金の負担が軽くなるということである。 |
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次に減税だけで景気刺激をした場合を考えよう。減税の内訳を表2に書いた。これをシナリオBと呼ぶ。 |
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60兆円の場合だけは2000年はまだ景気の回復が十分でなく税収が少ないので法人税の減税は18兆円、所得税の減税は29兆円に止めてある。2001年以降は、それぞれ20兆円、30兆円の減税を行っている。つまり2000年は57兆円の減税、その次年度以降が60兆円の減税という意味である。大規模な減税のため、財政の健全化はシナリオAより遅くなるが、それでも現状維持の場合の絶望的な状況より遥かに改善されている。 |
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このシナリオの結果を簡単にまとめると、この場合も景気は順調に回復する。ただし、シナリオAより財政健全化のピッチは遅くなる。これだけの規模の減税なので当然であるが、それでも現状維持の場合のように果てしなく借金の重みが増加し続けるのでなく、1.4程度に収束する。 |
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<表2>減税の内訳総額 | 消費税率 | 法人税減税額 | 所得税(地方税まで含む)減税額 | 10兆円 | 5% | 5兆円 | 5兆円 | 20兆円 | 5% | 10兆円 | 10兆円 | 30兆円 | 5% | 15兆円 | 15兆円 | 40兆円 | 5% | 15兆円 | 25兆円 | 50兆円 | 0%(10兆円減税) | 15兆円 | 25兆円 | 60兆円 | 0%(10兆円減税) | 20兆円 | 30兆円 |
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2004年度の計算された経済データをケース2の場合以下に書く。括弧内の数字は現状維持の場合のデータである。 |
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名目GDP 668兆円(487兆円) 実質GDP 680兆円(537兆円) 実質民間消費支出 373兆円(301兆円) 実質民間設備投資 181兆円(81兆円) 法人企業経常利益 88兆円(32兆円) 失業率 2.31%(5.32%) 一人当たりの雇用者報酬(年収)640万円(496万円) 財政赤字 35兆円(33兆円) マネーサプライ 930兆円(716兆円) 名目民間住宅投資 19.4兆円(16.4兆円) 稼働率88%(67兆円) 日経平均株価 27892円(8324円) 企業のキャッシュフロー 144兆円(87兆円) 市街地価格指数・6大都市 50.7(27.2) 対ドル円相場 280円(120円) 経常収支 -19.4兆円(14.2兆円) 貿易収支 -12.1兆円(10.6兆円) |
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これらのデータはケース1~3のすべてで、大きな差はないが消費者物価指数だけは。微妙な違いがある。1999を100とすると2004年は96(現状維持),101(ケース1)、109(ケース2)、107(ケース3)となっている。 |
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実質GDPに関しては、シナリオAとほとんど同じである。シナリオBは消費者優先なので、消費の伸びはシナリオAの2倍になる。一方、シナリオAは企業優先なので、民間設備投資や法人企業利益が、シナリオBの伸びより大きくなっている。 |
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消費税増税により国・地方の債務を返す方法が検討されている。シミュレーションを使い、消費税を毎年1%ずつ増やしていくと日本経済はどのように推移するかを調べ、国・地方の債務残高が減少するかどうかを調べた。その結果を、逆に財政規模を大幅に増やした場合と比べた。 |
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2000年から5年間、毎年1%ずつ消費税を増加させる。つまり次のように消費税額を設定する。 |
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2000年 6%、 2001年 7%、 2002年 8%、 2003年 9%、 2004年 10% |
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対ドル円相場は内生化(シミュレーションで求める)する。更に長期金利は現状で固定する(外生化)。増税額が少ないので、これらのパラメータを内生化するか、外生化するかは、それほど重要ではない。それ以外の結果を知りたい読者は、筆者に連絡頂きたい。これをケース1とよぶ。ケース2とケース3としては、財政拡大策であるシナリオAのケース2とケース3を使う。 |
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図5から分かるように、国の借金の重みに関して言えば、増税しても現状維持政策とほとんど違わない。つまり借金は返せていない。それどころか財政を大幅に増やした場合より、はるかに借金の重みが増大している。一方、それ以外の経済指標であるが、現状維持の政策では、財政を大幅に増やしたケース2,3より遥かに悪いのだが、消費税増税のケース1は、更に悪化している。実質GDPは3.5%減少、民間設備投資は5%減少、法人企業利益は20%近く減少、消費税値上げの影響で物価は消費税が上乗せされた分(3.3%程度)上昇しているはずだが、デフレの勢いがそれを上回り、インフレ率はマイナスになっている。駆け込み需要があって消費が伸びると考える人もいるかもしれないが、実際は消費は可処分所得の減少のため約5%下がっている。一方失業率は6.16%まで増加、財政赤字は、所得税・法人税の減少のため、28兆円という高いレベルに留まっている。稼働率も3%減って64%となった。内需縮小により、貿易収支は更に黒字幅を増やし、円高圧力を高め、それが空洞化に拍車をかける。民間設備投資の減少により、企業の国際競争力は、更に失われる。 |
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<図5> | ケース1は消費税を増税した場合、ケース2と3は財政を拡大した場合(シナリオAのケース2と3) |
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このことから明らかなように、消費税増税により国の借金を減らそうという試みは無駄であると結論される。 |
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深尾光洋氏が提案しているように日銀がETF(株価指数連動型の投資信託)を購入して株価を引き上げると、歳出増大と同様の効果がある。これは日銀が通貨増発を行って市中に流すという意味で、減税に類似している。特に株価を上げるという意味では、法人税減税と似ている。シミュレーションモデルで、東証第一部日経平均株価を3,5,8(万円)で5年間固定するという3通りの計算を行ってみた。公定歩合は0%、長期金利は現状維持の水準に固定、対ドル円相場は内生化(シミュレーションで求める)した。結果は表3に示した。 |
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日経平均を8万円で5年間固定すると、この場合60兆円の減税を5年間行った程度の効果がある。2004年には現状維持の場合に比べ実質GDPは26.4%増加、法人企業経常利益は2.9倍、平均インフレ率は2.8%になり、政府バランスは大幅改善し36兆円の黒字となる。株価を高く固定すればするほど、黒字化は早く実現する。国の借金を返すということだけを考えれば、この方法は極めて有効である。 |
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日銀が投資信託を購入するということは、日銀で作られた多額の通貨が市中に流れることであり、通貨増発と何の変わりはない。現在の通貨制度では、国債を発行して財政に回すことにより出ていく通貨は『国の借金』とみなされ、日銀が通貨を増発して投資信託を買ったときに出ていく通貨は借金ではないとみなしているからこのシナリオでは、財政の黒字化が早期に可能となる。 |
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もしも政府が国債を発行する代わりに通貨を政府貨幣発行で供給すれば、減税だけでもすぐに財政は黒字化する。財政が黒字か赤字かというのは単に言葉の問題だけのようにみえる。むしろ実体経済への影響をよく調べるべきであろう。 |
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1) | 日経平均が現在の10倍近くになるということをどう考えるのか。日本企業の株式をかなりの割合で事実上日銀が持つことにならないだろうか。それは、事実上の国営化にならないか。 |
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2) | 日銀がETFを買い始める前に買い、日銀が買い終わった後で売却するというインサイダー取引まがいの取引で巨額の利益を得るディーラーを放置するのか。 |
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3) | 5年後どうやって元の自由な株式市場に戻すのか。景気が過熱したら、日銀が投資信託を売却するのか。そのとき、またインサイダーまがいの取引が出現するのではないか。 |
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4) | 株価が実力以上に高くなりすぎると、一株当たりの収益率が下がり、配当金に期待ができなくなる。しかも日銀が買うのを止めると、キャピタルゲインも期待できなくなり、株離れに拍車がかかる。そうすると、株を持っているのは実質的に日銀だけということになりかねない。 |
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以上の考察より、株価をつり上げる政策より、財政を拡大するほうが自然であり、ディメリットが少ないと思われる。 |
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様々な経済データを計算し検討した結果、株価が高いほど、経済の回復が早い。そのレベルから判断し8万円に株価を維持することが、毎年約60兆円の財政出動をすることに相当することがわかる。 |
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日銀が土地を買えばよいというヴェルナー氏の意見も、日銀が株を買うのと事情はよく似ている。これも相当大規模にやらないと、デフレ克服は無理である。恐らく、九州と四国を全部買うくらいでないと効果は期待できない。日銀の職員が九州と四国に出向いて、全家庭の土地を買収できるだろうか。成田空港のあの狭い土地の買収ですら30年もかけても成功していない。九州と四国を全部買収するなど、夢の又夢だろう。しかも、景気が回復してきたら今度は売却しなければならない。これは日銀のする種類の仕事ではないのではないか。 |
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日銀が国有地を全部買ったらどうなるか。日銀が買っても国有地には変わりはないだろうから国民にとっては痛くも痒くもない。国有地は100兆円程度あるから、それが、日銀所有となるとその代金が国庫に入るから政府バランスの改善になる。どうせなら、通常価格の10倍、いや100倍の値段で買ってもらったらどうだ。政府と日銀がアコードを結べば、その程度のことは可能だろう。そのアコードに同意する日銀総裁を選べばよいだけだ。これならば、実体経済には何の影響も及ばすこともなく、難なく『財政健全化』が可能となる。 |
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景気回復のために円安誘導を行うという案が議論されている。シミュレーションモデルを使い、この案は日本経済を復活させるまでに至らないことを示す。これをシナリオEとよぶことにし、次の2つのケースでシミュレーションをしてみる。但し、公定歩合は0%に保ち、長期金利は内生化(シミュレーションで求める)する。 |
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50円下落させるケース | 対ドル円相場が実際の水準より50円低い水準で5年間保たれたとする。 |
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100円下落させるケース | 対ドル円相場が実際の水準より100円低い水準で5年間保たれたとする。 |
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結論から言えば、図6で分かるように円相場の経済への影響は少なく、これだけの円相場の下落にも拘わらず、経済はそれほど改善されない。例えば実質GDPとして、現状維持のときは、2004年は537兆円と予測されているが、円相場を50円下落させる場合は550兆円、100円下落させる場合は557兆円である。これに対し財政を拡大するなら685兆円にも達する。一方、インフレ率に関しては円安誘導策の場合、低成長の割には比較的高い。いわば成長なきインフレであり、しかも貿易摩擦拡大は必至だから、賢明な政策とは言えない。財政を拡大した場合と比較すれば、桁違いにメリットが少ない。 |
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金融公庫等が発行する債券を日銀に買わせ、貸出しを拡大する案 |
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金融公庫等が発行する債券を日銀に買ってもらい、そこで調達した資金を有利な貸し出し条件で国民に一定額を貸し付ける案を考えてみよう。貸出とは名ばかりで事実上返済を放棄するものであれば、事実上の可処分所得を増加させると言って良く、政府バランスを悪化させない。 |
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公定歩合は0%に保ち、長期金利は内生化(シミュレーションの中で求める)するが、対ドル円相場は現状維持で固定する(外生化)。年間の支払額は30兆円、40兆円、50兆円、60兆円、70兆円、80兆円の6種類を考えた。これらは国民全体に均等に配布した場合は一人当たりにするとそれぞれ24万円、31万円、39万円、47万円、55万円、63万円程度になる。 |
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実質GDPの推移を図7,政府バランスを図8で示した。0兆円というのは、現状維持の政策で、日経新聞社の経済予測でもある。これによると2004年に経済が落ち込むことを予想している。これに引きずられて、一定金額を支給した場合も2004年での落ち込みが予想されている。初年度2000年には大きなGDPの拡大を示している。最初の1~2年は余剰労働力の有効利用により簡単に成長が可能となるからである。もちろん、この政策を2003年から始めれば、2003年、2004年には大きなGDPの伸びが期待される。 |
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当然のことながら、経済活動の活発化により税収が伸び、政府バランスは改善する。特に80兆円の場合は、2002年から財政が黒字化する。 |
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683年に我が国最初の富本銭と呼ばれる貨幣が発行されて以来、拡大する経済規模に応じて、流通する貨幣量も、増やされてきた。増加の速度が速すぎればインフレになり、遅すぎればデフレになり経済が停滞した。現在採用されている管理通貨制度とは、経済規模に応じた通貨の量を確保するという制度であり、貨幣を利用している人は、すべてこの制度を認め貨幣の価値を認めているわけだから、ほぼ日本人の全員が管理通貨制度を認めているということである。つまり、経済規模が拡大したらそれに応じて貨幣の量を増やしてよろしいと認めているのである。 |
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図9には、マネーサプライ(通貨供給量)の増加率をグラフにした。このグラフから分かることは、1970年代、1980年代には、毎年10%~20%の「通貨増発」を行ってきたことである。この頃は土地の値上がりにより担保価値が増大し、銀行からの融資を増やすことが出来た。銀行のおカネは、元々は日銀が刷ったものだから、当時は日銀がどんどんおカネを刷って、市中に流していたことになる。しかし、誰もそれを通貨増発だと非難しなかったし、そんなことをすれば、ハイパーインフレになるとか国が潰れるとか発言する者はいなかった。なぜなら、これが『公認された通貨増発法』だったからである。現在、マネーサプライの10%~20%といえば、67兆円~130兆円ということになる。 |
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バブル崩壊で土地の担保価値が減少してくると、融資を受けたおカネを返さざるを得なくなり、市中から銀行へとおカネが逆流し始め、やがておカネが足りなくなり、デフレに陥っている。現在、おカネ不足を解消するために、『公認された通貨増発法』は使えない。なぜなら、土地の担保価値が下がり、融資が不可能になっているし、銀行はBIS規制という極めて厳しい規制があるために、貸出どころか貸し剥がしをしなければ業務の継続が不可能になっているからだ。公認された通貨増発法が駄目なら、非公認の通貨増発法として様々な方法が提案されている。それがここで書いた諸提案で財政拡大、日銀が株や土地を買う案、円安誘導、銀行を経由しない貸出の増加等である。円安誘導がなぜ通貨増発なのかと思うかもしれないが、円安にしようと思えば、円を増発し、その円でドルを買わなければならず、やはり円という通貨の増発策に変わりはない。 |
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どの方法を採用したとしても(円安誘導は効果が限定的であるが)、適量の通貨が市中に供給されれば、経済は立ち直ることがシミュレーションにより示されている。公認された方法であろうと、なかろうと、実体経済にとっては全く同様である。そうであれば、経済が最も健全な形で再生できるような方法を採用し、一刻も早く元の活力のある姿に戻して欲しいと願うものである。結論として筆者が考える最も健全な形とは、財政の拡大策である。 |
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過去の景気対策は、10兆円、20兆円レベルであった。シミュレーションでも、この程度の景気対策では、デフレ克服は無理だし、中断すれば直ぐに元のデフレに逆戻りしてしまうのは明らかである。きちんとデフレを止め、GDP比でみた国・地方の債務残高の増加に歯止めを掛けるには、数十兆円規模で5年間は続けなければならないというのが、このシミュレーションの結論である。 |
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昭和恐慌の際、高橋是清は日銀による国債引受という方法で大規模な財政拡大策により経済を復活させた。このときも、緊縮財政がデフレを引き起こし、国の債務は増え続けていたのだが、1932年から始まる大規模な財政拡大策により、1933年には10%を超えるGNPの成長を示した。しかも、政府債務/GNPの比は図10にあるように、1934年からは増加に歯止めが掛かっている。不幸にも1936年には高橋是清は2・26事件で暗殺され、その後は軍部による国債の乱発が行われ戦争へと向かうのだが、高橋是清はデフレを止め、債務のGNP比の増加に歯止めを掛けることに成功している。図3と比較してみて頂きたい。 |
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