ミクロ経済学の第一歩 有斐閣ストゥディア [プリント・レプリカ]Kindle版 安 藤至大 (著)あんどむねとも
サンプル25p
ミクロ経済学の第一歩 有斐閣ストゥディア [プリント・レプリカ]Kindle版
安藤至大 (著)あんどむねとも
2013
2014年2月19日
形式: 単行本(ソフトカバー)
初級のミクロ経済学の本を読んでも、ある理論の前提になっていることが説明されていない、
またはあまりうまく説明されていないことがある。そのため、どこかモヤモヤしたものがあったりする。
本書では、初心者がつまずきやすいと思われるポイントをうまく説明しています。
---------------------------------
第1部では、まず、価格と価値の違いについて説明し、
「財・サービスに対する価値がお互いに違うからこそ、交換によってお互いの利益になる」ことを示します。
そして、ミクロ経済学の目的を
「人々が合意の上で行う交換によって生み出される利益(=余剰)を最大限に実現させること」とします。(p19)
また、ミクロ経済学では、「人は自分の満足度(効用)を最大にするように行動を選択する」と考える。
そのような行動を「合理的」であるともいう。
「合理的」というと「人間はそんなに合理的ではない」と言う人がいるが、
本書では、「本人が納得してそれを選んでいるといった程度の意味」としている。(p27)
では、どうしたら効用が最大になる選択ができるか。
それを考えるときに欠かせないが次の4点です。
1 インセンティブ
2 トレードオフ
3 「会計上の費用」と「経済的な費用(機会費用)」 との違い。
4 限界的な部分を見る。
--------------------
ここでは4 について少しだけ書きます。
「限界的な部分を見る」とはどういう意味か?
注目している行動について、「それを少し増やしたり減らしたりしたときのこと」を指す。
つまり、合理的な人は、全体ではなく、ある状態に注目し、
「そこから少しだけ増やしたり減らしたりしたときにどうなるか」(限界的な部分)を見て意志決定をするということ。
なぜ、そういう意志決定をするのか?
それは、多くの場合において、そのほうが「最善の選択が可能になる」からだと。
限界的に考える場合、異なる選択肢の優劣を検討する際には必要な情報が少なくてすみます。
つまり、全体的な情報は必要なくて、「そこから増やしても減らしても損をするという点」を見つければいい。(p40)
(↑ 説明を省略して書いたので、ここだけ読んでも分からない人がいるかも知れませんが、
本書では「デパートの営業時間を何時までにしたら一番利益があるか」という例で説明されており、
読めばちゃんと分かります)
-----------------------------------
第2部では、まず「完全競争市場」という理想的な条件を想定します。
これは、「特定の財・サービスの取引が非常に円滑に行われている状態」です。
そして、需要曲線、供給曲線を説明し、そういう完全競争市場において成立する均衡価格では、
取引している人の全員が余剰を得ているとする。
このとき総余剰が最大化されており、もうこれ以上に交換の利益が増やせないので「効率的」であるという。
この完全競争市場とは、理想的で非現実的な想定ですが、
「理想的な姿をベンチマークとして考えておくと何が問題になるか明確になる」という利点がある(p96)
そして、そのような完全競争市場のときに、政府が介入すると、
「死荷重」が発生し、総余剰が減ってしまうことを説明します。
--------------------------------------
第3部では、完全競争市場の前提が満たされていないために、
取引が円滑に行われない「市場の失敗」について説明します。 市場の失敗には以下のものがある。
1 不完全競争のとき
2 外部性があるとき
3 公共財のとき
4 情報の非対称があるとき
5 取引費用が大きいとき
1,2,3,4 を説明し、5の「取引費用」については11章で別立てで説明しています。
というのも、じつは上での「1,2,3,4の市場の失敗」 は、
「取引費用が大きいことで発生している」と考えられるからです。
-----------------------------------------
第4部では、ゲーム理論について。
戦略的状況
ナッシュ均衡
囚人のジレンマ (本当は、『容疑者たちのジレンマ』と訳すほうが正確らしい)
・・・などのゲーム理論の基礎的な考えを説明します。
そして、「ゲームのルールを変更することで、ゲームのプレイヤーにとって望ましい行動が
変わってしまうこと」 が示されます。
これを応用することで、制度設計について議論できるようになります。
つまり、「どういう制度を設計したら、人々が社会的に見て望ましい行動を選択するか」
という研究ができるわけです。
---------------------------------------------
本書はごく基本というか、初歩のことを説明していますが、
この1冊は、そのあと初級以上の教科書を読み進めるための良い「地ならし」になると思います。
高校生、大学1年生、これから経済学を勉強したいと考える誰にでもお薦めです。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
目次:
『第1部: ミクロ経済学の考え方』
第1章 ミクロ経済学とは?
第2章 個人の選択を考える
『第2部: 完全競争市場』
第3章 需要曲線と供給曲線
第4章 市場均衡と効率性
第5章 完全競争市場への政府介入と死荷重の発生
『第3部: 市場の失敗と政府の役割』
第6章 市場の失敗と政府の役割
第7章 独 占
第8章 外部性
第9章 公共財
第10章 情報の非対称
第11章 取引費用
『第4部: ゲーム理論』
第12章 ゲーム理論と制度設計
またはあまりうまく説明されていないことがある。そのため、どこかモヤモヤしたものがあったりする。
本書では、初心者がつまずきやすいと思われるポイントをうまく説明しています。
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第1部では、まず、価格と価値の違いについて説明し、
「財・サービスに対する価値がお互いに違うからこそ、交換によってお互いの利益になる」ことを示します。
そして、ミクロ経済学の目的を
「人々が合意の上で行う交換によって生み出される利益(=余剰)を最大限に実現させること」とします。(p19)
また、ミクロ経済学では、「人は自分の満足度(効用)を最大にするように行動を選択する」と考える。
そのような行動を「合理的」であるともいう。
「合理的」というと「人間はそんなに合理的ではない」と言う人がいるが、
本書では、「本人が納得してそれを選んでいるといった程度の意味」としている。(p27)
では、どうしたら効用が最大になる選択ができるか。
それを考えるときに欠かせないが次の4点です。
1 インセンティブ
2 トレードオフ
3 「会計上の費用」と「経済的な費用(機会費用)」 との違い。
4 限界的な部分を見る。
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ここでは4 について少しだけ書きます。
「限界的な部分を見る」とはどういう意味か?
注目している行動について、「それを少し増やしたり減らしたりしたときのこと」を指す。
つまり、合理的な人は、全体ではなく、ある状態に注目し、
「そこから少しだけ増やしたり減らしたりしたときにどうなるか」(限界的な部分)を見て意志決定をするということ。
なぜ、そういう意志決定をするのか?
それは、多くの場合において、そのほうが「最善の選択が可能になる」からだと。
限界的に考える場合、異なる選択肢の優劣を検討する際には必要な情報が少なくてすみます。
つまり、全体的な情報は必要なくて、「そこから増やしても減らしても損をするという点」を見つければいい。(p40)
(↑ 説明を省略して書いたので、ここだけ読んでも分からない人がいるかも知れませんが、
本書では「デパートの営業時間を何時までにしたら一番利益があるか」という例で説明されており、
読めばちゃんと分かります)
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第2部では、まず「完全競争市場」という理想的な条件を想定します。
これは、「特定の財・サービスの取引が非常に円滑に行われている状態」です。
そして、需要曲線、供給曲線を説明し、そういう完全競争市場において成立する均衡価格では、
取引している人の全員が余剰を得ているとする。
このとき総余剰が最大化されており、もうこれ以上に交換の利益が増やせないので「効率的」であるという。
この完全競争市場とは、理想的で非現実的な想定ですが、
「理想的な姿をベンチマークとして考えておくと何が問題になるか明確になる」という利点がある(p96)
そして、そのような完全競争市場のときに、政府が介入すると、
「死荷重」が発生し、総余剰が減ってしまうことを説明します。
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第3部では、完全競争市場の前提が満たされていないために、
取引が円滑に行われない「市場の失敗」について説明します。 市場の失敗には以下のものがある。
1 不完全競争のとき
2 外部性があるとき
3 公共財のとき
4 情報の非対称があるとき
5 取引費用が大きいとき
1,2,3,4 を説明し、5の「取引費用」については11章で別立てで説明しています。
というのも、じつは上での「1,2,3,4の市場の失敗」 は、
「取引費用が大きいことで発生している」と考えられるからです。
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第4部では、ゲーム理論について。
戦略的状況
ナッシュ均衡
囚人のジレンマ (本当は、『容疑者たちのジレンマ』と訳すほうが正確らしい)
・・・などのゲーム理論の基礎的な考えを説明します。
そして、「ゲームのルールを変更することで、ゲームのプレイヤーにとって望ましい行動が
変わってしまうこと」 が示されます。
これを応用することで、制度設計について議論できるようになります。
つまり、「どういう制度を設計したら、人々が社会的に見て望ましい行動を選択するか」
という研究ができるわけです。
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本書はごく基本というか、初歩のことを説明していますが、
この1冊は、そのあと初級以上の教科書を読み進めるための良い「地ならし」になると思います。
高校生、大学1年生、これから経済学を勉強したいと考える誰にでもお薦めです。
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目次:
『第1部: ミクロ経済学の考え方』
第1章 ミクロ経済学とは?
第2章 個人の選択を考える
『第2部: 完全競争市場』
第3章 需要曲線と供給曲線
第4章 市場均衡と効率性
第5章 完全競争市場への政府介入と死荷重の発生
『第3部: 市場の失敗と政府の役割』
第6章 市場の失敗と政府の役割
第7章 独 占
第8章 外部性
第9章 公共財
第10章 情報の非対称
第11章 取引費用
『第4部: ゲーム理論』
第12章 ゲーム理論と制度設計
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