月曜日, 12月 02, 2019

香港デモ「暴徒と呼ぶな」 選挙監視団参加の伊勢崎教授:朝日新聞デジタル

香港デモ「暴徒と呼ぶな」 選挙監視団参加の伊勢崎教授:朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/articles/ASMCX5QJPMCXTPOB006.html?ref=amp_login

香港デモ「暴徒と呼ぶな」 選挙監視団参加の伊勢崎教授

 政府への抗議デモが続く香港。11月24日の区議会選挙について、公正な選挙の実施を危ぶんだ団体の要請で、日本から唯一、民間の国際選挙監視団に参加したのが、伊勢崎賢治・東京外国語大大学院教授。国連PKO幹部などを経てアフガニスタン武装解除を担当した経験をもつ。那覇市で朝日新聞などの取材に応じた。
 ――どのような経緯で参加したのでしょうか。
 香港のNGOから、メールで参加要請があった。メンバーは豪州や英国などの人権派議員や弁護士ばかり。19人が三つに分かれて投票所を回った。政府が投票所を閉鎖することも懸念していたが、驚くほど平和裏に行われた。「国際社会の目が入っているぞ」というメッセージを送ることはできたと思う。
 ――実際の選挙の様子は。
 異様だったのは、投票所の運営ルールが統一されておらず、場所によってバラバラで、カメラをつけた武装警官が投票所内にいる所もあったこと。非常事態宣言も出ていないのに、警察が中立性を失い、警察官が行動基準に縛られず個人裁量で動いている異常な状況だった。一方で若者は、シンボルの黒シャツを誰も着ずに投票所に足を運んだ。彼らはSNSで瞬時に情報を共有し、非常に計画的に動員している。「自由が欲しい」という一つの目的のために、全ての違いを超えてつながっていた。
 ――「暴徒化する若者」とも言われています。
 彼らを暴徒と呼ぶのは絶対におかしい。人口700万人のうち200万人が参加するデモが、あれだけ長期間続けば、普通は「内戦」と呼ぶ。だけど彼らは誰も殺していない。中国というスーパーパワーを相手に、民主主義と自由を求めて見たこともない規模のデモを続けている。偉大だと思う。
 ――民主派圧勝で香港の状況は変わるでしょうか。
 それは分からない。選挙の自由がないという構造的な問題は残ったままだから。今回、香港では分断が起こってしまった。大人も子どもも研究者も。
 ――日本政府は明確なメッセージを出していません。
 香港で起きているのは明確に、人道に対する罪。いまの国際司法では人道被害は放っておかない。本当なら憲法9条を持っている平和国家こそが率先して「人道に対する罪はどこで起きようが許さない」という意思表示をする場面。だけど残念ながら、日本にそういう感覚はないだろう。
 ――沖縄について、運動は全国に広がっていません。違いは何でしょう。
 沖縄の問題になってしまっているのだろう。だけど僕は日本の主権の問題だと思っている。日米地位協定は日本の主権に関わっているのだから。政府や多くの日本国民は、迷惑施設を押しつけられた沖縄が文句を言っているという構図にしたがっているが、それをどう打破するかだ。(藤原慎一)