金曜日, 3月 15, 2019

ライオネル・ロビンズ Lionel Charles Robbins, Baron Robbins, 1898 - 1984


ロビンズ男爵ライオネル・チャールズ・ロビンズLionel Charles Robbins, Baron Robbins1898年11月22日 - 1984年5月15日)はイギリス経済学者
1930年代にはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスLSE)の経済学部長としてイギリスにローザンヌ学派オーストリア学派などの流れを汲む大陸ヨーロッパの経済学の伝統を定着させ、LSEをケンブリッジ大学に対抗する経済学の拠点として発展させた。
経済学の方法論に関して書かれた1932年の論考『経済学の本質と意義』(Essay on the Nature and Significance of Economic Science)は非常に有名。またジョン・メイナード・ケインズの『一般理論』の発表後にはケインズとの間に論争を展開した。
第2次世界大戦中から戦後にかけてはイギリス政府に請われ、政府関連のいくつかの役職に就いている。1959年には一代貴族に叙せられた。

ライオネル・ロビンズ
新古典派経済学
Lionel Robbins at the opening of the Lionel Robbins building, 27th July 1978.
生誕1898年11月22日
シプソン, ミドルセックス
死没1984年5月15日(85歳没)
ロンドン
国籍イギリスの旗 イギリス
研究機関LSE
影響を
受けた人物
ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ
フィリップ・ウィックスティード
レオン・ワルラス
ヴィルフレド・パレート
オイゲン・フォン・ベーム=バヴェルク
フリードリヒ・フォン・ヴィーザー
クヌート・ヴィクセル
アルフレッド・マーシャル
影響を
与えた人物
チャールズ・グッドハート
実績ロビンズ・リポート
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経歴と影響編集

学歴編集

職歴編集

アカデミズム以外編集

業績編集

『経済学の本質と意義』編集

  • ロビンズの最も著名な著作は1932年のEssay on the Nature and Significance of Economic Science(『経済学の本質と意義』)である。ここで述べられている経済学の定義、すなわち「様々な用途を持つ希少性のある資源と目的との間の関係としての人間行動を研究する科学」という定義は、今日でもなおよく引用されるものである。希少性に着目してそれに基づいて理論を構築するのは、限界革命以降の新古典派経済学の特徴であり、この定義は限界主義の立場をよく表しているといえる。したがって、ここからもロビンズに対する大陸ヨーロッパの経済理論の影響を窺うことができる。
  • このように、ロビンズの初期の研究は、ローザンヌ学派やオーストリア学派に近い立場からマーシャルの流れを汲む理論を論駁し、新たな経済理論を打ち立てることに関心を向けていた。1928年の論文では、マーシャルの企業の理論を批判し、またその後はマーシャル流の「実質コスト」に基づく供給理論に代えて、フリードリヒ・フォン・ヴィーザーの理論を発展させた代替コストに基づく供給理論を提唱した。

マーシャル派との論争編集

  • 『経済学の本質と意義』は経済学の方法論に関して今日まで影響力の強い著作であるが、同時にこの著作は副産物としてマーシャル派の経済学者との間の新たな論争を巻き起こした。それが効用と厚生経済学を巡る論争である。
  • 『経済学の本質と意義』のなかでロビンズは効用の個人間比較を科学的な根拠がないとして批判しているが、これはアーサー・セシル・ピグー厚生経済学のフレームワークを批判するものでもあった。ピグーの厚生経済学は個人の福祉の観点から経済システムや政策を評価するという画期的な目的を持ったものであったが、ピグーは効用を福祉の指標として専ら用いた。ロビンズが問題としたのはピグーの効用に関する考え方であった。ピグーはジェレミー・ベンサム以来の功利主義の伝統に従い基数的効用を想定した。すなわちピグーのフレームワークにおいては効用は実体のある概念であり、単位を用いて計測できるものであった。従って効用を個人間で比較したり、足し合わせることが可能となる。ピグーの厚生経済学では計測された効用を個人について足し合わせ、その効用の総和の大小を社会の状態、経済システムの評価に用いることが想定されていたのである。
  • これに対してロビンズは効用の個人間での比較を科学としては否定したため、ロビンズの枠組みでは基数的効用を用いることが出来なこととなる。後に両者の論争はロビンズの「勝利」に終わるが、ロビンズの示唆に従って厚生経済学の再構成を行い「新厚生経済学」を確立したジョン・ヒックスニコラス・カルドア、さらにはポール・サミュエルソンといった経済学者たちは順序にのみ焦点を当てる序数的効用を新しいフレームワークの基礎に用いた。

ケインズ理論以降編集

  • ジョン・メイナード・ケインズによる『一般理論』が公刊されるとともに、ロビンズはケインズの理論に対する批判に転ずることになる。1934年にはThe Great Depression(『大恐慌』)を著し、ケインズとは全く異なる大恐慌に関する分析を導き出した。
  • ロビンズはLSEを反ケインズ派の拠点とする意図を持っていたが、これは成功しなかった。ヒックス、カルドア、ラーナーといったかつてロビンズの影響を受けた若手の経済学者が今度はケインズの側につき、ケインズの理論の普及の担い手となったからである。このようにケインズの理論の影響力が高まるにつれてロビンズも態度を軟化させ、次第にケインズの理論を受け入れるようになった。
  • 経歴の終盤において、ロビンズの関心は経済学の学説史に向けられるようになった。1980年代にロビンズがLSEで行った学説史の講義は、1998年に出版された。

主要著作・論文編集

  • "Dynamics of Capitalism", 1926, Economica.
  • "The Optimum Theory of Population", 1927, in Gregory and Dalton, editors, London Essays in Economics.
  • "The Representative Firm", 1928, EJ.
  • "On a Certain Ambiguity in the Conception of Stationary Equilibrium", 1930, EJ.
  • Essay on the Nature and Significance of Economic Science, 1932.
  • "Remarks on the Relationship between Economics and Psychology", 1934, Manchester School.
  • "Remarks on Some Aspects of the Theory of Costs", 1934, EJ.
  • The Great Depression, 1934.
  • "The Place of Jevons in the History of Economic Thought", 1936, Manchester School.
  • "Interpersonal Comparisons of Utility: A Comment", 1938, EJ.
  • The Economic Causes of War, 1939.
  • The Economic Problem in Peace and War, 1947.
  • The Theory of Economic Policy in English Classical Political Economy, 1952.
  • Robert Torrens and the Evolution of Classical Economics, 1958.
  • Politics and Economics, 1963.
  • The University in the Modern World, 1966.
  • The Theory of Economic Development in the History of Economic Thought, 1968.
  • Jacob Viner: A tribute, 1970.
  • The Evolution of Modern Economic Theory, 1970.
  • Autobiography of an Economist, 1971.
  • Political Economy, Past and Present, 1976.
  • Against Inflation, 1979.
  • Higher Education Revisited, 1980.
  • "Economics and Political Economy", 1981, AER.
  • A History of Economic Thought: the LSE Lectures, edited by Warren J. Samuels and Steven G. Medema, 1998.

日本語訳著書編集

  • 『経済学の本質と意義』中山伊知郎監修、辻六兵衛訳、東洋経済新報社、1957年。
  • 『古典経済学の経済政策理論』市川泰治郎訳、東洋経済新報社、1964年。
  • 『経済発展の学説』井手口一夫・伊東正則共訳、東洋経済新報社、1971年。
  • 『一経済学者の自伝』(自伝文庫)田中秀夫監訳、ミネルヴァ書房、2009年。
  • 『経済学の本質と意義』(近代社会思想コレクション)小峯敦・大槻忠史訳、京都大学学術出版会、2016年。

外部リンク編集

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(英:London School of Economics and Political ScienceLSE) は、社会科学に特化した、ロンドン大学群を構成するカレッジの一つである。但し、ロンドン大学を構成する他のカレッジと同様に、通常は独立した個別の大学として扱われている。ロンドン中心部オールドウィッチにキャンパスを構える。

London School of Economics 
and Political Science
LSE main entrance.jpg
LSE Houghton Street Entrance
校訓Rerum cognoscere causas
"To know the causes of things"
学校種別公立
設立年1895年
学長ネマト・シャフィク
大学職員数
1,530[1]
理事会人数
1,570[1]
学部生数4,010[2]
大学院生数5,790[2]
所在地イギリス
Houghton Street, London
WC2A 2AE北緯51度30分50秒 西経0度07分01秒 / 北緯51.51389度 西経0.11694度

ロンドン
キャンパス都市
スクールカラー
     
マスコットビーバー
ウェブサイト

http://www.lse.ac.uk

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経済学が特に有名で、同分野における主要な大学ランキングにて、英国を含む欧州全域で1位の評価を受けるとともに、関係者から13人のノーベル経済学賞受賞者を輩出するなど、世界最高の教育・研究機関の一つに数えられる。また多くの学問分野を開拓するなど、経済学のみならず社会科学全般において多大な貢献をしており、2019年のQS World University Rankingsにおいては、社会科学分野で世界第2位と評価されている[3]。近年では、NGOの運営に関する研究や、環境経営学、欧州共同体研究、開発学、紛争解決学などの分野において、パイオニア的な存在となっている。

現在までに卒業生、教員、創立者から計19人のノーベル賞受賞者(経済学賞13人、文学賞2人、平和賞4人)、53人の各国首相大統領国家元首を輩出している。



ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の著名関係者(創設者・在籍者・教員)リスト。

編集

George Bernard Shaw