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土曜日, 6月 08, 2019

転載:ステファニー・ケルトン教授、財政赤字神話について、財政とインフレに ついて 2019/5/26

編集中

ステファニー・ケルトン教授、財政赤字神話について、財政とインフレについて|MMT(現代金融理論)「論」ウオッチング!

さて、すっかり有名人のケルトン先生ですが、最近は財政赤字についての人々の認識を変えようという方面でがんばっておられますね!
来月は「財政赤字の神話」、という本を出されるようです。
発売の前に、だいたいの主張を知っておこうではありませんか\(^o^)/
インフレについてのMMTの実に繊細な考え方がわかろうというものです。

ソースはこちら
https://www.cnbc.com/2019/03/01/bernie-sanders-economic-advisor-stephanie-kelton-on-mmt-and-2020-race.html


関連インタビュー
https://youtu.be/7cho7naef_k

https://youtu.be/-99yhmKSWNE



あなたはニューヨークタイムスに 「赤字をどう考えるかが違っている」(邦訳)[
http://econdays.net/?p=9512]と題した記事を書かれています。いったい財政赤字は一般的にはどう考えられていて、どう間違っているのですか? 


一般的に財政赤字とは、赤字という言葉から浪費の証拠と考えられがちだと思います。政府が帳簿を管理できていない証拠だと考えるわけです。何か良くないことなのだと。 ところが、過剰消費の証拠になるのは財政赤字ではなく、インフレなのですね。

そもそも財政赤字とは何でしょう? 私はよくこんな言い方をしています。財政赤字は人々を援助するものですよ、と。政府の赤字とは、経済の中に政府が支出した額と税で回収した額との差です。想像してみましょう。政府が米国経済に100ドルを支出し、税による回収は90ドルだけでした。これは政府の赤字であると識別され、政府の帳簿はそう記録されます。しかしこのとき、財政赤字が作り出した10ドルが経済のどこかに存在することになったという事実に注意を向けることを私たちは忘れがちです。つまり、政府の赤字とは私たちの黒字になっているのです。なので、政府の赤色ラベルについて話し合うときには、それは私たちにとっての黒ラベルになるものであること、政府の赤字は私たちの黒字であることをないつも気にかけておくことです。

では、赤字や債務残高は問題にならないのですか?どこかの水準では国の借金が多すぎることにはなりませんか?

財政赤字はものすごく重要なものです。ただ重要な理由は、私たちが教えられて続けてきたような理由とは違います。ふつう人々は赤字と聞くと、何かそれを解消するために努力しなければならないものであるとか、そもそも財政赤字は発生してはいけないものだというように思ってしまいます。赤字は政府が無責任な証拠であると考えるのです。でもそれは本当は、赤字が大きすぎれば問題になるということなのです。インフレは赤字が大きすぎすぎることの証拠になります。

逆に赤字が小さすぎることもあります。 赤字が小さすぎると需要を支えることができません。失業は赤字が小さすぎることの証拠になります。 このように財政赤字は、大きすぎることもあれば小さすぎることもあります。だから財政赤字の適正水準は、全体でバランスのとれた経済を私たちにもたらすようなところにあります。それは高いレベルの雇用を低いインフレで達成するような水準です。

そこで経済成長はどう関連するのでしょうか。失業率が高いということは、赤字が少なすぎるということだと言われましたが、低成長もまた赤字が小さすぎることのサインでしょうか?

それは場合によります。そこから高い成長に持っていくことで見込める利益と、そうなった時のインフレとの間のバランスを考える必要あります。たとえば、ゆっくりと成長している経済があって、今はほぼ完全雇用状態であり、インフレ率は2%程度であるとしましょう。問題はこうなります:財政を拡大するべきでしょうか?成長を後押しするためにより多くの財政赤字を計上するべきでしょうか?では、その目的は何ですか?適切な政策目標とはいったい何ですか?そこでの正しい政策目標とは、完全雇用であり、インフレ加速のリスクを避けた、バランスの取れた経済を維持することだ考えています。

経済学者は、長期的な成長を促すために私たちにできることは、教育、インフラ、研究開発などへの投資であると考えるものです。そうした投資は生産性の成長を加速させ、長期的な実質GDP成長率を高めるでしょう。そのために政府がいま投資する方法がいろいろあるのです。いま財政赤字を増やせば、それは明日の高成長を生み出し、そのとき増えた赤字を吸収できるキャパシティが新しく追加されているのです。

政策提案について後ほど伺いますが、その前にまず現代貨幣理論(MMT)について説明していただけますか。

MMTの本当に単純な観察結果から出発します。それは米ドルは単純な公的独占であるということです。 別の言い方をすれば、アメリカ合衆国の通貨はアメリカ合衆国政府を起源としています。合衆国政府以外のところから来ることはありえません。そして、それゆえに、政府が通貨を使い果たすことはあり得ないことになります。政府は支払い能力の問題には直面しようがありませんし、政府への請求書が支払い不能になることもありえません。政府は支出の元手を探す心配がないのです。支出に先立って増税したりお金と借りたりする必要がそもそもないのです。

つまり、連邦政府は一般家庭と似てはいないのです。家計や民間企業が支出するときにはお金の用意を考えておくものですよね。 連邦政府は家計のような、そんなことをする必要がありません。むしろ、政府が一般世帯のように行動しようとすると、経済がひどい打撃を受けます。あなたや私は米ドルを使います。 州や自治体 - カンザス州やデトロイト市 - は米ドルを使います。 民間企業はドルを使います。対して 米国の連邦政府は、通貨の発行しています。だから通貨との関係が違うのです。 つまり政府は支出に先立って、政府は世帯や民間企業がしなければならないことをする必要がない。お金を確保しておく必要がない。 政府は経済に対してお金を支出することができる。その支出は民間の私たちの収入の一部として受け取られている。シンプルにこういうことです。

いったい支出はどのくらいだと多すぎることになりますか? CBO(議会予算局)はこのままの状況が続けば、2048年には政府債務がGDPの152%になると推定しています。これは史上最高の水準になります。これは多すぎませんか?

国の借金とはいったい何でしょうか。 国の債務とは歴史的な記録に他ならないのですよ。過去に政府が経済に対して支出したすべてのドルうち、まだ徴税されていない分の中で、いまは米国財務省証券という安全な形で保有されている分の記録に他なりません。それが国の借金です。 ですから、国の借金が大きすぎるだろうか、小さすぎるだろうか(あるいは将来的に大きすぎことになるかどうか)という問題は、実際には10年、20年、50年後に安全資産が多くなりすぎているだろうかという問題に帰するのです。

第二次世界大戦後、アメリカの国債残高がGDPの100パーセントを超え125パーセントに近づいたときがありました、そのときに何か起こったのかを考えてみてください。このことを指して、ちょうど私たちが今話題にしているように、それが重大な国家安全保障上の危険をもたらすとか、将来の世代に負担をかけていると言う人がいたら、髪をかきむしりながらちょっと待ってと止めますよね。私たちの祖父母が次世代に負担をもたらしたと思うのですか?第二次世界大戦中に売られたその国債は、戦争に勝利し、最強の中産階級を築き、最長の平和時代の繁栄、資本主義の黄金時代を生み出すことになりました。戦後赤字はさら増加し、政府債務の規模は拡大してきました。そしてもちろん、続く世代はそれらを受け継ぎました。次世代への負担になったのではありません。それは次世代の資産になったのです。

ですから、政府債務がいくらだったら多すぎるかを言うことは誰にもできません。今の日本は、債務がGDPの240パーセントほどです。米国も、今よりかなり、いや、桁違いに大きなものになるでしょう。CBOの将来予測よりもです。そこで疑問は、日本があの規模の債務をどうやって維持しているかです。 インフレ問題はありますか? 金利上昇につながっていませんか?何ら破壊的なことがありますか?日本が長年にわたり実証してきたように、これらは全部、シンプルにノーです。日本の債務はGDPの240パーセントに近いほぼ1000兆円と、とても大きな数字です。 長期金利はほぼゼロで、インフレの問題もありません。つまり、債務規模は悪影響になっていないのです。日本は私たちに本当に重要な教訓をもたらしていると思います。

国の債務が長期にわたって増加するときのただ一つの潜在リスクは本当はインフレなのです。だから、あなたが米国に長期のインフレ問題があると思っていないならば、米国が長期債務問題に直面していると考えるのはおかしいことです。

景気後退期でないときにお金を印刷を増やして支出を行うとインフレが発生し、一般の人々の支出力が破壊されるとの懸念は当然のことではないでしょうか?


たとえば議会の議論の結果予算案ができて、インフラ投資などに数兆ドルもの新規投資を行うと決議された。そしてこんな但し書きが付いた。「国内インフラはまるで第三世界標準にまで近づいているから、数兆ドルを投資する。その投資は互いに相殺しないものとする」。これを単に「米国の経済に三兆ドルを追加支出だ!」とだけ言ったら、問題になりませんか? 反応はほぼ確実です。なぜなら、私たちは完全雇用に近い経済状態にあるから(私はそう考えていませんが)インフレを心配する声が上がります。つまり、問題はいつもこうなのです。「この経済は、価格を上昇させることなしに、どれだけの新規支出を吸収できるのか。」

ここで思い出してください。共和党は減税法案を可決し、その結果、今後10年間で約1.9兆ドルの財政赤字が追加されましたよね。これに対し次のように問うた人々がいました。「米国経済は1.9兆ドルの財政刺激を受容することなどできない。私たちは完全雇用状態にある。だからそんなことをすればあらゆる種類の問題が起こる!」しかしそんなことは何も起こらなかった。この経済はそれを吸収する能力を持っていた、というのが実際のところだったのです。

私の理解では、MMTにおいては、インフレと闘う手段の一つとして(インフレがある水準に達したときの)増税があるとのことです。するとこんな疑問が出てきます。もしその時、人々が基本的な商品の支払いに困っているような状況だとすれば、増税にふさわしい時ではないのではありませんか? また増税は政治的に実現可能でしょうか? だったらFRBによる金利引き上げのような政策を選んだ方が簡単に思えるのですが?

インフレに対する最善の防御は上手に攻めることなのですよ。MMTがやるのは、インフレのリスクに対しては物凄く神経質に考えるようにすることです。 マクロ経済の学派の中で、私たちほどインフレリスクの問題に注意を向けているところがあるとは思えません。私たちや議会が新しい支出法案を検討するときって、その新しい支出が赤字を増やしたり借金を増やしたりするかどうかが考慮されているわけですが、それはやめて、こう考えるべきです。その新たな支出にはインフレを加速させるリスクがどれくらいあるだろうと。そして、やり方を変えるのです。

これまでは議会予算局に行って「この法律をチェックして結果を教えてください。この支出によって債務と赤字が今後どうなりますか?」と聞いたものでした。これからはそうではなく、議会予算局なり他の政府機関なりに行って、こう聞きましょう。「インフラへのこの1兆ドルの投資を通過させることを検討しています。これが明細ですがチェックしていただけますか?この支出は今後5年間に分けて支払う予定ですが、これが実体経済に問題を起こすかどうかを教えてください。つまりインフレのリスクを計算してその結果を教えてください。」その結果、五年の支払いでは短すぎることがわかれば、米国経済にはそれほど十分なスラック(遊び)がないということなので、スパンを七〜十年に広げるべきでしょう。こういった責任ある予算というものに議会が向かい始めるのを見たいものです。

それから、完全雇用に近づくほどに、追加の財政支出には常にインフレのリスクが伴うことになっていきます。政府支出だけではありません。米国で生産される商品やサービスの需要が海外で急増し、そのとき完全雇用であれば、外需にインフレリスクが伴うことになります。あるいは、消費者がとても楽観的になった場合、仮に住宅バブルが発生していて、人々が住居を元手に新たな支出をするとすれば、これもインフレリスクです。つまり、私たちの過剰支出には常にインフレリスクがあります。 MMTがやろうとしているのは、全体の支出水準を、完全雇用と物価の安定と両立する水準に維持しようとすることです。

もしインフレが問題になったら何をすると聞かれますが、その質問はちょっと違います。最初にこう問うべきなはずです。「このインフレをもたらすものは何だろう?このインフレ圧の原因は何だう?」。なにしろ、政府の総支出が多すぎることで経済が過熱する結果、将来のある時点でインフレが重大な問題になる可能性が高いと考える、そのことが信じられません。

それはこういうことです。米国経済がデマンドプルインフレと呼べるものを経験したことは、この一世紀ほどもうないのです。米国で重要とされてきたインフレの実例は、ほぼぜんぶコスト面の要因から来たものです。これはコストプッシュインフレと呼ばれるものです。これは石油価格のショックのようなものが原因で起こります。住宅材料や医療費が原因で、消費者物価が上がることもあります。エネルギーがもっと典型的ですな。インフレの主たる推進力になるのは需要よりもこれらです。

ですから、インフレとの戦い方を考える場合に最初に問われるべきことは、そのインフレ圧力の源がいったい何であるかを理解することであり、次に、そのインフレを撃つのにふさわしい政策ツールで対応していくことだと考えています。 エネルギー価格の上昇によってインフレが発生した場合は、FRBに金利を引き上げさせたり、議会に税金を引き上げさせたりしてもおそらくあまり効果はありません。もっと有効な何かをしなければなりません。

MMTはインフレと闘うために税を使うという考えを拒否します。それは私たちが書いてきた内容のほとんどすべてと相容れない誤解なのですが、なぜか皆さんはいつもそうだと言うのですね。 
その視点からすれば、「何に使えばOKなのか」VS「赤字支出の垂れ流しをどう考えるか」ということですね。
それで、こんな風に考えてもらえたら素晴らしいです。私たちの経済は、資源をフルに使っている状態にいったいどれだけ近いのか。ほとんどその状態になっていれば、そこに政府が割り込んだり追加の支出が発生したりすれば、耐え難いほどのインフレになりえます。

では、私たちが完全雇用に近づくのに非常に近い経済状態であるとして。政府が安全にお金を使うことができるところはあるでしょうか? その答えはイエスです。政府が今日お金を支出し、それが経済の生産力を高める余地を増やすようなところがあるのです。そこへの追加支出ならば吸収できるのです。そうしたことが可能になるところとは、インフラ投資や研究開発といったところです。ブレークスルーや技術革新のように、経済をより生産的にすることを可能にし、生産性を高めるの。 教育も良い例です。

借金や赤字についてはあれこれ議論されていますが、実際の行動はそれほど多くないように感じます。ある意味で、政治家はすでにあなたのアドバイスを受け入れていて、彼らは単に減税し続け、支出し続けているのではないですか?

共和党の減税は、ある意味に私たちにMMTで本当に良い教訓をもたらしたと思います。リスクはいつでも財政赤字ではなくインフレなのです。あの時も、多くの経済学者はがこの減税は危険で無責任であり、伝統的なモデルや伝統的なアプローチによればあらゆる種類の悪影響をもたらすだろうと警告ましたね。もう証拠は出揃っています。ここでもやはり、教科書や一般的な物語が警告していた影響など一切なしの赤字財政支出ができています。だからこのことはとても良いMMTの教訓だと思います。

トランプ大統領についてですが、あなたが政府の債務は個人や企業の債務とはまったく異なるとおっしゃるより先に自ら「借金王」と名乗りました。あなたが大統領でも「借金王」でOKということですか?

以前、一候補者だった頃のトランプは国の債務を心配していて、借金の再交渉ができないかとか、債権者と交渉する必要があると言っていて、そうしたコメントには多くの反発の声が上がっていました。そこで彼は誰かと重要な会話をしたのではないかと思います。彼はストーリーを変えました。それから彼はこう言い出しました。「言わせてくれ、債権者と交渉する必要などないんだぞ。言いたくはないが、お金を印刷するんだ、OK? 言いたくはないが、デフォルトなんてするわけがないんだ。」 借金王は気づいたのだと思います。個人や企業がカジノや不動産の資金調達のために借金をすることと、国債を売って国の債務を得ることは異なるのだと。いつでも期限に支払いを実行できるのだということを。


2016年の選挙でバーニー・サンダースに助言したときはどんな感じでしたか?

そうですね、彼は自分がやりたいことがわかっていたわけです。 私たちが初めて会う前、彼はもうすでにアジェンダを打ち出していました。 彼の12項目のアジェンダは大統領選挙を戦う中での一種の岩盤となっていました。なので私ができることについては貢献できましたが、彼の大きな政策のアイデアは私が関わる前に形ができていたのです。

あなたは現在民主党側の2020人の候補者のうちの誰かと働いていますか?

ええ。

この話題はこのくらいにしておきますか?

そうですね、彼らが公開しないうちは公開できません。

バーニーが2020に出馬しないとすれば、おっしゃるような大規模な民主党提案についてベストな立ち位置にいる人は誰とお考えですか?

立候補を表明した人たちを観察しています。民主党員は大きく揺れていることがわかります。 前回より野心的な政策提案が出ています。2016年にはまだ道が舗装されていなかったようなことです。ブッカー上院議員は「赤ちゃん国債」と呼ばれる大きな提案をしています。 ハリス上院議員は、中産階級への大減税を言っています。 ウォーレン上院議員はグリーンニューディールを。 サンダース上院議員はジョブギャランティーについて話しています。このように、そこにはあらゆる種類の大きなものが揃っています。これらの大きなアイデアを中心に、民主党には非常にエキサイティングな可能性があると思います。


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ステファニー・ケルトン「赤字をどう考えるかが違っている」 BY ステファニー・ケルトン(OCT. 5, 2017)

ニューヨークタイムスの ”How We Think About the Deficit Is Mostly Wrong”
(ttps://www.nytimes.com/2017/10/05/opinion/deficit-tax-cuts-trump.html)

九ページにまとめられた「フレームワーク」を掲げ、トランプ大統領と議会共和党は、政策アジェンダを勝利に結びつけるべく減税を目指しています。 トランプ氏は「わが国の歴史の中で最大の減税」を提供すると約束していました。
対してワシントンでは珍しく超党派的な意見の一致が見られます – 右派からも、左派からも、この計画が赤字を増やす可能性があるという心配の声が上がっています。 民主党のチャールズ・シュメル上院議員(ニューヨーク州)は、この計画が赤字を5兆〜7兆ドルも深刻化させると警告しました。 共和党のボブ・コーカー氏(テネシー州)は、「1ペニーでも赤字を増やすと思われるようなら、法案に投票するつもりはない」と述べました。
果たしてこの減税提案は、裕福な人々への大きな贈り物でしょうか? それは確実です。ではこの減税は、宣伝されている通りに好況を呼び起こし、広く恩恵を人々にもたらすでしょうか? 私はそうは思いません。トランプ氏の計画は、今でさえ危険なまでのに広がっている富や所得の格差をさらに拡大させするものです。減税の恩恵のほとんどはトップ富裕層に行ってしまい、消費者全体の支出や雇用全体の改善にはほとんど影響しないものだからです。
この計画に反対する理由なら、これだけでもう十分です。しかし単純に減税に反対するのは、またこの件に限らず、単に赤字を増やすからと言う理由で国の法案に反対するのは賢明ではありません。
なぜでしょう? 国の財政は赤字が増えても壊滅などしないからです。しかし残念なことにワシントンでは財政効果が太陽で、あらゆることがその周りをまわっています。私たちは、一兆ドルを、史上最大の減税ではなく、ぼろぼろのインフラに対してやメディケア・フォー・オール法案に使うべきなのではないでしょうか。
このような提案すると誰もが口にする言葉があります。「どうやってそれを支払うのですか?」理由は簡単です。議員たちは、赤字の増加を避けることに頭を占領されてます。
まるでパブロフの犬です。これがいつも私たちを押し戻すのです。どちらの党の政治家たちも、財政政策の指針として赤字の額を使うのは止めるべきです。 そんなことより、生活水準を高め、長期的な繁栄に不可欠である教育・技術・インフラへの公共投資を目的とした法律を作っていくべきなのです。
ところが今、挑戦的なことは何であれ議会予算局(CBO)に採点されます。 良い法案であっても「悪い」スコア(つまり財政赤字が増えるとみられるもの)が出るとすぐに廃案にさせられます。 議員たちは「帳尻が合わない」と説得されてしまうからです。これが問題です。
実際のところ、帳尻は常に合います。このことは政府のバランスシートよりも広い視野で見なければわかりません。こう考えてください。政府の支出が経済に新たなお金を足し、その一部が税によって取り除かれます。 プラスとマイナスが絶えず起こります。そして彼らのマイナスが私たちのプラスです。
政府の支出が税金よりも多い時、政府の帳簿に「赤字」が記帳されます。しかしそれは話の半分です。 残り半分の話は、簡単な複式簿記の原理によって浮かび上がってきます。 たとえば政府が経済に100ドルを支出し、税金で90ドルを徴収し、誰かのところに10ドルが残っているとします。 この増えた10ドルは誰かの帳簿に黒字として記帳されます。 つまり政府の赤字10ドルは、経済の他の部分の誰かの黒字10ドルと常に一致します。 ミスマッチはありません。 バランスシートはバランスしていなければいけません。 政府の財政赤字とは、経済における「政府以外の黒字」の写し鏡なのです。
問題は政策立案者がいつも片目だけ閉じていることです。彼らは財政赤字だけ見ていますが、対応するもう半分の黒字を見落としています。 多くの米国人もそれを見逃しているので、政府予算のバランスを取る努力に拍車がかかります。それが民間部門の黒字消滅を意味しているにもかかわらずです。
誤解が広まりすぎているため、米国人は、ナショナリストたちが国債が外国に買われる危険性を煽ろうとする恐怖戦術にすぐ引っかかります。中国(でもそれ以外の国でも)が米国の財政赤字のための支払いを拒絶することを心配する理由など、ぜんぜんないというのが本当です。経済の中にお金を送り込むこと自体が国債の対価なので、政府支出とは自己ファイナンスと考えるべきなのが事実です。
赤字ができて、その新しいお金の一部が国債と交換できるということです。公的議論でいつも欠落しているのが、国債を購入するためのお金は赤字支出自体から来ているという事実です。
政府が国債に金利を払っている事実は見逃してもらえません。議員たちは、財政に占める金利とは、ちょうど家計の中でどんどん膨れ上がっていくケーブルビル(訳注:ケーブルテレビやネット回線などの費用。悩む家庭が増えているそうです)のようなものという考えに囚われています。それは違います。家計と違い、政府は財政の帳尻を合わせるために他の費用を削る必要がありません。議会はいつでも自由自在に財政出動の余地を創り出すことができるのです。教育・インフラ・防衛などにもっと多くのリソースを投入するためにです。それは純政治的な意思決定です。
もちろんできることには現実の限界があります。労働力・機械・コンクリート・鉄鋼がなければ、大規模なインフラ投資を約束することはできません。支出が過多になるとインフレという問題が発生します。私たち人々や工場、原材料を効率的に使用するように財政を調整していくのがポイントです。
ところが「債務」と「赤字」という言葉が政治的な目的のために武器になっているキャピトルヒルにおいては、上のような話が認識すらされません。この二つの単語は、困っている地域社会への資源の投入を拒否したり、当たり前の計画への需要を減らそうとする政治家の格好のボディアーマー(訳注:防弾チョッキのすごいやつ)です。
人を騙すために財政赤字を使う「芸」にかけて、下院議長のポール・ライアンよりも熟練している人はいないでしょう。彼は予算見通しを「財政の脱線」と言い表したり、将来の世代が「債務負担に押しつぶされる」ことから守るのだ、などと言って、社会保障やメディケアなどのプログラムの予算削減を主張します。彼は選挙の洗礼を受けた、扇動的な言葉を選びます。「急いで収支を均衡させなければ」という雰囲気を創り出すのが目的です。この雰囲気により私たちは、国の支出の「帳尻が合わなければ」と言われることになっているのです。
合理的な世界になれば、議員たちは、今のような単純なCBO式の採点モデルなど捨て去り、過多な支出によるリスクとは破産ではなくインフレーションだと認識するでしょう。債務シーリングをめぐる実りのない論争など存在せず、債務とはそれ自体が不平等や貧困や経済停滞と戦う武器として配備されるものなのだと理解されるでしょう。
ステファニー・ケルトン、上院予算委員会民主党の元チーフエコノミストので、ストーニーブルック大学の公共政策と経済学の教授。

1 件のコメント:

  1. 971 金持ち名無しさん、貧乏名無しさん (ワッチョイ e3cc-uQfi)[sage] 2019/06/09(日) 21:07:26.37 ID:YTAojPG60
    >>965
    国債発行と金利の関係について日本の現状(現象)がいい実証例になるからという趣旨のはずだよ。

    日本の政策がMMT的に正しいものであったという話ではなくて、政策の意図はどうであれ(意図は間違ってるからねw)、
    そのことによって引き起こされた現象・現実は、MMTの理論を実証する好例となっているのだという話。

    もう1点は日銀直接引き受けは実質的に行われているでしょ(量的緩和)というものだと思う。

    ケルトンさん自身がこの辺の些か錯綜した(?)日本の報道に関して、明確にインタビューで答えてることの日本語訳を
    たぶん今日だと思うんだけど、リンク見かけたように思っていろいろ探したけど見つからなかった。
    この話ズバリの答えを端的に答えてるからあれいい記事だと思ったんだけど、誰か知りませんか?

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