火曜日, 7月 30, 2019

イングランド銀行の四季報から


イングランド銀行の四季報から

富国と強兵 #1より

貨幣とは何か

経済学の教科書的な解説では 、貨幣には 、交換手段 、計算単位 、価値貯蔵の三つの役割があるとされている 。この解説自体は間違いではないが 、これはあくまでも貨幣の機能についての説明であって 、貨幣の本質をとらえたものとは言えない 。ならば改めて問い直そう 。貨幣の本質とは 、何か 。


この問題を巡っては諸説があるが 、イングランド銀行は 、その季刊誌 (二 ○一四年春号 )に掲載された解説 「現代経済における貨幣 :入門 」において 、 「今日 、貨幣とは負債の一形式であり 、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である 」と述べている ★ 3 。このように 、貨幣を負債の一種とみなす貨幣観を 「信用貨幣論 」と言う 。イングランド銀行が立脚する貨幣観は 、信用貨幣論なのである 。ここでは 、さしあたっては 、このイングランド銀行が 「入門 」として解説する信用貨幣論から出発し 、同じく信用貨幣論に立つ経済学者たちの議論 ★ 4によって補足しつつ 、論を進めていこう 。

★ 3 M i c h a e l M c L e a y , A m a r R a d i a a n d R y l a n d T h o m a s , ' M o n e y i n t h e M o d e r n E c o n o m y : A n I n t r o d u c t i o n ' , Q u a r t e r l y B u l l e t i n , 2 0 1 4 a , Q 1 , B a n k o f E n g l a n d , p p . 4 1 3 , h t t p : / / w w w . b a n k o f e n g l a n d . c o . u k / p u b l i c a t i o n s / D o c u m e n t s / q u a r t e r l y b u l l e t i n / 2 0 1 4 / q b 1 4 q 1 0 1 . p d f ★ 4たとえば 、 R . G . H a w t r e y , C u r r e n c y a n d C r e d i t , L o n g m a n s a n d G r e e n c o , 1 9 1 9 , C h . I 、ホ ートリ ーの議論を要約したものとして 、内藤敦之 『内生的貨幣供給理論の再構築 :ポスト ・ケインズ派の貨幣 ・信用アプロ ーチ 』日本経済評論社 、 2 0 1 1年 、第 3章 。 ★ 5このクル ーソ ーとフライデ ーの例も M c L e a y , R a d i a a n d T h o m a s ( 2 0 1 4 )から借りている 。


まず 、貨幣が負債であるというのは 、どういう意味においてであるのか 。それを説明するために 、イングランド銀行による解説は 、孤島におけるロビンソン ・クル ーソ ーとフライデ ーによる物々交換という想定から説き起こしている ★ 5 。たとえば 、孤島のロビンソン ・クル ーソ ーは野いちごを集め 、フライデ ーは魚を獲ってきて取引する場合には 、二人は 、野いちごと魚を同時に交換する 。この場合は 、貨幣はなくとも 、取引が成立する 。しかし 、実際の取引では 、財 ・サ ーヴィスの交換は 、同時に行われることはきわめてまれである 。たとえば 、クル ーソ ーが野いちごを収穫するのは夏だが 、フライデ ーが魚を獲るのは秋になってからだということもあろう 。この場合 、仮にクル ーソ ーは 、夏に野いちごをフライデ ーに渡しておいて 、秋になってフライデ ーから魚を受け取るものとしよう 。そうすると 、クル ーソ ーには 、夏にフライデ ーに対する 「信用 」が生じ 、反対にフライデ ーにはクル ーソ ーに対する 「負債 」が生じることになる 。そして 、フライデ ーのクル ーソ ーに対する 「負債 」は 、秋にフライデ ーがクル ーソ ーに魚を渡すことで解消される 。このように 、同時点の物々交換の想定とは異なり 、財 ・サ ーヴィスの移転と決済との間には 、時間差というものがあるのが一般的であるため 、財 ・サ ーヴィスの 「売り手 」と 「買い手 」との間に 、 「信用 /負債 」関係が発生することになる 。そして 、この取引における 「信用 /負債 」関係は 、負債が支払われることで解消される 。ここからわかるように 、通常 「売買 」として理解されている行為とは 、本質的に 、 「信用取引 」と言うべきなのである 。さらに 、実際の経済においては 、財 ・サ ーヴィスの取引は 、多くの主体の間で行われるため 、 「売り手 」と 「買い手 」の間の 「信用 /負債 」関係も無数に存在する 。また 、財 ・サ ーヴィスの買い手は 、常に買い手であるというわけではない 。各主体は 、買い手であると同時に売り手であり 、貸し手であると同時に借り手である 。このように 、現実の経済では 、無数の 「信用 /負債 」関係が複雑に絡み合っている 。この場合 、二者間の関係だけで 「信用 /負債 」関係を解消することは著しく困難になる 。二者間の間で定義された 「負債 」を 、第三者が受け取ってくれるとは限らないからである 。たとえば 、クル ーソ ーが有するフライデ ーの負債は 、そのままでは 、フライデ ーから魚を得ることしかできず 、第三者から魚以外のものを得ることができない 。そこで 、ある二者間の関係で定義された 「負債 」と 、別の二者間の関係で定義された 「負債 」とを相互に比較し 、決済するためには 、負債を計算する共通の表示単位が必要になる 。この共通の負債の表示単位 ─ ─たとえば 、円やドルやポンドなど ─ ─こそが 、 「貨幣 」と呼ばれるものである 。貨幣とは 、円やドルといった共通の計算単位で表示された 「負債 」のことなのである 。 「負債 」とは 、言うまでもなく 「信用 」の対概念であり 、 Aの Bに対する負債は 、 Bの Aに対する信用である 。その信用貨幣論によって 、ジョン ・メイナ ード ・ケインズにも影響を与えた A ・ミッチェル ・イネスは 、一九一三年の論文でこう書いている 。 「貨幣とは信用であり 、信用以外の何物でもない 。 Aの貨幣は Bの Aに対する負債であり 、 Bが負債を支払えば 、 Aの貨幣は消滅する 。これが貨幣の理論のすべてである ★ 6 。 」社会学者のジェフリ ー ・インガムもまた 、貨幣とは 「計算貨幣の単位によって示された信用と負債の社会関係 ★ 7 」であると述べている 。貨幣が負債の一形式であるというのは 、以上のような意味においてである 。あらゆる貨幣が負債なのである 。もっとも 、あらゆる負債が貨幣であるというわけではない 。ハイマン ・ミンスキ ーが言うように 、貨幣が負債だというのであるならば 、確かに 「だれでも貨幣を創造できる 」ということになるのだが 、 「問題は 、その貨幣を受け入れさせることにある ★ 8 。 」負債とは 、現在と将来という異時点間の取引によって生じるものであるが 、将来は不確実であることから 、負債は 、デフォルト (債務不履行 )の可能性を伴う 。それゆえ 、負債のうち 、デフォルトの可能性がほとんどないものだとすべての経済主体が信頼して受け入れるものだけが 、交換手段としての役割を果たすことができる 。イングランド銀行の解説は 、次のように述べる 。 「貨幣は 、この信頼の欠如という問題を解決する社会制度である 。それは特殊な種類の借用書であるから 、交換手段としても有用なのである 。特に 、現代経済における貨幣とは 、すべての経済主体が信頼する借用書である ★ 9 。 」今日 、多くの国において 、そのような 「貨幣 」として流通するものは 、 「現金通貨 (中央銀行券と鋳貨 ) 」と 「銀行預金 」とされている 。ここで 、 「銀行預金 」が貨幣とみなされているのは 、現代経済においては 、銀行預金が事実上 、貨幣として機能しているからである 。たとえば 、ほとんどの人が 、現金ではなく銀行預金への振り込みによって給料を受け取っているし 、現金の代わりに銀行預金を貯蓄として使っている 。こうしたことから 、銀行預金とは事実上の貨幣であるとみなされ 、現金通貨と銀行預金を合わせたものが 「広義の貨幣 」とされている 。現代経済では 、 「広義の貨幣 」の大半が銀行預金であり 、現金通貨が占める割合はわずかに過ぎない 。


★ 6 A . M i t c h e l l I n n e s , ' W h a t i s M o n e y , ' i n L . R . W r a y ( e d . ) , C r e d i t a n d S t a t e T h e o r i e s o f M o n e y , E d w a r d E l g a r , 2 0 0 4 , p . 4 2 . ★ 7 G e o f f r e y I n g h a m , T h e N a t u r e o f M o n e y , P o l i t y P r e s s , 2 0 0 4 , p . 1 2 . ★ 8 H y m a n M i n s k y , S t a b i l i z i n g a n U n s t a b l e E c o n o m y , M c G r a w h i l l , 2 0 0 8 , p . 2 5 5 . ★ 9 M c L e a y , R a d i a a n d T h o m a s ( 2 0 1 4 : p p . 6 7 ) .







【論文要約】『現代の経済における貨幣:入門』~現代貨幣の種類について

貨幣に種類があるということとその重要性はあまり知られていません。
今回はイングランド銀行の四季報から、貨幣の種類を論じた論文の抜粋をします。
(全訳はその内経済101に掲載されるかもしれません。その場合、この記事は削除される可能性があります。)


Money in the modern economy:  an introductionBy Michael McLeay, Amar Radia and Ryland Thomas of the Bank’s Monetary Analysis Directorate.

Bank of England Quarterly Bulletin 2014 Q1 pre ... - Semantic Scholar (Adobe PDF)

参考:
#23:362,372

Bank of England (2016) Monetary Policy Framework. Available at: http://www.bankofengland.co.uk/monetarypolicy/
pages/framework/framework.aspx, accessed 13 February 2016.


Bank of England, “What is Money” <
http://edu.bankofengland.co.uk/knowledgebank/what-is-money
/> (accessed 25 March 2018). See also, Central Bank of Kenya, “Currency History”<https://www.centralbank.go.ke/currency-history/> (accessed 25 March 2018).4 European Central Bank, “Virtual Currency Schemes” (October 2012) <https://www.ecb.europa.eu/pub/pdf/other/virtualcurrencyschemes201210en.pdf> (accessed 26 March 2018), at p.9.5  Serge Lanskoy, “The Legal Nature of Economic Money” Banque de France Bulletin Digest No. 73 (January 2000) <http://www.cemla.org/legales/docs/al-v-Grenouiolloux.pdf> (accessed 20 March 2018).6 Michael McLeay, Amar Radia and Ryland Thomas, “Money in the Modern Economy: an introduction”, Bank of England, Quarterly Bulletin (Q1, 2014) <https://www.bankofengland.co.uk/-/media/boe/files/quart

【論文要約】『現代の経済における貨幣:入門』~現代貨幣の種類について

貨幣に種類があるということとその重要性はあまり知られていません。
今回はイングランド銀行の四季報から、貨幣の種類を論じた論文の抜粋をします。
(全訳はその内経済101に掲載されるかもしれません。その場合、この記事は削除される可能性があります。)
本論文は、中野剛志氏が『富国と強兵』などで紹介した論文『現代経済における信用創造』の姉妹論文となります。

貨幣の役割

貨幣には3つの役割がある。
①価値の貯蔵
②計算単位
③交換手段
①価値の貯蔵
貨幣の第一の役割は価値を貯蔵することだ。
合理的に予測可能な方法で価値を長期にわたって維持すると期待される何か。何百年も前に採掘された金や銀は今日でも価値があるだろう。しかし、腐りやすい食べ物は腐るとすぐに価値がなくなってしまう。そのため金や銀は良い価値貯蔵手段になるが、生鮮食品はそれほどではない。
②計算単位
貨幣の第二の役割は計算単位、つまりメニューや契約、価格ラベルなど、商品やサービスが値段付けされる単位だ。
現代経済では、計算単位は通常、通貨、たとえば英国のポンドだが、代わりに一種の商品になることもある。過去には、商品は、主食(「沢山の小麦」)や家畜のような非常に一般的なものを単位として値段付けされていた。
③交換手段
第三に、貨幣は交換手段でなければならない。
商品それ自体を欲しているからというよりは、何か他のものと交換することを企図しているために人々が保有する物だ。例えば、第二次世界大戦でのある戦争捕虜収容所では、貨幣がない中、タバコが交換手段となった。非喫煙者でさえもたばこと交換しようとしただろう。 タバコを吸うことを計画していたからではなく、後で欲する何かのためにタバコを交換することができただろうから。
イングランド銀行の目的の1つは、通貨の価値を保護することだった。交換手段は優れた価値貯蔵手段である必要があるが、優れた交換手段ではない多くの優れた価値貯蔵手段がある。例えば、住宅はかなり長期間にわたって価値を維持する傾向があるが、支払いとして簡単に引き渡すことはできない。
経済における交換手段が計算貨幣になることは通常効率的だ。もし英国の店が米ドルで商品の値段付けていて、それでもまだスターリング通貨(英ポンド)でのみ支払いを受け入れているならば、客は何かを買いたいと思う度にスターリング-ドルの為替レートを知っていなければならないだろう。 これは客側に時間と労力がかかる。

貨幣はIOU(借用証書)だ

ロビンソン・クルーソーとマン・フライデー(ロビンソン・クルーソーの友人)は果実と魚を単純に - 貨幣を使わずに - 交換することができたが、現代経済の人々が行いたい交換ははるかに複雑な交換だ。多数の人々が関与している。そして - 重要なことに - これらの交換のタイミングは通常は一致しない。ロビンソン・クルーソーは旬の夏の間に大量の果実を集めるかもしれないが、マン・フライデーは秋まで大量の魚を捕まえることができない。現代経済では、若者は家を買うために借金したい。高齢者が定年退職のために貯蓄する。そして労働者は、給料日ではなく、毎月の月給を月に渡って徐々に使うことを好む。これらの需要パターンは、ある人々が借りたいと望み、後の時点で他の誰かによって返済される債権、またはIOUを保持したいと望むことを意味する。現代経済における貨幣は、単なるIOUの特殊な形式、あるいは経済会計の言語における金融資産だ。
Money is an IOU 
While Robinson Crusoe and Man Friday could simply swap berries for fish — without using money — the exchanges that people in the modern economy wish to carry out are far more complicated.  Large numbers of people are involved.(4) And — crucially — the timing of these exchanges is not typically coincident.  Just as people do not always want to consume the same type of goods they have produced themselves, they do not always want to consume them  at the same time that they produce them.  Robinson Crusoe may gather a large amount of berries during summer, when they are in season, while ManFriday may not catch many fish until autumn.  In the modern economy, young people want to borrow to buy houses;  older people to save for retirement;  and workers prefer to spend their monthly wage gradually over the month, rather than all on payday.  These patterns of demand mean some people wish to borrow and others wish to hold claims — or IOUs — to be repaid by someone else at a later point in time.   Money in the modern economy is just a special form of IOU, or in the language of economic accounts, a financial asset.

それぞれのIOUはある人の金融負債であり、他の誰かの金融資産と一致する。
金融資産は、経済において他の誰かに対する債権 - 個人、会社、銀行または政府へのIOUだ。
金融資産は経済における他の誰かに対する債権であるため、それらは金融負債でもある。ある人の金融資産は常に他の誰かの借金だ。閉鎖経済における金融負債の大きさは金融資産の大きさに等しくなる。ある人が住宅ローンを借りる場合、彼らは銀行に長いあいだ金額を支払う義務、つまり負債を得る。そして銀行はそれらの支払い、同じ額の資産を受け取る権利を得る。あるいは、彼らが社債を所有している場合、彼らは資産を持つことになるが、会社は同じ規模の負債を持つことになる。対照的に、非金融資産は他の誰に対しても債権がない。誰かが家や金を所有している場合、対応するその負債がある相手はいない。そのため非金融負債は存在しない。経済のすべての人がすべての資産と負債を1つにまとめると、貨幣を含むすべての金融資産および金融負債が相殺され、非金融資産のみが残る。

貨幣の種類

貨幣には主に3つの種類がある。
①通貨(紙幣、硬貨)
②銀行預金
③中央銀行準備
それぞれが経済のある部門から別の部門へのIOUになっている。

①通貨(紙幣、硬貨)

通貨はイングランド銀行からその他の経済部門へのIOUだ。
通貨は消費者が保有する他、市中銀行も預金引出に応じるために少額を保有している。通貨は指定された金額(例えば5ポンド)を、要求に応じて通貨の保有者に「支払うことを約束」する。これにより、通貨はイングランド銀行の負債となり、その保有者の資産となる。
現代の通貨は、他の資産(金や他の商品など)に変換できない不換貨幣だ。不換貨幣は流通貨幣として経済のすべての人に受け入れられているので、イングランド銀行はその貨幣の保有者に債務を負っているが、その債務は不換貨幣でしか返済できない。
通貨が実物財に直接変換できないのであれば、交換でそれらが普遍的に受け入れられるものとなるのは何だろうか?一つの答えは、信頼できる交換手段は、社会的あるいは歴史的な慣習の結果として、徐々に現れるということだ。そのような多くの社会に現れる慣習がある。
通貨を快適に保持するためには、人々はいつか誰かがこれらの紙幣を、国が保証を促進する実物財まもう1つの方法は納税としてそれを受け入れることによって通貨の需要が常にあることを確認することだ。政府は、その通貨が「法定通貨」を表すと見なすことによって、その需要に影響を及ぼすことができる。
政府がこのように通貨の使用に根拠を与えたとしても、それだけでは人々がその通貨を使用する(または法的にしなければならない)ことを保証するわけではない。彼らは自分たちの紙幣が価値があることあることを信頼する必要がある。それは紙幣が偽造されるのが困難であることが重要であることを意味する。彼らは、紙幣の価値が、価値貯蔵として、そして交換手段としてそれらを使うことができるように、広く安定したままであることを信頼する必要がある。これは一般的に国が低く安定したインフレ率を確保しなければならないことを意味する。
イングランド銀行は国民の需要を満たすのに十分な紙幣を確実に創造する。 銀行はまず、商業印刷業者による新しい紙幣の印刷を手配する。 それからそれらを市中銀行の古い紙幣と交換する。それらはもはや使われるのにふさわしくないか、または回収された紙幣の一部だ。 これらの古い紙幣は、その後銀行によって破壊される。
紙幣の需要もまた、一般的に時とともに増加していく。 この追加の需要を満たすために、銀行はまた、古い紙幣を交換するのに必要な以上の紙幣を発行する。 追加で新しく発行された紙幣はイングランド銀行から市中銀行に買われる。市中銀行は、イングランド銀行の紙のIOUである新しい通貨を、電子のIOU、中央銀行準備、と交換することによって支払う。

②銀行預金

通貨は、経済の中で人々や企業が保有するごくわずかな金額しか占めていない。残りは銀行への預金で構成されている。安全上の理由から、消費者は通常、すべての資産を物理的紙幣として保管することを望んでいない。さらに、通貨は利子を支払わないため、銀行預金などの他の資産よりも保有するのは魅力的ではない。これらの理由から、消費者はほとんどの場合、代わりの交換手段である銀行預金を保有することを好む。銀行預金はさまざまな形態を取る。例えば、消費者が保有する当座預金や普通預金、投資家が購入する銀行債権。現代経済ではこれらは電子的に記録される傾向にある。
消費者が自分の紙幣を銀行に預金するとき、彼らは単にイングランド銀行のIOUを市中銀行のIOUに交換しているだけだ。市中銀行は追加の紙幣を受け取るが、見返りに、預金額が消費者の口座に入金される。 消費者は、常に返金できると確信しているため、銀行の預金と通貨を交換するだけだ。 したがって銀行は、彼らのIOUの返済のために、預金者から予想される需要を満たすのに十分な金額の通貨を常に取得できるようにする必要性がある。 ほとんどの家計の預金者にとって、これらの預金は、顧客が彼らに強気の姿勢を保っていることを確実にするために、一定の価値まで保証されている。 これにより、銀行預金は簡単に通貨に交換できると信頼されることを保証し、元の交換手段として機能する
現代の経済では、銀行預金はしばしばデフォルトの貨幣だ。ほとんどの人は現在、通貨ではなく銀行預金で給料の支払いを受けている。そして、これらの預金を通貨に戻すよりむしろ、多くの消費者はそれらを価値の貯蔵として、そしてますます、交換手段として使用している。例えば、消費者がデビットカードで買い物をすると、銀行部門はその消費者への借金を減らす - 消費者の預金が減少する - 一方で、店に支払う金額を増やすと - 店の預金が増える。消費者は、それらを通貨に変換する必要なく、交換手段として預金を直接使用した。
銀行預金は主に市中銀行自身によって創造される。銀行預金の残高は、誰かが彼らの口座に紙幣を支払うたびに増加するが、銀行預金の金額も、誰かが引き出しするたびに減少する。銀行預金の創造にとってずっと重要なのは、銀行による新規融資の行為だ。銀行が顧客のうちの1人に融資をするとき、単純により高い預金残高を顧客の口座に入金する。 その瞬間に、新しい貨幣が創造される。
銀行預金は銀行の単なるIOUであるため、銀行は新しい貨幣を創造することができる。IOUを創造する銀行の能力は、経済の他の誰とも変わりはない。銀行が融資を行うと、借り手も銀行に対して独自のIOUを創造している。唯一の違いは、以前議論した理由で、銀行のIOU(預金)が交換手段、貨幣として広く受け入れられているということだ。とはいえ、市中銀行が貨幣を創造する能力は無限ではない。彼らが創造できる貨幣の量は、特に金融、財政の安定、そしてイングランド銀行の規制政策など、さまざまな要因の影響を受ける。

③中央銀行準備

市中銀行は頻繁な預金の引き出しやその他の支出を満たすためにいくらかの通貨を保有する必要がある。しかし、物理的な紙幣を使って大量の取引を実行するのは、互いに非常に面倒だ。そのため、銀行はイングランド銀行とは異なる種類のIOU、中央銀行準備を保有することが許可されている。イングランド銀行の準備金は、中央銀行が各銀行に借りている単なる電子記録の口座だ。
家計や企業の預金と同じように準備金は銀行にとって便利な交換手段だ。中央銀行の準備金口座は当座預金が家計や企業に役立つように、市中銀行にも同様の役割を果たすと考えることができる。ある銀行が他の銀行に支払いをしたいのであれば - 顧客が取引をするとき、毎日大規模に行うように - 彼らはそれに応じて彼らの準備金残高を調整するであろうイングランド銀行に伝えるだろう。イングランド銀行はまた、市中銀行が必要とするだろう通貨をいくらでも準備金と交換できることを保証する。例えば、多くの家計が自分の預金を紙幣に換金したい場合、市中銀行はそれらの家計に返済するための通貨と準備金を交換することができる。イングランド銀行は、通貨の発行者として、そのような需要を満たすのに十分な通貨が常にあることを確認することができる。

(iii) Central bank reserves 
Commercial banks need to hold some currency to meet frequent deposit withdrawals and other outflows.  But to use physical banknotes to carry out the large volume of transactions they do with each other would be extremely cumbersome.  So banks are allowed to hold a different type of IOU from the Bank of England, known as  central bank reserves and shown in green in  Figure 2.  Bank of England reserves are just an electronic record of the amount owed by the central bank to each individual bank.  Reserves are a useful medium of exchange for banks, just as deposits are for households and companies.  Indeed, reserves accounts at the central bank can be thought of as playing a similar role for commercial banks as current accounts serve for households or firms.  If one bank wants to make a payment to another — as they do every day, on a large scale, when customers make transactions — they will tell the Bank of England who will then adjust their reserves balances accordingly.  The Bank of England also guarantees that any amount of reserves can be swapped for currency should the commercial banks need it.  For example, if lots of households wanted to convert their deposits into banknotes, commercial banks could swap their reserves for currency to repay those households.  As discussed earlier, as the issuer of currency, the Bank of England can make sure there is always enough of it to meet such demand.

まとめ

・今日の貨幣はIOU(借用証書)の一種だが、それは経済のすべての人が商品やサービスとの交換で他の人々に受け入れられると信じている特別なものだ。
・貨幣には主に3つの種類がある:通貨、銀行預金そして中央銀行準備。それぞれが経済のある部門から別の部門へのIOUを表している。
・ 現代経済のほとんどの貨幣は銀行預金であり、銀行預金は市中銀行自身によって創造される。


ミッチェル#23:362,372
イングランド銀行関連
Conclusion
In this chapter we have examined the MMT approach to monetary policy. We explained why central bankers
realised that they are unable to control monetary aggregates and instead explicitly adopt an overnight interest
rate target. In addition, we have discussed the role played by the central bank acting as the government's bank.
This exposes the common belief that the central bank is "independent" of the treasury as a fallacy. The central
bank must cooperate closely with the treasury to ensure the payments system functions smoothly.
We also examined what are called "unconventional" monetary operations that central bankers adopted in the
aftermath of the GFC. We explained why these policies were largely ineffective in accomplishing what they were
supposed to achieve. Finally, we have offered recommendations for more effective policymaking, proposals that
take into account the understanding that MMT has brought to the field of monetary policy. The preferred policy
would follow the recommendations of functional finance: the treasury ought to spend enough to maintain the
full employment of labour. Central banks should provide the mix of currency (cash and reserves) and government
bonds desired by banks, households and firms at the full employment level of output. There is no reason to pur-
sue a 'short squeeze' below a position of full employment, although this is what the principles of 'sound finance
dictate. Unfortunately, policymakers in recent decades have been more inclined to pursue sound finance rather
than functional finance.
References
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pages/framework/framework.aspx, accessed 13 February 2016. 
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tatutory mandate″(FOMC,2016).in addltion to contro‖ing inttation,central banksarealsosubieCttOotherpo‖cy goals.For example′in the∪SA,the FOMC is“nrmly committed to fu1llling its statutory mandate from the Congress of promOting maximumemployment,stable prices,and moderatelong term interest rates″and also states that“the median ofFOA/1C par‐dcipants'estimatesofthelongerrun normalrateofunemploymentwas4.9 percent″(FOMC′2016) The Bank of England must also“ support the Government economic objectives including those for growth and employment″(Bank of England 2016)ln Australia′the RBA must assistin the“the maintenance offull emp10ymentin Australiatand more generally″theecOnomicprospentyandwelfareofthepeopleofAustralia″(Reserve Bank Act′可959).A third policy obleCJVe Ofmoderadng asset pttce growth is sometimes mentioned,but not formally acknow´ledged.lndeed,the∪S Fed′like some Other central banks,prefers tO avoid speaking in pub‖c about asset prices on
例として、中央銀行の実務委員会の目標を管理することに加えて、FOMCは「最大雇用促進のための議会から安定した法定目標を達成することに尽力している」と発表した。 また、「FOA / 1C国債の平均失業率の中央値は4.9%でした」(FOMC'2016)「また、「ニュージーランドの銀行」「オーストラリア」「オーストラリア」「オーストラリア」「オーストラリア」「オーストラリア」「オーストラリア」)との記載もあります。 RBAは、「オーストラリア全土の完全な維持とオーストラリアの国民経済の維持」(ロシア連邦準備銀行法 '959)を支援しなければならない。第3の方針「近代的資産資産の増加」が言及されることがあるが、正式に認められていない。 他のいくつかの中央銀行と同様に、資産価格について公の場で話すことを避けたい

成長と雇用のためのものを含む政府の経済目標を支援する」(Bank of England'2016)ln

What we use monetary policy for

Monetary policy affects how much prices are rising – called the rate of inflation. We set monetary policy to achieve the Government’s target of keeping inflation at 2%.

Low and stable inflation is good for the UK’s economy and it is our main monetary policy aim.

We also support the Government’s other economic aims for growth and employment. Sometimes, in the short term, we need to balance our target of low inflation with supporting economic growth and jobs.

Every year, the  sets out a framework under which we have to set monetary policy. They send this to our Governor in a remit letter.