バロンズ誌、今週のカバーに製薬会社が注力する遺伝子治療を取り上げる。大手製薬会社はこれまで、新薬開発で遅れをとってきた。こうした製薬会社にとって、遺伝子治療は新たな希望の星となるかもしれない。遺伝子治療は血友病や筋ジストロフィーなど数々の遺伝的疾患を治療する上で活路を見出すだけに、期待が大きい。
例えばスイスの製薬大手ロシュ・ホールディングスは、血友病や目の稀な疾患治療薬でリードするスパーク・セラピューティクスを48億ドル、1株当たり114.50ドルで買収したが、これは買収前の株価の2倍に相当する。スイスの製薬大手ノバルティスも、脊髄性筋萎縮症の治療薬で有名なアベクシスを87億ドル、1株当たりでは同じく2倍の上乗せ価格で買収を決定した。遺伝子治療薬メーカーをめぐる争奪戦が苛烈となり、勢力図が塗り替えられつつある製薬業界は今後どうなるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。
当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米連邦債務を取り上げる。抄訳は、以下の通り。
財政赤字、今の左派と右派には双方にとって問題なし—Do Budget Deficits Matter? Not to Today’s Left or Right.
チェイニー副大統領を描いた映画「Vice」はアカデミー作品賞を受賞しなかったが、映画によればチェイニー氏は、ブッシュ政権(子)で最初に財務長官を務めたオニール氏に対し「レーガン政権は、赤字が問題でないことを証明した」と語ったとされる。
それから17年後、債務王を名乗るトランプ氏が大統領に就任し財政赤字は1兆ドルを超え、国内総生産(GDP)比5%に相当する見通しだ。しかも税制改革法の施行が一因でむしろ景気回復は今年の6月で10年目を迎え、金融危機発生により急増したわけでもない。
左派の間では、現代貨幣理論(Modern Monetary Theory、MMT)が支持を広げている。極端に単純に説明すると、国債は紙幣を印刷することで返済可能であるため、政府は財政赤字によって縛られないという考え方である。仮に過剰歳出でマネーが流通量が増えインフレが加速したとしても、財政政策を調整すれば抑制できることになる。MMTの支持者にはアレクサンドリア・オカシオ−コルテス下院議員が挙げられ、同議員は何兆ドルものコストが掛かる公算が大きいグリーン・ニュー・ディール政策を主張する一人だ。
逆にパウエルFRB議長はMMTを支持せず、半期に一度の議会証言ではMMTに対し「自国通貨で借入が出来る国にとって財政赤字は問題ないとの考え方は、誤っている」と発言。さらに同議長は「(Fedの役割は)特定の政策への支持を提供するものではない」と述べ、グリーン・ニュー・ディール政策にFedの保有資産を活用する道筋を断ったと言える。
パウエル氏の考え方は、多くのエコノミストや金融の専門家も同調する。財政赤字は民間投資を締め出し、金利と物価を上昇させるため、悪とされてきた。財政赤字は緊急時こそ問題にされてこなかったが、詳細の成長を抑制するものとして判断されてきたためだ。
もっとも、足元では民主党寄りのエコノミストを中心にこうした考えに真っ向から対立しつつある。オバマ政権での大統領経済諮問委員会(CEA)委員長だったジェイソン・ファーマン氏、オバマ政権での国歌経済会議委員長でクリントン政権では財務長官を務めたラリー・サマーズ氏は、フォーリン・アフェアーズ誌への寄稿文で、インフラ投資のような切迫した必要性を鑑み、財政赤字縮小を先送りすべきだと主張した。
彼らによれば、財政赤字が問題か否かは債券市場が教えてくれるという。民主党系だけでなく、一部の金融市場関係者も債務拡大に無頓着になってきた。S&Pグローバル・レーティングスによれば、世界中の政府が7.8兆ドルの国債を発行し、全世界の政府債務残高が50兆ドルを超える見通しだというのに、である。
現時点で、債券市場は平静そのものだ。米連邦債務は2月に22兆ドルを突破しただけでなく、2018年のGDPである20.8兆ドルを上回った。それにも関わらず、米10年債利回りは2.5〜3.0%のレンジで安定推移している。インフレも、失業率が4%割れとほぼ完全雇用の状態であるにも関わらず、Fedの目標値2%以下だ。
BCAリサーチのピーター・ベレジン首席グローバル・ストラテジストは、金利が名目成長率以下であれば、利払いを除く財政赤字はGDP比の赤字が高水準にあっても持続可能と説く。ただしベレジン氏いわく、財政赤字の拡大でしわ寄せがくるのは、債券市場ではなく為替市場だ。仮に自国通貨の価値が急落したならば、国民は価格上昇リスクに備えカネを物資に変えることに奔走すると、ベレジン氏は予想する。MMT支持者によれば、この状態こそ財政引き締めの兆候で、過剰な情を物価上昇で抑え、財政赤字も縮小するという。
しかしながら、米国はユニークな立場にある。ドルが世界の基軸通貨であり、米国債は世界で最も流動性の高い安全資産であるためだ。
ゴールドマン・サックスによれば、国内債務が高水準にある場合の欠点は、経済の難局でも政策当局者が十分な借入に消極的となり、逆に金融政策に穴埋めを求めるリスクにある。例えば、Fedが政策金利をほぼゼロに設定した当時、Fedはバランスシートを4倍に拡大させた。
ユーロ圏では、財政刺激による弊害が一段と深刻だ。欧州中央銀行(ECB)が(日本と同様に)マイナス金利を含むあらゆる手段を講じたため、世界の国債利回りのうち11兆ドルがゼロ以下の利回りで推移している。
中央銀行による量的緩和策は、資産価格押し上げに役立ち、支出と投資を支えた。お陰で投資家を中心に恩恵を受けることができた半面、貯蓄に頼る者が受け取る金利は微々たるものとなり、格差が拡大し社会的緊張をもたらした。もしワシントンがインフラ債を発行し、Fedが米国債や住宅ローン担保証券ではなくそれを購入したならば、米国の橋や空港などが整備され、企業の自社株買いが膨らむことはなかったかもしれない。しかし、そんな話をしても後の祭りだろう。
インフラ投資と言えば、足元でトランプ政権でも議論が下火になった感は否めず。足元、米中通商協議をはじめとした通商政策で手一杯であり、かつモラー特別検察官のロシア疑惑最終報告書の公表も控え、新たな一手を打ち出すのは困難なのでしょう。逆に言えば、敢えてロシア疑惑の最終報告書に合わせ臭いものに蓋をするかのように、トランプ大統領が具体策なしのインフラ計画を言及する可能性も。一般教書演説でもインフラ計画に言及しており、2020年の大統領選を控え無視できず、遅くとも下半期入りには詳細案を公表してもおかしくありません。
15 Comments:
忠誠の代償 ホワイトハウスの嘘と裏切り
著者名等
ロン・サスキンド/著 ≪再検索≫
著者名等
武井楊一/訳 ≪再検索≫
著者等紹介
【サスキンド】コロンビア大学ジャーナリズム大学院修了。ワシントンDCを中心に活躍するジャーナリスト。ウォールストリート・ジャーナル記者時代の1995年に、ピューリツァー賞を受賞。現在は米国の代表的なニュース誌に寄稿するほか、米PBSやケーブルテレビ局等でも活躍。
著者等紹介
【武井】1951年生まれ。早稲田大学商学部卒。翻訳家。商社勤務などをへて翻訳家となる。訳書に「セイビング・ザ・サン」などがある。
出版者
日本経済新聞社
出版年
2004.6
大きさ等
20cm 421p
注記
The price of loyalty./の翻訳
NDC分類
312.53
件名
アメリカ合衆国-政治・行政 ≪再検索≫
要旨
米政府震撼!これは機密漏洩か?ブッシュ政権の中枢にいた人物がすべてを語る。ブッシュ政権の財務長官として、経済政策のみならず、対テロ戦争や、イラク攻撃、京都議定書問題にも深く関与した男―ポール・オニール。本書は、ピュリツァー賞受賞の敏腕記者ロン・サスキンドが、オニール前長官から提供された1万9000点にものぼる機密文書や政権内部の匿名の協力者の証言をもとに、ホワイトハウスの実態やブッシュ大統領の素顔をかつてないディテールで再現したものである。米国で刊行直後に機密漏洩疑惑を呼び、米政府の調査も行なわれた話題のベストセラー。
目次
1 次期大統領との会見;2 ブッシュのやり方;3 騙し討ち;4 減税をめぐる攻防;5 対テロ戦争の始まり;6 アメリカ企業社会の危機;7 悪い兆候;8 根拠なき経済政策;解任
内容
ブッシュ政権の実態を明かす話題の全米ベストセラーが登場。ピュリツァー賞記者が、オニール前財務長官の協力を得て、ブッシュの暴走ぶりやチェイニーの暗躍、グリーンスパンの裏切りなどを鮮烈に描く。
ISBN等
4-532-16472-9
書誌番号
3-0204046423
ケルトン教授が新著(既出)の宣伝文句にチェイニー元アメリカ副大統領の「レーガンは赤字は問題ないと証明した」と
いう言葉を批判的に引用している
https://twitter.com/stephaniekelton/status/1130846644256174080?s=21
https://pbs.twimg.com/media/D7GTBUPXYAAqkeC.jpg
https://thedeficitmyth.com/
ケルトンは映画(『マネーショート』のスタッフにより『バイス』)からではなく『忠誠の代償』*から引用して
いるのだろうが映画が話題になった時期でもありタイムリーだ
MMTも財政赤字を容認するが、戦争に使うような連中と一緒にするなということだろう
人々の生活を救うための財政赤字は重要だ、と言うのである。
*
The Price of Loyalty: George W. Bush, the White House, and the Education of Paul O'Neill
Ron Suskind (著)
ロン・サスカインド『忠誠の代償』(武井楊一訳、日本経済新聞社、2004年)
ポール・オニール前財務長官が提供した書類や資料を基に、ホワイトハウスの実態や
ブッシュ大統領の素顔を描いた小説風ノンフィクション。
http://agora-web.jp/archives/2037565.html
チェイニー副大統領を描いた映画「Vice」はアカデミー作品賞を受賞しなかったが、
映画によればチェイニー氏は、ブッシュ政権(子)で最初に財務長官を務めたオニール氏に
対し「レーガン政権は、赤字が問題でないことを証明した」と語ったとされる…
バイス予告編
https://longride.jp/vice/
バイス紹介
https://youtu.be/7p2vcWrmJyY
359~360頁
忠誠の代償
経済チームの上級スタッフとホワイトハウスのスタッフによる「経済成長」と題した会議が行なわ
れていた。
…
会議が進むにつれ、チェイニーが経済政策に介入するつもりであることが明らかになってきた。
…配当への二重課税の廃止は景気へのいい刺激になる……
オニールがかみついた。「財政危機に陥ろうとしている」と激しく反駁し、「増大する赤字
が我々の経済と財政的な健全さにどういう意味を持つか」を指摘した。
チェイニーがそれを遮った。
「レーガンは、赤字など問題にならないというのを立証した」と、チェイニーは言った。
オニールは、グリーンスパンと自分が若いころから知っているチェイニーがそんなことを言ったこ
とが信じられない思いで、しきりに首を振った。
オニールは言葉を失っていた。チェイニーがそれを埋めるかのように言った。「我々は中間選挙で
勝ったんだ。これはわれわれの返すべき借りだ」
アーレント
忠誠
3
41頁
映画viceにこのセリフはない
『マネーショート』と同じスタッフがチェイニー元アメリカ副大統領を主人公に『VICE』という映画を撮った
チェイニーは「レーガンは赤字など問題にならないことを証明した」と言ったとされ、
ケルトン教授はこの言葉を新著の宣伝文に批判的に引用している
https://twitter.com/stephaniekelton/status/1130846644256174080?s=21
https://pbs.twimg.com/media/D7GTBUPXYAAqkeC.jpg
https://thedeficitmyth.com/
ケルトンは映画(『マネーショート』のスタッフにより『バイス』)からではなく『忠誠の代償』*から引用して
いるのだろうが映画が話題になった時期でもありタイムリーだ
MMTも財政赤字を容認するが、戦争に使うような連中と一緒にするなということだろう
人々の生活を救うための財政赤字は重要だ、と言うのである。
*
The Price of Loyalty: George W. Bush, the White House, and the Education of Paul O'Neill
Ron Suskind (著)
ロン・サスカインド『忠誠の代償』(武井楊一訳、日本経済新聞社、2004年)
ポール・オニール前財務長官が提供した書類や資料を基に、ホワイトハウスの実態や
ブッシュ大統領の素顔を描いた小説風ノンフィクション。
http://agora-web.jp/archives/2037565.html
チェイニー副大統領を描いた映画「Vice」はアカデミー作品賞を受賞しなかったが、
映画によればチェイニー氏は、ブッシュ政権(子)で最初に財務長官を務めたオニール氏に
対し「レーガン政権は、赤字が問題でないことを証明した」と語ったとされる…
バイス予告編
https://longride.jp/vice/
バイス紹介
https://youtu.be/7p2vcWrmJyY
『マネーショート』と同じスタッフがチェイニー元アメリカ副大統領を主人公に『VICE』という映画を撮った
チェイニーは「レーガンは赤字など問題にならないことを証明した」と言ったとされ、
ケルトン教授はこの言葉を新著の宣伝文に批判的に引用している
(映画にこのセリフはないが、チェイニーがレーガンを尊敬していると話すシーンはある)
https://twitter.com/stephaniekelton/status/1130846644256174080?s=21
https://pbs.twimg.com/media/D7GTBUPXYAAqkeC.jpg
https://thedeficitmyth.com/
ケルトンは映画(『マネーショート』のスタッフによる『バイス』)からではなくノンフィクション『忠誠の代償』から引用して
いるはず
MMTも財政赤字を容認するが、戦争に使うような連中と一緒にするなということだろう
人々の生活を救うための財政赤字は重要だ、と言うのである。
『マネーショート』と同じスタッフがチェイニー元アメリカ副大統領を主人公に『VICE』という映画を撮った
有名な発言として、チェイニーは「レーガンは赤字など問題にならないことを証明した」と言ったとされ、
ケルトン教授はこの言葉を新著の宣伝文に批判的に引用している
(映画にこのセリフはないが、チェイニーがレーガンを尊敬していると話すシーンはある)
https://stephaniekelton.com/book/
MMTも財政赤字を容認するが、戦争に使うような連中と一緒にするなということだろう
『マネーショート』と同じスタッフがチェイニー元アメリカ副大統領を主人公に『VICE』という映画を撮った
有名な発言として、チェイニーは「レーガンは赤字など問題にならないことを証明した」と言ったとされ、
ケルトン教授はこの言葉を新著の宣伝文に批判的に引用している
(映画にこのセリフはないが、チェイニーがレーガンを尊敬していると話すシーンはある)
https://stephaniekelton.com/book/
MMTも財政赤字を容認するが、金持ちを優遇し、戦争に使うような連中と一緒にするなということだろう
ちなみに最近『マネーショート』と同じスタッフがチェイニー元アメリカ副大統領を主人公に『VICE』という映画を撮った
有名な発言として、チェイニーは「レーガンは赤字など問題にならないことを証明した」と言ったとされ、
ケルトン教授はこの言葉を新著の宣伝文に批判的に引用している
https://stephaniekelton.com/book/
(映画にこのセリフはないが、チェイニーがレーガンを尊敬していると話すシーンはある)
MMTも財政赤字を容認するが、金持ちを優遇し、戦争に使うような連中と一緒にするなということだろう
バイス予告編 https://youtu.be/7p2vcWrmJyY
前スレ『マネーショート』の話題に関連して…
最近『マネーショート』と同じスタッフがチェイニー元アメリカ副大統領を主人公に『VICE』と
いう映画を撮った
有名な発言として、チェイニーは「レーガンは赤字など問題にならないことを証明した」と言ったとされ、
ケルトン教授はこの言葉を新著の宣伝文に批判的に引用している
https://stephaniekelton.com/book/
(映画にこのセリフはないが、チェイニーがレーガンを尊敬していると話すシーンはある)
MMTも財政赤字を容認するが、戦争に使うような連中と一緒にするなということだろう
バイス予告編 https://youtu.be/7p2vcWrmJyY
About
The Deficit Myth
Vice-president Dick Cheney famously boasted, “Reagan proved deficits don’t matter.” He was wrong.
Deficits do matter, but not the way we’ve been taught to believe. We’ve been told that China is our banker and that Social Security and Medicare are pushing us into crisis. We’re told the U.S. could end up like Greece and that deficits will burden future generations. These are all myths.
Deficits can be used for good or evil. They can enrich a small segment of the population, driving income and wealth inequality to new heights, while leaving millions behind. They can fund unjust wars that destabilize the world and cost millions their lives. Or they can be used to sustain life and build a more just economy that works for the many and not just the few.
約
赤字の神話
副大統領のディック・チェイニーは有名に「レーガンは赤字が問題ではないことを証明した」と自慢していた。彼は間違っていた。
赤字は問題になりますが、私たちが信じるように教えられた方法ではありません。 中国は銀行家であり、社会保障とメディケアが私たちを危機に追い込んでいると言われています。 米国はギリシャのようになる可能性があり、赤字は将来の世代に負担をかけると言われています。 これらはすべて神話です。
赤字は善悪に使用できます。 彼らは人口の小さな部分を豊かにし、収入と富の不平等を新たな高みに追いやり、数百万人を残します。 彼らは世界を不安定にし、数百万人の命を奪う不当な戦争に資金を提供することができます。 または、彼らは生命を維持し、少数だけでなく多くのために働くより公正な経済を構築するために使用することができます。
Stephanie Kelton (@StephanieKelton)
2019/01/02 3:32
Taking my son to see Vice in a couple of hours. Does the “Reagan proved deficits don’t matter” line make an appearance?
https://twitter.com/stephaniekelton/status/1080169874842943488?s=21
Joe Kearns (@JoeKearns_PSU)
2019/01/02 3:35
@StephanieKelton Sadly, it doesn’t. They leave out Cheney’s one good thing.
https://twitter.com/joekearns_psu/status/1080170621374476288?s=21
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