簡単な現代貨幣理論・信用創造の解説-預貯金は借りたら創造されるの意味
2019.05.04 19:23
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現代貨幣理論(MMT モダンマネタリーセオリー)が日本のマスメディアに、最近ようやく取り上げられていますが、そのコア部分を解説していきます。
現代貨幣理論で一番大切な概念「信用創造」
この稿はまだ信用創造があやふやな方のために、書いています。現代貨幣理論で一番最初につまづくのが信用創造だと思います。これをなんとか、平易にわかりやすく解説してみたいと思います。
貨幣とはなにから作られて、どのように流通するのか? 貨幣の本質とはなんなのか? をこの信用創造を解説することで、ある程度理解できると思います。
現代貨幣理論ではこの他に、租税貨幣論、貨幣国定説、信用ヒエラルキー等々様々な理論が出てきますが、まず一歩目は信用創造だと貨幣論を議論していて思いました。
思考実験で貸し借りをイメージしよう
「ちょっとした貸しだぜ?」というセリフがありますが、たいていテンプレートで「借りにしといてやるよ」と続きます。
この貸し借り、じつはこれこそが経済の本質だったりしますし、また信用創造を理解する一助にもなります。
貸し借りはどうやって発生するのか? Aさんが借りたがわ、Bさんが貸したがわだとしましょう。Bさんがいくら貸したがっても、Aさんの需要と一致しなければ貸せません。簡単に言えば「Aさんが望んでいることを、BさんがしてあげたからBさんは貸しが作れて、Aさんは借りを作る」ということになります。
ここで重要なのは「需要がないと、貸しは作れない」ということです。
信用創造とは貸し借りを貨幣という数字で表すこと
最初に重要なので書いておきますが、貨幣には何種類(小切手等々)もあります。通貨は法定流通貨幣の略語で、日本では円という単位が通貨になります。
この定義は非常に大事ですので、覚えておいてください。
一般的なイメージでは「銀行は預貯金や、もしくは当座預金からお金を持ってきて、それを融資している」と勘違いされています。
事実はどうなのでしょうか? 結論だけ言うのなら、「お金を銀行に借りた瞬間に、銀行側で預貯金が発生する」になります。
いま「え?」となりましたか? 私も最初はそうなりましたので、これから解説していきます。
これは単なる事実ですが、銀行はお金を貸す時に他行や日銀からお金を引っ張ってきていません。
AさんとB銀行で説明しますと、Aさんは起業のためにB銀行にお金を借りにきました。額は1000万円です。
この時にB銀行に預貯金が例えばゼロであったとしても、B銀行はAさんに貸せます。
※預金準備制度などは、ややこしいので省きます。
なぜならば……Aさんの口座に1000万円という数字を書くだけで、貸したことになるのです。これで預貯金がB銀行には1000万円生まれました。Aさんは口座から1000万円を、事業をするために振りこんだりすることが出来るようになりました。
※簡略化するために、現金や利息を介在させていません。
これはAさんが事業に資金が必要という資金需要があり、だから銀行は貸せたわけです。
信用創造を国家も入れて考えてみよう
上記では民間人のAさんと民間銀行のB銀行という例えで、説明しました。政府と日銀も入れて考えてみましょう。
日本の紙幣は誰が発行しているか? 日銀です。ちなみに現金は現在の日本で、わずか100兆円ほどしか出回っていません。日本円のほとんどは現金ではありません。
証拠に日本国家全体のバランスシートを見てみましょう。
5500兆円強でしょうか。このうち、現金はたったの100兆円しか出回っていないので、信用創造を理解するときに現金で考えるのはご法度です。
上記のバランスシートでは、きれいに借方と貸方が一致しているのが見て取れます。
「誰かの負債=誰かの資産」「誰かの債務=誰かの債権」「誰かの消費=誰かの所得」です。
上記の法則からは「誰かが借りて使わないと、経済は成長しない」という”事実”が見て取れます。「誰かが借りて使う=誰かの仕事と所得になる」のです。
政府は日本で一番大きな組織です。政府が借りられるのは、基本的に日銀からです。そして日銀は政府と一体です。(統合政府論という)
その際にどのような手順になるのか? は以下の画像が一番わかりやすいかも知れません。
特に4と5に注目してください。ポイントは「国債を発行すると、民間銀行に新たな預金が創造される4であり、そして日銀当座預金が回復する5です。
簡単にいえば、政府がいくらでも国債を発行できるのは、信用創造が存在しているからといえます。無限ループって怖くね?
国債発行・通貨発行は理論的には無限にできるが、制約もある
上記までで貨幣とは「借りることで創造される」ということが、ご理解いただけたかと思います。だから貨幣=負債であり、通貨=負債なのです。
貸し借りの記録こそが貨幣であり、通貨なのです。これを端的に表現すると「債務と債権の記録が貨幣」ということになります。
国家は理論上、自国通貨建てであるかぎりいくらでも国債を発行できます。では制限はないのか? というとそうではありません。
過剰なインフレが国債発行を制限するのです。
インフレとはなにか? デフレが供給>需要であるので、インフレは供給<需要です。供給の過小になると過剰なインフレが発生します。
日本でいえば、太平洋戦争で国土を焼け野原にされたなどで、過剰なインフレが発生しました。
つまり積極財政や国債発行は、日本の供給能力と信用創造というシステムの二頭建てで支えられている、と解釈できます。
最後に現代貨幣理論批判について
現代貨幣理論の批判の多くは、「AさんがB銀行から1000万円借りたら、1000万円の貨幣が創造される」という部分に集約されると思います。
これは「銀行は他行や当座預金からお金を引っ張ってきて、貸してるんだ! 預貯金が貸す原資なんだ!」という誤解に基づきます。
他には租税貨幣論などもよく批判されます。租税貨幣論の内容を一言で表しますと「税(徴税権)が通貨を駆動する」ですが、私は国家論なども多少かじってまして、非常に最初から得心がいきました。
「税(徴税権)が通貨を駆動する」とは「警察がないと、治安が悪化する」くらいに明白な事実と感じたのです。
租税貨幣論についても機会があれば、後日論じることとします。
現代貨幣理論とは基本的に「現在の金融構造がどのようになっているか?」を観察して論じるものであり、「現在の金融構造をこのように変えろ」とは論じていません。
正しい判断とは、正しい現実認識と情報からしか生まれません。
人類の99%以上がお金を知らない©三橋貴明さんですから、グローバリズムが繰り返されるともいえます。
マスメディアが報じている今、現代貨幣理論の知名度が上がっていますので、現代貨幣理論(MMT)を知る1人として出来る限り簡単に論じてみました。
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