1.抗生物質とは?
人間の体には侵入してきた微生物を排除する免疫システムが備わっていますが、免疫力が低下していたり、免疫ができておらず対応できない場合などでは、微生物に負けてしまい病気になってしまいます。
そんな時に病原となる細菌を抑制するのが「抗生物質」です。
抗生物質とは、「抗菌薬」や「抗生剤」とも呼ばれ、細菌を死滅させたり、細菌の増殖を阻害する薬です。
作用の仕方は、細菌には持っていて、ヒトの細胞には持っていない細胞小器官やタンパク質の働きを阻害することで、ヒトの細胞には影響を与えずに細菌にのみ効果を発揮します。
ウィルスには効果がないため、インフルエンザやヘルペスなどのウィルス性の感染症には効果がありません。
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抗生物質と殺菌・消毒成分との違い
細菌を抑える薬といえば、殺菌・消毒薬もあります。
ケガなどで傷口が出来てしまった時に使ったことがあるのではないでしょうか?
抗生物質と殺菌・消毒成分の大きな違いは、ヒトの細胞にも影響するかどうかです。
上でも述べたように、抗生物質は基本的にはヒトの細胞には影響を与えません。
一方、殺菌・消毒薬はヒトの細胞にもダメージを与えてしまいます。
殺菌・消毒薬を傷口に使うと、シミて痛いのはこのためです。
昔は傷口には殺菌・消毒薬を使うのが一般的でしたが、殺菌・消毒薬を使うと傷口の治りが遅く、傷跡が残りやすくなることが分かったため、現在では推奨されていません。
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2.処方薬の抗生物質
処方薬としての抗生物質には以下のような薬があります。
風邪や膀胱炎、ニキビの時に処方された方もいるのではないでしょうか?
【内服薬】
・フロモックス
・メイアクト
・ジスロマック
・クラリス
・クラリシッド
・エリスロシン
・ミノマイシン
・クラビット
・グレースビット など
【外用薬】
・ゲンタマイシン
・テラマイシン
・アクアチム
・ダラシンT など
3.ドラッグストアで抗生物質は買える?
ドラッグストアで抗生物質は買うことができるのでしょうか?
残念ながら抗生物質の内服薬はドラッグストアで市販されていませんが、抗生物質を含む外用薬ならいくつか市販されています。
抗生物質を含む外用の市販薬
テラ・コートリル軟膏a
テラマイシン軟膏a
フルコートf
ベトネベートN軟膏AS
ドルマイシン軟膏
クロマイ-N軟膏 など
これらは、ニキビや吹出物、トビヒなどの皮膚の感染性疾患に使用します。
テラ・コートリル軟膏の取扱店舗を見る テラマイシンポリ軟膏の取扱店舗を見る
4.抗生物質の内服薬が市販されていない理由
抗生物質の内服薬が市販されていないのは、2つの理由が考えられます。
1つは、症状に適した抗生物質を選択するには、専門的な知識が必要なためです。
抗生物質は全ての細菌に有効ではなく、それぞれの抗生物質に対して有効な細菌と無効な細菌があり、有効な抗生物質を選択しなければなりません。
咳の症状だけでも、ただの風邪や肺炎、結核、マイコプラズマ感染症、クラミジア感染症、百日咳などさまざまな原因となる疾患があり、それぞれ最適な抗生物質は異なります。また、そもそも抗生物質が不要な疾患もあります。
医師は、咳以外の症状や、症状が出た経緯、検査結果などから病態を判断し、処方する薬を選択しています。
これを素人が判断するのは難しいため、市販薬での対応は現実的ではないでしょう。
2つ目の理由は、抗生物質が市販されると乱用の恐れがあるためです。
抗生物質が医薬品として誕生するまでは、結核、コレラ、天然痘などの感染症で亡くなってしまう人が世界的に多かったのですが、抗生物質の誕生により感染症は不治の病ではなくなりました。抗生物質によりたくさんの人の命が救われたのです。
しかし、抗生物質の乱用や不適切な使用は、人類に対する細菌感染症の危機を再燃させてしまう可能性があります。
抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」を生む恐れがあるためです。
実際に、どの抗生物質も効かない「スーパー耐性菌」がインドやアメリカで誕生し、それに感染したことにより亡くなってしまった人もいます。
日本においても、薬剤耐性菌は重大な問題です。
幅広い菌に対して有効で副作用が起こりにくい「マクロライド系抗生物質」という種類の抗生物質(商品名:クラリス、ジスロマック、エリスロシン など)は、その使いやすさから乱用されてきた経緯があります。
その結果、現在ではマクロライド系抗生物質が効きにくい「マクロライド耐性菌」が問題になっています。
特にマイコプラズマや肺炎球菌では、80%以上がマクロライド系抗生物質に耐性を持っていると考えられています。
医師が必要と判断して処方している現状でも、耐性菌が問題になっているため、市販薬として販売されるとさらに耐性菌の増加は加速すると考えられます。そのため、抗生物質の内服薬が市販されることは今後もないでしょう。
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抗生物質が処方されたら
耐性菌が国際的に問題視されるようになり、医療界全体で不適切な病態に対して抗生物質を無闇に使用するべきではないという流れになっています。
一方で、抗生物質の力を必要とする場面も多くあります。
抗生物質を処方された場合には、処方された日数分をしっかりと飲みきることが大切です。
症状が良くなっても体の中ではまだ細菌が悪さを行なっている場合があり、そこで抗生物質の服用をやめてしまうと、細菌が抗生物質に対して耐性を獲得する可能性があります。飲み忘れにも十分に注意してください。
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5.おわりに
ドラッグストアでは抗生物質の内服薬が市販されていない理由について、ご理解いただけたでしょうか?
抗生物質の乱用による薬剤耐性菌が問題になっていますが、市販薬で購入できる外用薬でも同様です。使用方法を間違えると薬剤耐性菌を生み出す可能性があります。
長期的(2週間以上)の使用は控え、症状が良くならない場合は受診するようにしましょう。
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