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月曜日, 6月 18, 2018

自給自足


   ( 経済学リンク::::::::::
NAMs出版プロジェクト: 経済学日本人著者入門書
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_9.html
実験経済学
自給自足(Self-sufficiency)

元ネタ

〇厚生分析

均衡において実現する結果が、果たして経済全体の厚生(富や豊かさ)を最大にするのかを分析するのが厚生分析である。ミクロ経済学では、この厚生分析にはパレート効率性という基準を用いる。ここで、パレート効率的であるとは、相手の利得を減らさないでは自分の利得を増やすことのできない状態をいう。これが、日常語での効率性、すなわち、「無駄がないこと」と同義であることは、次のように考えてみればわかる。いま資源を2人で無駄なく分け合っているとする。このとき、二方のプレーヤーが自分の取り分を増やそうと思えば、相手の取り分を奪うしかない6この状況は、まさに先ほど述べたパレート効率性の基準にかなっている。逆に、相手の利得を下げないでも自分の利得を上げられる場合、パレート効率的ではない。一般に、各プレーヤーの利得の和を最大にする結果がパレート効率的になる。もちろん、パレート効率性以外にも厚生を測る尺度はいろいると提案されている。たとえば、有名なものにマキシミン基準がある。マキシミン基準では、実現可能な各配分について、最も効用(あるいは利潤)が低い主体に着目する。そのうえで、この最低レベルにいる主体の効用水準(あるいは利潤)力S最も高くなるような配分を社会全体では採用すべきだとするものである。たとえば、経済には3人の主体がいて、実現可能な配分がスyの2つだとする。それぞれの配分において各主体が享受する効用水準をそれぞれχ=(60,90,120)、y=(150,30,120)とする。配分χで最低レベルの効用水準は60であり、配分yで最低レベルの効用水準は30なので、マキシミン基準では配分Xを選ぶことになる。一方、3人の効用の和が最大になるのは配分yなので、パレート効率性の基準では配分yを選ぶことになる。ミクロ経済学では、市場取引における均衡分析がその中心的な課題である。では、なぜ人は市場で取引を行うのだろうか。これについては、古典派経済学者デビッド・リカードが、なぜ国々の間で貿易が行われるかを説明した比較生産費説について考えてみるのがよい。


自給自足経済の実験

ある島に住む住民たちは、その北側と南側に分かれて暮らしている。この住民たちは魚と果物を食料としている。そして、魚1尾と果物1個で1人の人間が養えるとする。北側の住民も南側の住民もそれぞれ20時間働くことができる。北側では1時間で魚を1尾獲れるが、果物1個を採るには1.5時間必要である。南側では魚を1尾獲るのに3時間必要で、果物1個採るのに2時間が必要である。実験では、まず被験者を北側と南側の住民に分ける(たとえば、10名と20名)。そのうえで、各自は自分の労働時間である20時間を、魚を獲るか、果物を採るかに割り当てる。割り当ては1時間単位で行うものとする。時間の割り当てが決まったら、採取した魚と果物の数を数える。魚1尾と果物1個で1人の人間が養えるので、魚と果物の数のうち少ないほうの数だけの人が養えることになる。被験者には、なるべく多くの住民が養えるように時間を配分するように指示する。●南北での物々交換の実験この実験での設定は基本的に先ほどの実験1.Aと同じである。違いは、南北の住民の間で物々交換ができる点である。各自の時間の割り当てが決定した後、北側と南側の住民を1人ずつペアにする。ペアはあらかじめランダムに決めた席順に従って組んでもよいし、被験者同士が好きな相手を見つけるのでもよい。ペアができたら、採取された魚と果物の取引をする。取引をしないでもかまわない。取引は原則として魚2尾と果物3個を交換するというような、整数単位での交換のみが許される。交換取引が終了したら、最終的に手に入れた魚と果物の数を数える。魚と果物の数のうち少ないほうの数だけの住民が養えることになる。被験者には、なるべく多くの人が養えるように時間を配分するように指示する。



●均衡予測島の北側と南側では、魚と果物を生産している。各財の生産に必要な労働時間は、それぞれに次の表のようになっている。

   北  南
魚  1  3
果物 1.5 2

どちらの財についても、北側のほうが南側よりも少ない労働時間で生産可能である。この意味で、北側は魚についても果物についても南側に対して絶対優位であるという。次に、北側では、果物を1単位生産するのに必要な1.5時間を魚の生産に投入すれば1.5単位生産可能である。同様に、南側では、果物を1単位生産するのに必要な2時間を魚の生産に投入すれば、魚1単位の生産には3時間必要だから、2/3単位生産可能である。したがって、北側のほうが南側よりも魚を効率的に生産可能である。この意味で、北側は魚の生産について南側に対して比較優位であるという。また、北側では、魚を1単位生産するのに必要な1時間を果物の生産に投入すれば1/1.5=2/3単位生産可能である。同様に、南側では、魚を1単位生産するのに必要な3時間を果物の生産に投入すれば3/2単位生産可能である。したがって、今度は南側のほうが北側よりも果物を効率的に生産可能であることがわかる。この意味で、南側は果物の生産について北側に対して比較優位であるという。リカードは、ここからそれぞれが比較優位である財に特化した生産を行い、それを輸出し、比較優位でない財を輸入することで貿易による利益が得られるため、貿易が生じるという比較生産費説を唱えた。自給自足経済の状況では、魚1尾と果物1個で1人の人間が養えるという実験の設定の下で、20時間の労働を使ってなるべく多くの人を養おうとすると、北側の住民は魚と果物をそれぞれ8単位生産することになり(8単位×(1時間+1.5時間)=20時間)、南側の住民は魚と果物をそれぞれ4単位生産することになる(4単位×(3時間+2時間)=20時間)。北側の住民が10名で、南側の住民が20名とすると、島全体では魚と果物がそれぞれ160単位ずつ生産されることになる。つまり、南北で合わせて160名を養うことができる。南北で物々交換が実施されるようになると、北側では自給自足の状況では比較優
位でない8単位分の果物に費やされていた12時間(=8単位×1.5時間)を、比較優位である魚の生産に投入すれば、さらに12単位の魚が得られる。つまり、合計で8+12=20単位の魚が得られる。同じく、南側も比較優位でない魚の4単位分の生産に費やされていた12時間(=4単位×3時間)を、比較優位である果物の生産に投入すれば、さらに6単位の果物が得られる。つまり、合計で4+6=10単位の魚が得られる。北側の住民が10名で、南側の住民が20名とすると、島全体では魚と果物がそれぞれ200単位ずつ生産されることになる。つまり、南北で合わせて200名を養うことができる。こうして、北側と南側がそれぞれ比較優位な財の生産に特化し、それを物々交換することによって、社会全体の富が増加することがわかる。これが交換によって生じる利益である。


自給自足経済に関する実験1.Aと南北での物々交換に関する実験lBは、Bergstrom and Miller(2000)から採った。
◎参考文献…NewYork:McGraw―Hin.

Experiments with Economic Principles: Microeconomics (英語) ペーパーバック – 1999/8/9

目次 
I Competitive Markets 1. Supply and Demand 2. Shifting Supply and Demand II Market Intervention and Public Policy 3. A Sales Tax 4. Prohibition 5. A Minimum Wage III. Imperfect Markets 6. Externalities 7. Monopolies and Cartels 8. Entry and Exit 9. Network Externalities 10. Entry and Exit 11. Measuring Productivity 12. Comparative Advantage V Information, Auctions, and Bargaining 13. Adverse selection 14. Auctions 15. Fundamental Concepts VI Essential Economic Concepts

This book contains economic experiments designed for students who have not previously taken any economics. While this book can supplement any microeconomics text, it can and has been used by itself to teach principles. Unique in the marketplace, "Experiments with Economic Principles: Microeconomics" is an extension of the groundbreaking work in "Experimental Economics" of Vernon Smith. Bergstrom and Miller are two of the most highly-regarded researchers in the creative world of Experimental Economics. It includes features such as: a new chapter on public goods (ch. 6); a new chapter on network externalities (ch. 9); a new Part V on essential concepts of economic principles; more problems and tie-ins to economics in the news; more discussion of economic concepts; more modular organization for easy custom-publishing of instructor's own selection of experiments; streamlining some experiments; improved layout of homework exercises allows faster grading; improved layout of personal information sheets in Instructor's Manual; and convenient class preparation kits for instructors. 


Experiments with Economic Principles : Microeconomics / T.C....

www.researchgate.net/.../39021514_Experiments_with_...
2018年2月17日 ... Bergstrom and Miller (2000) provide a collection of pen-and-paper experiments within an introductory course to microeconomic principles. Experiments are designed such to allow and motivate discussions before, during and ...

Experiments with Economic Principles: Microeconomics, 2nd Edition

econ.ucsb.edu/~tedb/eep/eep.html
Who's the guy in the picture? Experiments with Economic Principles: Microeconomics, 2nd Edition. by Theodore Bergstrom and John H. Miller. Preface. Taking a course in experimental economics is a little like going to dinner at a cannibal's ...

table
  • Experiment 2: Shifting Supply and Demand
    This experiment illustrates the method of comparative statics with a shifting supply curve in a hypothetical fishing village. The experiment also forces students to grapple with the concept of sunk costs. The discussion section presents real-world examples of shifts in supply and/or demand. This discussion is intended to teach them to determine in applications which curve shifted, and to distinguish shifts in a demand or supply curve from movements along the curve.

    実験2:需要と供給のシフト
    この実験は、仮説的漁村における供給曲線の変化を伴う比較統計量の方法を示している。 この実験はまた、学生に沈み込みコストの概念を抱かせるよう強制します。 ディスカッションのセクションでは、供給や需要の変化の現実的な例を紹介します。 この議論は、カーブがシフトしたアプリケーションを決定し、需要曲線または供給曲線のシフトをカーブに沿った動きから区別するように教示することを目的としています。


    ブルス関連



    Edward Lipiński - Wikipedia


    en.wikipedia.org/wiki/Edward_Lipiński
    Edward Lipiński (October 18, 1888 – July 13, 1986) was a Polish economist, intellectual, social critic and human rights advocate. During the almost seven decades of his career, he held a series of academic and government advisory positions, ...



    カレツキアンの経済学とカレツキの経済学 - J-Stage

    www.jstage.jst.go.jp/article/jshet1963/36/36/.../ja/
    At present, many heterodox economists are concerned with the economics of Michal Kalecki. However, their vision of the historical development of capitalist economies is somewhat different from that of Kalecki himself. This paper makes clear ...



    カレツキアンの経済学 とカレツキの経済学 - J-Stage

     
    (Adobe PDF)
    www.jstage.jst.go.jp/article/jshet1963/36/36/36.../_pdf
    構造主義マクロ経済学, フランスとイタ リアの. サーキッ ト学派など, ... カレツキの経済学 は, さなが ら現代政治経済学. の源流 ともいうべ き ...... Advanced Economies, Aldershot: Edward Elgar. Dutt, A. K. ... Lipinski, E. [1977], "Michal Kalecki", Oxford Bul-.

9 件のコメント:

  1. https://readingmonkey.blog.fc2.com/blog-entry-353.html?sp
    どうして役にも立たない知識を入学試験で問うのか?
    社会科学の道具箱
    2010/06/2822:06 6 1
     どうして役にも立たない知識を入学試験で問うのか疑問におもったら、情報の経済学でいうシグナリング(signalling)について学ぶといい。

     ブルデューのいう「卓越化」≒「お育ちによるふるまい(≒ハビトゥス)による選別」の仕組みから、クジャクは何故ああもムダに派手なのか、果てはヤンキーはなぜ早婚か(Theodore Bergstrom and Mark Bagnoli(1993), "Courtship as a Waiting Game", Journal of Political Economy , Volume 101, Issue 1, pp.185-202.)まで統一的に理解できる。

     よく例につかわれる学歴ゲームで説明すると、以下のような感じである。


     ある人が仕事ができるかどうかは、パッと見ではわからない。
     そして学歴は、仕事ができるかどうかとは、多くの場合、無関係である。
     なのに学歴が雇い入れの際に、選別に使われるのはなぜか?

     答え:それは、学歴を取得するのに(受験勉強などの)コストがかかるからである。

     雇われる方は自分の仕事能力が高いか低いか(少なくとも雇い入れる企業よりは)知っている。
     ならば、雇い入れる企業は「高学歴な人には高給を出します」と表明すればいい。
     自分の能力が高いことを知っている人は、あとでそのコストを回収して余りある高給を得られるのだから、コストをかけても学歴を取得しようとするだろう。
     自分の能力が低いことを知っている人は、そのコストを回収する見込みがないと考えて、コストをかけて学歴を取得することは避けるだろう。

     選ばれる人にとってはベネフィットがコストを上回り、選ばれない人にとってはコストがベネフィットを上回りさえするものなら、なんでもシグナリングに使える。


    「お育ちによるふるまい(≒ハビトゥス)による選別」も、ロジックは同様である。
     下位階級の者(貧乏人)には、上位階級のハビトゥス(「上品」な習慣や趣味)を、習得するだけの「余裕がない」。
     「余裕がない」というのは、厳密には、コスト(Cph)をかけて金持ちハビトゥス(rh)を習得しても、それに見合うだけのベネフィット(Bph)をえられず、ペイしない、ということである。

     他方それにたいして、金持ちの方は、親が同様なハビトゥスをもっている、とか、もともと金持ちなので習得(に、たとえ貧乏人と同じ金額がかかったとしても)の際の貨幣の限界負効用が少ないなどの理由から、コスト(Crh) が相対的に貧乏人ほどかからない。
     あるいは、貧乏人をふりきることのベネフィット (Brh)が大きい。
     というのは、様々な独占的価値の機会となる上流階級のコネクションを維持することはベネフィットが大きく、都合、ベネフィットとコストの差し引きがペイする、ということである。
     そして、そうしたコネクションを維持・更新するためには、上位階級のハビトゥス(「上品」な習慣や趣味)を持っているか否かを「参入障壁」とするのが都合がいい。
     上位階級のハビトゥスはこうして、上位階級コネクションへの参入を選抜する際のシグナルとして機能している。

     たとえば「教養」と呼ばれるものは、だいたい実利的な価値が無い(役に立たない)。
     だからこそ、すぐに金になる実利的な技能/知識の習得を優先したい貧乏人、もとい進取の気性を持つ新興の市民(ブルジョワ)階級には、習得してもペイしないものである。
     たとえばイギリスで最も高いクラスの子弟は、オックスブリッジ(オックスフォードかケンブリッジ)で、およそ実利的な価値がなさそうな古代ギリシャ哲学などを専攻する。
     そして、近い将来、上位階級のコネクションに迎えられる。


     たとえばクジャクのオスの羽は、ハデででかい。
     あんなものをつけていたら、天敵にすぐに見つかるし、逃げるのも大変である。
     命がけのコストだ。
     だったらハデなやつほど、襲われるリスクが高くて、そんなやつ(遺伝子)は自然淘汰されるんじゃないのか?
     しかし遺伝子を残すためには、異性に選ばれなければならないという要素を加味すると、違う仕組みが見えてくる。
     やたらに目立って重くて邪魔になるお荷物だからこそ、それを持ってこと(それだけのリスクを負担できること)が、強さの証明になる。
     「弱い+ハデ」なやつは、早々に淘汰されるだろう。
     しかし「強い+ハデ」な奴は生き残る。
     「強い+地味」なやつも生き残るが、こいつらは「弱い+地味」な奴と区別がつきにくい。
     つまり選ぶ側からすれば、「ハデ」を選んだ方が、「強い」遺伝子を持ったペアを引き当てやすい。
     クジャクの羽は、立派に選抜のためのシグナルになっている。


     逆に選別につかうシグナルが、コストがかからないものであったら、どうなるだろう。
     たとえば能力の自己申告だけで、給料が高い低いが決まる会社があるとしよう。
     コストはかからないと仮定しているので、仕事の内容などは自己申告によって厳しくなったりしない。
     コストがかからない自己申告なら、誰もが高給がとれる申告をするだろう。
     これでは自己申告はシグナルとしての役目を担えないだろう。
     これは別の利益が得られてコストを回収できる場合も、シグナルには使えないことを意味する。

     それ故、学歴や受験勉強は、それ自体ではそのコストを回収できない程度に「ムダなもの」である必要がある。


    ○Spence, A. M. (1973). "Job Market Signaling". Quarterly Journal of Economics (The MIT Press) 87 (3): 355–374. http://www.jstor.org/stable/1882010.


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  2. アナルコ・リテラリオ
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     薄明の中で、秋幸の到着を待って首吊りの準備を始めた龍造を見出す。その準備が整ったところで秋幸は意識する。

    〈その時、初めて秋幸は影がそこにたたずんでいる意味も、立った物音の意味も分かった。息が一瞬詰り、体が疑いと驚きで裂ける気がしたが、秋幸にはそれがまた、有馬の小屋を早く出た時から察知していた自明のことだったような気がした。声を掛けようと思わなかった。その影に向かって呼びかけるどんな言葉も胸にあったが、声を掛けたくないという不分明な気持ちのまま、ただ見た。〉

     「自殺後」を体験した後に直面する龍造の自殺に秋幸は次のように混乱する。

    〈影は秋幸に向かい合うように立った。影は動いた。音が立った。影の背丈は闇の中で倍に伸びたように見えた。影は深い息をしながら動かなかった。すっかり白み、あけた朝の外からの明りで影には応接間に立った仕事着姿の秋幸が見えているはずだった。秋幸はそう思い混乱した。声を掛けたくないし、声を掛けてはならない、いや、止めさせなくてはならない、自分がいるここに引きとどめなくてはならない、と錯綜し、自分は一体、その影の何なのか、その影は自分の何なのか?と思った。一瞬、声が出た。秋幸は叫んだ。その声が出たのと、影がのびあがり宙に浮いたように激しく揺れ、椅子が音を立てて倒れたのが同時だった。「違う」秋幸は一つの言葉しか知らないように叫んだ。〉

     このようにして浜村龍造は自殺した。しかし、すでに秋幸には何の変化も生じようがなかったのだ。

    〈応接間からの薄明かりで宙に浮いた影がゆれていた。秋幸はただ見ていた。立っている体に力が入り、硬直していた。影が静まり切って、秋幸は振り返った。日の当たった山に人夫を連れて出発する時間だと思った。〉

     一切は前夜までに起こっていた。あの驚くべき猪狩の場面とそれに続くもう一つの父親殺し、〈ヨシ兄と浜村龍造が摩り替わり、どこかで鉄男と秋幸の役割が摩り替わった〉父親殺しの際に。

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  3. 龍造の少年時を知った秋幸はこう述懐する。

    〈乞食同然の暮らしや有馬の里の者へのジジの怒りが、ペテンをやり手形パクリをやり、有馬の土地を買い占めて空地にし、路地を払って更地にする血も涙もない浜村龍造をつくったのだ〉〈浜村龍造は地表から何もかも消し去る。蜜柑の木を一本残らず抜き去る。甘い汁をあてにして率先して協力した文昭や実弘を丸めて交渉の矢面に立たせ、安い金で立ちのかせ、家を潰し、山を取って更地にする。浜村龍造は意味があってそうしたのでない。蟻が巣を作るようにただそうしたかったのだ。〉

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  4. 〈…声を掛けたくないし、声を掛けてはならない、いや、止めさせなくてはならない、
    自分がいるここに引きとどめなくてはならない、と錯綜し、自分は一体、その影の
    何なのか、その影は自分の何なのか?と思った。一瞬、声が出た。秋幸は叫んだ。
    その声が出たのと、影がのびあがり宙に浮いたように激しく揺れ、椅子が音を立て
    て倒れたのが同時だった。「違う」秋幸は一つの言葉しか知らないように叫んだ。〉
    http://www.tcxpress.com/hida_a01.html

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  5. 〈…声を掛けたくないし、声を掛けてはならない、いや、止めさせなくてはならない、
    自分がいるここに引きとどめなくてはならない、と錯綜し、自分は一体、その影の
    何なのか、その影は自分の何なのか?と思った。一瞬、声が出た。秋幸は叫んだ。
    その声が出たのと、影がのびあがり宙に浮いたように激しく揺れ、椅子が音を立て
    て倒れたのが同時だった。「違う」秋幸は一つの言葉しか知らないように叫んだ。〉
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    龍造のモデルが柄谷というのは本当なのだろうか?

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  6. 91 名無しさん@お腹いっぱい。[] 2019/04/04(木) 11:46:55.69 ID:LWiKo/Y9
    経済学は、古典派や行動経済学ではなく、実験経済学がこれからの主流になるかもしれないらしい。

    教科書は七千円もする高価な本だ。

    「経済学のための実験統計学」ピーター・G・モファット
    7020円。

    すげえなあ。

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  7. 経済学のための実験統計学 単行本 – 2018/12/22
    Peter G. Moffatt (原著), ピーター モファット (著), 川越 敏司 (翻訳), 會田 剛史 (翻訳), 小川 一仁 (翻訳), 佐々木 俊一郎 (翻訳), 長江 亮 (翻訳), 山根 承子 (翻訳)


    商品の説明
    内容紹介
    実験データから被験者の多様な行動原理(異質性)をあぶり出し、現象の背後にある因果関係に迫る実験的アプローチの統計的分析手法。

    内容(「BOOK」データベースより)
    経済学における実験研究のバイブル。実験データから被験者の多様な行動原理(異質性)をあぶり出し、現象の背後にある因果関係に迫る実験的アプローチに関する統計手法の数々。実験計画法や処理効果の検定といった伝統的な手法から有限混合モデルといった最新の手法まで網羅的に取り扱う。また、統計ソフトウェアSTATAによるプログラム例も提供されており、ほとんどの実験データに対処可能。

    商品の説明をすべて表示する
    登録情報
    単行本: 640ページ
    出版社: 勁草書房 (2018/12/22)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4326504528
    ISBN-13: 978-4326504527
    発売日: 2018/12/22

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  8. Amazon | Experimetrics: Econometrics for Experimental ... - アマゾン
    www.amazon.co.jp/...Experimental...Moffatt/.../023025...
    Experimetrics: Econometrics for Experimental Economics (英語) ペーパーバック – 2015/12/4. Peter G. Moffatt (著).

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  9. 経済学のための実験統計学
    著者名等 
    ピーター・G・モファット/著  ≪再検索≫
    著者名等 
    川越敏司/監訳  ≪再検索≫
    著者名等 
    會田剛史/〔ほか〕訳  ≪再検索≫
    著者等紹介
    【川越敏司】1970年和歌山県和歌山市生まれ.福島大学経済学部卒業,大阪市立大学大学院経済学研究科前期博士課程修了,博士(経済学).埼玉大学経済学部社会環境設計学科助手等を経て,現在,公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科教授.著書は『実験経済学』(東京大学出版会),『行動ゲーム理論入門』(NTT出版),『はじめてのゲーム理論』(講談社ブルーバックス),『現代経済学のエッセンス』(河出ブックス)など多数.訳書にイツァーク・ギルボア『意思決定理論入門』(NTT出版),同著者『不確実性下の意思決定理論』(勁草書房),フランチェスコ・グァラ『科学哲学から見た実験経済学』(日本経済評論社)など多数.(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
    出版者  
    勁草書房
    出版年  
    2018.12
    大きさ等 
    22cm 640p
    注記   
    原タイトル:EXPERIMETRICS
    NDC分類
    331.19
    件名   
    経済統計  ≪再検索≫
    件名   
    計量経済学  ≪再検索≫
    件名   
    実験経済学  ≪再検索≫
    要旨   
    経済学における実験研究のバイブル。実験データから被験者の多様な行動原理(異質性)をあぶり出し、現象の背後にある因果関係に迫る実験的アプローチに関する統計手法の数々。実験計画法や処理効果の検定といった伝統的な手法から有限混合モデルといった最新の手法まで網羅的に取り扱う。また、統計ソフトウェアSTATAによるプログラム例も提供されており、ほとんどの実験データに対処可能。
    目次   
    実験経済学における実験計画の統計的側面;処理効果の検定;理論の検証、回帰、従属性;回帰分析を用いた意思決定時間のモデル化;実験データの離散性への対処;実験統計における順序データ;異質性への対処:有限混合モデル;実験データのシミュレーションとモンテカルロ法;最尤シミュレーション(MSL)法入門;ゼロへの対処:切断モデル;リスク下での選択:理論的問題;リスク下での選択:計量経済学的モデル;二値選択実験の最適計画;社会的選好のモデル;繰り返しゲームと質的応答均衡(QRE);推論レベルのモデル;学習モデル;要約と結論
    ISBN等
    4-326-50452-8
    ISBN等

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