自給自足経済の実験
ある島に住む住民たちは、その北側と南側に分かれて暮らしている。この住民たちは魚と果物を食料としている。そして、魚1尾と果物1個で1人の人間が養えるとする。北側の住民も南側の住民もそれぞれ20時間働くことができる。北側では1時間で魚を1尾獲れるが、果物1個を採るには1.5時間必要である。南側では魚を1尾獲るのに3時間必要で、果物1個採るのに2時間が必要である。実験では、まず被験者を北側と南側の住民に分ける(たとえば、10名と20名)。そのうえで、各自は自分の労働時間である20時間を、魚を獲るか、果物を採るかに割り当てる。割り当ては1時間単位で行うものとする。時間の割り当てが決まったら、採取した魚と果物の数を数える。魚1尾と果物1個で1人の人間が養えるので、魚と果物の数のうち少ないほうの数だけの人が養えることになる。被験者には、なるべく多くの住民が養えるように時間を配分するように指示する。●南北での物々交換の実験この実験での設定は基本的に先ほどの実験1.Aと同じである。違いは、南北の住民の間で物々交換ができる点である。各自の時間の割り当てが決定した後、北側と南側の住民を1人ずつペアにする。ペアはあらかじめランダムに決めた席順に従って組んでもよいし、被験者同士が好きな相手を見つけるのでもよい。ペアができたら、採取された魚と果物の取引をする。取引をしないでもかまわない。取引は原則として魚2尾と果物3個を交換するというような、整数単位での交換のみが許される。交換取引が終了したら、最終的に手に入れた魚と果物の数を数える。魚と果物の数のうち少ないほうの数だけの住民が養えることになる。被験者には、なるべく多くの人が養えるように時間を配分するように指示する。
●均衡予測島の北側と南側では、魚と果物を生産している。各財の生産に必要な労働時間は、それぞれに次の表のようになっている。
どちらの財についても、北側のほうが南側よりも少ない労働時間で生産可能である。この意味で、北側は魚についても果物についても南側に対して絶対優位であるという。次に、北側では、果物を1単位生産するのに必要な1.5時間を魚の生産に投入すれば1.5単位生産可能である。同様に、南側では、果物を1単位生産するのに必要な2時間を魚の生産に投入すれば、魚1単位の生産には3時間必要だから、2/3単位生産可能である。したがって、北側のほうが南側よりも魚を効率的に生産可能である。この意味で、北側は魚の生産について南側に対して比較優位であるという。また、北側では、魚を1単位生産するのに必要な1時間を果物の生産に投入すれば1/1.5=2/3単位生産可能である。同様に、南側では、魚を1単位生産するのに必要な3時間を果物の生産に投入すれば3/2単位生産可能である。したがって、今度は南側のほうが北側よりも果物を効率的に生産可能であることがわかる。この意味で、南側は果物の生産について北側に対して比較優位であるという。リカードは、ここからそれぞれが比較優位である財に特化した生産を行い、それを輸出し、比較優位でない財を輸入することで貿易による利益が得られるため、貿易が生じるという比較生産費説を唱えた。自給自足経済の状況では、魚1尾と果物1個で1人の人間が養えるという実験の設定の下で、20時間の労働を使ってなるべく多くの人を養おうとすると、北側の住民は魚と果物をそれぞれ8単位生産することになり(8単位×(1時間+1.5時間)=20時間)、南側の住民は魚と果物をそれぞれ4単位生産することになる(4単位×(3時間+2時間)=20時間)。北側の住民が10名で、南側の住民が20名とすると、島全体では魚と果物がそれぞれ160単位ずつ生産されることになる。つまり、南北で合わせて160名を養うことができる。南北で物々交換が実施されるようになると、北側では自給自足の状況では比較優
位でない8単位分の果物に費やされていた12時間(=8単位×1.5時間)を、比較優位である魚の生産に投入すれば、さらに12単位の魚が得られる。つまり、合計で8+12=20単位の魚が得られる。同じく、南側も比較優位でない魚の4単位分の生産に費やされていた12時間(=4単位×3時間)を、比較優位である果物の生産に投入すれば、さらに6単位の果物が得られる。つまり、合計で4+6=10単位の魚が得られる。北側の住民が10名で、南側の住民が20名とすると、島全体では魚と果物がそれぞれ200単位ずつ生産されることになる。つまり、南北で合わせて200名を養うことができる。こうして、北側と南側がそれぞれ比較優位な財の生産に特化し、それを物々交換することによって、社会全体の富が増加することがわかる。これが交換によって生じる利益である。
注
自給自足経済に関する実験1.Aと南北での物々交換に関する実験lBは、Bergstrom and Miller(2000)から採った。
◎参考文献…NewYork:McGraw―Hin.
Experiments with Economic Principles: Microeconomics (英語) ペーパーバック – 1999/8/9
2000,ed2
目次
I Competitive Markets 1. Supply and Demand 2. Shifting Supply and Demand II Market Intervention and Public Policy 3. A Sales Tax 4. Prohibition 5. A Minimum Wage III. Imperfect Markets 6. Externalities 7. Monopolies and Cartels 8. Entry and Exit 9. Network Externalities 10. Entry and Exit 11. Measuring Productivity 12. Comparative Advantage V Information, Auctions, and Bargaining 13. Adverse selection 14. Auctions 15. Fundamental Concepts VI Essential Economic Concepts
This book contains economic experiments designed for students who have not previously taken any economics. While this book can supplement any microeconomics text, it can and has been used by itself to teach principles. Unique in the marketplace, "Experiments with Economic Principles: Microeconomics" is an extension of the groundbreaking work in "Experimental Economics" of Vernon Smith. Bergstrom and Miller are two of the most highly-regarded researchers in the creative world of Experimental Economics. It includes features such as: a new chapter on public goods (ch. 6); a new chapter on network externalities (ch. 9); a new Part V on essential concepts of economic principles; more problems and tie-ins to economics in the news; more discussion of economic concepts; more modular organization for easy custom-publishing of instructor's own selection of experiments; streamlining some experiments; improved layout of homework exercises allows faster grading; improved layout of personal information sheets in Instructor's Manual; and convenient class preparation kits for instructors.
www.researchgate.net/.../39021514_Experiments_with_...
2018年2月17日 ... Bergstrom and Miller (2000) provide a collection of pen-and-paper experiments within an introductory course to microeconomic principles. Experiments are designed such to allow and motivate discussions before, during and ...
econ.ucsb.edu/~tedb/eep/eep.html
Who's the guy in the picture? Experiments with Economic Principles: Microeconomics, 2nd Edition. by Theodore Bergstrom and John H. Miller. Preface. Taking a course in experimental economics is a little like going to dinner at a cannibal's ...
table
- Experiment 2: Shifting Supply and Demand
- This experiment illustrates the method of comparative statics with a shifting supply curve in a hypothetical fishing village. The experiment also forces students to grapple with the concept of sunk costs. The discussion section presents real-world examples of shifts in supply and/or demand. This discussion is intended to teach them to determine in applications which curve shifted, and to distinguish shifts in a demand or supply curve from movements along the curve.
- 実験2:需要と供給のシフト
- この実験は、仮説的漁村における供給曲線の変化を伴う比較統計量の方法を示している。 この実験はまた、学生に沈み込みコストの概念を抱かせるよう強制します。 ディスカッションのセクションでは、供給や需要の変化の現実的な例を紹介します。 この議論は、カーブがシフトしたアプリケーションを決定し、需要曲線または供給曲線のシフトをカーブに沿った動きから区別するように教示することを目的としています。
- ブルス関連
en.wikipedia.org/wiki/Edward_Lipiński
Edward Lipiński (October 18, 1888 – July 13, 1986) was a Polish economist, intellectual, social critic and human rights advocate. During the almost seven decades of his career, he held a series of academic and government advisory positions, ...
www.jstage.jst.go.jp/article/jshet1963/36/36/.../ja/
At present, many heterodox economists are concerned with the economics of Michal Kalecki. However, their vision of the historical development of capitalist economies is somewhat different from that of Kalecki himself. This paper makes clear ...
www.jstage.jst.go.jp/article/jshet1963/36/36/36.../_pdf
構造主義マクロ経済学, フランスとイタ リアの. サーキッ ト学派など, ... カレツキの経済学 は, さなが ら現代政治経済学. の源流 ともいうべ き ...... Advanced Economies, Aldershot: Edward Elgar. Dutt, A. K. ... Lipinski, E. [1977], "Michal Kalecki", Oxford Bul-.
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_9.html
http://econ.ucsb.edu/~tedb/eep/manmaker2.pdf
均衡において実現する結果が、果たして経済全体の厚生(富や豊かさ)を最大にするのかを分析するのが厚生分析である。ミクロ経済学では、この厚生分析にはパレート効率性という基準を用いる。ここで、パレート効率的であるとは、相手の利得を減らさないでは自分の利得を増やすことのできない状態をいう。これが、日常語での効率性、すなわち、「無駄がないこと」と同義であることは、次のように考えてみればわかる。いま資源を2人で無駄なく分け合っているとする。このとき、二方のプレーヤーが自分の取り分を増やそうと思えば、相手の取り分を奪うしかない6この状況は、まさに先ほど述べたパレート効率性の基準にかなっている。逆に、相手の利得を下げないでも自分の利得を上げられる場合、パレート効率的ではない。一般に、各プレーヤーの利得の和を最大にする結果がパレート効率的になる。もちろん、パレート効率性以外にも厚生を測る尺度はいろいると提案されている。たとえば、有名なものにマキシミン基準がある。マキシミン基準では、実現可能な各配分について、最も効用(あるいは利潤)が低い主体に着目する。そのうえで、この最低レベルにいる主体の効用水準(あるいは利潤)力S最も高くなるような配分を社会全体では採用すべきだとするものである。たとえば、経済には3人の主体がいて、実現可能な配分がスyの2つだとする。それぞれの配分において各主体が享受する効用水準をそれぞれχ=(60,90,120)、y=(150,30,120)とする。配分χで最低レベルの効用水準は60であり、配分yで最低レベルの効用水準は30なので、マキシミン基準では配分Xを選ぶことになる。一方、3人の効用の和が最大になるのは配分yなので、パレート効率性の基準では配分yを選ぶことになる。ミクロ経済学では、市場取引における均衡分析がその中心的な課題である。では、なぜ人は市場で取引を行うのだろうか。これについては、古典派経済学者デビッド・リカードが、なぜ国々の間で貿易が行われるかを説明した比較生産費説について考えてみるのがよい。