重農主義の思想によれば、農業に従事する階級は「生産階級」、製造業・商業・サービス業に従事する階級は「不生産階級」に分類されますが、それに加えて、主権者を合む「地主階級」が存在します。表1では、中央に地主階級、左に生産階級、右に不生産階級が配されていますが、留意すべきは、地主階級がその収入を生産階級と不生産階級に対してそれぞれ半分を支出すると仮定されていることです(地主階級の生産階級への支出性向λが二分の一だといっても同じです)。
かつて菱山泉(一九二三~二〇〇七)が数学モデルを使って解き明かしたように、λが二分の一の場合は、年々歳々、同じ規模の再生産が繰り返されるような世界が実現されます。このような世界は、 マルクスが「単純再生産」、シュンペーターが「静態」と呼んだものですが、「農業王国」では、このような国民経済の再生産の客観的な法則が貫通しているのです。繰り返しになりますが、ケネー以前に、このような客観的な法則を見抜き、一つの表のなかに描写した者は誰もいませんでした。シュンペーターは、このような意味での「経済循環の発見」をケネーの最大の業績としてきゎめて高く評価しました。彼は次のように言っています。
「フィジオクラット(重農主義者)になって始めてこの国民経済の体躯が、生理的および解剖学的に、統一的生活過程ならびに生活条件を持っている一個の有機体として把握され、われわれにその生活過程の最初の分析が残されるようになった。彼ら以前にはこれについて単なる常識視があったに過ぎず、彼らになって始めて社会的な財貨の流動の内面的なるものとその不断の自己更新過程とに対する洞察が成し遂げられたのである。」*
根井入門経済学の歴史ちくま新書29~30
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J・A・シュンペーター『経済学史』中山伊知郎・東畑精一訳(岩波文庫、一九八〇年)六九ページ。( )内は引用者が補いました。
農民 地主 生産業
生産的支出 収入の支出 不生産的支出
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経済学の歴史講談社より
農民 地主 生産業
生産的支出 収入の支出 不生産的支出
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