土曜日, 7月 07, 2018

ダグラス・ノース



                ( 経済学リンク::::::::::
NAMs出版プロジェクト: Thorstein Veblen, 1857-1929.
ダグラス・ノース
NAMs出版プロジェクト: 経路依存性(path dependence)クルーグマン

ダグラス・セシル・ノース(Douglass Cecil North、1920年11月5日 - 2015年11月23日[1])は、アメリカ合衆国の経済学者。新制度派経済学を代表する人物であり、1993年にノーベル経済学賞を受賞した。

インタビュー


1993年 - ノーベル経済学賞を受賞する(ロバート・フォーゲルとともに受賞)。

単著 
The Economic Growth of the United States, 1790-1860, (Prentice-Hall, 1961).
Growth and Welfare in the American Past: A New Economic History, (Prentice-Hall, 1966, 2nd ed., 1974, 3rd ed., 1983).
Structure and Change in Economic History, (Norton, 1981).
中島正人訳『文明史の経済学――財産権・国家・イデオロギー』(春秋社, 1989年)
大野一訳『経済史の構造と変化』(日経BPクラシックス, 2013年)
Institutions, Institutional Change and Economic Performance, (Cambridge University Press, 1990).
竹下公視訳『制度・制度変化・経済成果』(晃洋書房, 1994年)
Transaction Costs, Institutions, and Economic Performance, (ICS Press, 1992).
The Role of Institutions in Economic Development: Gunnar Myrdal Lecture, (United Nations, 2003).
Understanding the Process of Economic Change, (Princeton University Press, 2005).
瀧澤弘和/中林真幸監訳『ダグラス・ノース 制度原論』(東洋経済新報社,2016年)

共著 
Institutional Change and American Economic Growth, with Lance E. Davis, (Cambridge University Press, 1971).
The Economics of Public Issues, with Roger LeRoy Miller, (Harper & Row, 1971, 2nd ed., 1973, 3rd ed., 1976, 4th ed., 1978, 5th ed., 1980, 6th ed., 1983, 7th ed., 1987, 8th ed., 1990, 9th ed., 1993, 10th ed., 1996, 11th ed., 1999, 12th ed., 2001, 13th ed., 2003, 14th ed., 2005, 15th ed., 2008).
赤羽隆夫訳『社会問題の経済学――診断と処方箋』(日本経済新聞社, 1975年)
赤羽隆夫訳『経済学で現代社会を読む』(日本経済新聞社, 1995年)- 第9版の翻訳
The Rise of the Western World: A New Economic History, with Robert Paul Thomas, (Cambridge University Press, 1973).
速水融・穐本洋哉訳『西欧世界の勃興――新しい経済史の試み』(ミネルヴァ書房, 1980年/増補版, 1994年)

メモ付きのKINDLE本:

ダグラス・ノース 制度原論
ダグラス・C・ノース、瀧澤 弘和、中林 真幸
注釈の最終更新日: 2018年7月5日 木曜日
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生じる経路依存性は通常、変化を増分的なものとする。ただし、時折発生する急進的で突然な制度変化は、進化生物学における断続平衡* 2 の変化に似たようなことが経済変化にも発生しうることを示唆している。しかし、変化は、起業家たちが自分たちの競争上の地位向上を目指して政策を成立させるたびに、不断に発生しているのである(その速度は組織や組織の起業家たちの間での競争の程度に依存するだろうが)。


2016.04.28[マクロ経済] メディア情報
(書評)ダグラス・ノース 制度原論
日本経済新聞2016年4月10日掲載
岡崎 哲二
研究主幹
岡崎 哲二
[研究分野]
マクロ経済
 本書は、経済史に関する研究でノーベル経済学賞を受賞したダグラス・ノースの著書(原題の直訳は『経済変化の過程を理解する』)の邦訳である。ノースは、経済史ないし広く経済における制度の役割に光を当て、昨年に亡くなるまで長期にわたって経済史・経済学の制度研究をけん引した。その間、ノース自身の制度に関する考え方も発展してきた。本書は晩年のノースの見解をまとまった形で提示した文献として重要である。
 ノースとロバート・トーマスの共著『西欧世界の勃興』では、制度は事実上、国家による財産権の保護を指していた。そして同書は、西欧で16世紀までに国家による財産権保護が成立した理由を、財と生産要素の相対価格の変化という新古典派経済学的な枠組みで説明した。このような制度と制度変化に関する初期のシンプルな見方に対して、本書の見方は、それを部分的に継承しつつ、格段に複雑で豊かなものとなっている。
 本書では、制度は社会における公式のルールと非公式の規範の全体を指す。かねてノースが述べてきたところであるが、本書ではそれが経済成果に結びつく過程、および制度が変化する過程などで重要な役割を持つ要素として「信念」が強調されている。信念はゲーム理論ではプレーヤーたちが持つ予想を意味し、経済史の制度分析の文脈ではアブナー・グライフがほぼその意味で用いている。本書における信念は、予想を含む、より広い意味だ。ノースは認知科学の知見を導入して、人々を取り巻く環境、特に政治経済システムについて、人々が持つ認識の枠組みと規範的モデルといった意味で信念を用いている。
 この概念によって、本書では様々な興味深い洞察が導かれる。例えば、制度はインセンティブ構造を与えることを通じて経済成果に影響するが、ある制度がどんなインセンティブ構造をもたらすかは各社会の信念の体系に依存する。一方、一つの社会に複数の信念が存在する場合、どのメンバーの信念が重要な意味を持つかを制度が決めるという関係がある。信念の時間的な変化は社会的な学習の蓄積過程であるとされている。
 以上は本書が提示する論点のごく一部にすぎないが、ここからも本書が多くの研究分野の知見の統合の上に、新しい制度研究を構築することを意図した野心的な書物であることがわかるだろう。この分野をリードしてきたノースによる問題提起の書であり、制度研究の新たな出発点となっている。


http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20160316/p1
2016-03-16

■[読書][政治][経済] ダグラス・C・ノース『ダグラス・ノース 制度原論』  ダグラス・C・ノース『ダグラス・ノース 制度原論』を含むブックマーク Add Star

 ノーベル経済学賞受賞者で、去年の11月に95歳で亡くなったダグラス・C・ノースが2005年に出した本の翻訳。原題は"Understanding the Process of Economic Change"、『経済変化の過程を理解する』になります。
 ノースの研究の集大成と言っていい本なのかもしれません。
 目次は以下の通り。
1章 経済変化の過程の概略
1部 経済変化の理解に関する諸問題
2章 非エルゴード的世界における不確実性
3章 信念体系、文化、認知科学
4章 意識と人間の志向性
5章 人間が構築する足場
6章 ここまでの棚卸し
2部 その先にあるもの
7章 進化する人為的環境
8章 秩序と無秩序の原因
9章 正しい理解、誤った理解
10章 西洋世界の勃興
11章 ソビエト連邦の盛衰
12章 経済成果の改善
13章 私たちはどこへ向かうのか
 ノースといえばロナルド・コースやオリバー・ウィリアムソンとともに「制度派」の経済学者として有名ですが、この本の前半(第2章から第4章)では、その制度を生み出す認知や信念についてまず言及しています。
 
 経済学では、「経済の根底にあるファンダメンタルが定常的で、したがって時間を持たないような経済」(24p)であるエルゴート的経済が想定されがちですが(エルゴート的とは、過去の観察から計算された平均が、将来の結果の時間的平均と持続的に異なりえないということを意味する(28p))、現実の世界は非エルゴート的であり、人は常に不確実性にさらされています。

 こうした不確実性に枠組みを与え、人々の認知を安定化させるのが制度の役割なのですが、「制度とは何なのか?」、「制度が変われば人々の行動も変わるのか?」、「制度は変えられるのか?」と考えていくと、この制度というものがなかなか難しいものであることもわかります(この制度を論じる難しさについては青木昌彦『青木昌彦の経済学入門』(ちくま新書)所収の青木昌彦と山形浩生の対談を読むといいです)。
 
 この本では、そうした問題を認知や信念といったレベルから考えていこうとしているのですが、この本で行われている認知や信念についての議論についてはあまりピンときませんでした。
 もちろん、自分の知識が足りないせいもありますが、そんなに明解な見取り図が提示されているわけでもないので、ピンと来ない人は第5章から読んでもいいんじゃないかと思います。

 第5章で、制度変化について次の5つの命題をあげています。
命題1 希少性という経済状況、すなわち競争状況における制度と組織の不断の相互作用が制度変化の鍵である。
命題2 競争は、存続するために技能と知識に不断に投資することを組織に対して強制する。諸個人と彼らの組織が獲得する技能と知識は、機会に関して進化する認識を形づくり、したがって増分的に制度を変更する選択を形づくるであろう。
命題3 制度的枠組みは、最大利得を持つと認識されているような種類の技能と知識へと方向づけるインセンティブをもたらす。
命題4 認識はプレーヤーたちの心的構築物から派生する。
命題5 範囲の経済、補完性、制度配置のネットワーク外部性は、制度変化をほとんど増分的かつ経路依存的なものにする。(91-92p)
 制度は「つくられたもの」というイメージがありますが、その「つくられた」制度のもとで人々は予想し行動しているわけです。そして制度が人々にインセンティブをもたらしているのです。
 ですから、制度を変えるというのは、人々の予想や行動、インセンティブ構造を変えることであり、当然ながら抵抗に会います。
 
すなわち、蓄積された諸制度が、その制度の持続に生存を依存している組織を発生させることになり、したがってその組織は存続の脅威となるいかなる変更をも阻止するための資源を充てるだろうということである。経路依存性に関する非常に多くのことはこのような文脈において理解するのが有用である。(81p)
 といったことも起こるわけです。

 制度変化をもたらす主体として期待されるのは政府ですが、著者は政治について理解するのは難しいと認めています。「私たちは、経済の市場がどのように機能するかを知っているのと同じ意味では、「何が政治体制を機能させるのか」に関して明確な理解をまったく持ち合わせていない」(105p)のです。
 一般的に民主主義のほうが市場にとって良さそうではありますが、シンガポールのように権威体制のもとで成長している国も存在しますし、先進国の政治制度を途上国に持ち込んでも機能するとは限りません。
 
 第2部では、実際の歴史のなかでどのように制度が変化し経済が成長してきたかが分析されています。
 キーになるのは「非匿名的交換から匿名的交換への変化」、「専門化と分業」、「それを支えるインセンティブ構造」、「よく機能する政府」といったものになります。

 「非匿名的交換から匿名的交換への変化」に関しては、グライフの『比較歴史制度分析』の中のジェノヴァ商人とマグリブ商人の対比などの例から説明されていますが、意外と説明に窮している感があるのが「よく機能する政府」のところ。
  
 良く機能する市場は政府を必要とするが、政府自体が良く機能する市場を必要としているわけではない。政府が市場を食い物にすることを制限するための制度が存在しなければならないのである。(129-130p)
 
 とあるように、市場は政府を必要としますが、政府は常に市場を必要とする訳ではありません。持続可能性はともかくとして略奪国家のようなものもありえるわけです。
 結局、ノースも「非公式な規範」といったものに頼った説明をしており、合衆国とラテンアメリカのその後の経済発展の違いなども、植民地時代に培われた非公式な規範の有無で説明しようとしています。
 このあたりはなかなか難しいですね。

 その他では、11章の「ソビエト連邦の盛衰」が興味深いです。
 ゴルバチョフがペレストロイカによって立て直そうとしたソ連経済があっという間に崩壊してしまいます。「ソ連経済は改革しようとしてもすでに手遅れの状態だった」という印象がありましたが、この本によると、経営者が事実上の財産権を手に入れ、賃金・価格・生産目標の設定に関して強すぎる裁量をもってしまったことが、ソ連経済を崩壊させた原因だといいます。経営者たちは大規模国有企業から栄養を吸い続け、「経営者としての危険を冒さずに、また完全な所有に伴う債務も負わずに、財産をもとに利益を手にすることができた」(235p)のです。
 
 やや、本の構成がしっかりしていない印象もあって、とっちらかった感じもあるのですが、「制度」を論じるということが魅力的であると同時に難しいということを教えてくれる本でもあります。
 「制度」を考える入り口としては前掲の青木昌彦『青木昌彦の経済学入門』(ちくま新書)、ノースの本を最初に読むなら『経済史の構造と変化』がいいかなとは思いますが、この本も読み応えのある本だと思います。

ダグラス・ノース 制度原論
ダグラス・C・ノース 瀧澤 弘和
4492314741

日経BPクラシックス 経済史の構造と変化
ダグラス・C・ノース
4822249441

青木昌彦の経済学入門: 制度論の地平を拡げる (ちくま新書)
青木 昌彦
4480067531



改訂版: 
入門制度経済学 - 株式会社ナカニシヤ出版
http://www.nakanishiya.co.jp/book/b134457.html
 著者 ベルナール・シャバンス 著 
宇仁 宏幸 訳 中原隆幸 訳 斉藤日出治 訳 
出版年月日 2007/04/01  
制度経済学の諸理論:その比較
     諸制度の性質  (諸)パラダイ ムをなす(諸)制度     分析の中心はインフォーマルな制度かフォーマルな制度か(制度との関連で見た)諸組織進化の理論 歴史と制度経済学の関係
シュモラー習慣とルール(慣習,道徳,法)の総体,これらは目的をもって,システムを形成する国家インフォーマルな制度とフォーマルな制度(習慣・法)諸制度からなる「機関」:人々,家族,社会団体,組合,企業,国家歴史的諸段階歴史学派
ヴェブレン思考習慣と共通行為
私的所有  営利企業 
有閑階級
インフォーマルな制度 暗に:組織とは制度である方法論的ダーウィニズム,制度の自然選択(+歴史的諸段階)歴史ヘの直接的依処
コモンズ個人の活動を制御する集団的活動活動的組織,コモン・ローフォーマルな制度ゴーイング·コンサーン(組織=制度)制度の人為的選択(+歴史的諸段階)定型化された歴史
メンガー全体にたいする機能性をあらわしている社会現象貨幣インフォーマルな制度とフォーマルな制度(有機的制度と実用主義的制度)暗に:組織とは制度であるイノヴェーション+模倣,見えざる手方法論論争;精密な方法対歴史的方法
ハイエクルールと秩序貨幣,言語,法(コモン・ロー)インフォーマルな制度(伝統)自生的秩序に対立し,様々なルールにもとづく)組織された秩序文化的進化,群選択を通じたルールの選択長期の文化史
ウィリアムソン取引のガバナンス様式市場,ヒエラルキーフォーマルな制度ヒエラルキー(組織=ガバナンス形態=制度)取引費用の最小化にもとづく選択(≠進化)大企業についてチャンドラー参照
ノースゲームのルール;フォーマルかつインフォーマルな制約,履行所有インフォーマルな制度とフォーマルな制度(制度というルールにおける)ゲームのプレーヤー;制度の様々な組織権力をもつ集団が新たなルールを導人する;経路依存性,ロックイン100間年単位の長期の歴史
青木ゲームをプレイするやり方に関する共有予想の自己維持的(均衡)システム企業フォーマルな制度組織は制度であると同時にプレーヤーであるくりかえしゲームの理論,複数均衡国民国家,部門,地域の共時的モデルに依処
レギュラシオン派基礎的諸関係のコード化;制度化された妥協賃労働者,国家,貨幣フォーマルな制度組織と制度との区別に言及(ノースを参照)制度的構図のなかで高まる緊張;危機により時期区分される進化アナール学派;歴史的マクロ経済学
ホジソン相互作用を構造化する,社会的に埋め込まれたルールのシステム言語インフォーマルな制度とフォーマルな制度組織は制度である(ヴェブレン的な)普遍的ダーウィニズム思考の歴史;「歴史的特殊性」の問題
*普通、メンガーは制度学派には入らない。オーストリア学派を比較のために入れている


制度・制度変化・経済成果
 著者名等  ダグラス・C.ノース/著  ≪再検索≫
 著者名等  竹下公視/訳  ≪再検索≫
 出版者   晃洋書房
 出版年   1994.12
 大きさ等  22cm 213p
 注記    Institutions,institutional change and ec
onomic performance. 参考文献:p189~200
 NDC分類 331
 件名    経済学  ≪再検索≫
 要旨    1993年度ノーベル経済学賞受賞。制度分析を経済学と経済史に統合する「制度変化の
経済理論」を提示。
 ISBN等 4-7710-0758-6


制度・制度変化・経済成果 晃洋書房 1994
[InstitutionsInstitutional Change and Economic Performance 1990]

経済史と経済理論を統合するノースの挑戦
形式: 単行本|Amazonで購入

1993年に経済理論を経済史に応用した功績よってノーベル経済学賞を受賞したダグラス・ノースによる野心的論考である。

本書でノースが目指すところは序文にはっきり書かれている。
経済学と経済史学(経済理論と経済史)を統合する制度の理論の構築である。

1)歴史が重要である。(序文)
現在の制度は過去の制度の制約の下で形成されたものである。(経路依存)

2)「制度の理論」が必要である。
数量経済史は、新古典派の経済学を経済史に応用することで経済史に大きな貢献もしたが、失ったものも多かった。
新古典派の経済学は情報が完全で、かつ情報処理には費用も時間もかからないと仮定している。
(完全情報の世界)→(経済活動にリスクを伴わない)→(取引費用=ゼロ、いわば摩擦が無い世界)→(制度は経済のパフォーマンスに影響を与えない)→(制度の理論が欠落する)

①新古典派の経済学は歴史の多様性と経済成果の関係について何も語ることが出来ない。
②新古典派の経済成長論は、経済成長を数理的に定義しているだけで何が経済成長をもたらすかについて答えることが出来ない。
(投資を増やせば経済が成長するというのはトートロジーである。)

制度を考えるとは不完全情報下の人間行動を考察することである。
従って・・・
①新古典派経済学の行動仮説である合理的選択理論の再検討が必要になる。
(第Ⅰ部第3章制度の理論における行動仮説)
②経済活動に伴うリスクを分析するため「取引費用」アプローチの採用が必要になる。
(第Ⅰ部 第4章 交換の取引費用論)

注)不完全情報から生まれる問題を取り扱うには二つの方法がある。
ⅰ.”不確実性”に焦点を当て、それを確率論で処理する「情報の経済学」アプローチ
ⅱ.完全情報の仮定を取引費用ゼロの仮定で置き換える「取引費用」アプローチ
ダグラス・ノースは取引費用アプローチを採用した。

3)歴史と制度の理論を統合する。
①歴史とは制度変化のプロセスである。
②経済成果は制度の関数である。

4)制度のコアは所有権の定義と定義された所有権を保護する仕組みである。(所有権理論 本書p44)
一義的には所有権の構造である制度が、インセンティブを形成し経済成果を決定づける。
①制度的枠組みが知識と技術の獲得の方向を形作り、そして②その方向がその社会の長期的発展の決定的要因であろう(本書p103)

5)技術的知識の習得が比較的容易な現代において豊かな国と貧しい国との間のギャップが容易に埋まらないのは非効率な制度が競争によって淘汰されることなく残るからである。

何故なら
①制度は歴史的偶然の積み重ねで形成され、均衡点は常に複数存在する。(複数のナッシュ均衡)
②国家は、富の蓄積を促すような所有権ではなく課税しやすいような所有権を設計するインセンティブを持つ。
③制度には本質的に収穫逓増という性格があるため複数の制度の競合は”初期状態”でしか起きない。
複数の制度の競合は社会に混乱をもたらすからである。
(一度、右側通行が定着した社会では、左側通行は存続出来ない。)
④初期状態で優位性を示した制度が、最終的にも優れた制度であるとは限らない。(手続き的合理性の限界)
⑤定着した制度は、将来の選択肢を制約する。(経路依存)

6)制度の理論は完成しているわけではなく課題を残している。
例えば・・・
①制度の研究には国家論が必要である。
「効率的な所有権を創造・執行するインセンティブが組込まれている政治組織によって効率的制度を得る。」(p186)
②派生する行動規範を視野に入れた総合的な制度の研究が必要である。
「勤勉、正直及び誠実」を尊ぶ文化的伝統は取引費用を下げる。

以上が本書の主要な論点である。
やや難解だが本書ほど刺激的な論点に満ちた書籍は少ないだろう。

本書を読むに当たって知っておいた方が良いことが3点ある。
1)新古典派経済学の問題点
新古典派経済学の問題点は本書のなかでも議論されているが下記の点はあらかじめ知っておいた方がいい。

完全情報の仮定のおかげで新古典派の経済学は制度の問題に煩わされることなく市場経済のメカニズムを明確にすることが出来た。
しかし、この仮定は非現実的な議論を生み出す。
なかでも大きな問題は、経済交換がリスクを伴わない活動になることだ。
これは取引に費用がかからないを意味する。(取引費用=ゼロ)

完全情報の下では、需要を読み違えて不良在庫を抱えるプレーヤーは存在しない。
需要を調べるコストが(時間も含めて)ゼロだからだ。

不正行為も存在し得ない。商取引に付きまとう不正行為、商品に関する様々な偽装、集団作業におけるさぼり等の問題は”どうせわかりゃしない”(不完全情報)という短絡的な状況判断から不正(機会主義的行動)に走る人間がいるために起こることだからだ。
従って、取引相手の信用調査もいらなければ、契約が正確に履行されるかどうか監視する必要もない。

新古典派の経済学はどこにも存在しない世界の経済学なのだ。

2)本書はあくまでノース(学派)の経済学に関する論考である。
ノースとオリバー・ウィリアムソンはともに不完全情報下での経済行動を分析するため「取引費用」アプローチを採用しており、国際新制度派経済学会(後に"制度と組織の経済学会"と改名)の創立にも尽力したこともある。
このため、ノースの経済学とオリバー・ウィリアムソンの経済学はともに新制度派経済学と呼ばれているが二人の理論には大きな相違点がある。

例えば、本書の取引費用に関する説明で、資産特殊性、取引頻度、取引の対象となる財の複雑性に着目したオリバー・ウィリアムソンの議論に触れノースは自分とは対極にある議論だと言っている。

3)制度の理論に関わる3つの理論。
1.所有権理論
2.取引費用理論
3.エージェンシー理論
この三つの理論は新古典派の経済学でも取り上げられており、中級程度の「ミクロ経済学」の教科書の多くに紹介されている。
ただノースは本書で、これらの理論を非常に大胆な使い方をしている。
「ミクロ経済学」の教科書で知っているからといって油断するとひどい目に会う。
これらの理論を使ってミクロ経済学を補完することと、制度の理論を構築することは異なる作業だからだ。
本書の説明は先入観を捨てて注意深く読む必要がある。

蛇足:
1)混同しているレビュアーがおられるようだが、比較制度分析は、制度のナッシュ均衡(複数均衡)という観点から多様な経済システムの在り方を解き明かそうとする別学派の経済学である。比較制度分析は青木昌彦学派とでもいうべきだろう。ダグラス・ノースと青木昌彦はプライベートで親交があり、青木昌彦はいくつかの著作でノースに影響を受けたことを率直に認めているが二人の経済学は根本的に異なるものだ。

新古典派の経済学が無視してきた制度にフォーカスした経済学は、現在、多様で、”経済学の制度主義的転回”と呼ばれる。関連する経済学の学派は、新古典派をルーツとする新制度派、旧制度派をルーツとするホジソンの現代制度派、マルクス経済学の系譜につながるレギュラシオン学派、ルイスに始まるコンヴァシオン学派、青木昌彦の比較制度分析等がある。

2)ダグラス・ノースの理論とオリバー・ウィリアムソンの理論の違い
①二人の理論の違いは二人が関心を持つテーマの違いに拠る。
オリバー・ウィリアムソンの関心は企業組織と市場、その境界にあり、ダグラス・ノースの目指すところは前述した通り経済理論と経済史を統合する制度の理論の構築である。
②行動仮説において合理的選択理論の修正という方向を取ったノースに対し、ウィリアムソンは合理的選択理論を放棄しサイモンの満足化基準を採用するという方向を選択した。
③オリバー・ウィリアムソンの理論は”組織の経済学”として新古典派の経済学から受け入れられている。
これはウィリアムソンの理論が合理的選択理論の下でも充分展開できるということを示している。
企業を生産関数が示す規模の問題としてしか取り上げて来なかった新古典派経済学に、オリバー・ウィリアムソンが、一石を投じたことは間違いない。しかし、私見だがオリバー・ウィリアムソンの経済学は、組織というものを無視してきた新古典派の経済学を補完するもので、それ以上の革命的な性格を有するものではないと思う。

(敬称略)


https://books.google.co.jp/books?isbn...
ダグラス・C・ノース. 張した。彼は知識の中に、過去の経験から得たすべての人間の環境への適応を含めている。 それらは習慣、技能、情動的態度、そして制度である。ハイエクは、人間 ... しかし、経路依存性がそれだけのことでしかないとしたら、成果の悪い制度を観察したときに、ラデカルな変化を企てることができることになるだろう。この言葉のより ...
ダグラス,ノースなどは、新古典派経済学の合理性仮説は制度の役割を無視していると鋭く批判している 2 にこの(合理性仮説の)論法の危険なところは、何がしかの学習が起こり"正しい"教訓を学ぶだろうとの前提にある。しカゝし、 アクターは" ... ノースが主張するように、経路依存性が文化を通じて行動に潜在的影響を与える。新技術の利用法にっいて ...
https://books.google.co.jp/books?isbn...
また 1988 年以降シュモラーの研究が再評価されたと言われる"。ダグラスノースはノーベル賞の対象となった著書「 制度・制度変化と経済成果」において、経路依存性により歴史の重要性を強調する。と書いている"。こうした歴史の意義は本書の第 I 部によっても明らかになるだろう。注 1)ギアケがドイツ人の発音であるが日本の慣用に従いギールケと ...
https://books.google.co.jp/books?id...
1998 - スニペット表示 - 他の版
だが,一旦成立した行動様式はいわゆる「経路依存性」があるためたやすく変化しょうとせず,変化の経路に影響をあたえる。特に「インフォ一マルな制約」は文化的要因に ... 68 ダグラス'じ'ノース著/竹下公視訳「制度.制度変化.^済成果』 5 ^羊き^、 1994 年, 60、 ...
https://books.google.co.jp/books?id...
スニペット表示 - 他の版
そのことの系論として、開発モデルの複雑さと歴史的経路依存性(path dependency)の重要さを著者は指摘する。 ... の史的唯物論を想起させるし、制度の形成・進化という点では、ダグラスノース(North)の新制度学派的経済史学から大きな示唆を受けている。
https://books.google.co.jp/books?id...
2009 - スニペット表示 - 他の版
ダグラス・ C ・ノースは『制度・制度変化・経済効果」において、制度を「インフォーマルな制約」と「フォーマルな制約」に分けた。 ... ノースの理論では、経路依存、収穫遍増が基本的コンセプトとなっているが、新古典派理論に欠如していた「情報費用」という概念を ...

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