現代貨幣理論(MMT)は機能的財政論とケインズ理論の再発見・統合
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「自国通貨建て国債なら、インフレ制約がない限り無限に拡大できる」という理論の補強です。
機能的財政論の前提条件の貨幣観
ケインズ理論ないしケインズ学派のアバ・ラーナーの機能的財政論は、なぜ「自国通貨建て国債なら、インフレ制約がない限り無限に国債発行できる」となるのか?
その理論的背景にはクナップ、イネスの「貨幣国定説」「信用貨幣論」が存在します。
事実としてケインズはイネスに多大な影響を受け「貨幣数量説から脱却できた」と書いてますし、クナップの貨幣国定説を支持しています。
最初に結論を申し述べるなら、ケインズやラーナーを支持しつつ、現代貨幣理論(MMT)を否定することはナンセンス極まりありません。
財政赤字に問題はないという、理論の問題
「自国通貨建ての国債なら、財政赤字に問題はない」は、経済学において自明とはされていません。すなわち「なぜ問題がないのか?」に対して「自国通貨建てだから」では説明になりません。
2つの問題を理論的に説明できねばなりません。
- 通貨とはなにか? 貨幣とはなにか?
- 財政赤字(負債)とはなにか? なぜ政府は負債を拡大し続けられるか?
通貨とはなにか?
通貨の流通には2説あります。
- みんなが通貨と思うから、通貨として流通する
- 政府が権力を通じて、通貨を定着させた
1.は突き詰めると「通貨の信認」という、主流派経済学の理論になります。なぜか? 1.は「お金はお金だからお金なんだ(とみんなが思っている)」となるからです。
これは逆説的に「みんながお金だと思わなくなれば、流通しなくなる。価値を失う」ということになりますから、「通貨の信任」になるのです。
したがって「通貨の信認が失われる、インフレはダメ」となり、デフレを肯定することになります。デフレ=通貨価値の上昇でもありますから。
積極財政・デフレ脱却を肯定するのなら、1.はありえません。したがって2.の理論を選択することになります。
通貨は政府権力を通じて、通貨足り得るという理論です。クナップの貨幣国定説です。
直接的な政府権力とは? 徴税です。したがって積極財政論を肯定するのなら、現代貨幣理論(MMT)の租税貨幣論を肯定することになります。
なぜ政府は負債を拡大し続けられるか? 信用創造の信用が半永久的だから
通貨の問題は解決しました。しかし負債拡大の問題は解決してません。
信用貨幣論とは貨幣=負債です。国債や貨幣を拡大し続けられるとは、なぜでしょうか?
内生的貨幣供給論か、外生的貨幣供給論か? が関係します。
外生的貨幣供給論は端的にいえば、「預金がないとお金が借りられない」という「お金のプール論©三橋貴明さん」です。
内生的貨幣供給論とは信用創造です。つまり「お金を借りたら、預金が創造される」です。
預金額しかお金が借りられないとすると、国民や企業の預貯金以上の国債発行はできません。外生的貨幣供給論は、それをしめす論です。
したがって主流派経済学が「国民の預貯金が1500兆円で、国債発行額が1000兆円! だからそろそろやばい!」と主張するわけです。
実際は「国債を発行すると、民間資産(預貯金や企業の内部留保等々)が増える」になります。
国債のファイナンスは誰が請け負うか
中央銀行と市中銀行の違いは、現金が発行できるかどうか? です。他にも中央銀行は政府と市中銀行しか口座を持つことができない。市中銀行は民間が口座を持てるということでしょうか。
市中銀行の信用創造の否定は、中央銀行の信用創造の否定になります。イコールで「預貯金額しか、国債は発行できない=預貯金からしか貸し出せない」という外生的貨幣供給論になります。
これは「誰かの負債=誰かの資産」の否定にも繋がります。
信用創造は実際的にも、現実的にも、そして理論的にも”存在する”のです。でないと、現実に説明がつきません。又貸し論は、現代貨幣理論(MMT)を否定したいだけの論だったのです。
信用貨幣論=負債貨幣論という事実
貨幣は負債ではない! と主張する人たちがいます。では貨幣は何なのでしょう?
貨幣=◯◯をその方たちは、答えるべきです。
最もポピュラーな反論は、貨幣=交換価値です。
では貨幣=交換価値だとしましょう。そして政府は国債を交換をして、貨幣(=需要)を供給できます。
では何と交換したのか? 答えは信用です。国家は半永久的に続くという「前提」と、自国通貨建ての通貨発行権と徴税権から、信用が生まれるのです。
信用貨幣とは、負債貨幣ともいえます。やはり貨幣=負債でした。
※信用を数量化したものが、負債であり貨幣です。
現代貨幣理論(MMT)を積極財政派が批判するのはナンセンス
積極財政派、デフレ脱却派の理論が、現代貨幣理論(MMT)によって支えられるという事実のみお話しました。
もっと詳しく読みたい方は、機能的財政論・財政赤字問題なし論を支える現代貨幣理論(MMT) – 進撃の庶民をご参照ください。
現代貨幣理論(MMT)とは、イネスやクナップ、コールリッジの貨幣観を再発見、統合したものです。つまり、ケインズの貨幣観を明確にした理論体系です。
機能的財政論のアバ・ラーナーは、当然ながらケインズの貨幣観を受け継いでおります。
したがって機能的財政論に則るのなら、現代貨幣理論(MMT)は「肯定しなければ理論破綻する」のです。
クナップやイネスを否定しつつ、ケインズ理論を唱えることはナンセンスです。
ケインズを肯定しつつ、現代貨幣理論(MMT)を否定するというちぐはぐ
端的に申し上げると、ケインズ理論の表面しかなぞっていないからそうなる、としかいえません。
否定は楽です。しかも「偉くなった気分、偉大な気分」になれます。かのケインズを、この俺が否定している! のですから。
拒否や否定には、物事の理解は必要ありません。ただ行動として、拒否・否定すればよいだけです。
しかし批判は「良い所、悪い所をはっきり見分け、評価・判定すること(コトバンク)」とある通り、物事を理解せねばなりません。
私も新古典派経済学の主要理論は、理解してます。だから批判できます。
みなさんも安倍政権を理解してるでしょう? だから批判できるのです。同じです。
つまり現代貨幣理論(MMT)の批判は「理解してから」しかできません。おおよそ、現代貨幣理論(MMT)への批判は、無理解、藁人形論法が主なので「否定・拒否」の部類でしょう。
なぜ否定・拒否するのか? 簡単です。
- 自分が学んできたもののバージョンアップが面倒くさいから
- 俺かっけーをしたいから
- 自分の学んできたものの批判をしたくないから
積極財政に与しながら、現代貨幣理論(MMT)を批判するのは1.か2.でしょう。新古典派経済学は明確に3.です。したがって拒否の姿勢を示しつつ、藁人形論法などを使用するわけです。
私? 頭が良くないので「しっかりっ考えて、しっかり見極めてからしか発表しない」ようにしてます。
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