磯子火力発電所
【プレスリリース】日本の金融機関・投資家が石炭投融資リストのトップを独占 – COP25で判明
共同プレスリリース
2019年12月6日
国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
気候ネットワーク
日本の金融機関・投資家が石炭投融資リストのトップを独占 – COP25で判明
2019年12月6日 マドリード・スペイン – 本日、石炭産業に投融資する世界の金融機関に関する最新調査報告書[LINK]が、ドイツの環境NGOウルゲワルド(Urgewald)およびオランダのバンクトラック(Banktrack)により、マドリードで開催されている国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)において発表されました。
- 日本の民間銀行であるみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)、そして三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)が、石炭火力発電開発企業への融資者として融資額ランクの世界第1位から3位までを占めています。
- 日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、石炭火力発電開発企業への投資家として世界第2位にランクインしました。
- 石炭開発企業に対する引受業務は、中国の大手金融機関によって大部分が占められていました。
調査報告書 は、「Global Coal Exit List(脱石炭リスト)」に掲載されてる世界の石炭関連企業トップ258社に対する融資、引受業務、債権および株式保有を分析。驚くべきことに、2017年から2019年の間に行われた金融機関による石炭火力発電開発企業への投融資額は7450億米ドル(81兆1,505億円:1ドル109円換算)におよび、日本の民間銀行と機関投資家が上位を占めています。
Urgewaldのダイレクター、ヘファ・シュウキングは、「日本企業は、アジアでの石炭火力発電の拡大に2つの役割を果たしています。金融機関による投融資および直接投資によるものです。J-Power(電源開発株式会社)や関西電力などの電力会社だけでなく、丸紅、三菱商事、住友商事などの大手商社によっても、オーストラリアからバングラデシュに到るまで新しい石炭火力発電所が開発されているのを見るのは遺憾です」とコメントしました。
日本政府は、地球の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えることを目標としているパリ協定に批准しています。しかし、日本の民間銀行であるみずほFG、MUFG、SMBCグループは、石炭火力発電開発企業に対する最大の融資者です。日本の三大メガバンクは、2017年から2019年の間に、393億米ドル(4兆2,837億円:1ドル109円換算)もの融資を石炭火力発電開発企業に行なっています。石炭産業による温室効果ガス排出量は世界の3分の1にも及びます<注1>。
みずほFG(168億米ドル)、MUFG(146億米ドル)、SMBCグループ(79億米ドル)による融資の総額は、CitiグループやBNPパリバ、インドステイト銀行(SBI)、バークレイズを含む世界のトップ30行による融資額の40パーセントにあたります。(添付1を参照)
最新報告書を受け、350.org Japanのキャンペーナーである渡辺瑛莉は、「日本のメガバンクは、今年9月、国連の「責任銀行原則(PRB)」に署名し、銀行の投融資行動をパリ協定に沿ったものにすることをコミットしたばかりです。石炭への融資は、これに矛盾するだけではありません。銀行が脱炭素経済への移行に貢献するために、これまで石炭関連事業に融資することで積み上げてきた「気候債務」を一刻も早く減らしていかなくてはいけません」とコメント。
日本の三大メガバンクは、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の気候リスク報告に関する提言にも賛同しており、石炭火力発電事業への融資を制限するセクターポリシーを導入しています<注2>。しかし、これら3大メガバンクはいまだに国内外で新規石炭火力発電事業への融資を続けており、同金融グループが海外でのさらなる事業展開を目指す際に、国際的なブランドに対する大きな評判リスクになります。
日本のメガバンクすべてが融資に関わる案件として注目すべきは、インドネシアで進められているチレボン2石炭火力発電事業です。同案件に関連しては、贈収賄事件が報じられている<注3>。他、赤道原則などの国際規範66項目に違反しているとの報告書が出されたばかりです<注4>。またベトナムのバンフォン1石炭火力発電事業も、強制移住を強いられた近隣住民や健康被害への懸念などが報告されており、赤道原則などの国際的な投融資基準違反も疑われます。<注5>さらに、現在ベトナムで計画中のブンアン2石炭火力発電事業に対しても、日本の民間金融機関が融資を検討していると報道されており<注6> 、同案件に融資を決定するとすれば、これらの銀行に対する国際的な批判は免れ得ないでしょう。
日本の年金基金であるGPIFは、石炭関連企業に対し、世界第2位の投資を行っています。
調査報告書によると、GPIFは174億米ドルに相当する株式と債権を保有しています。世界最大級のアセットマネージャーであるブラックロックは、石炭産業関連企業に対し176億米ドルに相当する投資を行っており、世界1位でした。また、124億米ドル相当の投資を行うバンガードが3位につけました。その他の日本の主要な資産運用会社としては、三井住友信託が7位、野村證券が8位、MUFGが9位、みずほFGが12位でした。石炭産業への投資額全体でみると、日本の投資額は米国に次いで2位になります。
石炭関連企業への日本の巨額の投資をうけ、350.org 日本支部代表である横山隆美は、「日本の年金基金は、投資ポートフォリオが3度上昇の世界につながると認めています。気温が3度も上昇すれば、それは地球や金融に破壊的影響を及ぼすでしょう。世界最大の年金基金で、かつ国連責任投資原則(PRI)のボードメンバーとして、Global Coal Exit List(脱石炭リスト)掲載企業をはじめ、GPIFの投資ポートフォリオを脱炭素化するためにいかに行動に落とし込むのか、GPIFは国際的な監視の目に晒されています。日本の投資家は情報開示から一歩先へ進み、パリ協定の1.5度目標との整合性あるビジネス戦略を持たない企業からの投資撤退を積極的に進めるべきです」とコメントしました。
石炭への引受業務では中国の金融機関がトップ10を占め、その後にみずほFGが続きました。
石炭開発企業への引受業務は、大部分が中国工商銀行(ICBC)や、中国平安保険グループ、CITIC、中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)など、中国の金融機関によって行われています。これら4つの金融機関だけで、2017年から2019年の間に1100億米ドルもの引受業務を行っています。石炭関連企業への引受業務においては、中国の金融機関がトップ10全てを占め、11位にみずほFGがランクインしました。日本に加え、中国が石炭開発に与える並外れた影響は否定できず、また、中国の一帯一路政策が途上国でのさらなる石炭開発加速に深刻な影響を与えることが懸念されます。
COP25で高まる日本の石炭推進に対する批判
気候ネットワーク理事の平田仁子は、「今回のUrgewaldの調査報告書で、 日本が石炭火力発電所の新設および海外への石炭火力発電事業に巨額の支援を継続していることが改めて明らかになっています。日本に対する批判が高まる中、COP開幕早々の12月3日に梶山経済産業大臣が『石炭火力発電所は選択肢として残していきたい』と述べるなど、日本政府が気候変動の緊急性に対応せず、米国のように民間銀行・企業が率先して脱石炭に舵を切ることをしなければ、国際社会での競争力は早々に失われるでしょう」とコメントしました。
以上
添付1:
石炭金融データ(抜粋)
https://world.350.org/ja/press-release/190828-eng/ <注3> (英語)http://www.nocoaljapan.org/bribery-case-and-japanese-mega-bank-loans/ (日本語)http://www.nocoaljapan.org/ja/bribery-case-and-japanese-mega-bank-loans/ <注4> (日本語)https://fairfinance.jp/bank/casestudies/cirebon2019/ <注5> (英語)http://www.foejapan.org/en/aid/jbic02/vp/190426.html (日本語)http://www.foejapan.org/aid/jbic02/vp/190426.html <注6> (英語)https://350.org/press-release/350-launches-petition-urging-japanese-banks-to-rule-out-funding-vung-ang-2-coal-fired-power-plant/ (日本語)https://world.350.org/ja/press-release/191101/
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なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み
CO2の排出量を減らし、環境に負荷をかけない社会をつくるさまざまな取り組みが、世界中で進められています。電力も例外ではありません。そんな中で、石炭火力発電は、CO2削減の観点から投資を控え始めた国がある一方、新興国ではさらなる活用が求められている状況にあります。
日本は、世界に石炭火力発電を輸出していることで、時代に逆行しているのでしょうか?日本が石炭火力発電をつづけている意味とは?今回は、石炭火力発電について、さまざまな質問にお答えします。
日本は、世界に石炭火力発電を輸出していることで、時代に逆行しているのでしょうか?日本が石炭火力発電をつづけている意味とは?今回は、石炭火力発電について、さまざまな質問にお答えします。
Q1.世界的に、石炭火力発電については投資を見直したり、やめたりといった動きがあると聞きます。なのに、なぜ日本は石炭火力発電を活用する方針を変えないのですか?
日本にとって、安定供給と経済性にすぐれた石炭火力発電は一定程度の活用が必要です
2016年に発効した、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」では、長期目標として「2℃目標」が設定され、今世紀後半にはCO2の排出量と吸収量をバランスさせることが定められました(「今さら聞けない『パリ協定』~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)。そこで、世界では、「低炭素化」をさらに推しすすめた「脱炭素化」の動きが広がりつつあります。
これを受け、石炭火力発電については、ヨーロッパ系の民間金融機関の中には、投融資を控える動きもあります。また、国際開発銀行においても、一定の条件の下で、融資を制限する動きがあります。
こうした世界の流れの中で、一見、日本の石炭火力発電に対する姿勢は、逆行しているように見えるかもしれません。しかし、石炭火力が持つさまざまなメリットを考えれば、日本にとって引き続き重要なものです。
エネルギー源は、安定的な供給、経済性、環境適合、安全などのさまざまな側面を満たすことが求められます。しかし、すべての面で完璧なエネルギー源は存在していません。そこで、それらの面のバランスをとりながら、最適なエネルギーとその組み合わせを選んでいくことになります。
石炭は、安定供給や経済性の面で優れたエネルギー源です。ほかの化石燃料(石油など)にくらべて採掘できる年数が長く、また、存在している地域も分散しているため、安定的な供給が望めます。また、原油やLNGガスにくらべて価格は低めで安定しており、LNGガスを使った火力発電よりも、低い燃料費で発電できます。
これを受け、石炭火力発電については、ヨーロッパ系の民間金融機関の中には、投融資を控える動きもあります。また、国際開発銀行においても、一定の条件の下で、融資を制限する動きがあります。
こうした世界の流れの中で、一見、日本の石炭火力発電に対する姿勢は、逆行しているように見えるかもしれません。しかし、石炭火力が持つさまざまなメリットを考えれば、日本にとって引き続き重要なものです。
エネルギー源は、安定的な供給、経済性、環境適合、安全などのさまざまな側面を満たすことが求められます。しかし、すべての面で完璧なエネルギー源は存在していません。そこで、それらの面のバランスをとりながら、最適なエネルギーとその組み合わせを選んでいくことになります。
石炭は、安定供給や経済性の面で優れたエネルギー源です。ほかの化石燃料(石油など)にくらべて採掘できる年数が長く、また、存在している地域も分散しているため、安定的な供給が望めます。また、原油やLNGガスにくらべて価格は低めで安定しており、LNGガスを使った火力発電よりも、低い燃料費で発電できます。
現状、日本では再生可能エネルギーは価格が高く、発電量の不安定さをコントロールすることが難しい状態にあります。そうした中で、安定供給が可能なエネルギー資源に乏しい日本としては、こうした特徴をもつ石炭を、一定程度活用していくことが必要となります。
2014年に定められた「エネルギー基本計画」でも、石炭は、「温室効果ガスの排出量が大きいという問題はあるが、地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量あたりの単価も化石燃料の中で最も安い」ことから、重要な「ベースロード電源」(一定量の電力を安定的に低コストでつくることのできる方法)と評価されています。
2014年に定められた「エネルギー基本計画」でも、石炭は、「温室効果ガスの排出量が大きいという問題はあるが、地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量あたりの単価も化石燃料の中で最も安い」ことから、重要な「ベースロード電源」(一定量の電力を安定的に低コストでつくることのできる方法)と評価されています。
最近の石炭火力発電は、ずいぶんクリーンになってきています
一方で石炭には、地球温暖化の原因とされるCO2を排出するという、環境面での課題があります。単位あたりで見たCO2排出量はほかの化石燃料に比べても多いため、利用するためには色々と工夫をしていくことが必要となります。
その工夫の一つとして、石炭火力発電の技術開発が進められています。石炭火力発電というと、皆さんのイメージの中には、もくもくと真っ黒な煙をあげるものというイメージがあるかもしれません。しかし、最近の石炭火力発電は、環境にかける負荷がずいぶんと減ってきています。たとえば、横浜市にある磯子石炭火力発電所は、「クリーンコール技術」とよばれる技術を活用し、大気汚染物質の排出を大幅に削減しています。2002年のリプレース(建て替え)前に比べると、窒素酸化物(NOx)は92%、硫黄酸化物(Sox)は83%、粒子状物質(PM)は90%減っています。
その工夫の一つとして、石炭火力発電の技術開発が進められています。石炭火力発電というと、皆さんのイメージの中には、もくもくと真っ黒な煙をあげるものというイメージがあるかもしれません。しかし、最近の石炭火力発電は、環境にかける負荷がずいぶんと減ってきています。たとえば、横浜市にある磯子石炭火力発電所は、「クリーンコール技術」とよばれる技術を活用し、大気汚染物質の排出を大幅に削減しています。2002年のリプレース(建て替え)前に比べると、窒素酸化物(NOx)は92%、硫黄酸化物(Sox)は83%、粒子状物質(PM)は90%減っています。
特に日本は世界でも最高効率の発電技術を持っています。発電効率が向上すれば、少量の燃料でたくさんの電気をつくることができるようになり、そのぶん、火力発電から排出されるCO2の量も削減されます。また、大気汚染物質の排出も大幅に削減しています。今後もさらなる技術開発をおこない、効率化とCO2削減を進める予定です。
Q2.世界が脱炭素に進む中で、日本が海外に石炭火力発電を輸出しているのは問題ではないですか?
エネルギー源に完璧なものはなく、石炭を選ばざるを得ない国もあり、そうした国々の経済発展とCO2削減に貢献しています
前述したように、完璧なエネルギー源は存在しない中で、世界には、どうしても石炭をエネルギー源のひとつとして選択せざるを得ない国が存在しています。その理由は、安定した供給をおこなうことができるという「エネルギー安全保障」、そして「経済性」にあります。
国際エネルギー機関(IEA)の分析では、インド、東南アジア諸国を中心とした新興国では、経済発展とともに、今後も石炭火力発電のニーズが拡大する見通しとなっています。新興国にとって、安く、安定的に採れる石炭は、引き続き、重要なエネルギーなのです。
2017年11月に開催された「東アジアサミット」、2017年9月に開催された「ASEAN+3エネルギー大臣会合」においても、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及がありました。また、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もありました。
日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています(「知っておきたいエネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)。ただ、このような石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本ができる貢献として、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっているのです。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、アジア地域全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。
ちなみに、日本で商用化されている最高効率の技術(USC:超々臨界圧)を、中国やインドといったアジアの国々と米国の石炭火力に適用すると、CO2削減効果は約12億トン(11.8億トン)にのぼるという試算があります。これは、日本全体のCO2排出量(約13億トン)に匹敵する規模です。
こうしたことから、諸外国から要請があった場合には、相手国のエネルギー政策はもちろん気候変動対策にも見合うかたちで、高効率石炭火力発電の導入を支援しています。導入を支援するのは、原則的に、世界で最新鋭の発電設備となります。また、経済協力開発機構(OECD)が定めた、石炭火力発電への支援方法に関するルールも守っています。
さらに、CCSの技術開発も進めつつ、再生可能エネルギーや水素エネルギー技術の開発と輸出についても加速していきます(「さまざまなエネルギーの低炭素化に向けた取り組み」「3.日本の技術を世界の低炭素化に活かす」参照)。
国際エネルギー機関(IEA)の分析では、インド、東南アジア諸国を中心とした新興国では、経済発展とともに、今後も石炭火力発電のニーズが拡大する見通しとなっています。新興国にとって、安く、安定的に採れる石炭は、引き続き、重要なエネルギーなのです。
2017年11月に開催された「東アジアサミット」、2017年9月に開催された「ASEAN+3エネルギー大臣会合」においても、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及がありました。また、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もありました。
日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています(「知っておきたいエネルギーの基礎用語~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)。ただ、このような石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本ができる貢献として、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっているのです。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、アジア地域全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。
ちなみに、日本で商用化されている最高効率の技術(USC:超々臨界圧)を、中国やインドといったアジアの国々と米国の石炭火力に適用すると、CO2削減効果は約12億トン(11.8億トン)にのぼるという試算があります。これは、日本全体のCO2排出量(約13億トン)に匹敵する規模です。
こうしたことから、諸外国から要請があった場合には、相手国のエネルギー政策はもちろん気候変動対策にも見合うかたちで、高効率石炭火力発電の導入を支援しています。導入を支援するのは、原則的に、世界で最新鋭の発電設備となります。また、経済協力開発機構(OECD)が定めた、石炭火力発電への支援方法に関するルールも守っています。
さらに、CCSの技術開発も進めつつ、再生可能エネルギーや水素エネルギー技術の開発と輸出についても加速していきます(「さまざまなエネルギーの低炭素化に向けた取り組み」「3.日本の技術を世界の低炭素化に活かす」参照)。
Q3.最近、石炭火力発電の建設計画が多いそうですが、「2030年度のエネルギーミックス」や「CO2削減目標」の達成は大丈夫なのでしょうか?
石炭火力発電だけがたくさん増えているわけではありません
2030年度のエネルギーのありかたを描いた「エネルギーミックス」では、2030年度における電源(電気をつくる方法)構成のうち、石炭火力発電の比率は26%とされています。しかし、最近、石炭火力発電の新設計画が増えており、もし計画されている石炭火力発電のすべてが建設されると、エネルギーミックスやCO2削減目標が達成できなくなるのではないかといった心配の声が聞かれます。
現在、日本における石炭火力発電所の新しい増設計画は、1673万kW、30機となっています(2018年3月末時点)。ただし、これらは構想中のものも含めた計画段階の数字で、実際には、必ずしもすべてが建設されるわけではないことに注意が必要です。
また、もうひとつ注意していただきたいのは、建設が計画されているのは石炭火力発電だけではなく、ガス火力発電も同様だということです(1341万kW、20機が計画[2018年3月末時点])。ですから、石炭火力発電だけがたくさん増えようとしているというイメージは、正確ではありません。
現在、日本における石炭火力発電所の新しい増設計画は、1673万kW、30機となっています(2018年3月末時点)。ただし、これらは構想中のものも含めた計画段階の数字で、実際には、必ずしもすべてが建設されるわけではないことに注意が必要です。
また、もうひとつ注意していただきたいのは、建設が計画されているのは石炭火力発電だけではなく、ガス火力発電も同様だということです(1341万kW、20機が計画[2018年3月末時点])。ですから、石炭火力発電だけがたくさん増えようとしているというイメージは、正確ではありません。
新しく火力発電を建設することには意味があります
そもそも、なぜ、すでに発電設備を持っているにもかかわらず、新たに発電設備を建設しようとしているのでしょう。それは、日本全体で、火力発電の高効率化を進めようとしているためです。古くて発電効率の悪い火力発電に代えて、先ほど説明した「クリーンコール技術」を活用した、新しく発電効率の高い火力発電を導入することで、火力発電設備の新陳代謝をおこし、CO2排出量も減らしていくことが必要と考えています。逆を言えば、現在の建設計画をすべて中止させてしまうと、古くて発電効率の悪い火力発電が残ったままになるおそれがあります。
エネルギーミックスやCO2削減目標が達成できるようなしくみを整えています
2030年度のエネルギーミックスや、CO2削減目標を実現するために、経済産業省と環境省との合意にもとづいて、政府として、「電力事業者の自主的枠組みと支える仕組み」を整えています。
どのようにして、目標実現のための実効性が確保されているのでしょうか。
まず、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」、通称「エネルギー供給構造高度化法(高度化法)」という法律があります。これによって、小売電気事業者には、2030年度に販売する電力量の44%を、「非化石電源」、つまり化石燃料ではない電源にすることが求められています。これは、裏を返せば、石炭やガスといった化石燃料を使っている火力発電の比率を、全体の56%以下にしなくてはならないということを意味しています。
また、「省エネ法」によって、発電効率を向上させることも求められています。新しく建設する火力発電については、最新鋭の設備である「USC」に相当する発電効率が求められます。既存の設備を含む火力発電全体の2030年度時点における平均効率については、石炭火力だけでは達成することが困難な基準が求められています。これは、実質的に、新しく建設する火力発電の高効率化を義務づけ、ガス火力発電の活用をうながし、石炭火力発電を火力発電全体の半分未満(※)におさえることが求められているということです。
※2030年度の石炭火力発電比率を、火力56%×2分の1未満=26%におさえるということ
加えて、電力事業者としても自主的な枠組みを設けており、電力業界は、2015年7月、「電気事業における低炭素社会実行計画」をつくり、CO2排出を削減する自主的な取り組みを進めています。
これらの法令と自主的な枠組みは、どれか1つだけで2030年度のエネルギーミックスやCO2削減目標を達成するものではありません。3つの取組が相互に作用しあい、「三位一体」となって機能することによって、これらの目標の達成につなげていくものなのです。
また、「省エネ法」によって、発電効率を向上させることも求められています。新しく建設する火力発電については、最新鋭の設備である「USC」に相当する発電効率が求められます。既存の設備を含む火力発電全体の2030年度時点における平均効率については、石炭火力だけでは達成することが困難な基準が求められています。これは、実質的に、新しく建設する火力発電の高効率化を義務づけ、ガス火力発電の活用をうながし、石炭火力発電を火力発電全体の半分未満(※)におさえることが求められているということです。
※2030年度の石炭火力発電比率を、火力56%×2分の1未満=26%におさえるということ
加えて、電力事業者としても自主的な枠組みを設けており、電力業界は、2015年7月、「電気事業における低炭素社会実行計画」をつくり、CO2排出を削減する自主的な取り組みを進めています。
これらの法令と自主的な枠組みは、どれか1つだけで2030年度のエネルギーミックスやCO2削減目標を達成するものではありません。3つの取組が相互に作用しあい、「三位一体」となって機能することによって、これらの目標の達成につなげていくものなのです。
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記事内容について
電力・ガス事業部 電力基盤整備課
資源・燃料部 石炭課
資源・燃料部 石炭課
スペシャルコンテンツについて
長官官房 総務課 調査広報室
「石炭に未来はない」 EU、日本に利用脱却訴え
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【マドリード共同】欧州連合(EU)欧州委員会のティメルマンス執行副委員長(気候変動担当)は12日、二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭火力発電を
日本が推進していることについて「石炭に未来はない。世界で温室効果ガス排出の実質ゼロを本当に実現するには石炭をやめなければならない」と訴えた。
スペイン・マドリードで開催中の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の会場で記者会見した。
ティメルマンス氏は「東京電力福島第1原発事故後の日本の困難は理解しているが、欧州の観点から繰り返す」として石炭火力発電に反対する姿勢を強調した。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191213-00000023-kyodonews-soci
12日、マドリードのCOP25の会場で記者会見する、EU欧州委員会のティメルマンス執行副委員長(ロイター=共同)
https://amd.c.yimg.jp/im_siggGXjNZpUfu3J.MjA6P7YA5Q---x900-y599-q90-exp3h-pril/amd/20191213-00000023-kyodonews-000-2-view.jpg