水曜日, 8月 15, 2012

ザビーナ・シュピールライン

小林敏明『フロイト講義<死の欲動>を読む』はフロイトに対するショーペンハウアーの影響についてなど一般教養を高める意味では有意義な本だったが、ザビーナ・シュピールラインの名が出ていないのは残念だった。以前も書いたが、死の欲動はシュピールラインがフロイトに教えたものとさえ言えるからだ(過去記事)。
以下、フロイト『快感原則の彼岸』の脚注より。

「ザビーナ・シュピールラインはすでにこの考え方(引用者注:「死の欲動」)をうちだしている。その論文は内容も思想も豊富だが、残念ながらわたしは完全には理解できない」(フロイト『快感原則の彼岸』一九二〇、脚注。ちくま文庫『自我論集』186頁等参照)

印象論になるが、シュピールラインは理論的にも人間関係の面でもフロイトとユングの間をとりもとうとしたと言えるだろう。
写真は、クローネンバーグの『デンジャラスメソッド』(Cronenberg’s “A Dangerous Method”)より

















以下、wikiより

ザビーナ・シュピールライン(Sabina Spielrein 1885年 - 1942年)はロシア出身の精神分析家。

ロストフの裕福なユダヤ人の家庭に生まれ育つ。父ニコライは商人、母エヴァは当時のロシアでは珍しい大学卒(歯学部)の女性だった。
ロストフの女子ギムナジウムを経て、1904年8月17日、統合失調症患者としてチューリヒ近郊のブルクヘルツリ精神病院に入院し、ここで医師として働いていたユングと知り合い、恋に落ちる。1905年6月1日に退院した後、チューリヒ大学医学部に入学し、1911年、統合失調症に関する論文を提出して医学部を卒業するまでユングとの関係は続いた。ユングは彼女が学位論文を書くにあたっての助言者だったが、同時に彼自身もザビーナから学問的に多大な影響を受けた。しかし既婚者のユングが、彼の子を産みたいというザビーナの希望を撥ねつけたため、二人の愛は破局を迎えた。同じ1911年、ウィーンでフロイトと会い、ウィーン精神分析学協会に参加。ユングとの恋愛体験に基づく論文『生成の原因としての破壊』は、フロイトのタナトス概念に影響を与えた。
1912年、ロシア系ユダヤ人医師パヴェル・ナウモーヴィチ・シェフテルと結婚し、ベルリンで暮らした。第一次世界大戦中はスイスで暮らしたが、1923年、ソヴィエト政権下のロシアに帰国し、ロシア精神分析学協会に参加すると共に、モスクワにて幼稚園を設立。なるべく早い時期から子供たちを自由人として育てることを旨とした幼稚園であり、スターリンが息子ヴァシリーを偽名で入園させたこともあったが、3年後、幼児たちへの性的虐待という冤罪をかけられたため、閉鎖を余儀なくされた。背後には、精神分析学に対するスターリン政権からの弾圧があった。
1936年、大粛清の最中に夫が病死し、ザビーナと娘たちは1942年に故郷ロストフにて、侵攻したナチの手で殺害された。
2002年、『私の名はザビーナ・シュピールライン』と題するドキュメンタリーがスウェーデンの映画監督エリザベト・マルトンによって作られ、2005年には米国でも封切られた。近年、精神分析学に対する彼女の貢献に関して再評価が進みつつある。

6 Comments:

Blogger yoji said...

クローネンバーグの『デンジャラスメソッド』のタイトルはウィリアムジェイムズのフロイト評に依る
(英語版原作書籍冒頭参照)

2:15 午前  
Blogger yoji said...

映画は実用主義による精神分析批判だった

7:07 午前  
Blogger yoji said...

映画パンフによれば

鈴木晶
「ザビーナ・シュピールライン フロイトとユングのはざまで」が
日本人の書いた最初の彼女に関する論考


ユリイカ1985.10

に掲載されたそれはよくまとまった論考だ

1:10 午前  
Blogger yoji said...

カロテヌート論文に関しては「みすず」1984.08-09
にベッテルハイムによる書評翻訳があるらしい

1:14 午前  
Blogger yoji said...

フロイト/ユング往復書簡集

Amazon.co.jp: The Freud/Jung Letters: The Correspondence Between Sigmund Freud and C.G. Jung (Bollingen Series, Xciv): Sigmund Freud, Ralph Manheim, William McGuire, R. F. C. Hull, Alan McGlashan, C. G. Jung: 洋書


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1:20 午前  
Blogger yoji said...

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内容説明
Unavailable for many years the famous Freud/Jung Letters are now back in print. As historical documents the letters reflect the early struggles of Freud and Jung in gaining acceptance for analysis. The two exchange candid opinions on their colleagues, plan strategies for the advancement of their cause and, most importantly, share their experiences with patients and with the reading that led them to new scientific realisations. The decline of the correspondence documents Jung's increasing reluctance to accept the entire Freudian code, and the growing bitterness that led them to the mutual decision to end the correspondence and the relationship.
The Freud/Jung Letters reveal two of the twentieth century's greatest minds at work.

鈴木晶が参照したのはこちら

1:23 午前  

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