金曜日, 2月 23, 2018

ある不愉快なマネタリスト算術

Sargent & Wallace “Some Unpleasant Monetarist Arithmetic” (1981)

[マネタリストにとっては少々不愉快な算術、ある不愉快なマネタリスト算術]*

https://www.minneapolisfed.org/research/qr/qr531.pdf 全19頁




《訳者はしがき
事実,第5章「ある不愉快なマネタリト算術」はいうに及ばず,本書全体がマネタリズム批判であるといつても過言ではないのである.マネタリストの主張とは反対に,インフレーションの「純粋に貨幣的な治癒」は存在しないというのが,本書の結論の一つである。》

第5章
ある不愉快なマネタリスト算術
ニール・ウォレスとの共著
 本章は,金融政策と財政政策は相互に関連しており,そのため必ず協調して運営される必要がある, という主題による一変奏曲である。というのも,通貨当局が,政府予算の収入源の一つである通貨創造によるシーニョリッジ率をコントロールしているからである.協調の問題は人が次のような設間に答えようとするときに起こる。金融政策は恒久的に経済のインフレ率に影響を与えることが可能なのか? この設間に対する解答は金融政策と財政政策がどのように協調されると想定するかにかかっている。通貨当局が財政当局に対して十分な力をもっていれば,現在からはるか将来にかけてのベースマネー成長率を抑制し,現在から将来にかけて財政当局が期待できるシーニョリッジを財政当局に告げることで,財政政策をうまく抑制することができる。この状況では,通貨当局が財政当局に規律を課すことによって財政政策と金融政策が協調される。この協調方式のもとでは,財政当局に供給するシーニョリッジの流列に関する通貨当局の意思決定がインフレ率に恒久的に影響を与えることになる。一方,通貨当局は財政赤字経路に影響を及ぼす立場になく,財政当局の選択した赤字経路が創り出した債務を単に管理するという限定的な位置に置かれることもあり得る。この二番目の協調方式のもとでは,初めの方式のときとくらべて通貨当局の力ははるかに弱い。この方式のもとでは,財政当局によって選択された赤字の流列を補損するのに十分なシーニョリッジの流列を通貨当局は最終的には引き渡さなければならないため,財政当局によって制約を受けることになるのは通貨当局である。
 本章では,第二の方式のもとでの通貨当局の限界の範囲をいくつか特徴づけ,次いで,通貨当局がとり得る選択肢をいくつか示すことにしよう。第二の方式を分析するのは,一つにはこうした政策協調方式が過去10年にわたって米国をはじめ主要工業国で採用されていたと推測するからである。また,現実妥当性に対する判断を別にしても,第二の方式が意味するところを分析するのは,金融政策と財政政策の協調問題に人々の注意を喚起する手段として格好のテーマであると思われる。
 われわれがこの問題に注目したのは,1981年前半の米国における政府証券の税引前実質収益率がきわめて高かったからである。政府証券の税引前実質収益率が経済成長率よりも高かったため,通貨当局はインフレーションについて困難な選択に直面した。政府予算赤字が持続するとともに,実質利子率が経済の成長率を上回っている, という状況下で連邦準備制度は,現在のインフレーションに対して現時′点の金融引締め政策で立ち向かうか、それとも将来のインフレーションに対して,現時点の金融緩和政策で立ち向かうか, という選択にせまられたのである。言い換えれば,財政当局からの協力がなければ,現在のインフレーションに金融ラト締め政策で立ち向かうことは,結局,将来において一層のインフレーションを余儀なくされることになる。1政府証券の実質収益率が経済の成長率πょりも高いことから通貨当局がこのように東縛されることは簡単な会計恒等式によって示される。
 政府証券の実質利子率がnを上回るとき,民間部門が保有するある一定量の有利子政府債務を単に「借り替え」ていくだけで,その債務の利子を支払うために他の財源からの収入が必要となる。すなわち,政府は利子を支払うために,税を課すか,歳出を減らすか,あるいは通貨を増発するか,のいずれかの措置を講じなければならない。現存する債務の利子を支払う方法としては,このほか,有利子債務の追加発行があるように見える。しかしながら,この方法は, 1人当り実質政府有利子債務残高の増加を意味する。そうした政府債務残高の増加は, しばらくの間は可能であるとしても,永久に続けることはできない.そのような増加は, 1人当り実質政府有利子債務が1人当り貯蓄量に等しくなったときには,間違いなく限界に突き当たるし,おそらく,それよりはるか以前に限界に達するであろう。したがって,結局は債務を返済するために税が課せられるかそれとも通貨が増発されねばならない。さらに, 1人当り実質政府有利子債務が最終的に安定する水準が大きければ大きいほど,一層の財政緊縮策ないし通貨膨張を通じて,最終的に調達せざるを得ない歳入金額は増大することになる。
 今日の米国では,財政政策(連邦政府支出および明示的な税の水準)決定の責任は連邦議会および大統領府にある。政府債務の総額を有利子債務と無利子債務(ベースマネー)に分割する責任は,連邦議会の監督のもとに連邦準備制度理事会に与えられている。財政政策によって決定される債務総額の増加を所与として,連邦準備制度は有利子国債とベースマネーを公開市場操作で交換することによってベースマネーと有利子国債が増加する速度を決定するのである。連邦予算が赤字であれば,連邦準備制度は,たとえば赤字が倉1り出す政府債務総額の増加率よりも有利子債務部分の増加率を単に維持することだけで,ベースマネー部分の増加を総債務の増加率よりも低く抑えることができる。 しかし,民間部門が吸収できる1人当り連邦政府債務の限界に達してしまえば,連邦準備制度には選択の余地がなくなる。連邦準備制度はベースマネーを増大させるしかないのである。すなわち,連邦準備制度は,財務省が発行した有利子債務残高の実質ベースでの全増加分を購入することによって,政府の追加借入れ全額を「貨幣化」しなければならないのである。もっと一般的にいえば,財政政策の時間的経路を所与とし,成長率2を上回る実質利子率でしか政府有利子債務を売却できないと仮定すれば,現時点での金融政策が緊縮的であるほど,インフレ率は,究極的には,一段の上昇を余儀なくされるのである。
 この章では極端にマネタリスト的なモデルの枠組みの中で通貨当局に与えられている選択肢について述べることにする.モデルは物価水準の時間経路に及ぼす影響という′点で金融政策に極端な重要性を与えている。また,金融政策はほとんどの実質変数に影響を与えないとする′点でもマネタリスト的である。
 1968年のアメリカ経済学会会長講演においてミルトン・フリードマンは,金融政策に期待しすぎないよう警告した。とくに,フリードマンは,金融政策が実質産出量,失業率,および証券の実質利子率の水準に対し恒久的に影響を与えることはできない, と主張した。 しかし,フリードマンは通貨当局がインフレ率を, とりわけ長期的には,実質的にコントロールすることができると主張した。本章の目的は,金融政策が本章でいう第二の協調方式における連邦準備制度の公開市場操作として解釈されるとき,フリードマンのいう金融政策の限界の中には,金融政策のインフレーションに対する恒久的影響力, というものに対する厳しい限界をも含める必要がある, ということを論じることにある。
 本章のマネタリスト・モデルでそのような結果が得られる理由は,上で特定化した財政政策および政府証券の実質収益率のもとでは,現時′点で金融を引き締めれば引き締めるほど,将来において,金融を一層緩和しなければならなくなるからである.すなわち,このマネタリスト・モデルにおいては,現時点で金融を引き締めれば,将来,高インフレーションを耐えなければならないという犠牲のもとに,現在の低インフレーションが達成される理由が説明されるのである。次に,金融引締め策のインフレーション抑制能力にもっと強い制約がある経済システムの例をつくることにする。マネタリスト・モデルを修正し,ベースマネー需要を動学的に精級化することにより,現時点での金融引締めによって高インフレ率および高物価水準が,究極的にでなく現時点から始まる経済システムの例を述べる。現時点での金融引締めが一時的にしろインフレーションに打ち勝つ能力を欠いている, という状態を示すがゆえに,この例は濠1的である。この例は,極端であって,おそらく現実の金融引締めの有効性に対する限界を誇張しているだろうが,同時にマネタリスト・モデルでは等閑に付されているがおそらく現実世界には存在していると思われる,金融引締めがインフレーションに対して戦う能力というものを制限する力を明確化するという長所をもつのである。

単純なマネタリスト・モデル

 いま,純粋なマネタリズムを体現した単純なモデルを述べることにする。このモデルは次の特徴をもっている。すなわち,(1)実質所得と人口は同じ一定の成長率%で増加する,(2)政府証券の実質収益率は2よりも大きい一定の値である,そして(3)ベースマネーないしハイパワードマネー需要表は貨幣数量説にしたがい,所得流通速度は一定である。2これらの特徴をもつモデルは, ミルトン・フリードマンが会長講演で強調した金融政策に関する二つの限界を備えている。第一に,金融政策に影響されない自然実質所得率,あるいは均衡実質所得率が存在する。第二に,国債の実質利子率は金融政策の影響を受けない。
 この非常に単純なモデルに焦′点をあてるのは,金融政策の有効性に関するもう一つの重大な限界,すなわち,経済のインフレ率に影響し得る金融政策の能カーーこれについてはフリードマンをはじめマネタリストが多大な能力があると主張してきた一―の限界について述べることに目的があるからである。とくに, この最もマネタリスト的なモデルを用いて,いかにして金融政策の夕に頼っていてはインフレーションを将来へ先送りすることしかできないかを示すことにしよう。ここでは,想像し得る限リマネタリスト的な仮定をもつモデルの中で,意図的にこの命題を論じることにした。インフレーション制御に対する金融政策の能力を強調するマネタリスト達が設けた重要な仮定を一つとして捨てなくとも,金融政策の有効性の限界が論じられることを示すためである。むしろ,金融政策の限界の議論は,国債の実質収益率がπを越えるとき,現時点での種々の金融政策が将来の予算に与えるさまざまな結果を計算に入れる,ということにすべてがかかっているのである。
 財政政策は時間的経路D(1),D(2),….,D(′),….によって表そう。ここでD(′)は実質(′期の財)で測られており,実質支出から実質税収を差し引き,さらに国債利子を除くすべての移転支出を控除したものとして定義されている。ここで単純化のために現在時点を′=1とする。金融政策を時間的経路〃(1),〃(2),…,〃(′),….によって表そう。ここで〃(′)は′期におけるベースマネーあるいはハイパワードマネーのストックである。単純化のために,政府債務はすべて満期は1期であると仮定すれば,政府の連結予算制約(財務省と連邦準備制度との連結)は3ズの=   +スの製ll11欄lll卜Lみ…は⇒

と書くことができる。ここで夕(′)は′期における物価水準であり,またR(′-1)は1期償還国債の′-1期から′期へかけての実質利子率である。そしてB(′-1)[1+R(′-1)]は′-1期に発行され′期に償還される1期償還国債の実質額面価値である.ここでB(′-1)は′-1期の財の単位で押1られ,1+R(″-1)は′-1期の財1単位当りの′期の財の量で測られる。5.1式でB(′)は′期から′+1期にかけての,′期の財で浪1った政府借入れである.5.1式によれば,税収を超える政府支出分は通貨増発と有利子債務発行の組合せによってファイナンスされなければならない, ということになる。最後に,N(′)を′期の人口としよう。Ⅳ(′)はⅣ(′+1)=(1+2)Ⅳ(′) ′=1,2,…           (5.2)
という差分方程式にしたがうものと仮定する。ここでN(1)>0は所与であり,2は-1を越える定数である。
5.1式の両辺をⅣ(′)で割り,整理すると,次のような政府の予算制約を得る。
器=(上鶏評)詐キ[器―出轟絆用はめ
ここで5:3式と本節のマネタリスト・モデルーー仮定(1)一(3)――を使って次の命題の1変形を説明しよう。すなわち,D(′)の系列という形で財政政策が与えられたとき,現時点において金融を引き締めれば引き締めるほど将来のインフレニションが高くなる, という命題である。
 現時点における金融引締め政策を例証するため,金融政策の代替的時間的経路を次のように特定化する。すなわち,〃(1)がすでに定まっているとし,代替的金融政策を,′=2,3,…,Tにおける〃(′)の一定の成長率で表そう。ここでTは, 2と等しいかあるいはそれより大きい,ある時点である。′>rにおける〃(′)の経路|ま, 1人当りの有利子政府債務の実質残高が′=Tの時点で達する水準で一定にとどまるように決定されるものとしよう。T期以降の金融政策に関するこの制約は1人当りの実質債務が無限に増大するのを防ぐための一つの方法である。結局のところ,ここでは″(1)を所与として,
″(′)=(1+θ)〃(′-1) ′=2,3,….,T(5.4)
を想定し,θと、Tとのさまざまな組合せの結果を調べるのである。
 5.1式が実質債務と実質収益率で書かれていることに注意されたい。今日の米国の状況のように,国債にインデクセーションが実施されていない場合にこれを適用しようとするときは,予想されたインフレーションと現実のインフレーションとが同一であることを保証しなければならない。ここでは,財政政策の経路すなわちD(ノ)系列と金融政策の経路すなわちθおよびTとが′=1において公表され,このことは経済主体によって知られているものと仮定することによって, この条件を部分的にモデルに組み込むことにする。この仮定によって,′=1期以降に債務が名目で発行されたかそれともインデクセーションにより実質価値が保証される形で発行されたかは問題でなくなる。
 さて,仮定(1)および(3)によって,任意の時′点′における物価水準は1人当りのベースマネーの量,すなわち″(′)ハr(′)に比例する,つまり,ある正の定数んによって
工59(5.5)
となることに注意されたい。5.5式から,.′=2,…,Tの期間については, 1プラスインフレ率の値はρ(′)わ(′-1)=(1+θ)/(1+2)によって与えられるということになる。したがって,金融政策すなわちθとrが特定化されると,この期間におけるインフレ率も同時に決定されることになる。われわれの関心は,T期以降のインフレ率がT期以前に選ばれたインフレ率とどのようにかかわるのか, ということを明らかにすることにある。
 これを単純な二つの段階に分けて明らかにすることにしよう.はじめに,T期以降のインフレ率が,T期に到達し,それ以降一定に保たれる1人当り政府債務ストックにどのように依存しているのかを明らかにする.ここで1人当り政府債務のストックをみθ(T)と書き,ιθ(r)がどのようにθに依存しているかを示すことにする。
 ′期(′>T)のインフレ率がわθ(r)にどのように依存しているかを見るために,任意の′>rについて,β(″)ハr(′)=B(′-1)ハ「(′-1)=bθ(T)と5.5式から得られた〃(′)=かr(′)ク(′)を5.3式に代入する。結果は,則Ю1一カ〓ρ6.の
となる。5.6式が正の物価水準少(′)と,(′-1)によって満たされるためには,5.6式の右辺が1よりも小さくなることが必要である。これが,有利子政府債務の1人当り実質量の大きさの限界を定める一つの条件である。
 仮定(2)のところで述べたように,P(′-1)-2が正の定数であるならば,5.6式の右辺は,ιθ(T)が大きくなればなるほど,大きくなる.このことは,ιθ(T)が大きくなればなるほどインフレ率が高くなることを意味している。これが,すべての′>Tについて成立するこつの結論である。
 現時点での金融引締めが将来の高インフレーションをもたらすという議論を完結させるためには,θが小さくなればなるほどわθ(T)が大きくなることを示さなければならない。みθ(r)を見つけ,この値がθに依存していることを明らかにするために,はじめにB(1)か「(1)=ι(1)を見つけ,そして次に全経路,ιθ(1),わθ(2),ιθ(3),….,ιθ(T)をどのように見つけるかを示そう。


16o′=1のときの5.3式を用いてι(1)について解く.すなわち,0=酬お+器ギ銚絆である。ここで,3(0)[1+P(0)]/(1+κ)のところに3(0)わ(1)Ⅳ(1)を代入した。B(0)は′=0において発行された債務の名目額面価値である。この代入をすることによって,′=0から″=1にかけての実際のインフレーションと予想インフレーションとの間の関係について何らかの仮定をすることが避けられている。5.5式と57式からι(1)はD(1),Ⅳ(1),〃(1),〃(0)およびJ(0)を用いて表される。わ(1)がθに依存しないことに注意されたい。続いてιθ(2),ιθ(3),…。,bθ(r)を見つけることにする,5.4式,5.5式,およびι(′)=B(′)力V(′)という定義を用いて,5.3式を次の=鰐塀I)雄⇒+器力(為)耗しT(58)と書き直すことができる.代入を繰り返すことによって,任意の2<′≦Tについてみθ(′)=φ(′,1)ι(1)十二二≒黒警立「ギγり,望φ(′,s)が成り立つ。ここで(5.9)第5章 ある不愉快なマネタリスト算術ども,将来のインフレーションが増大するという代償は払わなければならない,という状況を描写した。そこでは貨幣数量説による最も単純な貨幣需要関数を仮定したが(5.5式),このことは,分析を大変簡単にしたというだけでなく,ベースマネー需要の期待インフレ率への依存をことごとく無視する, という実質的側面をももっていたのである。この依存関係は重要であり,金融政策の物価水準への影響の動学を複雑にするよう作用していると広く信じられている。ブレシアニ=テュローニ[1]とケーガン[3]は急激なインフレーションを被った国々を研究することによって, この効果の存在について重要な証拠を提出した。貨幣需要が期待インフレ率に依存しているのであれば,現時点の物価水準は通貨供給の現在水準および将来の予想水準のすべてに依存することになる(サージェント=ウォレス[13]を参照せよ)。この関係は,先行き高率の通貨創造が予想されるときには現時点のインフレ率を上昇させる圧力を生じさせる。あとで示すように,この圧力によって,一時的にせよ低インフレーションをもたらす金融引締め政策の効果が制限され得るのである。ここではマネタリスト・モデルのすべての仮定をそのまま使うことにする。ただし,5.5式だけは4(5.7)(5.10)に置き換えることにする.5.10式はフィリップ・ケーガンがハイパーインフレーションの研究に用いた貨幣需要関数の1バージョンである.この式を用いると,補論1で示されるように,′期の物価水準について次の式を得る。ズの=籠皓y器この式は現時点の物価水準を,現時点および将来すべての時点の1人当リベースマネー供給量の関数として表している.結局,現時′点の物価水準およびインフレ率は現時点における金融がいかに引き締められているかにかかっているだけでなく,すべての「将来」の金融がどれほど引き締められるかにも依存するのである.もしも状況が,前のマネタリスト・モデルのように,現在の金融引締めが将来の金融緩和を引き起こす, というものであれば,沙(′)に関するこの式は,現時′点で金融を引き締めても,インフレ率および物価水準を現時′点でさえ引き下げられないかもしれない, という可能性を示唆している。この可能性が実際に起こるような一つの例を論じることにしよう。これまでと同様に,政策は財政赤字系列D(′),それ以後の金融政策が1人当り有利子政府債務の実質量を一定に保つように運営される時′点T,そしてT期以前のベースマネーの成長率θから成り立っている。この節のモデルでは,T期以前の物価水準の経路はこれらの政策のすべてに依存しており,マネタリスト・モデルの場合のように単にθだけに依存している, というわけではない。
 補論2では内生変数の時間的経路を求める方法が述べられているが,ここではθを小さくするという形での金融引締めにようで,物価水準とインフレ率が一様に上昇してしまう例を単に提示するにとどめる。
 ここでの例で用いられる経済は‰=3.0,レ=2.50,R=005,およびπ=0.02という形で特定化される。政策の共通点として, 1人当りの赤字の系列グ(′)は,′=1,2….,.10についてはグ(′)=0.05,′>10についてはグ(′)=0とし,また,[〃(0)十j(0)]/7(1)三200/164.65とする。二つの異なるθの値について論じることにする。すなわちθ=0106およびθ=0.120である。このとき,′=1における物価水準はθが小さい経済の方が1.04%高くなっている。表5-1および表53では,二つの経済のインフレ率:物価, 1人当り国債保有量,および1人当り実質貨幣残高が比較されている。図51では物価水準の推移が示されている。


 この例は,金融緩和政策の方が金融引締め政策よりもあらゆる面で優ってい表5-1物価インフレ率1人当り国債保有量1人当り実質残高θ=0.106θ=0.120θ=0106θ=0120θ=0106θ=0120θ=0.106θ=0120123456789′≧101 13695  1 121051 23262  1 213541.33632  1.311611.44871  1.415121 57053  1 523761 70255  1 637031.84562  1.754182.00067  1 874162 16867  1 99549,(10)π(10)・1°1.084151.084131 084111 084091.084061 084041 084011 083971.083941 08390082500808207892076770743407156068390647406051055570 08109  0 081530.11960  0.117970.15923  0 155220 20003  0 193280 24202  0.232140.28525  0 271770 32974  0 312130 37554  0 353200 42268  0 394900 47120  0 437180.12023  0.146870.14484  0 148980 14486  0 151360 14489  0 154040.14492  0.157080 14496  0 160550 14499  0 164050 14504  0 169070.14508  0=174360 14513  0 18053第5章 ある不愉快なマネタリスト算術  163図51物イ面(log表示)・・・・:・メ'′●ジ′J゛5         10        15        20        25期間センタ(θ)0106るという点で嫁1的である。(補論1のモデルの論法を用いれば,金融緩和政策による均衡が金融引締め政策による均衡よりもパレニト優越である。)この例では,現時点における金融引締め政策は,金融緩20631868167314781283108808930698050303080113和政策にくらべて,インフレーションの一時的な改善を得ることにすら失敗している.

5結論,制限,および拡張

 本章の議論で合理的期待均衡という仮定が使われていることは強調されねばならない。このモデルには不確実性が存在しないから,この仮定は完全予見と同じことである。結局ここでは,事前に知られている金融・財政政策変数の代替的経路を比較しているのである。政策当局は, 自らが宣言した計画を実行し,1期以降に発行した有利子債務を実質表示で債務不履行にすることはないと仮定される。したがって,すべての有利子債務にインデクセーションが実施されていると見なせるのである。このような仮定は金融政策変数の時間的経路や戦略を選ぶときに利用可能な選択肢を分析するのには適切なものであると考えられる。歴史的には政府がインフレーションを通じて有利子債務の大部分を不履行にした例もあるが,この仮定が適切であることについてはわれわれに弁護の用意がある。すなわち,債務不履行という選択肢は政府が何度も頼りにすることはできないため,繰り返して行われる政策としては利用不可能である, ということである。

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 また,本章の議論は実際にはマクロ経済学の政府の予算制約に関する文献にある推論に沿ったものであり,たとえばマッカラム[9,10]やスカース[14]がこの論法で論じていることに留意すべきである。多くの著者が指摘していることであるが,実質利子率が経済成長率よりも大きいときには,政府の予算制約は実質債務についての不安定な差分方程式として表すことができ,そしてこのことは,貨幣成長の「カパーセント」ルールのもとでは1人当り実質政府債務残高の経路が発散的であることを意味している。この章で行ったことは,反インフレTション政策の意味するところ,そしてこのような発散的経路を永久に続けることはできないということ, を単に指摘したにすぎない。
 本章の結論を得るために二つの重要な仮定を置いた。第一は,実質利子率が経済成長率よりも高い, というものである。これを仮定した理由は,現在の赤字がいかなるものであれ,低い貨幣の成長率に賛成する多くの人々がこの仮定を採用しているように思われるからである。この仮定を別のものに置き換えるとすれば,民間部門の国債需要が実質収益率の増加関数であり,経済成長率よりも小さいかあるいは負の実質収益率のもとではその需要が正である, ということを仮定することであろう。しかし,国債に対する一層大きな需要をll■起するためには実質利子率が経済成長率を上回ると仮定しなければならない。さらに, 1人当り国債需要量には上限がある, と引き続き仮定する.このような国債需要関数を仮定することは,国債の実質利子率が金融政策に影響されること,また国債供給を非常に少なくするような金融政策のもとでは,ベースマネーからだけでなく国債からもシーニョリッジが得られるということを意味する。しかし,このような形で国債需要を織り込んだ分析を行ったとしても,十分に強い金融引締め政策は政府有利子債務の急速な増加を意味するから,金融緩和政策よりも将来のインフレーションを高める結果になるのである。
 第二番目の重要な仮定は,D(′)の時間的経路が所与であり,現在や将来の金融政策には依存しない, というものである。この仮定は,一番目の仮定のような経済主体の選好,機会,ある,いは行動に関するものではなく,通貨および財政当局の行動に関する仮定であり,彼らが演じている「ゲーム」に関する仮定である。通貨当局は収入源としてシーニョリッジが利用される度合いに影響を与えるため,金融政策と財政政策は協調されねばならないのである。問題はどちらが一一通貨当局か財政当局か――「手番を先にとる」か,言い換えれば,第5章 ある不愉快なマネタリスト算術  16,どちらがどちらに規律を課すか, ということである。本章で設けられた仮定では財政当局が先に手番をとるが,その手番は'(″)の系列全体から成っている。この系列を所与として,D(′)と整合的になるように金融政策が, もしそれが可能であれば,決定されるのである(すでに述べたように,D(ι)系列が「あまりにも長期」にわたり「あまりにも大きい」場合には不可能となるかもしれない)。政策当局によって演じられるこうしたゲームの仮定を所与とし,さらに第一番目の重要な仮定を所与とすれば,通貨当局が現時点で金融を引き締めれば将来は金融を緩和しなければならなくなるのである。
 金融的制約の必要性について,この章で行ったのとは別の解釈も可能であり,通貨当局が最初の手番をとり財政当局に規律を課すものとしても解釈できる。この解釈では,通貨当局が最初に,5.4式のようにθを固定するルールを, T期まででなく,すべての′について課すことを宣告する, という形で手番をとることになる。これを拘束性のある仕方で行うことにより,通貨当局は財政当局をして,宣告した金融政策と両立するようなD(′)系列を選択させるのである。この形での永続的な金融的制約は財政的規律を課す上で有効なメカニズムである。以前から提案されている財政的規律を課す上で有効なメカニズムとしては,このほかに,固定為替制度および商品貨幣本位制がある。財政当局に恒久的に規律を課すこのような通貨制度のもとで,金融政策がインフレ率に永続的に影響を与え得る, という可能性を否定するものは,ここでの分析には何もない。
 この章を執筆したのは,通貨および財政当局によって演じられるゲームに関するわれわれの仮定が金融政策と財政政策が協調されるべき方法を表していると考えたからではなく,これが現在演じられているゲームの方法であるかもしれないと憂慮したからである。

補論1

 この補論では,本文で用いられた仮定が導出できる簡単な理論モデルを述べることにする。モデルはポール・サミュエルソンの世代交代モデルの一つであり,人々は異時点間の消費流列を滑らかにするために貨幣を用いている。経済は′=1の時点から将来に向けて展開されるものとする。
 経済は2期間生存する人々によって構成される。′≧1の各期において全く同じタイプの貧しい人がМ(′)人誕生する。彼らは税引き後の所得として,若いときにαl単位,年寄りのときにα2単位の財が与えられている。そして,′≧1の各期において全く同じタイプの富裕な人がAr2(′)人誕生する。彼らは税引き後の所得として,若いときにβ単位,年寄りのときに0(ゼロ)単位の財が与えられている。いまチ≧1についてAl(′)=(1+2)Al(′-1)およびAら(′)=(1+2)Aら(′-1)を仮定する。ここでZVl(0)および馬(0)は所与であり,π>-1である。′世代の総人口はⅣ(′)=М(′)+ん(′)である。
 人々は′期の財を′+1期の財に変換する物理的技術が利用できる。すなわち:もし力(′)≧力単位の財が″期に貯蔵されるならば,′+1期には(1+R)力(′)単位の財が利用可能となる。これは投資の実質収益率がRとなる収穫一定の生産技術である。この投資を行える最低規模,力,が存在し,たは,貧しい人の第1期目の保有量よりも大きく, αl<々<〃2という条件を満たすものとする。さらに,仲介については法的規市1があり,貧しい人が2人ないしそれ以上で共同投資することは禁止されており, したがって,貧しい人々は実物投資をできないものとする。
 政府は,利子を生まない通貨,および有利子国債を発行する。通貨は貧しい人によって保有される。なぜならば,国債は発行額面が大きいために富裕な人だけが保有できるからである。ここでもまた,仲介に対する法規制によって,2人ないしそれ以上の人々が国債を共同で保有することはできないものとする。このモデルには不確実性は存在しない。したがって,富裕な人が国債を保有するのは,国債の実質利子率が少なくとも私的投資の実質利子率に等しいときに限られるが,私的投資の実質利子率は通貨の実質利子率に少なくとも等しくなければならない。
 本文のように,政府は,通貨創造と国債■ll造を組み合わせることによって実質赤字D(′)をファイナンスする。政府の予算制約は
以の=   十スのBIJ Ⅸl+め′≧1   (5.11)
である。ここで〃(′)はドル単位で測られ, 沙(′)はι期の財1単位当りのドル,D(′)は″期の財, またB(′)も′期の財で測られている。―
 さらに,′=1期において,M(0)十九(0)人の貧しい老人と富裕な老人がおり,〃(0)単位の通貨と,名目価値でE(0)の″=1期に満期になる国債を保有しているものとする.′=1期における老人達は,′=1期の若者に対して, 自分達の保有するすべての通貨を財と非弾力的に交換しようとするものとする。各期における若者は効用関数ε′(′)ε′(′+1)を最大化すると仮定する。ここでθク(s)は′期に生まれたんタイプの人のs期における消費である。νク(s)を,′期に生まれたんタイプの人のs期の財の保有量とし,各人が単二の収益率R″に直面しているものとすれば,′世代のカタイプの若者は,
スの+≦f筆哄チ主≡νКの十瘍 
という現在価値制約のもとで効用を最大化するように生涯消費計画を選択する。この問題の解は貯蓄関数
wfl)-rfA>:W(5.12)
として与えられる。
 貧しい人の貯蓄はすべて通貨の形をとるので,力が貧しい人であれば,1+R″=沙(′)わ(′+1)が成り立っている。 さらに,沙(′)わ(′+1)<1+Rであるときには,貧しい人だけが通貨を保有する。したがって,この条件のもとでの通貨市場の均衡条件は,〃(′)わ(′)が,5.12式で与えられる貧しい人の実質貯蓄の総額,すなわちМ(′)[αl―α2夕(″+1)わ(′)]/2に等しくなることである。N(′)で割ると,この条件は〃(′)_夕(′)Ⅳ(′)~(5.13)2N(t)
と書くことができる.この式でα1/2=″iМ(′)/2Ⅳ(′)および,α2/2=α2М(′)/2Ⅳ(′)とおけば,510式が得られる。α2=0であるときには5.5式を得る。
 5.12式によって,富裕な人はそれぞれ,各期に一定量のα2だけ貯蓄する。国債の実質利子率がRである限りは,富裕な人は国債と私的資本のどちらを保有するかに関して無差別である。しかし,総額では,富裕な人は各期で錫(′)〃2しか貯蓄しようとはしない。″2という数字が,本文で言及した, 1人当り有利子政府債務保有の上限である。第′世代の富裕な人の若者達によって行われる,財で測った総実質投資(「貯蔵」)をK(″)で表そう。このとき

くの+Цの三Ψ=スの(5.14)
を得る。ここでB(″)は政府に対する貸付額である。5.14式は,政府による追加的借入れは,一対一の割合で民間投資をクラウディング・アウトするという結果を示している。
 国民所得1二等式は
A《′)θ:(″)+Aら(′-1)ε:1(′)+ハら(′)θ子(′)+Aら(″-1)θ:1(′)+κ(′)+G(′)=ハ《′)αl+Al(′-1)α2+Aら(′)β+T(′)+(1+R)κ(″-1)   (5.15)
と書ける。ここでG(′)は政府購入を,そしてT(′)は直接税総額を表している。本文で定義された財政赤字は,D(′)=G(″)一T(″)という形で,G(′)とT(′)に関連している。
 このように,解が夕(′)わ(′+1)く1+Rという条件を満たし,かつ国債の実質総供給がE(′)以下であれば,ここで述べたモデルは本文で述べた仮定のすべてを満たしている。このモデルは,また,異なる経済主体が異なる政策のもとでどのような暮し向きになるかということにも関連している。上に与えた現在価値の予算制約から明らかなように,貧しい人はインフレ率が低い方が暮し向きがよくなる。一方,富裕な人はインフレ率には影響されない。そして,ι=1において人生の2期目にあって通貨や満期になる国債を保有している人は,初期の物価p(1)が低い方が暮し向きがよくなる。ケーガン=ブレシアニ=テュローニ(CBT)の例のところで,金融引締めは金融緩和政策よりもパレート劣等である, と主張した背後にはこのような観察があるのである。

補論2

 この補論ではCBTモデルを分析するが,このモデルは:インフレ率に依存するようなベースマネーの需要関数を仮定することによって,マネタリスト・モデルの分析を一般化することから得られる。ここで用いる需要関数は,フィリップ。ケーガン[3]の著名な需要関数と類似しており,正式には,補論1のモデルで,各期の貧しい人が,それぞれ簿Ⅳ(0)/Nl(0)>0単位の消費財を若いときに,そして力KO)/Nl(0)>0単位の財を老人のときに保有すると仮定す論補ることによつて導くことができる(マネタリによつて得られる)。この一般化を除いては,し`まベースマネーの需要関数がっぎ翌鮮れ丁=券一券2号dず主 ″≧1第5章 ある不愉快なマネタリスト算術  工69スト・モデルはル=0と置くことモデルは以前と同様である。(5.18)(5.19)6.16)であると仮定する。ここで後>ル>0である。5.5式を5.16式で置き換える以外は,5.1式の予算制約や5.2式の総人口についての運動法則を含め,マネタリスト・モデルのすべての特徴はそのまま保たれることになる。マネタリスト・モデルのときとと同じような実験を行うことにする。すなわち, 1人当り実質財政赤字b(′)を″>Tについては一定に保ち,′=2,3,….,Tにおけるベースマネーの成長率の選択にっいて調べることにする。5.5式を5.16式に置き換えることによつて,あとに見るように,体系の動きは実際に複雑になる。まず,′>Tにおける体系の動きを調べることから始めることにしよう。′>T+1については,金融政策は前と同じように,b(′)=ι(′-1)=ι(T)となるように決定されるとする。予算制約(5.1式)とこの条件を用いて,端詰計=」弧寺云∴が・笙ズの十器かT+1 は,をイ早る。 Vヽま,試宅キ=ノ  ′≧Tを仮定する.ここでグは定数である。この仮定は計算に便利な仮定であるが,結論の一般性はこの仮定によつては失われない。いま, 1人当りの実質残高を解(′)=〃(″)″(′)夕(′)で, 1期間の粗インフレ率をπ(′)=夕(′)わ(′-1)で定義する。これらの変数を用いることにようて,5.16式と5.17式はπ(′)千サー券π(′+1) ′≧1わ「品=ξたT判となる。ここでξ=[(R一π)/(1+2)]b(T)+グである。変数ξは,T+1期以降にシーニョリッジによって賄われなければならない1人当り赤字額として説明される。5.18式を5.19式に代入して観(″)と2(″-1)をこれらの式から除去


52図53第5章 ある不愉快なマネタリスト算術 171すると,次のようなπ(′)に関する非線形の差分方程式を得る。バ′十⊃=券+ギ甥一甥―券G聟磁)=鵠「 ′≧r+1  は2①この式は図52に示されている. もし(ナ十#万考,)2_万瞑÷隼ラ所>0であれば,5.20式が二つの定常点をもち,それらが・=={券+互七ァう][(サ十]出万-1')2万了争隼砺丁]:}乃=={ナ十互七戸考争+[(券十¬出万1')2_爾警万]:}で表されることは簡単に確かめることができる。いまξを5.21式の左辺が0になるξの値であるとしよう.明らかにξはγlとルと%の関数であり,シーニョリッジによってファイナンスできる1人当り定常赤字の最大イ直を表している。5.21式より, もしξ=0であれば, πl=1/(1+π)かつπ2=γ1/ンであることが示される。図5-1より, ξ>ξ>0であれば,πl>1/(1+2)かつπ2<γ1/ルであり,しかも,ξが増加すればπlが増加しπ2が減少することが直ちにわかる。5.21の不等式は,シーニョリッジによって1人当り赤字をファイナンスできるための必要かつ十分な条件である.5.21式が満たされているときには,赤字をファイナンスするインフレーションと実質残高の経路は複数イ固存在する。′>T+1についてπ(′)が5.20式で与えられているとすれば,πl<π(r)<γ1/ルを満たす任意のπ(r)について赤字はファイナンス可能である(これらのインフレーション経路を成立させるのに必要な貨幣供給経路についてはあとに述べる)。図53には520式を図示しており,任意のπ(T)>πlについて,ι→∞であるときにπ(′)→π2であることを示している。結局のところ,赤字をファイナンスするインフレーション経路には3種類ある。すなわち,(a)′>Tについてπ(″)=πlとなる定常経路,(b)′>Tについてπ(′)=π2となる定常経路,そして(C)拘μ>π(T)>πlで,′→∞のときにlim π(′)=π2となる非定常経路の集合である.ここで政府がπ(T)=πlとなる貨幣供給経路を選択すると仮定しよのとき赤字は,一様に最低のインフレ率の経路, したがって5.18式によ(5.21)(5.22)lt(t +[t―券]‐一』γl一γ2ヽ)低



の物価水準の経路によってファイナンスされることになる。この仮定は理屈にかなっている, というのは,この選択によって,政府は他の選択をしたときと同じだけの財源を確保でき, しかも貨幣の保有者は他の選択の場合よりも暮し向きがよくなるからである。5.21式より′>T+1についてインフレ率をク(′)わ(′-1)=πlとしたので,5.18式で′=rと置くことにより,T期の実質残高と物価水準を決定することができる。すなわち,メT)Ⅳ(7)=サ~券πl第5章 ある不愉快なマネタリスト算術′≧1173(5.25)(5.26)臨r¨卿哺一けズ を得る。辺‐こ‐..あるいはク(T)=子(脇洸寄号である。〃(r)とⅣ(T)はr期に所与であるので,この式によってク(T)がπlの逆関数として与えられる.また,′>r+1についてはπ(′)は一定であるので,5.18式および%(′)≡〃(′)″(′)ク(″)という定義から器=弓需ぽ判となる。したがって, 1人当り名目貨幣残高は,′>T+1におけるインフレ率と同じπlという一定率で成長する。次のような, 2組の線形差分方程式を用いて′>T+1について体系を解く別の方法を簡単に述べることは有益であろう.まず,力(′)=〃(′)力V(′)と定義し,予算制約(5.17式)を用=(島)雄⇒嘲のたriと書く。そしてベースマネー需要関数(5.16式)をズの=;争ズ′+⇒十子わ ′≧1と表す。ラグ・オペレーターLを用いてこの二つの式を卜(光)司ゆ知のたr判(1子Ll)ρ(′)=子バ′)′≧1と書く。二番目の式をみ(′)について解くことによって(5.23)t・‥lilllllrL赳■旦ク(′)=子(1-十二1)lλ(′)+ε(券)`あるいはる.5.25式を5.24式に代入して,両(5.27)というん(′)に関する同次差分方程式を得る。Lに関するこの特性多項式は通常の方法で因数分解され,Ll[(1-πlι)(1-π2ム)]2(′)=0(5.28)となる。ここでπlとπ2は5.22式で与えられたものと同じ根である。ξ>0であるときにはπl<π2<γlんであるから,5.25式に現れるん(′)の現在と将来の幾何和は,5.28式,あるいは,同じことであるが力(′)=(πl+π2)力(′~1)一πlπ2カ(′~2)′≧T+1,λ(T)所与,力(T+1)任意(5.29)を満たす任意の力(′)の経路について収束する。赤字が各期にファイナンスされることを保証するためには,5.29式で与えられた条件にさらに二つの条件を付け加えなければならない。すなわち,5.25式でθ=0と置き,525式でπ(T+1)<γ1/ルとなるように力(T+1)を与えることが必要である。ι>0であるときには物価水準の経路はすべてlim′→∞π(′)=みんとなるが,これは5.18式および5.19式からHm%(′)=0を意味しており,赤字が正であればファイナンスは不可能となる。π(T)>簿/72である任意の経路はT期において非正の実質残高を意味する.われわれは,政府が,2(r)を所与として,′>T+1において力(′)=πl力(′-1)となる経路を選択すると仮定したのだから,ノ=Tにおいて5.26式は5.23式と等しくなる。5.29式および力(T+1)キπlん(r)によって与えられる実行可能な経路はlim 2(′)ル(′-1)=π2となり, したがって図51および図52で,π(T)>πlとなるインフレーション経路に対応する1人当り貨幣供給経路を構成する。以上を総合すると,′>rについては,物価水準と1人当リベースマネーは,力(T)を所与として