月曜日, 1月 28, 2019

戦争と平和


『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』公開ゲネプロ

https://youtu.be/qSRODr52RuM

ゲネプロより

https://youtu.be/T6yfZ0Ibbtw



原作における彗星の描写、


《「およしなさい、そんなことを言うのは。あなたの生活はこれからなのです」と彼はナターシャに言った。

 「あたしの? いいえ! あたしにはすべてが破滅してしまいましたわ」と彼女は自分を卑しんで恥ずかしそうに言った。

 「すべてが破滅してしまった?」と彼はくりかえした。「もしぼくがこんなぼくでなく、この世でもっとも美しい、もっとも聡明で、もっともりっぱな人間で、そして自由の身だったら、ぼくはいまこの場にひざまずいて、あなたのお手と愛を請うたことでしょう」 

 ナターシャは、長い苦しい日々ののちはじめて、感謝と感動の涙で頰をぬらした、そしてじっとピエールを見て、部屋を出ていった。

 ピエールもそのあとから、喉元に突き上げてくる感動と幸福の涙をおさえながら、ほとんど走るようにして控室へ出た、そして袖を通さぬままに、シューバの胸をかきよせて、橇に乗った。

 寒気のきびしい、明るく冴えた夜だった。薄暗いよごれた通りと、黒い屋根の上に、暗い星空があった。ピエールは、空ばかり見上げていたので、自分の心を領している高揚に比べて、あらゆる地上のものの腹だたしい低劣さを感じなかった。アルバート広場へはいると、暗い星空の巨大な広がりがピエールの目のまえにひらけた。この空のほぼ中央、プレチステンスキイ並木道の上空に、まわり一面にまきちらされた無数の星屑にとりまかれ、しかしどれよりも地上に近いことと、強い光と、上へ長くひいた尾とで、すべての星を威圧しながら、一八一二年の明るい巨大な彗星がかかっていた。これはあらゆる恐怖と世の終りを予告すると噂されていたあの彗星だった。しかしきらきら光る尾を長くひいたこの明るい星も、ピエールの胸にすこしの恐怖感も呼びおこさなかった。それどころか、ピエールは涙にうるんだ目で、喜びに胸をふるわせながら、この明るい星を見上げていた。この星はさながら無限の空間を、放物線を描きながら、言葉にあらわせぬほどの速度で飛来し、ふいに地面に突き刺さった矢のように、みずから選んだ黒い空の一点に粘着して停止し、勢いあまって尾をぴんとはね上げ、光を放射しながら、きらめく無数の星のあいだで自分の光をもてあそんでいるかのようだった。ピエールには、この星が、新しい生活に向って花を開き、やわらげられて、勇気をとりもどした彼の心の中にあるものに、完全に応えてくれているように思われたのだった。 (第三巻につづく)》


戦争と平和(二)より


同⑷エピローグ 第二部より


《…われわれは歴史の次の二つの本質的な問題に、率直に、決定的に答えることができるのである。 

 (一)権力とは何か?  

(二)どんな力が諸民族の運動を生み出すのか?  

(一)権力とは、ある人間の他の人々に対する一つの関係で、その人間が活動に参加することが少ないほど、ますます多く、おこなわれている共同の活動に対する意見や、予想や、弁明を表明する、という関係である。

(二)諸民族の運動を生み出すのは、権力ではない、知的活動ではない、歴史家たちが考えたように、その両者の結合でもない、それは、事件に参加し、常に事件に最大の直接参加をする者が、最小の責任を負い、当然その逆もなりたつように編成される、すべての人々の活動である。》


前者はフーコー、後者はプルードンを想起させる。

ただし結論の一行はスピノザ的である。ショーペンハウアー経由のスピノザであろう


《…意識される自由を拒否して、われわれに感じられぬ従属を認めなければならないのである。 了》


戦争と平和における彗星がモチーフとなりミュージカル化された

レミゼラブルほど有名ではないが

https://spice.eplus.jp/articles/104330