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月曜日, 3月 18, 2019

マルセル・モース(Marcel Mauss、1872 - 1950)

参考:
ソレル 1847~1922
http://nam-students.blogspot.jp/2014/02/vs.html
転載:100分de名著 レヴィ・ストロース“野生の思考”#1 「構造主義の誕生」   書き起こし
http://nam-students.blogspot.jp/2016/12/20161205-httpkakiokoshihatenablogcoment.html
イスラム金融関連
ユヌス Muhammad Yunus グラミン銀行 2006年ノーベル平和賞受賞
マルセル・モース(Marcel Mauss、1872年5月10日 - 1950年2月10日)は、フランス社会学者、文化人類学者。ロレーヌ出身で、エミール・デュルケームの甥にあたる。デュルケームを踏襲し、「原始的な民族」とされる人々の宗教社会学、知識社会学の研究を行った。
マルセル・モースMarcel Mauss
人物情報
生誕1872年5月10日
フランスの旗 フランスロレーヌ地域圏
ヴォージュ県 エピナル
死没1950年2月10日(77歳没)
フランスの旗 フランス パリ
国籍フランスの旗 フランス
学問
学派フランス社会学派
研究分野宗教社会学
知識社会学
文化人類学
研究機関パリ大学民族学研究所
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人物編集

エピナル生まれ。ボルドー大学に入学し、デュルケーム、アルフレッド・エスピナスen:Octave Hamelinの下で哲学を学ぶ。またパリの高等研究実習院でインド宗教史を専攻。1902~30年は同研究院〈非文明民族の宗教史〉講座、1931~39年からはコレージュ・ド・フランス社会学講座を担当する。また、この間、1926~39年にかけてリュシアン・レヴィ=ブリュールが創設したパリ大学民族学研究所で民族誌学を講じた。
またデュルケムの協力者として、アンリ・ユベールとともに『社会学年報』の宗教社会学部門等の編集に携わり、フランス社会学派の開拓に尽くした。

研究・思想編集

代表著作の『贈与論』はポトラッチクラなどの交換体系の分析を通じて、宗教,法,道徳,経済の諸領域に還元できない「全体的社会的事実」の概念を打ち出し、クロード・レヴィ=ストロースの構造人類学に大きな影響を与えた。
また、「身体技法」論は、今日なお、社会学的身体論の基本文献となっている。マナなどの概念を通して呪術についても論じた。

著作編集

  • 1898, Essai sur la nature et la fonction du sacrifice, (with Henri Hubert) 
  • 1901, La sociologie: objet et méthode, (with Paul Fauconnet)
    • 『国民論 他二篇』 森山工編訳、岩波文庫、2018年
  • 1902, De quelques formes primitives de classification, (with Durkheim) 
    • 『分類の未開形態』 小関藤一郎訳、法政大学出版局、1980年
  • 1902, Esquisse d'une théorie générale de la magie, (with Henri Hubert)
    • 『エスキモー社会 その季節的変異に関する社会形態学的研究』 宮本卓也訳、未來社、1981年、新装版2010年
  • 1924, Essai sur le don 
  • 1950, Sociologie et anthropologie 
    • 『社会学と人類学 I・II』 有地亨・伊藤昌司・山口俊夫訳、弘文堂、1973年 - 贈与論、呪術論、身体技法論を所収

関連文献編集

  • モース研究会 『マルセル・モースの世界』 平凡社新書、2011年5月、※日本語文献では初の入門書。

関連項目編集

外部リンク編集

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贈与論ーアルカイックな社会における交換の形態と理由』 ( ぞうよろん、Essai sur le don: forme et raison de l'échange dans les sociétés archaïques ) は、フランス出身の社会学者、文化人類学者であるマルセル・モースによる社会学文化人類学の書籍。
贈与論
Essai sur le don
著者マルセル・モース
訳者山田吉彦(1943)、有地亨(2008)、吉田禎吾・江川純一(2009)、森山工(2014)
発行日フランスの旗1925年 日本の旗1943年、2008年、2009年、2014年
ジャンル社会学、文化人類学
フランスの旗 フランス
言語フランス語
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モースは本書において、贈与の仕組みと、贈与によって社会制度を活性化させる方法を論じた。モースは社会学者のエミール・デュルケームが1898年に創刊をした『社会学年報』に当初から協力し、デュルケームやアンリ・ユベールと共著論文を発表し、多数の論考を執筆した。また、同誌に関与したジョルジュ・ダヴィは契約の起原の研究を通してモースと関心を共有し、モースは本書でも論じている全体的給付の研究を進める。第1次大戦末期にデュルケームが没したのち、モースは同誌を主導するなどフランス社会学派の中核的存在となった。一方で、人類学者のブロニスワフ・マリノフスキは著書『西太平洋の遠洋航海者』で贈与にもとづく経済制度を提示し、当時の西欧で考えられていた原始経済観を批判した[1]。こうした状況の中で本書は執筆された。
目次

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序論 贈与について、とりわけ、贈り物に対してお返しをする義務について
第1章 贈り物を交換すること、および、贈り物に対してお返しをする義務
  1. 全体的給付、男の財、女の財
  2. 与えられた物の霊
  3. その他の主題 / 備考
第2章 この体型の広がり。気前の良さ、名誉、貨幣
  1. 寛大さに関する諸規則
  2. 贈り物の交換の原理と理由と強度
  3. アメリカ北西部
第3章 こうした諸原理の古代法および古代経済における残存
  1. 人の法と物の法
  2. 古典ヒンドゥー法
  3. ゲルマン法
第4章 結論
  1. 倫理に関する結論
  2. 経済社会学ならびに政治経済学上の結論
  3. 一般社会学ならびに倫理上の結論

内容編集

全体的社会的現象編集

モースは本書で「全体的社会的現象」をテーマとした。全体的社会的現象とは、社会集団の宗教的、法的、倫理的、審美的、政治的、経済的な側面が一気に表れる現象で、いずれか1つには還元できない[2]。そうした全体的社会的現象として、モースは贈与交換による全体的給付の体系を取り上げた。本書の結論にあるように、モースは全体的社会的現象が社会制度を活性化させると考えた。
贈与と交換の主な事例について、モースは民族誌学の資料からはポリネシアメラネシアアメリカ北西部を選び、古代法からはローマ法ヒンドゥー法ゲルマン法を選んだ。中でもアメリカ北西部の儀式であるポトラッチに注目し、競覇型の全体的給付と呼んでいる[3]。マリノフスキが研究したトロブリアンド諸島の交易であるクラのほかに、ラドクリフ=ブラウンアンダマン諸島研究、フランツ・ボアズアメリカ先住民研究などを援用した。

贈与の義務編集

贈与と交換について、いかなる規則によって贈り物を受け取るとお返しをする義務が生じるのか、また、贈り物にはいかなる力があって受け手にお返しをするように仕向けるのかを特に論じた[4]
物を与え、返すのは、互いに敬意を与え合うためである。人は自分自身や自分の財を他者に負っており、何かを与えるのは自分自身を与えることにつながる[5]。贈与は双方的なつながりを作って他者を受け入れることにつながり、集団間の戦いを防ぐ。また、集団間の贈与で獲得した財は構成員に再配分される。このため、贈り物は与えなくてはならず、受け取らなくてはならず、しかも受け取ると危険なものになり得る。モースは贈与を構成する3つの義務として、与える義務、受け取る義務、返礼の義務をあげた[6]
  1. 与える義務:与えるのを拒んだり、招待をしないのは、戦いを宣するに等しい。ヨーロッパの伝承にもあるように、招待を忘れると致命的な結果となる。
  2. 受け取る義務:贈り物を受け取らなかったり、結婚によって連盟関係を取り結ばない、といったことはできない。受け取りを拒むのは、返礼を恐れているのを表明することにもつながる。
  3. 返礼の義務:この義務を果たさないと、権威や社会的な地位を失う。権威や社会的地位が財や富に直結する社会では、返礼が激しい競争をもたらす場合がある。

贈与と霊的な力編集

モースは、贈り物は人に対してでありつつも、神々や霊、自然の存在を念頭になされている点を指摘した[7]。この世にある物の真の所有者は神々や霊であり、したがって交換が必要な相手、交換が危険な相手、そして交換が容易な相手も彼らだという思想にもとづく。モースはこの点を契約=供儀につなげて考察し、アラビア語サダカヘブライ語のツェダカ( zed aqua )などの施しの体系化に通じるとした。
贈り物には霊的な力が宿っており、贈り物はもとの所有者や聖所に戻りたがるという性質も持つ。贈り物と霊的な力の関係について、メラネシアのマナ、ポリネシアのマオリ族ハウ、ローマ法のレス( res )、サンスクリットのラー( rah )やラティー( rath )の語を用いて説明している。

現代との関係編集

最終章の第4章において、モースは全体的給付を現代に活かす意義について考察している。モースは全体的社会的現象が社会制度を活性化させると考えた[8]。社会保険、相互扶助組織、職業団体[9]、贈与の経済と功利性を追求する経済の対比、戦争・孤絶・停滞に対する連盟・贈与・交際など[10]、現代の問題が語られている。

『贈与論』以外の論文編集

モースは本書の他にも、「トラキア人における古代的な社会形態」 (1921年) 、「ギフト、ギフト」 (1924年) などで全体的給付を論じた。「トラキア人における古代的な社会形態」では古代ギリシア北部のトラキアの習慣が主題となる[11]。「ギフト、ギフト」ではゲルマン語派の語であるギフト( gift )が「贈り物」と「」の2つの意味を持つ点に注目している[12]

評価と影響編集

クロード・レヴィ=ストロースの構造人類学をはじめとして、社会学、人類学、民族学などの人文科学に広範な影響を与えた[13]ジョルジュ・バタイユジャック・デリダらの思想家にも影響を及ぼしている。

書誌情報編集

原書
  • Essai sur le don: forme et raison de l'échange dans les sociétés archaïques (1925)
主な日本語訳
  • 『太平洋民族の原始経済』 山田吉彦訳、日光書院、1943年。
  • 『贈与論』 有地亨訳、勁草書房、新装版2008年。
  • 『贈与論』 吉田禎吾江川純一訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2009年。
  • 『贈与論 他二篇』 森山工訳、岩波書店〈岩波文庫〉、2014年。 - 「トラキア人における古代的な社会形態」、「ギフト、ギフト」を併録。

出典・脚注編集

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  1. ^ 佐久間寛「交換、所有、生産」(『マルセル・モースの世界』) 186頁
  2. ^ 『贈与論 他二篇』 59、472頁
  3. ^ 『贈与論 他二篇』 75頁
  4. ^ 『贈与論 他二篇』 61頁
  5. ^ 『贈与論 他二篇』 295頁
  6. ^ 『贈与論 他二篇』 101、230頁
  7. ^ 『贈与論 他二篇』 108頁
  8. ^ 『贈与論 他二篇』 437頁
  9. ^ 佐久間寛「交換、所有、生産」(『マルセル・モースの世界』) 204頁
  10. ^ 『贈与論 他二篇』 429頁
  11. ^ 『贈与論 他二篇』 13頁
  12. ^ 『贈与論 他二篇』 37頁
  13. ^ クロード・レヴィ=ストロース 「マルセル・モースの業績解題 204頁

参考文献編集

  • モーリス・ゴドリエ 『贈与の謎 』  山内昶訳、法政大学出版局〈叢書ウニベルシタス〉、2014年。
  • モース研究会 『マルセル・モースの世界』 平凡社〈平凡社新書〉、2011年。
  • 森山工『贈与論 他二篇』訳者解説
  • クロード・レヴィ=ストロース 「マルセル・モースの業績解題(『社会学と人類学』への序文)」清水昭俊菅野盾樹訳(『マルセル・モースの世界』) アルク誌編、足立和浩ほか訳、みすず書房、1974年。
  • クロード・レヴィ=ストロース 『親族の基本構造』 福井和美訳、青弓社、2000年。

関連項目編集


1 件のコメント:


  1. 「…マルセル・モースは、信用取引の起源に贈与を見出している。

    《贈与は必然的に信用の観念を生じさせる。発展は経済上の規則を
    物々交換から現実売買へ、現実売買から信用取引へ移行せしめたの
    ではない。贈られ、一定の期限の後に返される贈与システムのうえに、
    一方では、以前には別々になっていた二時期を相互に接近させ、単純化
    することによって、物々交換が築かれ、他方では、売買現実売買と信用
    取引と貸借が築かれた。なぜならば、われわれがいま描写している段階を
    越えたいかなる法(とくに、バビロニア法)も、われわれの周囲に残存する 
    すべての古代社会が知っている信用を知らなかったということを証明する
    なにものも存しないからである(18)》。
    (18)モース『社会学と人類学』1、二九〇頁。[贈与論]

     信用は、取引の当事者の間の共同性の観念に支えられる。債務を負う者は
    どうしても返済しなければならないのだ。…
     貨幣と信用によって、商品交換は空間と時間を超えておこなわれるように 
    なる。あとで述べるが、商品交換が空間的に拡張されたとき、商人資本の
    活動が可能になる。異なる空間の間での中継的交換が剰余価値をもたらす 
    からである。ここで大事なのは、貨幣および信用がもたらす時間性の問題で
    ある。貨幣および信用によって、現存する他者のみならず、将来の他者との
    交換が可能になるのだ。少なくとも、そのように思念される。そして、この
    ことは、商人資本とは違ったタイプの資本を派生させる。」
    (柄谷行人『世界史の構造』)

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