月曜日, 11月 04, 2019

ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論

哲学書新刊情報++ (@Philo_Shinkan)
【特集 神の存在証明】
カンタベリーのアンセルムス、トマス・アクィナス、イマヌエル・カントの神の存在証明に関する考えをまとめました。
なお、『神学大全』は全訳ではなく中公クラシックスの抄訳を読みました。
また、ツイートが多くなりましたので、7時、12時、20時の3回に分けてツイートします。

https://twitter.com/philo_shinkan/status/976220588963348480?s=21


ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論 (講談社現代新書) (Japanese Edition) by 高橋昌一郎
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 ゲーデルの存在論的証明は、五個の公理と三個の定義から、二つの定理を導く様相論理の公理系である。これを日常言語で表現すると、次のような意味になる。なお、番号と解釈について、わかりやすく変更した部分がある。

    肯定的であることは、一つの性質である。
公理1 もしPが肯定的性質であり、Qも肯定的性質であれば、PかつQも肯定的性質である。(原注:任意の数の肯定的性質の連言は、肯定的性質である)
公理2 性質は、肯定的であるか、肯定的でないかのどちらかである。(原注:両立はしない)
定義1 対象xがすべての肯定的性質を持つときに限って、xは神性Gである。つまり、すべての性質Pに対して、Pが肯定的ならばPを所有する対象xが、神性Gである。
定義2 任意の対象xが性質Pを持つとき、xの任意の性質Qに対して、Pを持つ任意の対象yが必然的にQも所有するとき、Pはxの本質である。(原注:対象xの所有する任意の二つの本質は、必然的に同値である)
公理3 ある性質が肯定的であれば、それは必然的に肯定的である。ある性質が肯定的でなければ、それは必然的に肯定的でない。
定理1 もし対象xが神性Gを持つならば、Gはxの本質である。
定義3 対象xの任意の本質Pに対して、Pを持つ対象が少なくとも一つ存在するときに限って、xは必然的存在Eである。
公理4 必然的存在Eは、肯定的性質である。
定理2 もし対象xが神性Gを持つならば、Gを持つ対象yが少なくとも一つ必然的に存在する。そこで、神性Gを持つ対象xが少なくとも一つ存在するならば、Gを持つ対象yが少なくとも一つ必然的に存在する。よって、神性Gを持つ対象xが少なくとも一つ存在することが可能ならば、Gを持つ対象yが少なくとも一つ必然的に存在することも可能である。したがって、Gを持つ対象xが少なくとも一つ存在することが可能ならば、Gを持つ対象yが少なくとも一つ必然的に存在する。
公理5 もし性質Aが肯定的であり、すべてのxに対して、Aを所有するxが必然的にBも所有するならば、Bも肯定的である。このことは、自己同一性x=xが肯定的であり、自己矛盾性xxが否定的であることを意味する。(原注:基本的性質の標準選言形は、否定形を含まない)

 この証明の要点は、次のように単純化できる。神性Gは、肯定的性質である。ゲーデルの様相論理体系においては、任意の肯定的性質Pに対して、Pを持つ対象が少なくとも一つ存在する可能性が導かれる。したがって、神性Gを所有する対象xが少なくとも一つ存在する可能性がある。この結果に定理2を適用すると、Gを所有する対象xが、少なくとも一つ必然的に存在する。さらに、定理1と定義2により、その対象xは、Gを唯一持つ対象である。ゆえに、唯一の神が存在する。