グレタさんが訴える気候変動の正義は「新たな階級闘争」だ
将来世代が犠牲になる
気候変動の「不正義」
いずれにせよ、脱炭素社会に向けての大転換をすぐにでも実施しなければ、将来の子どもたちの世代は、自分たちの排出していない二酸化炭素の影響によって、自分たちの生活が脅かされることになる。
つまり、「この危機を引き起こした原因にもっとも加担していない人々が、最も影響を受けることになる世界」が生まれつつあるのだ。
実際に今、二酸化炭素の半分を排出しているトップ10%は、先進国の富裕層であり、彼らは気候変動がもたらす否定的な帰結に直面することなくこの世を去るだろう。
ところが、みずからは二酸化炭素をほとんど排出していない下から数えて半分の人々は、より大きな影響を受けるし、その影響は干ばつや洪水、山火事の多発など、さまざまな形ですでに表れ始めている。
こうした構造的な不平等さを正すことを「気候正義」の考えは求めている。
例えば、トップ10%による二酸化炭素排出量をヨーロッパ人の平均的な量にまで削減するだけで、すぐに全体の二酸化炭素排出量を3分の1ほど削減することが可能だという。
より極端な例でいえば、ビル・ゲイツやパリス・ヒルトンのようなスーパー富裕層はプライベートジェットに乗ることで、一般の人の1万倍の二酸化炭素を排出しているという。彼らの生活を変える必要があるのは一目瞭然ではないか。
技術・資本を持つ者と
被害を被る持たざる者
そのビル・ゲイツは地球工学(ジオエンジニアリング)と呼ばれる気候変動対策に多額の資金を援助していることが知られている。
大気中に硫黄の小さな粒子を散布することで、太陽光を反射し、地球を冷却する技術が有名だが、地球工学を用いれば、私たちは今のライフスタイルを変えずに、気候変動の最悪の帰結を避けることができるというわけだ。
だが、地球工学は未知の技術であり、その目的を達成できるかは見えていない。ましてや複雑な地球システムへの人為的な介入がもたらす影響は予測不可能である。
ビル・ゲイツのような一部の人々を救うために、途上国を中心に大勢の人々の生活が犠牲になるような結果にもなりかねない。
ここでの矛盾は、気候変動がもたらす災害に対して責任を負っている富裕層ほど、その否定的帰結から逃れるための技術や資本を持っており、責任がないその他大勢の人ほどその被害にさらされやすいということである。
だから、気候正義の問題は、再びマルクス的な「階級闘争」の問題としてとらえ返されなくてはならない。
このことは、いわば当然の帰結である。この気候危機を引き起こしているのは、無限の成長を追い求める資本主義なのだ。
「大人は、お金もうけのことと無限の経済成長というおとぎ話ばかり」「いまのシステムでは解決できないならシステム自体を変えるべきだ」という彼女の発言は、経済成長が必須の資本主義を変えないと「気候変動の正義」は実現できないというメッセージと受け止めるべきだろう。
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