月曜日, 12月 02, 2019

高橋洋一「統合政府」

参考:
Bernankeバーナンキ2003
http://nam-students.blogspot.com/2019/12/bernanle-2003.html

フィッシャー交換方程式、
MV=PQ
を右から読む主流派と左から読むMMTの差は大きい(ガルブレイブス、横山、ビブン等参照)
シムズのFTPLも主流派の読み方がなされたから台無しになった
物価が上がったらその%を消費税に対応させるというシムズの論理ならまだわかるが
消費税を10%にあげてもインフレ(実質賃金の上昇)にはならない


高橋洋一は統合政府の主張(=ケインズ一般理論の読みして正しい)などMMTに近いが発言の場を得るために
上のようなリフレ派の間違った論理を容認し、その結果消費増税反対の論理を貫徹できなかった
(金融政策の擁護は金融政策だけ推進する一派に免罪符を与えた)

野党をポジショントークのなかで無意味に攻撃したのも悪手だった
藤井聡みたいに安倍に一時的に期待したのだろうが…
(嫌韓に敏感な)潔癖な女性議員の反感を買っただけだった
因果応報である[=倫理的な統合政府]

役人の天下りにハローワークを使わせるという案は秀逸だが
省庁間の人材流動性と省庁間のプロジェクトチーム作成がまず必要
さらにJGPにあるような失業率(質を伴うそれ)への直接的働きかける政策に合流すべきだろう

以下、高橋洋一、財政破綻の嘘…より

財政状況を知る重要な指標とは以前 、経済財政諮問会議では 、財政再建の目標や指標は 、国と地方の基礎的財政収支 (借入金を除いた税金などの 〔正味の歳入 〕と借入金返済のための元利払いを除いた 〔歳出の収支 〕 =プライマリ ーバランス )を黒字化すること一辺倒だった 。最近は 、これらのほかに債務残高対 G D P比を大きくしないことにも言及していて 、一歩前進ではあった 。しかし財政状況を確認する場合は 、グロス債務 (債務総額 )残高対 G D P比ではなく 、日銀を一体化して考える 「統合政府 」ベ ースの債務総額から資産を引いた 、ネット債務残高対 G D P比がもっとも重要である 。これは 、民間企業で財政状況を連結ベ ースのバランスシ ート (貸借対照表 )でみるのと 、考え方はまったく同じである 。もし経済財政諮問会議の委員がこの原理をわからないとしたら 、専門家失格といわざるを得ない 。そのうえで 、まず指摘したいのはネット債務残高対 G D P比とプライマリ ーバランスとの間には 、以下のような関係があることだ 。ネット債務残高対 G D P比の変化については 、プライマリ ーバランス対 G D P比の黒字分と経済成長から金利を引いたものに 、前期のネット債務残高対 G D P比を乗じたものの和の分だけ減少する 。これまでのデ ータから経済成長率と金利は長期的にはほぼ等しくなるので 、この関係式で考えると 、ネット債務残高対 G D P比の変化 (減少 )はプライマリ ーバランス対 G D P比になる 。つまり 、プライマリ ーバランスの働きは 、長期的にはネット債務残高対 G D P比の動きとパラレル (均衡 )になる 。もともと 、財政運営のためにはネット債務残高対 G D P比を大きくしない (発散させない )という目標があり 、そのためにプライマリ ーバランスを均衡させることが求められていたというべきだ 。


高橋洋一が統合政府を言い出したのはブイター2014以降だと思うが
1995年中国関連で言われ始めた
レイはフルワイラーから学んだらしい
フルワイラーはintegrateを使用している




日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている | 高橋洋一の俗論を撃つ! | ダイヤモンド・オンライン

日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている

 2月21日、平成29年度予算案についての衆議院予算委員会公聴会に公述人として出席し、財政再建で意見陳述を行った。その時のメモをもとに財政再建の問題を改めて、本コラムで書こう。

財政再建で考えるべき
3つのポイント

 大事なことは、以下の3つのことだ。
 第一に、最近のマクロ経済学からみて、財政事情は統合政府(政府と中央銀行を会計的に一体と見て考える)で見るべきであること
 第二に、教育支出は未来投資として行うべきこと
 第三に、予算の無駄使い批判に対して、天下り根絶を行うこと
 である。
 財政政策と金融政策に関する3つのモデルを整理してみると、いわゆる伝統的な財政と金融政策の分離モデル、いま話題のシムズ・プリンストンン大学教授の「財政の物価理論」(FTPL)のモデルと、「統合政府」のモデルがある。
 伝統的な財政と金融の分離モデルは、財政は、政府のバランスシート(BS)の右側(負債)だけのグロス債務またはグロス債務残高対GDP比に着目して、増税や歳出カットによって財政再建をしようというものだ。この場合、金融政策は、物価と失業の逆相関関係をいうフィリップス曲線を前提とすれば、物価水準を見つつ、金融緩和をしたり引き締めたりしながら完全雇用を達成する、財政政策と金融政策がそれぞれ独立して考えられているモデルだ。


https://diamond.jp/articles/-/119006?page=2

日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている

 もう一つは、最近、シムズ・米プリンストン教授が提唱し、それを浜田宏一内閣参与が紹介して話題になっている財政の物価理論(Fiscal Theory of Price Level。FTPL)がある。FTPLは、難しい数式を用いているが、簡単に考えればいい。財政の予算式、つまり、
 毎年度の国債(発行額)=歳出-税収
 となるが、これを将来にわたって、足し算すれば、今の債務残高は、将来の財政収支(税収-歳出)の足し算で賄われなければいけない。これだけの話だ。
 それでどうするか。まじめに財政再建と言って、将来の財政収支をよくするために増税をするのか、財政再建を言わずにインフレを容認して実質的な債務残高を減らすのかどちらかの選択になる。
 シムズ氏は、後者のほうがいいという主張である。そこで、財政再建しないというのは不謹慎だという意見も出ている。
 もっとも、そうした意見を言うのは伝統的なモデルで考える人たちで、実はFTPLでの債務残高は、伝統的モデルでの、グロス債務残高、今の数字でいえば、1000兆円、名目GDPの2倍である。
 しかし下記のように、FTPLの数式に忠実に考えれば、ネットの債務残高は、財務省のホームページの最新の数字を丸めれば450兆円なので、シムズ氏の議論もそれほど極端な話にはならない。






なお、この政府BSをはじめに作ったのは、20年前、当時の大蔵省にいた私である。作った後10年間、お蔵入りだったが、小泉政権の時に公開された。


日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている

「統合政府」の
純債務はほぼゼロだ

 FTPLをさらに拡張、一般化して考えたい。

 FTPLでは、政府のみを考え、中央銀行を入れた予算式で考えていないことが多い。それは、実際の経済を考える際には問題になる。

 というのは、財政収入の中には、税収ももちろんあるが、そのほかに税外収入として、中央銀行の納付金がある。つまり、中央銀行が銀行券を発行した対価として買い入れた手形や国債などから得られる利息収入などの通貨発行益である。この毎年の数字は小さいが、FTPLのように将来の足し算をする場合には大きくなる。細かい数学テクニックは省くが、足し算すると通貨発行額に相当する。


 こうした納付金などの、収入はは、中央銀行も含めた予算式で見ないと、実際の分析ができないことになる。経済学では、政府と中央銀行を会計的に合算した「統合政府」という考え方がある。もちろん中央銀行には、政策手段の独立性があるが、あくまで法的には子会社であるので、会計的には「連結」するというわけだ。
 この場合、財政再建を考えるうえでの着目点は、統合政府のBSのネット債務ということになる。下記の図は、財務省HPにある連結政府BSに日銀BSを合算して、私が作ったものだ。ついでに、政府の見えない資産である徴税権、つまり政府が税収として確保する分も加えている。


 まあ、徴税権を除いても、統合政府BSの資産は1300兆円。統合政府BSの負債は、国債1350兆円、銀行券400兆円。
 中央銀行が発行した銀行券は利子負担なし、償還負担なしだから実質的に債務でない。
 これが意味しているのは、統合政府BSでのネット債務はほぼゼロという状況だ。
 このBSを見て、「財政危機」という人はいないだろう。


日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている


 もっとも、資産で売れないものがあるなどという批判はあり得る。、資産の大半は金融資産、これは、後で述べる天下りに関係するが、天下り先への出資金、貸付金が極めて多い。「資産として売れない」というのは、天下り先の特殊法人や政府子会社を処分しては困るという、官僚の泣きことである。
 もし、本当に大変になれば、自らの関係子会社を売却するのは、民間企業なら当然だ。政府でも同じで、例えば、財政危機に陥ったギリシャでは政府資産の売却が大々的に行われた。道路などの資産は売れないというが、そういう資産はあまり多くはなく、数字的に大きなモノは天下り先への資金提供資産である。海外から見れば、日本政府は、財政が逼迫して売ろうと思えば売れる金融資産をたっぷり持っているのに売却しないのだから、財政破綻するはずがないと喝破されている。
 この「統合政府」の考え方をとれば、アベノミクスによる量的緩和で、財政再建がほぼできてしまったといえる。かつて、私のプリンストン大での先生である前FRB議長のバーナンキが言っていた。

「量的緩和すれば、デフレから脱却できるだろう。そうでなくても、財政再建はできる」
 まさにそのとおりになった。また、消費増税しないと財政破綻し、国債が暴落するというのはまったくの誤りだ。

「税外収入」で財政は再建
増税は不要だ

 財政再建ができたということを、統合政府BSに即して、具体的に示そう。
 資産が900兆円あるが、これは既に述べたように大半は金融資産である。その収益はほぼ国債金利と同じであり、この分に相当する収入が税外収入として、政府(国庫)に入ってくる。
 また日銀の保有国債400兆円であるが、この分は、日銀に対して利払いはするが、結局は日銀納付金として政府に税外収入で返ってくる。
 つまり、負債の1350兆円の利払い負担は、資産側の税外収入で賄われるのだ。この意味で、財政再建がほぼできたといえるのだ。

日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている

 これらはあくまでストック部分で財政再建ができているというわけだが、フロー部分での懸念もあるだろう。しかし下記のグラフにあるように、フローの基礎的財政収支(プライマリー収支)は、前年の名目GDP成長率と高い相関がある。これは日本に限らず先進国で見られる現象である。であれば、名目成長率を高くする、つまりデフレ脱却を進めればいいとなる。
 ここまで来ると、シムズ氏のように、財政再建を無責任に行わないで財政支出を増やせよと言わずに、そもそも財政再建問題がなくなっているのだから、デフレ脱却に向けて、財政政策も金融政策もフル稼働すればいい、というアベノミクスの原点に戻るだけだ。
 シムズ氏は、ゼロ金利では金融政策では制約もあると言う。これも、統合政府の見方から、簡単に導かれる。今のようなゼロ金利の世界では、中央銀行によって得られる毎年の通貨発行益はわずかしかない。このため、国債を増発しても財政政策で有効需要を作ることが必要になってきて、財政政策の併用も必要なのだ。国債発行による財政政策がどうしてもイヤというなら、政府紙幣発行による財政政策でもいい。
 なお、シムズ氏は、金融政策を否定せずに、財政政策と金融政策の一体発動を主張している。この考えは、ケインズ「一般理論」の中にも記述がある。しばしば、ケインズの財政出動、公共投資について「穴を掘って埋める」といい、無駄な事業の代名詞にように扱ってきた。
 ところが、原書には、「貨幣を詰めた瓶を埋めて掘り返す」と書かれている。その前後を読むと、今の言葉で言えば、財政政策と金融政策の一体発動を意図しているのが分かる。こうしてみれば、財政政策と金融政策の一体発動は古くから政策である。
 特に現在の日銀の金利管理金融政策では、日銀が国債を購入して市中にお金を流しているので、政府が国債発行増をしないと、自動的に金融引き締めになりかねないことも留意する必要がある。

日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている

教育・研究開発投資を
建設国債で

 そこで、国債発行による財政政策にふさわしいものを考えるなら、教育・研究開発になる。「未来への投資」ということだ。
 基礎研究や教育のように、成果が出るまでの時間が長く、大規模で広範囲に行う必要のある投資は、公的部門が主導するべきで、その場合、財源には、税金ではなく国債で賄うべきだ。
 高等教育を実施すれば、それで得た知識やスキルによって、所得増、失業減が見込まれ、社会全体でもかけた費用に対する便益が2倍以上になるとの試算がある。これは、現在の公共事業を実施する際の採択基準を軽く上回る。
 教育というのは、いってみれば「優良事業」なのだ。かかる費用はひとまず国債発行で賄い、教育効果の出る将来世代に納税という形で返してもらえばいい。
 モノへの投資は国債発行による公共事業になっているが、ヒトへの投資は税財源というのはつじつまが合わない。無形固定資産でも、コストベネフィット分析のB/Cのような投資採択基準でやればいい。
 実は、「予算と財政法」(小村武著、新日本法規、五訂版)の99ページには
「技術の進歩等を通じて後世代がその利益を享受でき、その意味で無形の資産と観念しえるものについては、後世代に相応の負担を求めるという観点から公債対象経費とすることについて妥当性があるものと考えられる」という記述もある。
 そうであれば、いっそのこと財政法4条(下記)を改正して、建設国債対象経費にしたほうがいい。
 この点に関連して、教育無償化を憲法改正でやるという議論が出てきたのは、この議論の加速で望ましいと思う。
https://diamond.jp/articles/-/119006?page=7

日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている

役人の再就職は
ハローワークで

 最後に天下りに触れておきたい。前述の政府BSで述べたように、資産の大半は天下り先への出資金、貸付金である。それだけ多くのストックがあるということは、毎年の予算でも財政支出があるというわけだ。
 私は、かつて第一次安倍政権の内閣参事官であった時、国家公務員法改正による今の再就職規制を企画立案した担当者だった。
 私が再就職規制を作ったのは、役人時代に退職人事に関わり、実際に再就職斡旋を行った経験があったからだ。天下りとは、「不適切な再就職」をいうのだが、現実は各省庁で通常人事のように普通に行われている。ポイントは役所が斡旋・尽力するところにある。
 国家公務員では、天下り・退職人事に関与するのは一定以上の管理職に限られるが、それに関与しなくても、天下り先への予算をつける作業をした者は多いだろう。また、天下り先への監督権限行使で、手加減をした処分を経験した者もいるだろう。ここに、天下りを求める天下り先の事情がある。一方、役所側でも退職人事を円滑に行いたいので、なかなか天下りは減らないわけだ。
 再就職規制のポイントは、退職前に自己による利害関係先への求職活動を禁止することと、現役職員による他の職員に対する再就職斡旋を禁止することだった。
 政府は、再就職規制違反が文科省以外にもあるのではないかと、全府省庁の調査を行っている。私の所にも調査票が来た。
 だが今回のように泥縄式でやるのではなく、全府省庁調査を行うのであれば、恒常的に全府省庁調査をできるような体制を作ったほうがいい。実際、後発で再就職規制を実施した大阪府市では、全数調査を第三者の有識者の手を借りて行っている。これはかなりの牽制効果があるようだ。
 また、役所の関連団体が人材を募集するときに、いきなり役所に人材提供を申し出るのではなく、ハローワーク経由を徹底することだ。そうなれば、公募手続きと同列に扱いとなり、役人の再就職と民間の人が同一条件で応募することができて、手続きの透明性が確保される。
 さらに、制度的な改正である。今の再就職規制での抜け穴は、官僚OBが行う斡旋には網がかかっていないことだ。実際、人事関係でOBを組織して、今の天下り斡旋等の禁止に触れないようにしている実例もある。また、今の再就職規制違反に刑事罰がないのも問題である。
(嘉悦大学教授 高橋洋一)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68848

髙橋洋一「私をファシスト、レイシストと呼ぶ議員にお伝えしたいこと」

イデオロギー先行ではなく…

「消費税減税研究会」の経緯


筆者は11月28日、馬淵澄夫衆院議員とれいわ新選組代表の山本太郎氏が共同代表をつとめる「消費税減税研究会」に講師として招かれ、国家の財政破綻について話した。馬淵代表は、先日交通事故に遭い入院中のために欠席だったが、山本代表をはじめ出席者とは真剣な討論ができた。
まず、馬淵氏の交通事故について触れておこう。11月4日夕方、奈良県の山道で、馬淵氏の妻が運転する車が山肌に接触する自損事故を起こした。事故があと少し遅く日没でドクターヘリが飛べなければ、救急車で運んでも手遅れになったというくらいの重傷だった。
馬淵澄夫衆院議員(2011年、Photo by gettyimages)
筆者は馬淵氏と事故直前に会っていたこともあり、事故後にすぐ電話をかけたが、内臓損傷、手足の骨折で命の危険もあると聞いて本当に驚いた。幸い、氏は11月30日に退院したとのことで、リハビリに移っている。年明けには「I'll be back」となるだろう。筆者の勉強会の様子も動画で確認したらしく、感謝の電話をもらった。
さて、筆者が勉強会の講師に招かれたことについて、今回かなりの反対があったようだ。事務局長を務めている宮崎岳志氏のツイッターをみれば、それがわかる(https://twitter.com/MIYAZAKI_Takesh/status/1199971650743099393)。
なかでも、参加予定だった石垣のりこ参院議員は、ツイッターで筆者を「レイシズムとファシズムに加担するような人物」と非難していたのだが、いわれのない中傷で驚いた。
勉強会後に、書き込みの根拠についてお尋ねしたが、まだ回答はない。最近の国会議員のあいだでは、以前このコラムでも取り上げた森ゆうこ議員をはじめとして、民間人を誹謗中傷するのが流行っているのだろうか。もっと国のためになる議論をしてもらいたいものだ。
馬淵澄夫さん山本太郎さん主催の消費税減税研究会。初回の講師は、高橋洋一氏とのこと。これから始まるという時に大変残念ですが、当初言明したように私は、レイシズムとファシズムには一切加担しません。よって、レイシズムとファシズムに加担するような人物を講師に呼ぶ研究会には参加できません。
— 石垣のりこ (@norinotes) November 28, 2019

髙橋洋一「私をファシスト、レイシストと呼ぶ議員にお伝えしたいこと」

イデオロギー先行ではなく…

筆者の書いたものや話した記録をみればわかると思うが、ファシスト、レイシスト呼ばわりされるような内容のものはない。また、筆者は理系出身の数量政策学者であるので、イデオロギー先行で語ることはない。イデオロギーとロジックやデータを峻別しており、後者に基づいて論じている。
左派系の人に限らず、世の中にはイデオロギーとロジック・データを混同したり、イデオロギーのみで語ったりする人が多い。そうした人たちはすぐ出口のない言い争いに陥りがちだが、筆者はロジック・データで語るので、どのようなイデオロギーの人とも対話が可能だ。右派でも左派でも呼ばれれば講演をするし、依頼を受けた事項以外に余計な話をしないことは言うまでもない。

講演の中身は「日本の財政破綻の可能性」

今回の勉強会で依頼されたのは、日本財政の破綻の可能性についてである。本コラムの読者であればご存じかもしれないが、もとになっている資料は、筆者が官僚時代の25年前ほどに作成した政府の連結バランスシートだ。
これを読み解くには、公会計の知見が求められるし、財政の破綻可能性について検討するときは、ファイナンス論や金融工学の出番だ。それらの各論では、社会保障論、租税論、マクロ経済学の知見も用いる。
これらはすべて既存の理論であり、いわゆる新手のMMT(現代貨幣理論)は一切用いていない。ちなみに、MMTを日本へ導入した代表的な論者によれば、その数式表現は筆者がリフレ理論を定式化したものと同じだという。
いちいち目くじら立てて批判はしないが、MMTを「新理論」と言うのは間違いだろう。一部の人々が、政治運動のために利用しているだけという感じだ。

髙橋洋一「私をファシスト、レイシストと呼ぶ議員にお伝えしたいこと」

イデオロギー先行ではなく…

もっとも講演の際は、大学院の講義ではないので、一般の人や政治家にもわかるようにまとめている。今回の勉強会で抜粋して配付した資料は以下の通りだ。
「消費増税」は嘘ばかり (PHP新書)  (https://www.amazon.co.jp/dp/4569842739
2018.10.15「IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978
2012.6.14「6・13 国会公聴会 私が述べた消費税増税反対の10大理由」(https://diamond.jp/articles/-/20026
2017.2.23「日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている」(https://diamond.jp/articles/-/119006
筆者の話はエッセンスだけで20分程度、残り40分程度を質疑に充てた。

「消費税廃止」は現実的か?

山本代表らからは、(1)消費税廃止、(2)税ではなく国債による財源調達についてどう考えるか、と聞かれた。
まず(1)については、日本のように消費税を社会保障目的税としている国はないと述べた。社会保障の本質は「保険」であるから、その財源は保険料とし、保険料を払えない人の分は所得税の累進部分で賄うべきだ。その意味で、消費税は社会保障の財源としては不必要といえる。
ただし、消費税は徴税コストが安いので、国税というよりも徴税能力の劣る地方の一般財源とするのがいい。しかも、消費税は地域ごとの偏在が少ない。もし消費税を地方税にすれば、地方交付税をかなり少なくでき、地方主権の意味でも、税の地産地消の意味でも望ましい。このような意味で、国税としての消費税は廃止してもいいが、地方税として残すのがいい、と答えた。
海外でも、日本のような大きな経済規模の国では、消費税を地方の一般財源としている国が多い。しばしば、財務省は欧州各国の消費税を例に出すが、欧州の国々は地続きで人の移動が激しいため、所得課税がやりづらいので消費税を国税としている。欧州の国には、経済規模が日本の県ひとつと同等なところも少なくないので、これは消費税を地方税としたときの実例となる、とも指摘しておいた。

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イデオロギー先行ではなく…

日本は破綻するのか?

(2)については、まず一般に企業の財務状況を見るときは、子会社を含めた連結バランスシートから判断する。それで筆者は、国の財政についても同様の見方ができると考え、今から25年くらい昔の大蔵省時代に、日本の「連結バランスシート」を作った。
政府と日銀を一体として見る「統合政府」という言い方もあるが、国ベースで連結バランスシートを作ると、日銀は会計上の子会社となるので、当然含まれることになる。こうして国家の財政をバランスシートでみると、借金の金額ではなく、資産のバランスが問題になる。
日本の状況を連結バランスシートからアバウトにいうと、資産1000兆円、負債1500兆円だ。しかし、負債は国債1000兆円と中央銀行券等500兆円にわかれる。
中央銀行券等は、正確にいえば中央銀行券と中央銀行当座預金に分けられるが、中央銀行当座預金は中央銀行券と代替可能なので、理屈上すべて中央銀行券と考えてもいい。中央銀行券は、無利子無償還なので経済的な意味での債務とは言いがたく、資産1000兆円、実質負債1000兆円というのが現状である。
さらに、簿外資産として徴税権がある。そのため、会計的には日本の財政は大丈夫、という結論が導ける。
ファイナンス論から見れば、現在、日本が破綻する確率は今後5年間で1%程度と計算できるので、これまた心配する必要はない。
この見方に基づけば、国債を発行しても資産として残るのであれば、財政状況は悪くならない。つまり、将来投資のために資産が残るのであれば、国債発行による財源確保が可能になる。
もちろん国債と言っても返済が必要だが、日銀が市場から購入した分はロールオーバー(持ち越し)可能だ。一般的にも借り換えは行われているし、社会全体でみればロールオーバーしているので、返済の必要を過度に強調する必要はない。これらを総合すれば、資産の残るものについては国債を財源にできると言ってもいい。

髙橋洋一「私をファシスト、レイシストと呼ぶ議員にお伝えしたいこと」(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(5/6)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68848?page=5

髙橋洋一「私をファシスト、レイシストと呼ぶ議員にお伝えしたいこと」

イデオロギー先行ではなく…

これを制度化したものが、建設国債である。建設国債は、現状の制度では物的資産が見合いになるものに限定されているが、理屈上は無形資産でもいい。
例えば、研究開発や教育は将来投資の典型なので、国債を財源とするのが政策課題である。なお、現下のマイナス金利からみれば、投資が正当化できる対象はたくさんあるので、かなりの程度建設国債の発行が可能となるとも指摘した。

年金もバランスシートで分析できる

講演では、その他の参加者からも「国債はどこまで発行可能で、日銀がどこまで購入できるのか」という有意義な質問があった。これはとてもいい質問だ。
統合政府のバランスシートをみると、見合いの資産がある程度あれば、破綻はしない。この意味では、赤字国債が簿外の徴税権を超えなければ大丈夫というのが一つの目安となる。また、中央銀行の買入は、先ほど述べたように負債が国債と中央銀行券とに分けられるのがポイントだ。このバランスによって長期的なインフレ率が決まり、中央銀行券の比率が高まるほどインフレ率は高くなる。この意味では、インフレ目標が中央銀行の買入の歯止めになる。
また他の方からは、「年金支給の充実のために国債発行はできるか」と聞かれた。年金も、バランスシートで分析できる。

髙橋洋一「私をファシスト、レイシストと呼ぶ議員にお伝えしたいこと」

イデオロギー先行ではなく…

例えば厚生年金をバランスシートでみると、アバウトに資産2000兆円、負債2000兆円となる。金額は年金数理計算により算出されている。負債は年金債務であり、国が将来にわたって支払う年金額だ。一方の資産は、これから支払われる保険料が1400兆円、今ある積立金が200兆円、これからの国庫負担が400兆円。
つまり、年金財政も一応、破綻する可能性はまずない。これは、払う保険料と受け取る保険金が釣り合っているからだ。
これを具体的に計算するのが保険数理である。年金といえども保険の一種であるから、こうした収支相償という単純な原理に依拠しており、本来は福祉という考え方が入り込む余地はない。こうした認識はほぼ世界共通である。
むしろ、福祉の発想を入れて給付額を増やそうとすると、社会保障制度そのものが崩れる可能性が高まる。そのため、世界各国では保険方式で運営しているのだ。
筆者は、社会保障運営については他国に例のないものは主張しない主義だ。なので、年金給付を上乗せするための国債発行については、実例がないので答えなかった。
いずれにしても、勉強会に参加した野党議員や識者の方々とは有益な議論ができた。