水曜日, 1月 22, 2020

2020/1/17 社会信用スコアがもたらす「デジタル・ディストピア」 ノーベル経済学賞教授、異例のSF実験 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)



https://www.tse-fr.eu/sites/default/files/TSE/images/conference/Digital_conf_2020/tirole_digital_dystopia_080120.pdf
Digital Dystopia∗
Jean Tirole†
January 8, 2020
Abstract: While data collection and artificial intelligence hold the promise of a sharp reduction in incivilities, they also open the door to mass surveillance by private platforms and governments. After analysing the welfare impact of transparency, whether suffered or voluntary, the paper shows how an expansion of the public sphere may lead to a disintegration of the social fabric in the private sphere, with potentially negative consequences. The paper then brings to light how political authorities can enlist a social rating to control society without engaging in brutal repression or misinformation. To this end they optimally bundle the individual’s political attitudes and social graph with her overall social behavior, so as to mobilize individuals and platforms to enforce the political will. Finally, the paper uses a similar argument to show that democratic countries may be concerned with private platforms in the same way autocratic ones may be wary of public platforms. Keywords: Social behavior, data integration, social score, platforms, social graph, mass surveillance, divisive issues, community enforcement. JEL numbers: D64, D80, K38.

デジタルディストピア*ジャンチロル†2020年1月8日要約:データ収集と人工知能は、文明の激減を約束する一方で、民間のプラットフォームや政府による大量監視への扉を開きます。苦しんでいるか自発的かに関係なく、透明性の福祉への影響を分析した後、この論文は、公共圏の拡大が民間圏における社会構造の崩壊にどのようにつながる可能性があるかを示しています。次に、この論文は、残虐な弾圧や誤った情報に関与することなく、政治的権威がどのように社会的評価を求めて社会をコントロールできるかを明らかにします。この目的のために、彼らは個人の政治的態度と社会的グラフを彼女の全体的な社会的行動に最適にバンドルし、個人とプラットフォームを動員して政治的意志を行使します。最後に、この論文は同様の議論を使用して、民主主義国は、独裁的な国が公的なプラットフォームを警戒するのと同じように、私的なプラットフォームに関心があるかもしれないことを示しています。
キーワード:社会的行動、データ統合、社会的スコア、プラットフォーム、社会的グラ
フ、集団監視、分裂的問題、コミュニティの施行。 JEL番号:D64、D80、K38。



This proposition checks for our model the standard result according to which there is underprovision for large externalities and overprovision for small ones.20 The imperfect internalization of the externality is a driver of underprovision, while the desire to gain social recognition may lead to oversignaling for minor externalities (as illustrated by Lacie in the series Black Mirror21). 18A corner solution at v∗ = 0 (resp. v∗ = 1) exists if and only if µα¯v ≥ c (resp. µα(1 − ¯v) ≤ c − e). Thus, the condition µα(1 − ¯v) + e > c > µα¯v (in the case of a uniform distribution µα 2 +e>c> µα 2 ) is sufficient for the existence of an interior equilibrium (and uniqueness under the D1 refinement). 19See the conditions for interiority in footnote 18. 20Eg. Acquisti et al (2016), Ali-B´enabou (2019), B´enabou-Tirole (2006) and Daugherty-Reinganum (2010). The differentiation of (4) with respect to e yields: d de(e −µα∆(v∗)) = 1+µα ∆(v∗)v∗ e +µα∆(v∗) >0 if e +µα∆(v∗)(1+v∗) > 0, which is trivially satisfied in the uniform case (∆≡ 0). 21“Nosedive”, season 3, episode 1. Another instance of over-signaling occurs when people feel compelled to wish “happy birthday” to Facebook “friends” they hardly know (and accept them as “friends” in the f irst place). 11






この命題は、大きな外部性に対する過少プロビジョニングと小さな外部性に対する過剰プロビジョニングがある標準結果をモデルに対してチェックします。20外部性の不完全な内在化は、プロビジョニング不足の原動力です。外部性(シリーズBlack Mirror21のLacieで示されている)。 18Aのv ∗ = 0(それぞれv ∗ = 1)のコーナー解は、µα¯v≥c(µµ(1 −¯v)≤c − e)の場合にのみ存在します。したがって、条件µα(1 −¯v)+ e> c> µα¯v(均一分布µα 2 + e> c> µα 2の場合)は、内部平衡(および下での一意性)の存在に十分です。 D1の改良)。 19脚注18の内部性の条件を参照してください。 Acquisti et al(2016)、Ali-B´enabou(2019)、B´enabou-Tirole(2006)およびDaugherty-Reinganum(2010)。 (4)をeに関して微分すると、d de(e -µα∆(v ∗))= 1 + µα ∆(v ∗)v ∗ e + µα∆(v ∗)> 0 if e + µα∆ (v ∗)(1 + v ∗)> 0、これは一様な場合(∆≡ 0)で自明に満たされます。
21「Nosedive」、シーズン3、エピソード1。人々がFacebookの「友だち」に「ハッピーバースデー」を望むことを強いられた(そして最初に「友だち」として受け入れる)とき、過剰信号の別のインスタンスが発生します。 。
p. 11


Black Mirror - Quick Ideological analysis of NoseDive S3E1

Black Mirror - Lacie Rates Coworker - Social Credit System (Nosedive S3E1)

ブラック・ミラー「ランク社会」SNSの評価が全ての世界【シーズン3】ネタバレあり | 電脳ホテル
https://bokunoatamanonaka.com/blackmirror-rank

ブラック・ミラー「ランク社会」SNSの評価が全ての世界【シーズン3】ネタバレあり

大好きな海外ドラマ「ブラック・ミラー」の中に「ランク社会」という非常に面白い話があります。
シーズン3の1話目の話なのですが、とても興味深い話なんですよ。
何が興味深いって、この「ランク社会」の世界では
「SNSの評価」=「人間の価値」
となっているんですよ。
一体どうゆう事なのか。
今回はそんなブラック・ミラーの「ランク社会」について書きたいと思います。
  • ブラックミラーってなに?
  • ランク社会のあらすじ
  • ランク社会のみどころ
  • ネタバレ感想
  • ランク社会は現実でも起きている!?
  • 評価とまとめ
こんな感じで書いていきますので是非、視聴の参考にして下さいね!

ブラック・ミラーとは?

引用:NETFLIXより
ブラックミラーは2011年にイギリスで作られたテレビドラマシリーズ。元々はチャンネル4というところで放送されていました。
しかし大変面白い作品で人気が出た為、NETFLIXが12話分制作の依頼を掛け、続編をNETFLIXでやることになりました。
つまりシーズン3以降の配信はNETFLIXのみでの配信になっています。
そしてNETFLIXで全世界同時配信を始めた結果、たちまち有名になり今では超人気ドラマとなっています。

どんなドラマ?

ブラック・ミラーの特徴はアンソロジー形式になっていて、「一話完結型」のドラマとなっている点です。
ブラック・ミラーを簡単に説明するとこんな感じ。
「近未来SF」「世にも奇妙」=「ブラック・ミラー」
一話完結の話で全ての話が独立していますが、全ての話に「近未来のテクノロジー」が関わっています。
そのテクノロジーに関する「皮肉な話」「ダークで風刺的な話」というのがブラック・ミラーの一番面白いところになっています。

シーズン3「ランク社会」のあらすじ

引用:NETFLIXより
この世界では、SNSの評価こそが全てである。
友人、職場、コミュニティ・・・どこにいても、お互いに笑顔を作り、「☆」を送り合う。
主人公レイシーもどうにか高評価をもらいたいと思っていた。てっとり早く高評価になるためには、「高評価の人間から☆をもらうこと」が必要だと知る。
そんな矢先、昔の嫌いな友達から連絡が来る。しかし、この友達は超高評価されている人間であった。

見どころ!SNSの評価が全ての世界

引用:NETFLIXより
「ランク社会」は独特な世界観と、未来を危惧するような皮肉な内容が非常に面白いです。
現代人を皮肉った内容
先に言っておきます。ブラック・ミラーの中でも、トップクラスに面白いです。
というのも、内容が非常にわかりやすいからです。お互いの評価はSNSの☆のみの世界。
人と会えば、挨拶をして☆を送り合う。良い挨拶や、印象が良ければ☆を5個送る。
このやり取りを通して、自分の評価が5段階評価として、目に埋め込んだ最新機器を通して表示されます。
この評価が高いと社会サービスに様々な優遇が付きます。
逆に評価の低い人間入れない建物受けられない社会サービス山のように出てきます。
SNSでの評価こそが全ての世界になっているんですよね。
しかし、これは現在の社会でも何か近いものがありますよね。
SNSで評価されたいがために、飲食店でおバカなことをやったりまわりを気にせず騒いで写真を撮ったり・・・・。
バズるためになんでもするようになっているモラルの欠片もない人達がいるのが現状ですよね。
このまま未来を迎えてしまうと、どうなっちゃうんだろうか。
そんな未来を描いた作品が「ランク社会」です。
この作品を観た後、「現実を生きよう」って思うのは私だけじゃないはずです。

「ランク社会」ネタバレ感想

少し内容に触れるので、まだ観ていない人は飛ばしてください。
※クリックで表示
この作品の良いところは、ただ単純に現代社会を皮肉っている訳ではなく、”救い”もあるというところです。
レイシーは、古い友人であるナオミの結婚式スピーチをするために、式場に向かいます。
ここから、評価が地獄のように下がっていくジェットコースターが始まるわけですが、途中で「元高評価のおばちゃん」のトラックに乗せてもらいます。この人は1.3前後の評価の人です。
このおばちゃんは昔、5段階中4.6という高評価の人間でした。しかしガンになってしまいます。
治そうと様々な人に高評価を送りまくって、なんとか病気を治してもらおうとしましたが、評価とは裏腹にガンは全くなおりません。
そして思ったのです。
人々は上辺だけで接し合い、高評価をもらうためだけに笑顔を作り、感謝していないのに「ありがとう」と言う。
もう素直に言いたいことを言うと決め、自由に生きるようにしたそうです。するととてもスッキリ。
このおばあさんが教えてくれたことが、このランク社会から脱出する方法なのではないかってことです。
オチの牢屋に入って別の牢屋の男性と口喧嘩をするシーンは、逆にレイシーが救われたというか、評価を気にしなくなったからこそ、本音で話し合えるんだよって皮肉ですよね。
むしろハッピーエンドに思えますね!

「ランク社会」は現実でも起きている!?

引用:東洋経済新報社より
近未来SFである「ランク社会」ですが、実はすでに中国ではこれに近いことが行われているんです。
社会信用システム(SCS)というものが実現されつつあります。
上記の画像は実際に中国で使われているもの。数値化されているのでわかりやすいですね。
通常どこの国でも政府機関は先進技術において民間企業に遅れを取るそうですが、中国だけはそうはいかないそうです。
中国はビッグデータ(データやアルゴリズム)の利用についてとても野心的で力を入れています。
簡単に言うと、民間企業が持っている購入履歴・通信履歴・行動履歴などに含めて、政府が持っている情報を抱き合わせることで、信用性の高いビックデータとして利用し、重要な決定として下そう!ってことです。
社会信用システムと言うだけあって、これを基に「サービスを利用できるかできないか」などの決定に使うってことですね。
あらゆる方向から収集した個人データから「信用度」的なものを作って、それを基準にするってことでしょうか。
中々やばいですよね。
実際に、中国の重慶市(チョンキン)では、中国人ジャーナリストが「社会的信用度」が足りず、列車に乗ることが出来なかったとのニュースもあります。これこそSCSが発動していますよね。
遠くない未来に、もしかすると日本も同じようになるのかもしれませんね・・・・・

「ランク社会」の評価とまとめ

引用:NETFLIXより
「ランク社会」の評価
「ランク社会」はただ単に現代人に対する皮肉だけではない作品だと思います。
ブラック・ミラーの良いところは、そんな悲しい未来の設定でも途中で救いの手を入れたり、原点回帰のようなオチを付けたりするところですね!
非常にメッセージ性の強い話なので、特にSNSが生活の中心になっている人は響く作品だと思います。

「ランク社会」の視聴方法

ブラック・ミラーのシーズン3に「ランク社会」は収録されています。
現状ブラック・ミラーはシーズン5まで配信されていますが、全てNetflixのみでの配信になっています。
ですので、NETFLIXに登録するしかありません。
というのも、ブラック・ミラーはシーズン1・2まではイギリスで放送されていたのですが、3以降はNETFLIXが制作依頼を出したので、結果的にNETFLIXオリジナル作品となっています。
NETFLIX
NETFLIXは月額料金だけで全作品を観ることができる動画配信サービスです。
配信されているものは全て視聴可能なので、追加料金が掛からないのが特徴です。
料金プランは下記3種類になります。
  1. ベーシック 800円
  2. スタンダード 1200円
  3. プレミアム 1800円
HD画質(高画質)になるのはスタンダード以上になるので、スタンダードがオススメですね。
1ヶ月の無料期間があるので、登録したことがない人はこの期間を使って大量に見ることが出来ます。
ですので、まず無料期間だけお試ししてみるのが良いと思います。
解約忘れがないようにするために、1か月経過する3日前にメールをくれるので忘れずに解約もできると思います。
この期間で是非、ブラック・ミラーを観て下さい!!
それではまた。


http://conference.nber.org/conf_papers/f122341.pdf
Digital Dystopia∗
Jean Tirole†
June 27, 2019
Preliminary. Please do not circulate.
 Abstract: While data collection and artificial intelligence hold the promise of a sharp reduction in incivilities, they also open the door to mass surveillance by private platforms and governments. After analysing the welfare impact of transparency, whether suffered or voluntary, the paper shows how an expansion of the public sphere may lead to a disintegration of the social fabric in the private sphere, with potentially negative consequences. The paper then brings to light how political authorities can enlist a social rating to control society without engaging in brutal repression or misinformation. To this end they optimally bundle the individual’s political attitudes and social graph with her overall social behavior, so as to mobilize individuals and platforms to enforce the political will. Finally, the paper uses a similar argument to show that democratic countries may be concerned with private platforms in the same way autocratic ones may be wary of public platforms.
Digital Dystopia ∗ Jean Tirole†2019年6月27日暫定版。流通させないでください。
要約:データ収集と人工知能は、非合法性の急激な削減を約束する一方で、民間のプラットフォームと政府による大量監視への扉を開きます。苦しんでいるか自発的かに関係なく、透明性の福祉への影響を分析した後、この論文は、公共圏の拡大が民間圏における社会構造の崩壊にどのようにつながる可能性があるかを示しています。次に、この論文は、残虐な弾圧や誤った情報に関与することなく、政治的権威がどのように社会的評価を求めて社会をコントロールできるかを明らかにします。この目的のために、彼らは個人の政治的態度と社会的グラフを彼女の全体的な社会的行動に最適にバンドルし、個人とプラットフォームを動員して政治的意志を行使します。最後に、この論文は同様の議論を使用して、民主主義国は、独裁的な国が公的なプラットフォームを警戒するのと同じように、私的なプラットフォームに関心があるかもしれないことを示しています。


社会信用スコアがもたらす「デジタル・ディストピア」 ノーベル経済学賞教授、異例のSF実験 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
https://forbesjapan.com/articles/detail/31774/1/1/1

社会信用スコアがもたらす「デジタル・ディストピア」 ノーベル経済学賞教授、異例のSF実験

ノーベル経済学賞を2014年に受賞し、日本でも『良き社会のための経済学』(日本経済新聞出版社刊)が話題になった、フランス・トゥールーズ第1大学教授のジャン・ティロール。

気候変動、格差・分断、グローバリゼーション、デジタル革命……。世界は劇的に変化し、そのスピードはますます加速している。予測不可能な時代、私たちはいかに世界を捉え、行動すべきなのか。2020年の始まりを目前に、2019年12月25日発売のForbes JAPAN(2020年2月号)で、世界の知の巨人や気鋭の経済学者たちにとともに、来るべき新しい世界を考える特集を企画。今回は、ティロール教授の最新論文(日本語版未発表)について、独占インタビューした。


20代のレイシーは常に笑顔で、ちょっとした親切を欠かさない。彼女は、自分の「社会的スコア」を5つ星に近づけるべく絶望的な戦いをしているからだ。人々がお互いを格付けしあう「社会的スコア」が支配する未来社会。悪口や暴力はスコアの低下で罰せられ、住む場所や移動手段も制限される。街は善行と笑顔にあふれるが、星の数で人は信用できるのか? そんな未来は「善」なのか?


2016年10月にNETFLIXで公開された「ブラック・ミラー」第3シリーズ、第1話「NOSEDIVE」予告編。

上記は、オンライン動画サービスNETFLIXの人気ドラマシリーズ「ブラック・ミラー」のエピソード、NOSEDIVEの一コマからだが、この未来ドラマを引用した、一風変わったエッセイが10月に発表された。『デジタル・ディストピア』と題されたその学術論文では、こんな一文が入る。

「このエッセイは、(社会)サイエンス・フィクション(SF)実験として読んでもらうのがもっとも適切だろう」

執筆者は2014年にノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロール(66)だ。なぜ経済学の論文でSF実験なのか。

ティロールは、マクロ経済学からゲーム理論、産業規制論までその幅広い関心と研究内容で知られるが、経済学の目的とは「共通善」にあると説く。著書の『良き社会のための経済学』(日本経済新聞出版社刊)は日本でも話題になったが、「経済学は共通善に尽くし、世界をより良くすることをめざす」と前文で述べている。

社会的スコアが支配する世界で人々はどのように行動するのか。デジタル経済において、社会的スコアは共通善の達成に貢献するのか。SF思考実験を通じて、将来的な社会の課題に備えるのがこのエッセイの目的だ。


https://forbesjapan.com/articles/detail/31774/2/1/1

社会信用スコアがもたらす「デジタル・ディストピア」 ノーベル経済学賞教授、異例のSF実験

中国から波及する社会的スコア

ここ数年で日本でも、みずほ銀行やLINE、メルカリなどの企業が信用スコアサービスを導入し始めた。金融サービスの利用状況や決済情報、個人情報などを収集して、人工知能(AI)が分析し格付けするもので、この分野の先進国である中国では、すでに地方政府やIT大手の実験が報道されている。

2020年には中国政府が「社会信用スコア」を本格的に開始する予定で、金融や決済に関するデータだけでなく、納税状況や交通違反、善行、SNSの投稿内容まで、社会生活のさまざまなデータを収集して分析すると見られる。このシステムの導入は中国だけでなく、他の国にも波及していく可能性がある。

このような社会生活全般のデータを使う社会的スコアをめぐっては、政府による大量監視を危惧する指摘があるものの、意外にも、金融アクセスの向上や人々のマナーや行動の改善が期待されるなどの理由で、支持する声も多い。

だが、ティロールは、『デジタル・ディストピア』の思考実験の結果から、社会的スコアに警鐘を鳴らす。

まず、人々の行動をモデル化し、様々なケースに分けて分析すると、人々の関係性は2種類に分かれる。家族や親しい友人との付き合いなど「安定した関係」と、プラットフォーム上の契約や大都市でのつきあいなど「一時的な関係」だ。

社会的スコアを共有すれば、この一時的な関係において、よくない他者との交流や取引を避けられるというメリットが考えられるが、単に他者への偏見や差別を助長する危険性もある。社会的スコアは、政治思想や性的嗜好などさまざまな情報を含むので、その情報が企業や個人にとって影響や関係がない情報であれば、社会的スコアとして世の中に開示することは害の方が大きいかもしれない。

また、社会的スコアによって犯罪や問題行動が減る可能性がある一方で、評価・格付けシステムを設計する人々の私的な利害関係や関心が社会善からずれる場合、機能しない可能性があることもわかった。社会的なイメージを高めたいという人々の欲求は一部で良い行動を増やすものの、その欲求を利用して人々の行動を操作すべく専制政府や独占企業が社会的スコアを恣意的に公開する場合、逆に社会的貢献を減らす場合があるからだ。

この場合、社会的スコアは一見社会の透明性や安全性を高めているように見えるが、実際には政治権力の強化に使われるだけの可能性がある。この政治権力は中国のような専制国家の政府だけでなく、巨大デジタル・プラットフォームを持つ私企業をも含む。

社会信用スコアがもたらす「デジタル・ディストピア」 ノーベル経済学賞教授、異例のSF実験

フランスの経済改革について語るトゥールーズ第1大学教授のジャン・ティロール。

(質問:成田悠輔イェール大学助教授)
──デジタル・ディストピアの着想のきっかけを教えてください。今日の経済学でサイエンス・フィクション的思考実験をするのは極めて異例です。なぜ、SFの世界としてのデジタル・ディストピアを批判し、分析するのでしょうか。  

監視(社会)やプライバシーの問題だけではなくで、AI、ビッグデータ、遺伝子(編集)など、さまざまな技術革新は、人々の生活を善くする素晴らしい可能性がある一方で、これまで社会が経験したこともない大きな課題をつきつけるだろう。

私たち社会科学者は、技術が社会にもたらす恩恵を増やし、有害な結末を避ける手助けをするべきだ。だからソーシャル・サイエンス・フィクションが必要になる。いま起きていることを記録するだけではなく、適切な安全策を講じなければ未来に何が起きうるのかを描きたかった。

──今日の技術・データ環境を考慮して、どのような社会的スコアのデザインが社会的に望ましいのでしょうか。

まずシステムに統合される情報は最低限であるべきだ。人々の対立を煽る情報、例えば宗教や民族、性的指向や政治的意見、健康状態やほかのプライバシーに関わる事柄は統合すべきではない。

次に、評価者の個人的なアジェンダによって人々が罰せられるのを防ぐために、評価方法の独占状態を避けるべきだ。もしくは、評価の方法についての原則を法律で制定し、独立した司法が監視しなくてはならない。

三番目に、人々が何によって評価されているのか、その中身をモニターし、間違いや悪意を持った評価を修正する権利を持つべきだ。

最後に「忘れられる権利」というのは多くの法制度の基本的権利であり、宗教上でも重要な教訓だ。人々は自らの行動について責任を負うが、いつかの時点でセカンド・チャンスを与えられるべきだ。そのために「クリーンな履歴」が必要だ。

──社会的スコアの参加者は、明確に同意し、自発的に参加すべきだと思いますか。

自発的なシステムというのは解決策にならないだろう。自己利益のインセンティブが働くので、システムにはまず、高いスコアを得られそうな人、もしくはすでに持っている人たちが参加する。彼らは自分のスコアを他人に見せたがる。そうすると、平均的なスコアの人も「自分たちは何も隠していない」、最下位の人とは違う、と証明するためにスコアを取得して、開示し始める。自発的だとされていたものが事実上の強制になってしまう。

現実世界では、例えば会社が社員、就職希望者にオンラインアカウントのアクセスを求めたり、フェイスブックの友達申請を要求したりすることがあたる。そのような要請は断るのがとても難しい。断れば「何か隠すことがある」と思われかねないからだ。

社会信用スコアがもたらす「デジタル・ディストピア」 ノーベル経済学賞教授、異例のSF実験

質問した成田悠輔イェール大学助教授。(撮影=小田駿一)

──いまではスマートフォンやセンサーで、寝室でも浴室にいても監視されてしまいます。私たちの生活のプライベートな部分が縮小しているように見えますが、これはいきすぎた監視でしょうか。

最終的には、プライバシーは個人の選択の問題だ。一方で、将来的な影響がまだよくわかっていない中で、人々が限られた情報や社会的なプレッシャー、衝動性のもとで選択を迫られている点については懸念している。

例えばGDPR(EU一般データ保護規則)が定めるように、間違いを犯しても反省して忘れられる権利を持つことで、(社会信用スコアが)将来にわたって決定的な影響を与えるのを防げるかもしれない。だが、記録は政府や民間のデータベースで複製され保管されているので、忘れられる権利の行使は難しい。

私自身は、アマゾンのアレクサやグーグルホームといったパーソナルアシスタントを家庭で使っていない。そのようなバーチャルアシスタントは素晴らしい技術でとても便利だと思う。しかし、そのようなプラットフォームが私たちと供給者(店員や町の医者など)を仲介してマージンをとっているという事実のほかに、個人を特定可能なあまりにも多くの情報が記録され、将来、悪意のある社員やハッカーに悪用されないか、という懸念を持っている。

──プライベートな空間は、人々にとってどのような意味があるでしょうか。

プライベートな空間は人間にとって重要だ。ストレスが溜まっているとき、嫌なことが起きて判断力が低下しているとき、他の人を傷つけずにストレスを発散したいこともあるだろう。「政治的に正しくない」とされる考えでも、同じ考えを持った仲間内で声を出して言ったり、一緒に考えたいと思うこともあるだろう。

プライバシーは自らの社会的なイメージを守るために、我々が常に「姿勢を正さないといけない」という状態から守ってくれる(レイシーの絶望を思い出してほしい)。他者への尊敬の念を持つのを助けてもくれる。

──我々は社会的イメージに固執しがちですが、逆に固執しない個人(極端な好みや行動原則を持ち、世界から学ぶことを拒否する「頑固な」個人)が重要になる可能性はありますか。

推測するに、社会的なイメージを気にしすぎるのも、気にしなすぎるのもよくない。社会的イメージや自己イメージに固執する人は、過去の行動が必ずしもその人の深い嗜好を反映していないかもしれないので、本当は何を考えているのかわかりづらい。そういう人を我々は信用できるだろうか。しかし、社会的イメージをまったく気にしない人は付き合いづらいかもしれない。

信頼をつくるシステムや新しい監視技術の出現が社会的イメージと我々の関係をどう変えるのか。これらの問いは、SFモードで未来を研究する、また別のトピックになるだろう。


Jean Tirole◎フランス・トゥールーズ第1大学教授。1953年生まれ。マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得。フランス国立社会科学高等研究院教授、MIT客員教授も務める。フランスを代表する経済学者として知られ、2014年に「市場支配力と規制」に関する研究でノーベル経済学賞を受賞した。専門は産業組織論、ゲーム理論、金融、マクロ経済学、心理学など。エッセイ『デジタル・ディストピア』はトゥールーズ経済学院のウェブサイトにて公開中。