火曜日, 6月 06, 2017

素数ゼミ

17年周期、13年周期で大発生!! 「素数ゼミ」の謎を日本の研究者が解明した!!(tenki.jpサプリ 2016年8月18日) - 日本気象協会 tenki.jp

http://www.tenki.jp/suppl/romisan/2016/08/18/14811.html


謎を解きかした吉村教授。「素数ゼミ」の名づけ親。

周期的に発生するセミを、一般的に「周期ゼミ」とよびますが、この、17年周期、13年周期で北米に大発生するセミを「素数ゼミ」と名づけ、その謎を解明したのが、日本の生物学者、吉村仁教授(静岡大学)です。専門は数理生態学。セミのほかにも、さまざまな動物の行動を進化的な数理モデルで解析しています。幼いころから昆虫採集に夢中な“昆虫少年”だったそうです。

「素数ゼミ」は、同じ地域に、17年あるいは13年に一度しか発生しないという規則性をもちますが、どうして12年や15年ではなく、17年と13年という素数なのでしょう。吉村教授によると、それは氷河期にまで時代をさかのぼって考えなければならないようです。


氷河期を生き残るために、周期が長くなった素数ゼミ



素数ゼミは17年または13年ごとに北米に一斉に発生するわけではなく、ある地域の素数ゼミだけが、その地域だけで、17年あるいは13年という決まった周期で発生します。そして、発生する年は地域ごとにずれているので、アメリカ中が一斉にセミだらけになることはありません。

普通のセミよりも長い間地中で暮らしますが、その暮らしぶりはほかのセミとなんら変わりなく地中で脱皮を繰り返しますが、地中にいる期間が極端に長いのと、ぴったり17年と13年で出てくるところが不思議です。その謎を解くには、地球の歴史を見なければなりません。


地球にセミが登場したのは2億年以上も前です。そして時代を一気に下り、おそよ200万年前。当時は氷河時代で、すでに人類の祖先もあらわれていました。寒さは生き物たちにとって過酷な環境となりました。気温が低くなればなるほど、地中のセミの成長のスピードがどんどん遅くなっていき、これが、10年以上もの長い間を地中で暮らすことになった理由とされています。

しかし、寒い時代にやっと地上へ出たものの、交尾の相手が近くにいなければ、子孫を残すことはできません。氷に覆われた氷河時代、素数ゼミはどうやって絶滅を回避したのでしょう。


狭い範囲で大発生し、子孫を残す。生き残りのための進化


セミ以外にも、多くの生き物が絶滅に追いやられた氷河期。しかし北米には、盆地や暖流のそばではあまり気温が下がらないところがあったため、そんな“避難所”でセミはかろうじて生き残りました。とはいえ、気温が圧倒的に低いので、セミは、北部では14~18年、南部では12~15年もの長い間を地中で過ごすようになりました。

そんなノアの方舟のような“避難所”が北米にいくつもできました。しかし、寒い時代にやっと地上へ出たものの、交尾の相手が近くにいなければ、子孫を残すことはできません。“避難所”のような狭い範囲では、違う年にバラバラと羽化して子孫を残すよりは、同じ年に一斉に羽化して交尾・産卵して子孫を残すほうが効率的です。

こうして、北米のあちらこちらで、同じ場所に同じ種類のセミが同じ年に大発生するようになりました。


なぜ17年と13年周期なのか? 12年や15年ではダメなのか? その秘密は「最小公倍数」


こうやって、狭い範囲で一斉に発生することで生き残ったセミたち。しかし、なぜ、17年と13年という「半端」な周期のセミだけが生き残ったのでしょう。その秘密は「最小公倍数」にあります。素数同士だと、最小公倍数が素数でない数よりも大きくなるからです。

氷河期を生き延びた“避難所”のセミの周期は、当時は北部では14~18年、南部では12~15年でした。19年以上だと地中にいる期間が長すぎるので、18年が限界だったようです。

たとえばある年、種類が同じで周期だけが違う15年と18年のセミがいっしょに出て、子どもをつくったとします。15年後に15年ゼミが、18年後に18年ゼミが地上に出てみたら、ほかの周期のセミはいないので、以前よりもずいぶんと数が減ってしまっています。さらに、15年ゼミと18年ゼミで交雑すると、その子の周期はどうなるのでしょう。16年だったり17年だったりするかもしれません。このように、たまたま15年ゼミと18年ゼミが出会ってしまうと、何万年もかけてどちらのセミも数が減り、やがて絶滅してしまうのです。

15と18の最小公倍数は90です。つまり、15年と18年の場合は90年ごとに交雑する機会があります。一見すると、交雑すればするほど生き延びるような気がしますが、しかし、交雑の回数が多ければ多いほど、周期が乱れ、先に絶滅してしまうのです。


ここで、アメリカ北部の場合の周期を見てみましょう。15~18年周期で考えてみます。この中で素数は17です。

15~18年の4種類のセミが出会う周期を見てみると、

・15年ゼミ×16年ゼミ…240年周期

・15年ゼミ×17年ゼミ…255年周期

・15年ゼミ×18年ゼミ… 90年周期

・16年ゼミ×17年ゼミ…272年周期

・16年ゼミ×18年ゼミ…144年周期

・17年ゼミ×18年ゼミ…306年周期

となります。素数が周期の17年ゼミが入ると最小公倍数が大きくなるので、周期年数が違う群れと交雑しにくいことがわかります。

こうして、何万年何十万年も過ぎ、最小公倍数が小さい周期のセミは減っていき、最小公倍数が大きい「素数ゼミ」だけが生き残っていったのです。


今年2016年は、オハイオ州やペンシルバニア州などで17年ゼミが大発生しました。その数は、数十億匹!! 2004年にニューヨーク付近で大発生した素数ゼは、次は17年後の2021年といわれています。アメリカの気象予報にはぜひ、「今年のセミ予報」がほしいところですね。

昨日17日のtenki.jpサプリに続き、2日にわたって素数ゼミについてお伝えしました。このように素数ゼミが生き残ってきた過程を見ていくと、「いかに子孫を多く残すか」をテーマとした生物の「進化」について、少しずつ解き明かされていくように思えます。一人の日本の“昆虫少年”が素数ゼミの謎を解き明かし、今もまた研究を続けています。次はどんな生物の秘密を解き明かしてくれるのでしょうね。


参考サイト:日立 オープン ミドルウェア レポート ウェブ「数理的発想⑥〈セミとモンシロチョウが教えてくれた進化の真実・吉村仁〉」

参考文献(1):17年と13年だけ大発生? 素数ゼミの秘密に迫る,吉村仁,2008,サイエンスアイ・新書

参考文献(2):素数ゼミの謎、吉村仁,2005,文藝春秋



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13年か17年で大発生するセミ:謎を日本の研究者らが分析|WIRED.jp

http://wired.jp/2009/05/25/13年か17年で大発生するセミ:謎を日本の研究者ら/

13年か17年で大発生するセミ:謎を日本の研究者らが分析

周期ゼミ(素数ゼミ)は寿命が奇妙なほど正確で、きっかり13年または17年だけ生きる。このセミの生物時計がこれほどまでに正確な理由を説明するモデルを、静岡大の研究者たちが提示している。


Lizzie Buchen

cicadas

周期ゼミ(素数ゼミ)は世界で最も長生きする昆虫の1つだが、寿命が奇妙なほど正確である理由は誰も知らない。周期ゼミはきっかり13年または17年だけ生きる。このセミの生物時計がこれほどまでに正確な理由を説明するモデルを、日本の研究者たちが提示している。

周期ゼミは、13年または17年の一生の99%を、地中で幼虫のまま、木の根から養分を吸って過ごす。特定の年の夏がくると、周期ゼミの幼虫はいっせいに地面から這い出す。1本の木の根もとから、数日間に最大4万匹もの幼虫が出てくることがある。

彼らが地中で過ごす期間が興味深いのは、13年または17年という長い時間を正確に計っているだけでなく、13も17も素数――それ自身と1以外では割り切れない数――だからだ。

生活周期が比較的大きな素数になっているのは、13年ゼミと17年ゼミの交雑する可能性が最小限になるからだという説が有力だ。たとえば、これが5と7という小さな素数だったとしたら、35年に一度、成虫になる時期が一致する。生活周期が長くても、たとえば12と16のように素数でない数だった場合、12年ゼミと16年ゼミが交雑する可能性は48年ごとに出てくる。13と17のように大きな素数なら、両者が交雑する機会は221年に一度しかめぐってこない。

数学的にはその通りだと思えるが、なぜセミが交雑の可能性を最小限にする必要があるのかは分からない。そこで静岡大学の吉村仁教授は、根本的理由を探るために数学モデルを開発した。13年ゼミと17年ゼミが交雑した場合、生活周期が中程度の長さ――たとえば15年――の子孫が生じるかもしれない、と吉村教授は考えた。その場合、仲間の大多数が成虫になる年より2年早く、あるいは2年遅れて、地中から這い出すことになる。

周期ゼミは大量に発生することを生存のための武器としているため、このような時期のずれは問題だと、吉村教授と共同で研究を行なっているJohn Cooley氏は言う。セミは捕まえるのが容易で、噛みついたり刺したりすることもないため、捕食者の餌食にされやすい。しかし、何万匹というセミがいっせいに出現した場合、特定の個体が捕食される危険性はゼロに近くなる。

吉村教授のモデルは、交雑がもたらすこのようなマイナスの影響から、素数に基づく生活周期を説明できることを示している。このモデルでは、すべての可能な生活周期から出発するが、13年周期と17年周期が維持されるようになるのは、密度に依存する効果が要因に含まれている場合に限られる。この研究は5月18日付けの『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)で発表された。

一方、この説明は合理的だが別の可能性もある、とバンダービルト大学のGlenn Webb教授(数学)は言う。「セミの発生は、捕食者の生活周期との一致を最小限にするようになっている、というのがわれわれの仮説だ。鳥や小動物といった捕食者の生活周期は2年から5年だ」

Webb教授はもう1つの仮説にも言及した。生活周期が素数になっているのは偶然で、まったく意味はない、というものだ。

Cooley氏は、今回のモデルにはいくつかの仮定が含まれていることを認めている。セミを研究するのはなかなか難しく、生態や進化について多くの謎が残されているからだ。たとえば、交雑によって本当に中間的な生活周期を持つ子孫が生まれるかどうかは分かっていない。また、現在は13年ゼミと17年ゼミの生息地は重なっておらず、今のところ交雑が生じる可能性はない。ただし、最初に分化して以来、それぞれの分布はおそらく変化しているはずだ。

「このことは、セミの個体密度が低くなったときにどんな問題が起きるかを理解する助けになり、今回の考え方がどの程度確からしいかを知る手がかりになる。この問題が明確に数学的な扱いを受けるのは今回が初めてだ」と、Cooley氏は述べた。

[周期ゼミは、セミのうちMagicicada属に属する複数の種の総称で、米国東部に分布する。17年蝉と13年蝉の他に、化石種として12年蝉、14年蝉、15年蝉、16年蝉、18年蝉が発見されている。周期的発生および素数年発生の適応的意義を最初に指摘したのは1966年のLloyd and Dybas。吉村教授の著作に『17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る!』(ソフトバンククリエイティブ刊)がある]

参考論文: “Allee effect in the selection for prime-numbered cycles in periodical cicadas” by Yumi Tanaka, Jin Yoshimura, Chris Simon, John R. Cooley, and Kei-ichi Tainaka. PNAS, May 18 2009.

[以下は、米国イリノイ州パークリッジで、17年ゼミが地上に出現した時の動画]

[日本語版:ガリレオ-福岡洋一]

WIRED NEWS 原文(English)

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