金曜日, 1月 04, 2019

ゲーテ 印税方式

 リサーチという経験のデザイン 小野滋
 目標のデザイン(Becker, DeGroot, & Marshak, 1966)
例) ゲーテの印税 (1797年)
ゲーテは叙事詩「ヘルマンとドロテア」の印税について、出版社に次のように提案した 
• ゲーテは要求額を記した書類を封印し、弁護士に渡す 
• 出版社はゲーテに、いくら支払う気があるかを提案する 
• もしそれが要求額より低かったら、ゲーテは書類を取戻し、交渉を中止する
 • もしそれが要求額より高かったら、(提案額ではなく)要求額で取引する出版社にとっては、真の評価額を表明するのが最適 (=インセンティブ整合的)実際には、弁護士が出版社に要求額を漏らしてしまい、出版社は要求額を提案した

(川越,2010)

マーケット・デザイン オークションとマッチングの経済学 (講談社選書メチエ) 単行本(ソフトカバー) – 2015/2/11
川越 敏司 (著)
kindleあり


株式会社インサイト・ファクトリー リサーチという経験のデザイン 第53回消費者行動研究コンファレンス (2016/11/12-13)シンポジウム「2020年の消費者行動研究を考える-変容を迫られる消費者行動研究-」【Web公開版】 小野滋ono@insightfactory.jp Page 2 自己紹介 2 認知心理学を学び、大学講師、教育サービス企業、外資系リサーチ会社を経て現職エビデンスに基づき、マーケティング意思決定を支援しますただいまスタッフ9名 マーケティング・リサーチ業界 弊社の所在地 このへん Page 3 本日の内容 3 マーケティング・リサーチの文脈における、消費者調査手法の開発に関して、私たちの取り組みをご紹介します Page 4 目次 4 I. 背景II. 調査手法への伝統的アプローチIII. 私たちの取り組み ~ 目標・他者・状況~IV. リサーチという経験のデザイン Page 5 5 I. 背景 Page 6 6 消費者 マーケティング意思決定行動データ ソーシャルリスニング消費者調査データ integration 私たちの専門領域 消費者調査手法の開発 Page 7 7 消費者 マーケティング意思決定行動データ ソーシャルリスニング消費者調査データ integration 消費者調査手法の開発 消費者調査手法の開発に取り組んでいます Page 8 なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか? 8 … なぜ、いまさら? Page 9 なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか? 9 消費者調査の価値は低下している マーケティング・リサーチビッグ・データソーシャル・メディア Google Trendでみた検索量 Page 10 なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか? 10 消費者調査の価値は低下している あらゆる問題を解決する方法があると信じるのをやめないといけない。特にサーヴェイ・リサーチがそれだと信じるのを。私達は方法に対して懐疑的でなければならない。[ソーシャルメディアなどの]双方向的エンゲージメントによって、世界中の人と相互作用できるようになったと感じる人がますます増えている。構造化されたリサーチに関わりたいと思う人はますます減っている。[...]企業になにか伝えたいことがあるとき、その方法はいまやたくさんある。リサーチャーは、[リサーチの]プロセスや妥当化の細かい点に焦点を置きすぎている。まるで方法をイデオロギーのように扱っている。Joan Lewis (global consumer and market knowledge officer, Procter & Gamble) http://adage.com/article/news/p-g-surveys-fade-consumers-reach-brands-social-media/149509/ Page 11 なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか? 11 消費者調査の価値はなぜ低下したのか? マーケティング意思決定 消費者理解の方法が多様化している消費者調査は差別化された価値を提供していない 消費者消費者 消費者調査 消費者調査 マーケティング意思決定 Page 12 消費者調査だけが提供できるインプリケーションは? 調査手法の新開発 消費者 消費者調査 マーケティング意思決定 12 なぜ、消費者調査手法の開発に取り組んでいるのか? Page 13 13 本日の焦点 調査手法 本日の焦点 調査対象者 調査方式 Page 14 14 II. 調査手法への伝統的アプローチ Page 15 どんな調査票にも目標が3つある。第一に、必要な情報を、調査対象者が答えることができるような、また、答えようとするような一連の特定な質問に表現(翻訳)しなければならない。[...]第二に、[...] 調査対象者の疲労、倦怠、未完了、無回答を最小限に抑えるよう懸命に努力しなればならない。[...]第三に、調査票による回答誤差を最小限に抑えなければならない。[...]質問文は、対象者が容易にかつ正しく理解できるかどうか、うまく答えられるかどうかを念頭において、対象者と向かい合って話している気持で考える。[…]a. 必要な内容が抜けないようにするb. 質問文はできるだけ短くするc. やさしい用語を使うd. 定義がはっきりしない用語をさけるe. 不明確なきき方をしない […] 15 マルホトラ (2006)後藤 (1996) 調査票作成に際しての伝統的アドバイス Page 16 16 回答行動の伝統的概念化導管メタファ• 私たちのコミュニケーション観を広く支配する概念枠組み (Reddy, 1979)• 「言語は思考の導管である」回答行動についての伝統的概念化は、導管メタファに依拠している(Houtkoop-Steenstra, 2000) 情報質問意図 バイアス源バイアス源バイアス源がないかぎり、調査主体から調査参加者に、質問意図が正しく伝達されるバイアス源がないかぎり、調査参加者から調査主体に、答えとなる情報が正しく伝達される Page 17 17 CASMアプローチ ● Cognitive Aspects of Survey Methodology● 80~90年代、米の調査法研究者たちによって提唱されたアプローチ● 回答行動の背後にある認知過程の分析を通じて、調査の改善を目指す (例, Sirken, et al. 1999) ● 主な焦点は調査票の改善 にあった● 導管メタファに依拠する概念化の下で、バイアスが生じるメカニズムを解明 質問の意味の把握関連する情報を記憶から検索判断・評価反応Tourangeauの4段階モデル(Willis, 2005)調査票の認知インタビュー 回答行動への認知的アプローチ Page 18 18 回答行動への5つの視点 目標処理資源 作業記憶長期記憶注意… 外的状況情報集約 対人目標外的・内的報酬…想起推論選択 … Page 19 19 伝統的アプローチの特徴 目標処理資源外的状況情報集約 本人の態度・意見・選好に焦点を当てる暗黙に、いくつかの対人目標を想定:{“Credible”; “True to the Self”; “Impressive“}(Kuncel, Borneman & Kiger, 2012)容易であることを重視関心ある行動と類似した形式であることを重視回答行動に影響しないことを重視対象者間の独立性を重視。回答の分布に注目 Page 20 20 III. 私たちの取り組み ~目標・他者・状況~ Page 21 本日ご紹介する内容 21 BDMメカニズムアイデア・バルーン *ベイジアン自白剤 * 目標のデザイン シチズン・フォーキャスティング集合知テスト *アイデア・エボリューション *予測市場・アイデア市場 * 他者のデザイン 身体に訊くブランド選好 *リサーチ・イン・アクション * 状況のデザイン * 弊社開発事例を含む Page 22 目標のデザイン 22 BDMメカニズムアイデア・バルーンベイジアン自白剤 


目標のデザイン Page 23 23 
例) ゲーテの印税 (1797年)
ゲーテは叙事詩「ヘルマンとドロテア」の印税について、出版社に次のように提案した 
• ゲーテは要求額を記した書類を封印し、弁護士に渡す 
• 出版社はゲーテに、いくら支払う気があるかを提案する 
• もしそれが要求額より低かったら、ゲーテは書類を取戻し、交渉を中止する
 • もしそれが要求額より高かったら、(提案額ではなく)要求額で取引する出版社にとっては、真の評価額を表明するのが最適 (=インセンティブ整合的)実際には、弁護士が出版社に要求額を漏らしてしまい、出版社は要求額を提案した

(川越,2010) 目標のデザイン(Becker, DeGroot, & Marshak, 1966)