日曜日, 3月 03, 2019

HERBERT GINTIS ギンタス

NAMs出版プロジェクト: サミュエル・ボウルズ
                   ( 経済学リンク::::::::::
NAMs出版プロジェクト: Thorstein Veblen, 1857-1929.
http://nam-students.blogspot.jp/2016/03/thorstein-veblen-1857-1929.html
NAMs出版プロジェクト: 宇沢弘文(1928~2014):メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2016/03/blog-post_10.html
NAMs出版プロジェクト: コースの定理 Coase's theorem
http://nam-students.blogspot.jp/2016/07/coase-theorem.html
 エリノア・オストロム Elinor Ostrom 1933-2012(コモンズ関連)1990
http://nam-students.blogspot.jp/2016/12/elinor-ostrom-1933-2012.html
NAMs出版プロジェクト: サミュエル・ボウルズ
梶谷懐『中国経済講義』(中公新書) 2018/9 #6
複数均衡

NAMs出版プロジェクト: 3か4か?(タルコット・パーソンズ体系)
http://nam-students.blogspot.jp/2010/09/blog-post_7474.html

タルコット・パーソンズ[1959]の影響があるらしい
(石川経夫『所得と富』186)

Parsons Talcott - The School Class as a Social System Some of Its Functions in American Society, Harvard. Educational Review, 29, Pp. 297-318. 1959
of-Its-Functions-in-American-Society-Harvard-Educational-Review-29-Pp-297-318-1959


ギンタスシンポジウムより
http://jafeeosaka.web.fc2.com/pdf/D1-1shiozawa2.pdf

行動諸科学の統一という標語を掲げ、合理的主体モデルとゲーム理論をその5つの主要な概念単位の2つとする以上、期待効用最大化とゲーム理論において、確率概念を用いていることについて、それが有効となる状況、それを用いることが危険である(あるいは疑わしい)状況について、適切な言及があってしかるべきである。しかし、ギンタス(2011)には、そうした注意に当るものは、ほとんど見当たらない。逆に、確率概念により、あたかも効用最大化定式による合理的主体モデル(あるいはBPCモデル)が普遍的に正当化できるかに議論を展開している。 確率概念を用いた意思決定問題は、ギンタス(2011)では、最初に1.5「ベイズ的合理性と主観的事前分布」で現れる。客観的な確率分布を基礎にするかぎり、意思決定問題の分析に用いるには、ほとんど致命的というべき困難がある(事象集合とその上の確率分布を知ることがほとんど不可能である)。そのため、期待効用理論で用いられるのが主観確率であることを示す意味では、この導入はまちがっていはいない。しかし、期待値の定義(ギンタス, 2011, p.16)から、期待効用の原理をみちびくという展開は、2重の意味で問題がある。 ひとつは、期待効用そのものの概念に関するものである。期待効用は、その定義から明らかなように選択すべき基底の状態(純粋戦略)については任意の効用水準が設定できるものの、それら諸事象の確率的結合(混合戦略)については、結合に関する加法性が前提されている。この事実(加法性)は、より広い文脈で必要であることも知られている。ギンタス(2011)でいえば、それは定理1.4に当る。しかし、混合戦略の集合上の効用関数を考えるとき、それが結合に関し加法的である必要はまったくない。アレの逆説やプロスペクト理論は、この点に関係している17。ギンタス(2011)は、1.5 節の直後にアレの逆説やプロスペクト理論について触れるものの、期待効用理論の妥当性に関しては「ひとたび適切なパラメータ...を選好関数に組み込んでやれば、上記の例が矛盾した結果をもたらさないことが明らかになっている」としている(ギンタス, 2011, p.34)。 もうひとつは、ギンタスの議論にちょくせつ関係する。ギンタスは、1.5 節で、Savage(1954)の結果を紹介している。それは個人が諸事象の集合(「くじの集合」と表現されている。)に一貫した選好をもつかぎり、確率空間には確率関数pと状態集合には選好uが存在し、諸事象の間の選好関係は期待効用E(u, p)により表現されるという定理である(定理1.3,  ギンタス, 2011, p.21)。この紹介は、第1章の他の個所ではほんど結果の紹介に終わっているのに対し、(証明はないものの)ほぼ3ページにわたって前提とされる公理などを詳細に紹介している点できわだっている。ギンタスは、この定理にいたく感心したらしく、ギンタス(2011)の本文以外でも、言及している。パーソンズの『社会的行為の構造』に関する書評の中で、「各個人が「信念」と解釈できる「事前分布」」をもっていると想定することが可能になった。」としてSavage(1954)を引用している(ギンタス, 2011, p.217)。しかし、定理のこの解釈は、妥当なものとはいえない。 サべッジ(Savage, 1954)がこのような定理に取り組んだ背景には、多くの意思決定状況において確率分布を知ることかできないという問題があった。そこで、アブラハム・ワルトなどは、確率を前提としない意思決定問題にも取り組んでいた。脚注×に触れたように、このワルトは、非負価格の存在問題がオーストリア(当時のオーストリー・ハンガリー帝国)で問題になった初期に、レマクとともに活躍したワルトである18。アブラハム・ワルトは、アメリカに移住したのち、確率論をもちいた意思決定問題に取り組んでいた。その代表的著作がWald(1950)である。しかし、ワルトは、この本の出版直後に飛行機事故で奥さんとともにエジプトでなくなった。Savage(1951)は、Wald(1950)に関するかなり辛口の書評を書いているが、校正段階で訃報が飛びこみ、この死去により、この方面の学問の進歩ははるかに遅くなったと書いている。これはかならずしも弔辞の上での賛辞ではなく、ワルトの死後、確率を前提としない不確実状況の意思決定論はほとんど消滅してしまった。 サべッジの定理は、確率論を前提にする意思決定論にどのていどの普遍性があるかどうかを検討するという問題意識のもとに得られた成果である。しかし、サビッジの定理がギンタス(2011)が理解するように、不確実性と危険にかかわるナイト以来の問題が個人の信念と解釈できるようになり、期待効用理論が人間の意思決定問題として普遍的な位置を獲得したとはとうていいえない。 サべッジの定理は、選好の一貫性が大前提であるが、人間が多くの事態において、このような一貫性(整合性)をもてるかどうかについては、前節で示したようにきわめて疑わしい。期待効用理論に基づく意思決定が妥当性をもつのは、個人の主観確率が比較的妥当性をもてる範囲に限定される。これはとうぜんの注意であるが、そのような注意がギンタス(2011)には見られない。ギンタス本人はともかく、このような行論は、ギンタス(2011)によって行動科学に本格的に入門しようとする後進たちを誤った展望をもたせてしまう。


WARE_bluefield (@WARE_bluefield)
この鍵RTは伝ちゃん先生とみた!
因みに、ハーバート・ギンタスも、「経済学で使われてるゲーム理論は方法論的個人主義なので全部アウト」とか似たようなこと言ってるんだよな…。
twitter.com/awtjvyjz/statu…
https://twitter.com/ware_bluefield/status/1224393484817158146?s=21

  • ハーバート・ギンタス(成田悠輔他訳) 『ゲーム理論による社会科学の統合』 NTT出版〈叢書制度を考える〉、2011年。ISBN 978-4-7571-2240-6

ゲーム理論による社会科学の統合 (叢書 制度を考える) (日本語) 単行本 – 2011/7/14

ゲーム理論による社会科学の統合

ハーバート・ギンタス 著
成田悠輔/小川一仁/川越敏司/佐々木俊一郎 訳
発売日:2011.07.14
定価:6,160円
サイズ:A5判
ISBNコード:978-4-7571-2240-6
品切れ

【 叢書《制度を考える》】  

ゲーム理論を中心にして、実験社会科学・進化理論・認知科学などの最新研究を縦横無尽に駆使して、〈知の巨人〉ギンタスによる社会科学の統合をめざす壮大なプロジェクトが始まった。 著者が投稿したアマゾン・レヴュー付き。

1 意思決定理論と人間行動
2 ゲーム理論:基礎概念
3 ゲーム理論と人間行動
4 合理化可能性と合理性に関する共有知識
5 展開形における合理化可能性
6 混合問題:純粋化と予想
7 ベイズ的合理性と社会認識論
8 共有知識とナッシュ均衡
9 反射的推論と均衡精緻化
10 人間の社会性に関する分析
11 私的所有権の進化論
12 行動科学の統合に向けて

【著者】
ハーバート・ギンタス
1940年生まれ。社会科学・行動科学の諸分野を横断する研究者。中央ヨーロッパ大学(ハンガリー)教授・サンタフェ研究所(米国)外部教授。
著書に『協力する種:人間の互恵性とその進化』『進化するゲーム理論』『アメリカ資本主義と学校教育:教育改革と経済制度の矛盾』など。Nature,Scienceをはじめとする学術誌に多くの論文を出版。過去40年以上にわたる複数の新しい研究分野の立ち上げへの関与で知られる。


【訳者】
小川一仁(関西大学准教授)
川越敏司(はこだて未来大学准教授)
佐々木俊一郎(名古屋商科大学講師)
成田悠輔(Massachusetts工科大学大学院・東京大学大学院大学院生)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%

ハーバート・ギンタス




ハーバート・ギンタスHerbert Gintis1940年 - )は、アメリカ合衆国経済学者中央ヨーロッパ大学教授兼サンタフェ研究所外部教授[3]。経済学以外にも自然科学[† 1]生物学[† 2]進化理論[† 3]教育学[† 4]社会学[† 5]政治学[† 6]哲学[† 7]神経・神経科学[† 8]を始めとする多数の分野の国際学術誌に研究論文が掲載されており、特にラディカル経済学、遺伝と文化の共進化の理論、生物経済学などの創設に貢献した[5]

来歴




ハーバート・ギンタスは、1961年米国ペンシルベニア大学で学士号を、ハーバード大学で修士号を受けた数学専攻の学生であったが、その後経済学専攻に転じ、1969年にハーバード大学で経済学の博士号を取得した[3]。学位取得後は数年間ハーバード大学経済学部で助教授および准教授を勤めた後に1975年マサチューセッツ大学に移籍した[3]。さらに2002年にはハンガリー中央ヨーロッパ大学に移籍し、2011年現在には米国サンタフェ研究所外部教授を兼任している[3]

著作




  • "Inequality: A reassessment of the effect of family and schooling in America", with Christopher Jencks, et al. (Basic Books,1972) .
  • "Democracy and capitalism: Property, theory, and the contradictions of modern social theory",with Samuel Bowles (Basic Books, 1986).
  • "Democracy and markets: participation, accountability, and efficiency", with Samuel Bowles and Bo Gustafsson (eds.) (Cambridge University Press,1993).
  • "Macroeconomic policy after the conservative era: Research on investment, savings, and finance", with Gerald Epstein (eds.) (Cambridge University Press, 1995).
  • "Game theory evolving" (Princeton University Press, 2000).
  • "Foundations of human sociality: Ethnography and experiments in fifteen small-scale societies", with Joe Henrich, Robert Boyd, Samuel Bowles, Colin Camerer and Ernst Fehr (Oxford University Press, 2004).
  • "Unequal chances: Family background and economic success",with Samuel Bowles and Melissa Osborne (Princeton University Press, 2005)
  • "Moral sentiments band material interests: On the foundations of cooperation in economic life", with Samuel Bowles, Robert Boyd, and Ernst Fehr (MIT Press, 2005).

脚注




注釈

  1.  NatureScienceProceedings of the Natural Academy of Science等が挙げられる[5]
  2.  Journal of Theoretical BiologyTheoretical Population Biology等が挙げられる[5]
  3.  Evolution and Human BehaviorEvolutionary PsychologyJournal of Bioeconomics等が挙げられる[5]
  4.  Harvard Educational ReviewSociology of Education等が挙げられる[5]
  5.  Annual Review of SociologyCritical SociologyRationality and Sociology等が挙げられる[5]
  6.  American Political Science ReviewPolitics and Society等が挙げられる[5]
  7.  Philosophy and Public Affairs等が挙げられる[5]
  8.  Behavioral and Brain ScienceJournal of Consciousness等が挙げられる[5]

出典

  1.  ギンタス 2011, pp. 410-411, 「訳者あとがき」.
  2.  ギンタス 2011, 「訳者あとがき」.
  3. a b c d e ギンタス 2011, p. 409, 「訳者あとがき」.
  4. a b ギンタス 2011, p. 411, 「訳者あとがき」.
  5. a b c d e f g h i ギンタス 2011, pp. 409-410, 「訳者あとがき」.

引用文献




  • ハーバート・ギンタス(成田悠輔他訳) 『ゲーム理論による社会科学の統合』 NTT出版〈叢書制度を考える〉、2011年。ISBN 978-4-7571-2240-6







Education, Technology, and the Characteristics of Worker Productivity

(Adobe PDF)
 

www.umass.edu/preferen/gintis/Gintis%20AER%201971.pdf
By HERBERT GINTIS. Harvard University ... economics of education in particular, and neo-classical ...

ただし上にはパーソンズの名はない


石川は以下も参照
1977 Edwards






Personal Traits and "Success" in Schooling and Work - SAGE Journals

(Adobe PDF)

journals.sagepub.com/doi/pdf/10.../001316447703700114
RICHARD C. EDWARDS. University of Massachusetts ... 1977, 37, 125-138. WITH the publication of ... sequence, research on the relation between personal traits and per- formance has necessarily ...





Bowls, Samuel+Gintis, Herbert

サミュエル・ボウルズ+ハーバート・ギンタス



■プロフィール
 サミュエル・ボウルズ(Bowls, Samuel 1939~)
 ハーバート・ギンタス(Gintis, Herbert 1940~)

■主な論文、著作
 (小内透著『再生産論を読む』の「ボールズ=ギンティスを紹介・検討している論文・著作」などを参考にまとめた)

◆1971, Bowles, S. “Unequal education and the reproduction of the social division of labor”, Review of Radical Political Economics, 3(4). In Richard, C. & Edwards, R. et al.1972, The Capitalist System (Englewood Cliffs, N.J., Prentice-Hall). In Karabel, J. & Halsey, A.H.(eds.) 1977, Power and Ideology in Education (New York, Oxford University Press).
 =早川操訳「教育の不平等と社会的分業の再生産」
  (カラベル=ハルゼー、潮木守一・天野郁夫・藤田英典編訳 1980 『教育と社会変動(上)』東京大学出版会)

「対応理論の形成過程において、出発点ともいうべき位置を占めているのが、ボールズの「教育の不平等と社会的分業の再生産」(1971年)である。なぜな ら、この論文は、対応理論(correspondence principle)という概念を用いていないにもかかわらず、後に展開される対応理論の中心的な論点の多くをすでに提示しているからであり、対応理論の 最も基本的な問題意識を素朴な形で表現しているからである。」(小内透著『再生産論を読む』p.117)

◆1972~1973, Gintis, H. & Bowles, S. ”IQ in the U.S. class structure” , Social Policy, November-December and January-February. In Karabel, J. & Halsey, A.H.(eds.) 1977, Power and Ideology in Education (New York, Oxford University Press).
 =「アメリカ階級構造におけるIQ」
  (青木昌彦編著 1973 『ラディカル・エコノミックス』中央公論社)

◇最初の共同論文
◇はじめて「対応原理」という概念とその考え方が提示される

「本論文は、IQ(知能指数)は経済的成功にとって基本的に重要である、という一般的信念にたいして統計的な反駁を加えている。そして、地位獲得、もしく は地位伝達は、むしろ家庭生活と学校教育とによって生み出される非認識的人格特性パターンにもとづいて行われ、IQは、かかる階層化メカニズムの副産物で あり、その機能は、ヒエラルキー的生産システムの正統化にあることが論ぜられる。」(青木昌彦編著『ラディカル・エコノミックス』p.220)

◆1976, Gintis, H. & Bowles, S. “Schooling in Capitalist America : Education Reform and the Contradictions of Economic Life” (New York, Basic Books).
 =宇沢弘文訳 1986 『アメリカ資本主義と学校教育 Ⅰ』岩波現代選書
  宇沢弘文訳 1987 『アメリカ資本主義と学校教育 Ⅱ』岩波現代選書

◆1980, Gintis, H. & Bowles, S. “Contradictions and reproduction in educational theory”, in Barton, L. ,Meighan, R. & Walker, S.(eds.), Schooling Ideology and Curriculum(Lewes, The Falmer Press). In Dale, R. et al.(eds.)1981,Education and State, Volume 1: Schooling and the National Interest (Lewes, The Falmer Press). In Cole, M. (ed.) 1988, Bowles and Gintis Revisited (Philadelphia, The Falmer Press).

「『アメリカ資本主義と学校教育』において確立した対応理論は、たしかに「機能主義的」な性格を免れないものであった。したがって、この点に対応理論に対 する批判が集中した。この点に関しては、ボールズとギンティス自身認めざるを得なかった。事実、彼らは「教育理論における矛盾と再生産」(1980年)に おいて、われわれの本の弱点……は、発達した資本主義の体系的な矛盾の不適切な取扱いに起因している」と自己批判している。」(小内透著『再生産論を読 む』p.144)

◆1983,1984,1985, Bowles, S., Gordon, D.M., and Weisskopf, T.E. “Beyond The Waste Land : A Democratic Alternative to Economic Decline”(Garden City, N.J., Anchor Press/Doubleday).
 =都留康・磯谷明徳訳 1986 『アメリカ衰退の経済学―スタグフレーションの解剖と克服』東洋経済新報

「本書は、現代アメリカの直面する経済的困難の原因を、アメリカ経済を支える広範な社会的・制度的構造にまで遡ってみごとにえぐり出し、さらに現在の危機 の根本的打開策を提示した快作である。本書は、もともとアメリカのラディカル・エコノミストの組織であるURPE〔ラディカル政治経済学連合〕での長期に 及ぶ基礎研究にもとづき、また進歩的労働組合の連合組織「進歩派同盟」の求めに応じて執筆された。この成立事情が端的に物語っているように、本書の特色 は、保守派の跳梁に抗しリベラル派の退潮に代わるべく、アメリカ経済の現状を独自に分析し、これにもとづいて経済再生のための対案を提唱したところにあ る。」(都留康による「訳者解説」よりp.261)

◆1986, Bowles, S. & Gintis, H. ”Democracy and Capitalism : Property, Community and the Contradictions of Modern Social Thought” (New York, Basic Books).

「「経済の再編成という問題にたいして表明されるこうした躊躇は見当違いであるとわれわれは考える。進歩的な経済的要求をめぐる運動が、今やアメリカの進 歩派と社会主義者にとって主要な優先事項と好機を意味している。」
 いいかえれば、彼らの経済再編のプログラムは、この時点では直接社会主義的とはいえないが、それにもかかわらず、やがて社会主義建設に結びつくものであ り、その意味で社会変革の一つの過程に他ならないということである。
 こうした考え方は、一九八六年に出された『民主主義と資本主義』の中で、「民主主義的社会主義」という表現が避けられ、「ポスト自由民主主義」 (postliberal democracy)という概念が用いられるようになっている点にも現れている。」(小内透著『再生産論を読む』p.149~150)

◆1998, Erik OlinWright(ed.), Bowles, S. & Gintis, H., ”Recasting Egalitarianism: New Rules for Communities, States and Markets” (Verso).
 =遠山弘徳訳 2002 『平等主義の政治経済学 市場・国家・コミュニティのための新たなルール』大村書店

「現実的ユートピア・プロジェクトの一環である本書は、イデオロギー的領域に足を踏み入れる。サミュエル・ボールズとハーバート・ギンタスは彼らじしんが 「効率的再配分」と呼ぶものを求めている。彼らの刺激的な案の中では、諸制度が適切に設計されるならば、市場は実際に左派のある一定の中核的価値―とりわ け平等の達成―を高めることができ、それと同時にさまざまな効率性の形態を維持する(そしておそらく高めることもある)、と主張されている。そのような 「市場、国家およびコミュニティのための新たなルール」によって、彼らは、左派の成果を、右派によって伝統的に擁護されてきた諸制度の中に組み込むことが できると主張する。」(エリック・オリン・ライトによる「序論」よりp.11)


■ボウルズ=ギンタスの関するメモ

・宇沢弘文:『アメリカ資本主義と学校教育』「訳者序文」、『日本の教育を考える』(岩波書店)「第五章 ボウルズ=ギンタスの対応理論」(p.56~)
・橋本健二 1999 『現代日本の階級構造 理論・方法・計量分析』東信堂、「第8章 教育と階級構造 ―2つの再生産過程―」(p.212~)
・マーティン・カーノイ 1984→1992『国家と政治理論』御茶の水書房
・都留康 1983,1984,1985→1986 『アメリカ衰退の経済学 スタグフレーションの解剖と克服』東洋経済新報社、「訳者解説」
・黒崎勲 1989 『教育と不平等 現代アメリカ教育制度研究』新曜社

◆宇沢弘文
『アメリカ資本主義と学校教育』(1976=1986、岩波書店)の訳者。「教育と社会体制-デューイ、ヴェブレン、ボウルズ=ギンタス」(1990、 『岩波講座 転換期における人間・別巻・教育の課題』岩波書店、所収)、『日本の教育を考える』(1998、岩波書店)でも二人について触れている(だい たい同じようなことが書かれている。統計の解説は前者のほうが詳しい)。

◇『アメリカ資本主義と学校教育』「訳者序文」
・「二人のすぐれた経済学者の手になるこの書物の基本的視点は、アメリカの教育制度が、アメリカ資本主義の社会的生産関係と資本蓄積、再生産の過程を反映 したものであって、経済制度の矛盾がそのまま教育制度の矛盾となって現れているというものである。」(B)

・「もともと、正統派の経済学、とくに新古典派経済学を学んだが、一九六〇年代から七〇年代にかけての激動期を通じて、その基本的視座に対して、根元的な 懐疑を抱くようになり、マルクス経済学の概念的枠組みにつよく傾斜し、ラジカル・エコノミックスという新しい経済学の考え方を定式化し、発展させてきた人 々である。」(C)

・サミュエル・ボウルズの父は、「リベラル・エスタブリッシュメントの総帥」チェスター・ボウルズ(デヴィッド・ハルバーシタム『ザ・ベスト・アンド・ ザ・ブライテスト』参照)

◇「教育と社会体制-デューイ、ヴェブレン、ボウルズ=ギンタス」
・1966年アメリカ教育省による大規模な調査
→1968年「コールマン報告」=「1960年代におこなわれた、教育の不平等を是正するためにおこなわれた財政的な再分配政策が、意図された結果を生み 出さなかったということを説得的に示した」

→1972年ジェンクスら『不平等-アメリカにおける家族と学校教育の効果に関する再評価』

→アーサー・ジェンセン、リチャード・ハーンシュタイン
 「IQ」論=「経済的、社会的不平等は、遺伝学的に決まってくるIQ格差にもとづくもので、この、遺伝学的特性は学校教育によって変えることはできな い」

→ボウルズ=ネルソンによる「IQ」批判=「経済的成功の度合いが平均して、親から子供に伝えられるという傾向は、親から受けついだIQ指数とはほぼ完全 に無関係となる」

◇『日本の教育を考える』「第五章 ボウルズ=ギンタスの対応理論」(p.56~)
『アメリカ資本主義と学校教育』
・ヴェトナム戦争を契機として惹き起こされたアメリカの学校教育制度の激変をくわしく分析して、新しい学校教育制度のあり方を模索しようとした (p.56~57)
・ここで展開した考え方が後に「対応理論」と呼ばれるようになる(p.57)
・デューイのリベラリズム的な教育理念に修正が加えられる
・専門技術=能力主義の考え方(新古典派経済学)批判
・IQ指数批判(ボウルズ=ネルソン)

・(リバラル派の教育理論にもとづく教育制度の改革が失敗続きだった)「そのもっとも主要な原因は、社会統合、平等化、人格的発達という学校教育の機能 が、法人資本主義という経済的、社会的体制のもとでは整合的なかたちで働くことができないことにあるというのが、ボウルズ=ギンタスの主張するところだっ たのです。」(p.64)

・「教育制度は、経済の社会的関係との対応を通じて、経済的不平等を再生産し、人格的発達を歪めるという役割を果たしている」(『アメリカ資本主義と学校 教育』第Ⅰ巻、86ページからの引用)

・「抑圧、個人の無力化、所得の不平等、機会の不平等は歴史的にみて、教育制度に起因するものではないし、不平等で、抑圧的な今日の学校から生みだされた ものではない。抑圧と不平等の起源は、資本主義経済の構造と機能のなかにある。この点に、社会主義の国々をも含めて現代の経済体制を特徴づけるものがあっ て、人々が経済的生活の管理に参加することを不可能にしている。」(同87~88ページからの引用)


◆橋本健二 1999 『現代日本の階級構造 理論・方法・計量分析』東信堂
第8章 教育と階級構造 ―2つの再生産過程―(p.212~)
1.教育と階級構造―2つの課題
(1)「再生産」という問題設定
1970年代から80年代=教育と階級構造の関係が解明されるべき中心的な問題となる
フランス・Pierre Bourdieu Weberの身分集団概念にかなり近い
イギリス・Basil Bernstein、Paul Willis 英国の社会科学の伝統を受け継いでいる
アメリカ・Samuel Bowles、Herbert Gintis マルクス主義的な階級概念を使用

 階級構造の再生産=不安定かつ自己破壊的な諸要素の存在にもかかわらず、階級構造がその基本的な性格を維持すること
 再生産論の3つの知的起源
 ①上部構造の機能を重視し、これに正当な理論的位置を与えることによってマルクス主義社会理論の再生をもたらした西欧マルクス主義
 ②教育と社会構造の関連について実証的な知見を蓄積してきた教育機会の不平等研究
 ③1960年代に多くの先進資本主義国を揺るがせた世界的な学生叛乱

(2)BowlesとGintisの再生産理論
・彼らによると、米国において学校教育は、①労働者の生産能力を向上させる、②階級関係を非政治化し搾取のための社会的・政治的・経済的条件を永続化す る、という2つの役割を果たしている
・「対応原理」=学校や家族の中の社会関係は生産現場の社会関係を映し出している
・学校教育は外見上、公平かつ業績主義的に、卒業生たちをそれぞれの経済的位置へと割り当てるメカニズムを提供している。このことが人々の間に、経済的成 功は客観的に測定される技術的・認知的能力によって決まるのだという信念を育て、その結果として経済的不平等が正統化される、というのである。

(3)「階級構造の再生産」という概念
・階級構造の再生産(=階級構造そのものの再生産)と諸階級の世代的再生産(=階級所属が世代から世代へ継承されること)の混同
・両者の関係を①概念上の関係、②現実の再生産過程における相互関係の2面から見る
 階級構造の再生産×諸階級の世代的再生産=固定的再生産(前近代の身分社会)
 階級構造の再生産×諸階級の世代的非再生産=流動的再生産(業績原理のみの状態)
 階級構造の非再生産×諸階級の世代的再生産=集合的社会移動(日本の農地改革前後)
 階級構造の非再生産×諸階級の世代的非再生産=全面的再構造化

・Bowles=GintisやBourdieuの想定したのは、固定的再生産
・学校は出身階級と到達階級を一致させ、かつそれを正統化する機能を持つが、出身階級と到達階級の一致度が低いほど、経済的不平等の正統化はされやすくな る、という両義的関係にある。
・諸階級の世代的再生産は階級構造の再生産のための必須の条件ではない。

以上より、階級研究で教育を取り上げる意義は次の2点である
①諸階級はそれぞれ、異なる仕方で教育と関係しているが、諸階級がどの程度まで世代的に再生産されているかは、経験的に確かめられるべき問題である。
②教育は階級構造の再生産に貢献する。

2.教育と社会諸階級―教育機会の階級差と教育による階級決定
(1)教育機会の階級差とその変動
・後期中等教育、高等教育とも、戦後に学齢期に達したコーホートに関しては教育機会の格差が一貫して縮小してきたわけであり、ここに学制改革と教育の大衆 化の効果を認めることができよう。
・しかし、1995年SSM調査データによると、「進学高校」や「エリート大学」へ進学する機会については、資本家階級出身者が以前ほど有利ではなくなっ てきているとみられるものの、全体として格差縮小への一貫した傾向は見られない。

(2)学歴と階級所属の対応関係の推移
(3)新規学卒者の階級所属の推移
(4)教育による諸階級の世代的再生産
・教育は確かに、教育機会格差を通じて諸階級の世代的再生産メカニズムを提供しているといえるが、それが世代的再生産過程全体に占める比重は、4分の1程 度である。

3.教育による階級構造の再生産
(1)資本主義社会の再生産過程
・資本主義社会が、人員・資源の不断の消耗・補充にもかかわらずその基本的な性格を維持しているとき、資本主義社会は再生産されたという。階級構造とは、 市民社会の成員が、資本主義的生産様式によって構成される階級的諸位置へと編成された状態をいう。この意味で階級構造の再生産条件は、資本主義社会の再生 産条件に等しい。
・資本主義社会の再生産とは、そこに内在するこうした非再生産的な諸傾向を排除し、潜在化させる動的な過程である。
・経済危機と階級闘争という資本主義社会に内在的な二重の自己破壊的傾向は、①資本主義的生産様式そのものの自己再生産的メカニズムによって、②国家に よって、③市民社会によって排除あるいは潜在化される。

(2)再生産過程における学校教育の位置
・学校は、市民社会と市場経済を媒介するものとして、国家によって組織された制度なのである。

(3)高度成長期の国家と学校教育
 A.フォード主義的蓄積体制と福祉-介入主義国家
 B.福祉-介入主義国家と学校教育
 ・トヨタ主義
 ・日本の学校の組織や管理方式は、こうした経営システムと驚くほど似ている
 ・大量消費的生活様式の定着にも影響(教科書、標準語、新しい耐久消費財の購入)
 ・労働力の再生産コストを低減させた(親の解放、階級間移動や地域間移動の促進)
 ・階級的な不平等を正統化し非政治化する主要な制度であった
 ・1960年代の「人的資本理論」=教育への投資が社会的にも、諸個人にも有効な投資である=不平等の当然視
 ・学歴が低いほど、学歴に対する信頼もしくは信仰が強い
 ・高等教育レベルの学歴を持つものは、学歴主義批判や学歴無意味論の比率が高い
 ↓
 ・労働者階級の場合には、学歴は実力を示すものだとする意識が強く、そこから学歴によって異なる処遇を受ける現実を正当なものとみなし、相対的に不利な 自らの位置をも正当なものとして受け入れる傾向が生じている。
 ・新中間階級の場合には、学歴は本人の実力を示すものではないし、現実に本人の処遇を決める要因にもなっていないと考える傾向が比較的強く、ここから相 対的に有利な立場にある自分の地位を、学歴とは無関係な自分の実力や努力によるものとして受け入れ、不公平の存在を否定する傾向が生じているようである。

(4)資本主義国家の危機と学校教育
 A.福祉-介入主義国家の危機と再編
 ・国家による蓄積と正統化の内在的矛盾
 国家によって私的資本の蓄積が促進されると、より大きな相対的過剰人口が生まれ、それによってより大きな正統化需要が発生するが、蓄積機能と正統化機能 は同一の国家財政によって賄われるから、正統化機能の強化は蓄積機能のための財源からの控除を必要とする。
 ・国家が担いきれなくなった過大な要求を縮小すること、社会システムの問題解決能力を向上させること
 ↓
 新自由主義
 ①国家がこれまで引き受けてきた諸課題の一部を、市場システムに移譲すること
  新自由主義は、自由主義と権威主義を併せ持つ
 ②福祉への支出を削減し、労働力の再生産の責任を再び市民社会に負わせること
  伝統的な規範や道徳、国家主義イデオロギーの強調、都市コミュニティの再編

 B.学校教育の危機
 ・学校教育は財政規模の拡大に対してその蓄積機能を次第に低下させ、そのことは正統化機能をも侵食していった
  =過剰教育→大卒・短大卒者のプロレタリア化(1990年代)
 過剰教育は、現代の教育の矛盾の集中的な表現である(Carnoy & Lewin[1985])

 C.「過剰教育」の現実とその効果

(5)21世紀社会の階級構造と教育政策
 A.新自由主義と高等教育政策
 ・日本の高等教育システムの計画モデルから市場モデルへの移行
  1991年=大学設置基準の大綱化
  1998年=大学審議会答申「競争的環境の中で個性が輝く大学」
 ・一般的にいえば、「自由化」による市場メカニズムの導入は、高等教育に対する財政支出の削減を可能にするとともに、その蓄積機能と正統化機能の矛盾を 部分的に解決する効果を持つだろう
 ・高等教育の非政治化

 B.階級構造の変化と学校教育の構造転換
 ・技術革新とオフィスの合理化を受けて、新中間階級の内部構成は専門技術職中心へとシフトを続けていくことになろう
 ・それにあわせて、大学も「総合領域型」「専門体系型」「目的履修型」の3種類へと種別化する可能性が高い
 ・学校歴の持つ意味は今まで以上に大きくなる
 ・全体として学歴水準が上昇するが、高等教育の費用負担は下がりそうにないので、低所得者層は今まで以上にない不利な状態におかれることになるだろう
 ・また受験競争も高校受験から大学受験に重点をシフトさせながら、より多くの若者を巻き込んで展開されることになるだろう

 C.平等のための教育-社会政策
 ・日本の教育機会は依然として不平等であり、諸階級の世代的再生産の傾向を生んでいるのにもかかわらず、平等批判をする言説がはびこっている
 ・アファーマティブ・アクションか、総合的な経済・社会政策が必要
 ・生産手段そのほかの生産資産の再配分か、所得の再配分か=経済民主主義の実現


◆マーティン・カーノイ 1984→1992 『国家と政治理論』御茶の水書房
 ・西側工業経済の経済危機とそれに対するレーガン主義・サッチャー主義などの保守的回答、第三世界における経済危機と南米諸国での権威主義的軍事体制か ら民主主義への移行、という時代背景のもと、グラムシやプーランザスらの国家論を理解・分析した本
 ・日本語版において触れられている4つの新研究の1つとして、ボールズ=ギンタス『資本主義と民主主義』(1986)が挙げられている。

 そのポイントは(Cページ「矛盾的国家」より)
 ・「国家への民衆的圧力を増大させるために、経済と市民社会の内部における他の権力諸関係の場においても闘争すること」「国家を「民主主義的形態と民主 主義的統制が拡大し深化するように」変形すること」という国家論の戦略-理論アプローチの3つの主題のうちの2つを発展させるものである
 ・民主主義と資本主義を先天的に対立するものだと見ている
 ・民主主義は、資本主義国家の統制を変化させたり、資本主義経済における政治闘争を行ったりするときの土台でなければならないと考えている
 ・家族と教育を再生産の決定的要素として分析し、一方で国家および経済の外部における闘争の、主要な「場」として扱う。また家父長制の概念も導入してい る

第八章 最近のアメリカ政治理論における階級と国家
階級闘争と国家(p.333)
「国家とその諸政策を形成する際の社会諸闘争の役割を強調する見解」の「最良の例」の1つとしてボールズ=ギンタス(1982)が挙げられている
・ボールズ=ギンタスは、国家は、資本主義的諸関係だけによって設定される蓄積過程への介入の有効なエージェントでも、社会構成における凝集の一要素、つ まり(カステルとオコンナーによって論じられているように)社会的生産諸関係の再生産のために主に機能する道具でもない、ということを示唆している。 (p.339~)

・自由民主主義国家の介入と資本蓄積の諸条件との矛盾(矛盾を孕んだ全体性)=自由民主主義国家は「蓄積過程をまったく根本的に変えてしまう」 (1982,52)社会闘争の分節化なのである→スタグフレーションの原因=国家は、解決の手段であるとともに問題の一部でもある。

・資本主義的生産においては政治参加(相対的権力)は所有だけに左右されるのに対して、自由民主主義国家は、市民と所有者の双方に権利を与える。

・ボールズ=ギンタスにとって、国家と資本主義的生産の場との際接合の主要な時期は、1930年代から1940年代初めにかけてであり、この時期の一連の 諸立法は、労働者と労働者、資本と資本、資本と労働者階級の関係を再定義した→資本主義的成長過程の減速

・30年代から40年代にかけて結ばれた資本―労働協定は、失業予備軍を労働者の規律化や賃金引き下げの手段として利用する資本の可能性を変化させた、と 論じている。




◆都留康「訳者解説」(1983,1984,1985→1986『アメリカ衰退の経済学 スタグフレーションの解剖と克服』東洋経済新報社)

・本書は、現代アメリカの直面する経済的困難の原因を、アメリカ経済を支える広範な社会的・制度的構造にまで遡ってみごとにえぐり出し、さらに現在の危機 の根本的打開策を提示した快作である。
・第1章:アメリカ経済の現状が「ゼロ・サム経済」ではなくて「たるみのある経済」である

・第2章:経済衰退の開始が、通説のいうように1970年代ではなく、それに先立つ1960年代中期であって、ここを分水嶺として戦後期がブームと経済衰 退に分かれる

・第3章:経済衰退についての諸説、例えばもっとも有力な資本不足説、が批判される

・第4章:通説が見逃した社会的・制度的要因に注目した著者たちに独自の分析を提示している
「戦後コーポレート・システム」(①世界市場でのアメリカ企業の支配力を保障する「パックス・アメリカーナ」、②大企業と産業別労働組合の間の労働平和を 保障する「資本と労働の暗黙の合意」、③企業活動を阻害しない方向での政府政策の形成を保証する「資本と市民の合意」などの制度)の内部分解

・第5章:この経済衰退に対してとられた1970年代の合衆国政府による政策措置の帰結がスタグフレーションという解明がなされる

・第6章:生産性上昇率の持続的低下、いわゆる「生産性のパズル」が、制度的要因を重視する著者たちの分析によって、定量的にほぼ完全に説明される

・第7章:「戦後コーポレート・システム」の存続を前提したうえで上のような政策措置がとられた結果、1980年に発生せざるをえなかった経済的浪費 (「たるみ」)の規模が推計される。

・エピローグ:1980年代に深刻化するスタグフレーションに対して発動されたレーガノミクスが、理論的には資本不足説の誤りを基礎にもち、現実的には大 量失業を代償として文化上昇率を低下させているに過ぎず、スタグフレーションの趨勢それ自体を逆転させるのには失敗だったと判定される。


◆黒崎勲 1989 『教育と不平等 現代アメリカ教育制度研究』新曜社 ・新しい教育制度への関心=ボールズの言葉(p.2~) 階級構造と下位文化
・ボールズとギンタスは、この対応理論を旧来のマルクス主義の理解を統計的手法によって実証する、近年とくにアメリカ合衆国において発達してきた研究の成 果と位置づけている。
・もともとボールズとギンタスの研究は、教育の機会均等論に決定的な一石を投じたとされる、公民権法に基づく1966年の教育機会均等調査の再分析の作業 に係わるものであり、そこから派生することになった一連のアメリカ社会における不平等問題についての研究の中に位置するものであった。

*批判
・彼らの主張する階級下位文化の仮説が、そしてまた、階層化の要因としてのパーソナリティ特性の強調が、認識能力の客観性と社会的有用性それ自体の否定に まで至るのであれば、それは支持されるべきではないだろう。
・教育制度論の観点から見れば、その理論構成が教育制度を社会的分業からの規制に対して受動的に把握するに留まり、教育制度独自の意義、役割を導き出すこ とに十分な考慮をはらっていないことを最大の問題点として指摘するべきであろう。
・バーンシュタインの議論は、ボールズとギンタスのそれとは違って、教育の可能性という問題を軸として、教育制度の独自の役割を導きだそうとするもので あった。

バーバラスとシャーマンの教育の機会均等原則に対する批判の類型化(6つのうちの3つ)
・教育の機会均等原則は教育が達成でき、かつ達成すべきものと共通に信じられているものとは一致しないような不平等な結果を許容しているとする批判
・対応理論
・教育の機会均等原則は能力主義的なものであるがゆえに批判されるべきである

・支配階級の政策の中にディレンマを見出し、このディレンマとかかわって常に被支配者階級の利益の拡大のために具体的な行動を行おうとするところにアップ ルの議論の真髄があり、それがアップルとボールズおよびギンタスの理論を分けているように思われる。


*作成:橋口 昌治
UP:20051005 REV:

WHO  ◇平等/不平等/格差