ハロッドの理論では投資はもはや一定ではなく 、前期所得を所与として今期所得の増加関数となる 。そして 、投資と貯蓄を均等させるような均衡所得水準が存在するためには、固定的な平均貯蓄性向を前提とする限り 、今度は総需要関数が四五度線を左下から右上方向に横切らねばならず 、均衡の安定性は失われてしまう 。つまり 、いま計画所得が均衡所得よりも大き過ぎる場合 、それが加速度原理を通じてより大きな誘発投資需要を喚起するために 、全体としての総需要は総供給を上回ってしまう 。
…ハロッドは 、 「現実の成長率 」は 「保証成長率 」からいったん乖離するとますますこれから遠ざかる傾向を持つ 、という命題を提示した 。現実の成長経路が 「保証成長率 」の経路の上に巧く乗っている間は良いが 、一歩足を踏み外すと 、上下両サイドの奈落に突入するという意味で 、これは 「ナイフ ・エッジ 」と称される 。しかし 、これは 「定理 」と呼ばれるほどに確立された命題とはいい難い 。実際 、四〇年代から五〇年代にかけて 、この 「定理 」の是非をめぐり 、多くの論争が交わされた 。
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