カレツキ(Kalecki):「投資と資本家消費が利潤と国民所得を決定する」という命題
カレツキ:「投資と資本家消費が利潤と国民所得を決定する」という命題 1935
http://nam-students.blogspot.jp/2012/01/blog-post_17.html(本頁)
以下、根井雅弘『経済学の教養』(20-1頁,2006年より)
【コラム3】利潤決定の命題
単純化のために、政府の経済活動と外国貿易が存在しない「封鎖経済」を考えてみまし
ょう。カレツキは、表の左側に国民所得勘定を、右側に国民生産物(支出)勘定を置いて
対照させます。すなわち、左側には、利潤(資本家の所得)十賃金(労働者の所得)=国民
所得を、右側には、投資十資本家の消費十労働者の消費=国民生産物、を書き込みます。
ここで、労働者はその所得をすべて消費する(賃金=労働者の消費)という仮定を置くと、
あとに残されたものの関係から、利潤P=投資I十資本家の消費Cという式が出てきます。
これがカレツキの利潤決定の命題ですが、彼は、この式を右辺が左辺を決定する(資本家
の投資および消費に関する決意が利潤を決定する)というように解釈します。ところが、資本
家の消費は利潤の関数(C=B0+λP, Bは基礎的消費部分で常数、0<λ<1)なので、これを
前の式に代人すると、P=(B0+I)/(1−λ )という式が得られます。さらに、賃金分配率
W−Y(Wは賃金所得、Yは国民所得を表わす)をα(0<α<1)とおくと、利潤分配率は(1−α)
なので、これをさらに代入すると、次の式が得られます。
(B0+I)
Y=______
(1−λ )(1−α)
ここで、.I/(1−λ )(1−α)がカレツキの「乗数」に当たります。
カレツキは、利潤決定の命題を、マルクスの再生産表式をヒントに次のように導き出し
ました。まず、経済を三つの部門(投資財を生産する第1部門、資本家の消費財を生産する第
II部門、労働者の消費財を生産する第III部門)に分けて考えましょう。各部門の生産物の価
値が、不変資本c、可変資本v、および剰余価値mの和に等しいことはマルクス経済学の
ABCですが(以下では、各部門のc、v、mを表わすために下に数字を添えます)、カレツキ
は労働者はその所得(v1+v2+v3)をすべて消費する(c3+v3+m3)仮定しているので、
v1+v2=c3+m3という関係が得られます。この関係を利用すると、粗利潤c+mの総計
(m1+m2+m3+c1+c2+c3)は、第I部門と第II部門の生産物の価値の合計
(c1+v1+m1+c2+v2+m2)に等しくなります。すなわち、P=I+Cと同じ命題が得られるのです。
0585 名無しさん@お腹いっぱい。 2016/11/14 01:41:15
以下、『現代イギリス経済学の群像―正統から異端へ』1989/4/27 根井雅弘
224-5頁より
彼[マルクス]はマルクスの再生産表式をどのように自らの理論に取り入れたのだろうか。ここでは それ
を簡単に説明しておきたいと思う。
まず、経済をカレツキ的に、投資財を生産する第I部門、資本家の消費財
を生産する第II部門、そして賃金財を生産する第III部門の三つに分割しよう。
各部門の産出の価値Vは、利潤Pと賃金Wの和に等しいから、
Vi=Pi+Wi (i =1,2,3) (1)
第III部門の資本家は、産出の価値のうちのW3にあたるものをその部門内
の労働者へ、残りのP3にあたるものを第I・II部門の労働者へ販売すると考えら
れるから、
P3=W1+W2 (2)
ここで、第I部門と第II部門の産出の価値を合計すると、
V1+V2=P1+P2+W1+W2 (3)
を得るのだが、(2)式を(3)式に代入すると、次式が得られるのだが
ただちにわかるだろう。
V1+V2=P1+P2+P3 (4)
(4)式は、経済全体の利潤が、投資財の価値と資本家の消費財の価値
の和に等しいことを示している。こうして、本文で述べたような、P=I十CCと
いうカレツキの命題が得られるわけである。
Cf.,Josef Poschl and Gareth Locksley, Michal Kalecki : A Comprehensive Challenge to orthodoxy,
in J. R.Shackleton and Gareth Locksley eds.,Twelve Contemporary Economists,1981,p.157.
所得 支出
資本家の所得(P) 投資(I)
資本家の消費(CC)
労働者の所得(W) 労働者の消費(CW)
労働者はその所得をすべて消費する(すなわち、W=CW)
と仮定されているから、
P=I十CC
資本家は、利潤を決定することは出来ないがゆえに、この式は、I十CCがPを
決定することを示している。
両辺からCCを減じると、
S=I
I(投資)がS(貯蓄)を決定する。しかも、S=Iは利子率から独立している。
(同188-9頁より、一部改変)
カレツキの再生産表式は、マルクスの再生産表式の価値部分のみを表現しているもので、
現物部分の存在を無視している。
Michal Kalecki
The Marxian equations of reproduction and modern economics 1968
https://doi.org/10.1177%2F053901846800700609 有料
(「利潤の決定要因」1933,1954内の記述を後に再度詳述したもの)
『資本主義経済の動態理論』M・カレツキ 日本経済新聞評論社 1984年 訳 浅田統一郎 間宮 陽介 「利潤の決定要因」(1933.1954)内81頁でカレツキ自身がマルクス再生産表式からの有効需要の原理の導出を、要約している。
第7章 利潤の決定要因
いまや、次のように結論することができるであろう。すなわち, ある短期間内の実質粗利潤は,在庫量の予期せざる変化による修正を受けつつ、消費と
投資に関する過去に形成された資本家の決意によって決定されるのである。
以上で考察した問題を理解するために, いままで述べたことを若干異なった
視角から示しておくことは有益である。マルクスの「再生産表式」(schemes of
reproduction) に従って, 経済全体を3つの部門に細分割するものとしよう。 第
1部門は投資財生産部門であり, 第2部門は資本家用消費財生産部門であり,
第3部門は労働者用消費財生産部門である。第3部門の資本家は, 自らの部門
の労働者に賃金に相当する額の消費財を売った後になお, 自らの部門の利潤に
等しい額の余剰消費財を手元に残すであろう。 これらの財は第1部門と第2部
門の労働者に売られるであろうが, 労働者は貯蓄をしないから, それは彼らの
所得に等しいであろう。 かくして, 総利潤は, 第1部門の利潤, 第2部門の利
潤およびこれら2つの部門の賃金の合計に等しいであろう。 あるいは, 総利潤
はこれら2つの部門の生産物価値に, 換言すれば, 投資財と資本家用消費財の
生産物価値に等しいであろう。
もしすべての部門で利潤と賃金の間の分配が与えられているならば, 第1部
門と第2部門の生産が第3部門の生産をも決定するであろう。 第3部門の生産
水準は,その生産によって得られる利潤が第1部門と第2部門の賃金に等しく
なる点にまで拡張されるであろう。 あるいは, 別の言い方をすれば, 第3部門
の雇用量と生産量は, この部門の生産量から同一部門の労働者が賃金で購入す
る部分を差し引いた残余が第1部門と第2部門の賃金に等しくなる点まで拡張
されるであろう。
上述の議論は,利潤理論における「分配要因」, すなわち(独占度のような)所
得分配を決定する要因の役割を明らかにする。利潤が資本家の消費と投資によ
って決定されるものとすれば, 「分配要因」によって決定されるのは, (ここで
は労働者の消費に等しい) 労働者の所得である。 このようにして, 資本家の消
費と投資は「分配要因」と共同して労働者の消費を決定し, その結果国民産出
量と雇用を決定する。 国民産出量は, 「分配要因」 に従ってそのうちから切り
出される利潤が資本家の消費と投資に等しくなる点まで拡張されるであろう。1)
1) 上述の議論は, 供給が弾力的であるという第I部で設けられた仮定に基づいている。
しかしながら, もし労働者用消費財の産出量水準が設備の完全稼動水準に達し
ているならば,資本家が消費や投資をいくら増加させても, たんに労働者用消費財
の価格上昇を引き起こすだけであろう。 そのような場合には, 第3部門の利潤を
高くなった第1部門と第2部門の賃金に等しくなる点にまで増加させるのは, 労働
者用消費財価格の上昇である。 賃金総額が上昇する一方で消費財供給量が変化しな
いという事実を反映して, 実質賃金率は下落するであろう。
http://nam-students.blogspot.jp/2015/10/michal-kalecki.html
無為=レッセフェール
http://nam-students.blogspot.jp/2014/04/laissez-fair.html?m=0
IS-LM分析、有効需要の理論がマルクス再生産表式から導出され得ることは、ケインズ以前にカレツキが証明している。
__所 得 支 出
利潤(資本家の所得) 投 資
+資本家の消費
+賃金(労働者の所得) +労働者の消費
=国民所得 =国民生産物
以下、カレツキの「投資と資本家消費(右)が利潤と国民所得(左)を決定する」という命題を詳しく見てみる。
「消費財産業の蓄積=投資財産業の消費支出」
(マルクス再生産表式における部門間均衡式、C2+M2c=V1+M1v+M1k)。
これ(マルクスの基本的な『交換方程式』)は、カレツキ的には、
P3=W1+W2
となる。
(参照:栗田康之『資本主義経済の動態』26、110、116頁。カレツキ「利潤の決定要因」1935年初稿)
1 Ⅰ=P1+W1 P(総利潤)、W(総賃金)、Ⅰ(投資)
2 Ck=P2+W2 Ck(資本家消費)、Cw(労働者消費)
3 Cw=P3+W3 P=P1+P2+P3
W=W1+W2+W3
さらに
Y=P+W
=Ⅰ+Ck+Cw・・・① Y(国民所得)
______ ______
| _____|________ | ____ |
|| | _____ | || ||
||利潤P1 |+| 賃金W1||=||投資I || 投資財生産部門1 I
|| | |/I=w1|| || || 分配率W1/I=w1
|| | |(分配率)|| || ||
|| | | || ||資本家 ||
||利潤P2 |+| 賃金W2||=||消費Ck|| 消費手段生産部門2 Ck
|| | |/Ck=w2| || || 分配率W2/Ck=w2
|| | |(分配率)|| || ||
|| ③ |_____|| || ||
||_____|/_______| ||____||
| / | / |
| ②| | / | P3=W1+W2・・・②
| ___/ | |/労働者 | P1+P2+P3=P1+W1+P2+W2・・・③
||利潤P3||+ 賃金W3 =/ 消費Cw | 賃金財生産部門3 Cw
||____|| /Cw=w3 /| | 分配率W3/Cw=w3
| | (分配率) / | |
|______| / |______|
/ |
④ | P=I+Ck・・・④
/ |
/ |
/ ⑦
/ |
_______/_______ ___|__
| ____ / |①| |
||総利潤P| + 総賃金W |=| 国民所得Y|
||____| | | |
|_______________| |______|
(各部門の分配率W1/I、W2/Ck、W3/Cwをそれぞれw1、w2w3とする)
②は、(1-w3)Cw=w1Ⅰ+w2Ck・・・⑤ となる。
Cw=(w1Ⅰ+w2Ck)/(1-w3)・・・⑥
⑥を①に代入して
Y=Ⅰ+Ck+(w1Ⅰ+w2Ck)/(1-w3)・・・⑦
国民所得=投資+Ck(資本家消費)+Cw(労働者消費)
④式と⑦式により、「投資と資本家消費が、利潤と国民所得を決定する」
という命題が導かれたようだ。
参照:
http://byoubyou.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_b710.html
http://blogs.yahoo.co.jp/f196ip7d/17928011.html
http://byoubyou.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/post_b710.html
カレツキの再生産表式は、マルクスの再生産表式の価値部分のみを表現しているもので、 現物部分の存在を無視している。資本家の利潤は、資本家個人の消費に回る分と再投資さ れる分(蓄積)に分かれるが、それに賃金財生産部門を独立した部門としているのが、カレツキ の独創的なところである。
根井雅弘『「ケインズ革命」の群像』145頁〜
栗田康之『資本主義経済の動態』105頁〜
カレツキ『資本主義の動態理論』79頁〜
以下、
カレツキ「国民所得の経済表」(tableau economique of the national income)
("The Marxian equations of reproduction and modern economics"「マルクスの再生産の方程式と近代経済学」1968,1991未邦訳より)
___________
| 1 2 3| |
|________|__|
|P1 P2 P3| P|
|W1 W2 W3| W|
|________|__|
|I Ck Cw| Y|
|________|__|
あるいは、
___________
| 1| 2| 3| |
|__|__|__|__|
|P1|P2|P3| P|
|W1|W2|W3| W|
|__|__|__|__|
|I |Ck|Cw| Y|
|__|__|__|__|
P1、P2、P3・・・粗利潤
W1、W2、W3・・・賃金
(栗田康之『資本主義経済の動態』116頁、参照)

http://www.deepdyve.com/lp/sage/the-marxian-equations-of-reproduction-and-modern-economics-42VMtJ8FgO
以下新書になりますが…
『わかる現代経済学』根井 雅弘【編著】朝日新書 2007
『「ケインズ革命」の群像』根井 雅弘【著】中公新書 1991(2000年第4版が電子書籍化)
両書にあるカレツキ関連の記述が貴重。上の方が初心者向け
下はKoboなどで電子書籍版がある。kindle版はない
章題にカレツキの名がないのであまり知られていない
「一般理論」同時発見? 奇妙な訪問者
根井『「ケインズ革命」…』中公新書147~8頁
《…カレツキは、ケインズとは対照的に、マーシャルやピグーに代表
のされる正統派経済学との対決を意識する必要は当初からなかったのである。その証拠に、カレツ
キは、前に説明した利潤決定に関する命題(P=I+C)を、カール・マルクスの再生産表式を利
用することによっていとも簡単に導き出した。
いま、経済体系を投資財を生産する第1部門、資本家の消費財を生産する第2部門、および賃
金財を生産する第3部門の三つに分割しよう(*p.154)。
各部門の産出量の価値Vは、利潤Pと賃金Wの和に等しい。すなわち、
Vi=Pi+Wi (i=1,2,3)
第3部門の産出量は、一部はそれを生産した労働者によって消費され、残りは他の部門におけ
る労働者によって消費されるから、
P3=W1+W2 (5)
が成り立つ。
ここで、第1部門と第2部門の産出量の価値を合計すると、
V 1 + V2=P 1+ P2+ W 1+ W2 (6)
となるが、(5)式を(6)式に代入すると、ただちに次の式が得られる。
V 1+ V2=P 1+ P2 + P3 (7)
(7)式は、経済全体の利潤が、投資財の産出量の価値と資本家の消費財の産出量の価値の和に等
しいことを示している。利潤決定に関する命題は、こうして得られるわけである。》
*
Shackelton and Gareth
Twelve Contemporary Economists 1981
エクセルのスプレッドシートみたいになっている。
___________________________________
参考、マルクス:再生産表式
p1 追加的不変資本M1c
_産業利潤_追加的可変資本M1v
_____ | 個人的消費M1k
|第1部門 | P|_利子z__単利__|
|機械と原料| 利潤| 複利 |
|_____| /|_地代r__差額地代|
/ 絶対地代|
不変資本C 可変資本V 剰余価値M 生産物W |
_____\____ / |
/ \ / |
____ / 労賃\ / _産業利潤→ |
|第2部門| / \/ | | |
|生活手段| / /\ 利潤_|_利子→__| |
|____ / 労賃→_/__\ / | | |
/ / / \\ |_地代→__| |
/ / / /\\ | |
不変資本 可変資本/ 剰余価値 生産物______/_/
/ /
____ / /
|第3部門| / /
|総生産物| / /
|____|/ /
____/ _______/__
不変資本 可変資本 剰余価値 生産物
単純再生産の場合、1(V+M)=2(c)
拡大再生産の場合、1(V+Mv+Mk)=2(c+Mc) 『資本論』第2巻21章参照
再掲:カレツキ経済表の図解
______ ______
| _____|________ | ____ |
|| | _____ | || ||
||利潤P1 |+| 賃金W1||=||投資I ||
|| | |/I=w1|| || ||
|| | |(分配率)|| || ||
|| | | || ||資本家 ||
||利潤P2 |+| 賃金W2||=/|消費Ck||
|| | |/Ck=w2|/|| ||
|| | |(分配率)|/ || ||
|| ③ |_____/| || ||
||_____|/_____/_| ||____||
| / / | |
| ②| / (⑤)|(⑥) |
| ___/ | / | 労働者 |
||利潤P3||+ /賃金W3 =| 消費Cw |
||____|| //Cw=w3 | |
| |/ (分配率) | |
|______/ |______|
/ |
④ ⑦
___/___________ ___|__
| _/___ |①| |
||総利潤P |+ 総賃金W |=| 国民所得Y|
||_____| | | |
|_______________| |______|
カレツキ「国民所得の経済表」(tableau economique of the national income)
("The Marxian equations of reproduction and modern economics"「マルクスの再生産の方程式と近代経済学」1968,1991未邦訳より)
___________
| 1 2 3| |
|________|__|
|P1 P2 P3| P|
|W1 W2 W3| W|
|________|__|
|I Ck Cw| Y|
|________|__|
___________________________________
つまり、
以下のような、減価マネーを導入した際の(IS-LM分析における)利子率と通貨量の関係はマルクス再生産表式からも説明できる。
利|
子|
率|I M
| \ /
| \/
| /\
|L / \ S
|
0|____________
国民所得
||
\/
マイナス利子(減価マネー)
利|
子|
率|I M
|__\__/______
0 \/ 国民所得
/\
L / \ S
||
\/
利|
子|
率|I M
| \ / /
| \/ ー\ /
| /\ ー/ /
| / \ /
| \ /
0|__\__/_\__/_
\/ \/ 国民所得
/\ /\
L/ \S
Iは投資Investmentのイニシャル
Sは貯蓄Savingsのイニシャル
LがLiquidity流動性
MがMoney
利子率決定に関する「貸付資金」(“loanable funds”)モデル
利
子
率I S
\ /
\/
/\
/ \
0
貯蓄S
投資I
追記:
以前も書いたように、政府部門の存在しない閉鎖体系を考えることの弊害はマルクスにもケインズにもある。
カレツキは不完全競争を考えている時点で重要だが、ゲゼルはさらに解決策を与えている点でさらに重要だ。
クルーグマンはマイナス利子をネガティブにとらえている。確かに貯蓄が過剰な状況下で受動的な変数として利子率を考えるならそういうことになる。
http://d.hatena.ne.jp/Hicksian/20100818
「実際のところ、僕らは利子率がゼロ%の下で貯蓄が超過供給の兆候を見せつつある状況に置かれている。これこそが今現在僕らが直面している問題なんだ。」
だがこの利子率は銀行からの借り入れには適用されない。カレツキのいう部門1及び2と3との間には大きな断絶がありその関係は非対称である。
_______________
『資本主義経済の動態理論』M・カレツキ 日本経済新聞評論社 1984年
http://nam-students.blogspot.jp/2015/03/blog-post_12.html
http://nam-students.blogspot.jp/2015/03/blog-post_12.html
http://nam-students.blogspot.jp/2015/12/keynes-kalecki-correspondence-1937.html
以下、『現代イギリス経済学の群像―正統から異端へ』1989/4/27 根井雅弘
224-5頁より
* カレツキが、マルクスの再生産表式に関心を持って、マルクス研究に没頭した一時期があったことは、すでに本文でも述べたとおりである。では、彼はマルクスの再生産表式をどのように自らの理論に取り入れたのだろうか。ここでは それを簡単に説明しておきたいと思う。
まず、経済をカレツキ的に、投資財を生産する第I部門、資本家の消費財を生産する第II部門、そして賃金財を生産する第III部門の三つに分割しよう。
各部門の産出の価値Vは、利潤Pと賃金Wの和に等しいから、
Vi=Pi+Wi (i =1,2,3) (1)
第III部門の資本家は、産出の価値のうちのW3にあたるものをその部門内の労働者へ、残りのP3にあたるものを第I・II部門の労働者へ販売すると考えられるから、
P3=W1+W2 (2)
ここで、第I部門と第II部門の産出の価値を合計すると、
V1+V2=P1+P2+W1+W2 (3)
を得るのだが、(2)式を(3)式に代入すると、次式が得られるのだがただちにわかるだろう。
V1+V2=P1+P2+P3 (4)
(4)式は、経済全体の利潤が、投資財の価値と資本家の消費財の価値の和に等しいことを示している。こうして、本文で述べたような、P=I十CCというカレツキの命題が得られるわけである。
Cf.,Josef Poschl and Gareth Locksley, Michal Kalecki : A Comprehensive Challenge to orthodoxy,
in J. R.Shackleton and Gareth Locksley eds.,Twelve Contemporary Economists,1981,p.157.
所得 支出
資本家の所得(P) 投資(I)
資本家の消費(CC)
労働者の所得(W) 労働者の消費(CW)
労働者はその所得をすべて消費する(すなわち、W=CW)
と仮定されているから、
P=I十CC
資本家は、利潤を決定することは出来ないがゆえに、この式は、I十CCがPを決定することを示している。
両辺からCCを減じると、
S=I
(同188-9頁より)
http://www.abebooks.com/servlet/BookDetailsPL?bi=8370052739
Twelve Contemporary Economists J. R. Shackleton, Gareth Locksley Published by Palgrave Macmillan, 1981
下は、上記の根井イギリス1989より説明がこなれてきている。
以下、根井雅弘『経済学の教養』(20-1頁,2006年)より
【コラム3】利潤決定の命題
単純化のために、政府の経済活動と外国貿易が存在しない「封鎖経済」を考えてみまし
ょう。カレツキは、表の左側に国民所得勘定を、右側に国民生産物(支出)勘定を置いて
対照させます。すなわち、左側には、利潤(資本家の所得)十賃金(労働者の所得)=国民
所得を、右側には、投資十資本家の消費十労働者の消費=国民生産物、を書き込みます。
ここで、労働者はその所得をすべて消費する(賃金=労働者の消費)という仮定を置くと、
あとに残されたものの関係から、利潤P=投資I十資本家の消費Cという式が出てきます。
これがカレツキの利潤決定の命題ですが、彼は、この式を右辺が左辺を決定する(資本家
の投資および消費に関する決意が利潤を決定する)というように解釈します。ところが、資本
家の消費は利潤の関数(C=B0+λP, Bは基礎的消費部分で常数、0<λ<1)なので、これを
前の式に代人すると、P=(B0+I)/(1−λ )という式が得られます。さらに、賃金分配率
W−Y(Wは賃金所得、Yは国民所得を表わす)をα(0<α<1)とおくと、利潤分配率は(1−α)
なので、これをさらに代入すると、次の式が得られます。
(B0+I)
Y=______
(1−λ )(1−α)
ここで、1/(1−λ )(1−α)がカレツキの「乗数」に当たります。
カレツキは、利潤決定の命題を、マルクスの再生産表式をヒントに次のように導き出し
ました。まず、経済を三つの部門(投資財を生産する第1部門、資本家の消費財を生産する第
II部門、労働者の消費財を生産する第III部門)に分けて考えましょう。各部門の生産物の価
値が、不変資本c、可変資本v、および剰余価値mの和に等しいことはマルクス経済学の
ABCですが(以下では、各部門のc、v、mを表わすために下に数字を添えます)、カレツキ
は労働者はその所得(v1+v2+v3)をすべて消費する(c3+v3+m3)仮定しているので、
v1+v2=c3+m3という関係が得られます。この関係を利用すると、粗利潤c+mの総計
(m1+m2+m3+c1+c2+c3)は、第I部門と第II部門の生産物の価値の合計
(c1+v1+m1+c2+v2+m2)に等しくなります。すなわち、P=I+Cと同じ命題が得られるのです。
______________
<カレツキは、以上みた論文Kalecki[1968]☆の最後の部分において、マルクスの『資本論』第3巻、第15章のい
わゆる「剰余価値の実現」の問題を論じた一節「直接的搾取の諸条件と剰余価値の実現の諸条件とは同一で
はない。‥‥‥‥」を引用して、「マルクスは、明らかに、資本主義の動態に対する有効需要の影響を深く認
識していた」としつつも、「彼は、彼の再生産表式によって叙述されている過程を、有効需要の問題の帰結
として資本主義に内在する矛盾という観点から体系的に吟味することをしなかった」と、マルクスにおける
『資本論』第3巻の「剰余価値の実現」の問題=「有効需要の問題」と第2巻の再生産表式論との関連の未
展開を批判する。>
http://www.unotheory.org/news_II_8
栗田康之 :カレツキの資本主義経済論―マルクスおよび宇野理論との関連で―(PDF形式:563KB)
<直接的搾取の条件とその実現の条件とは同一ではない。それらは、時間的および場所的にばかりでなく、
概念的にも別のものである。前者は社会の生産力によってのみ制限され、後者は、相異なる生産部門間の比
率性により、また社会の消費力によって制限されている。だが、社会の消費力は、絶対的生産力によっても
絶対的消費力によっても規定されないで、敵対的な分配諸関係──これは社会の大衆の消費を、多かれ少な
かれ狭い限界内でのみ変動する最小限に縮小する──の基礎上での消費力によって規定されている。>
Ⅵ
That Marx was deeply conscious of the impact of effective demand
upon the dynamics of the capitalist system follows clearly from this passage
of the third volume of the Capital : "The conditions of direct exploitation
and those of the realisation of surplus-value are not identical. They
are separated not only by time and space but logically as well. The former
are limited merely by the productive capacity of the society, the latter by
the proportions of various branches of production and by consumer power
of the society ".
Kalecki:pp.78-9
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Michal Kalecki
The Marxian equations of reproduction and modern economics
Version of Record - Dec 1, 1968
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The Marxian equations of reproduction and modern economics *
MICHAL KALECKI
I
Before we start dealing with the proper subject of this paper we shall
modify somewhat the Marxian division of economy into departments in
order to simplify our argument and in order to focus on the basic problem
of the reproduction schemes.
First, instead of including producer goods in Department 1, we will ,
assume that it covers the total value of gross investment inclusive of
the respective raw materials. Thus this department represents the integrated
production of all final non-consumer products. (We disregard
in our argument as does Marx ー when he deals with reproduction schemes
ー both foreign trade and government revenue and expenditure.)
Second, we treat likewise the consumer goods, i.e., we include in the
department which covers their output the production of respective raw
materials from top to bottom. Moreover, fully in the Marxian spirit,
we distinguish the following two departments : Department 2 producing
consumer goods for capitalists and Department 3 producing wage goods.
We obtain thus the following " tableau économique" of the national ‘
income where Pi, P2, P3 are gross profits (before deduction of depreciation)
in the respective departments, WI, W2, W3 ー the respective wages; P and
W aggregate profits and wages, and finally I ー gross investment, C k ー capi-
talists’ consumption, Cw ー workers’ consumption and Y ー gross national
income (before deduction of depreciation).
* This article was presented as a background paper for the Symposium on the
influence of Karl Marx on contemporary scientific thought, Paris, May 8-10, 1968,
organized under the auspices of Unesco by the International Social Science Council
and the International Council for Philosophy and Humanistic Studies.
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ケインズのが難解でまた内容が整理されていない(当のケインズが理解していなかったとさえ言われるくらいだ)のに対し、本書は数式を使って意味と論法を明確にし、内容もまとまっている。
そういう意味では、ケインズよりも先に本書を読んだほうがいいかもしれない。
また、ケインズ本が難解で読めない、あるいは時間がないという人には、本書を読んでいただきたい。
第I部冒頭の「景気循環理論概説」(1933年)がケインズに先駆けて有効需要の理論を打ち立てたとされる画期的論文。
目次
序文
第 I 部
第1章 景気循環理論概説 3
第2章 外国貿易と「国内輸出」について 16
第3章 景気上昇のメカニズム 26
第4章 商品税,所得税および資本税の理論 34
第II部
第5章 費用と価恪 45
第6章 国民所得の分配 64
第7章 利潤の决定要因 79
第8章 国民所得の決定と消費の決定 94
第9章 企業者資本と投資 106
第10章 投資の決定要因 111
第11章 景気循環 125
第lll部
第12章 完全雇用の政治的側面 141
第13章 ツガン-パラノフスキーとローザ・ルクセンブルグにおける有効需要の問題 148
第14章 階級闘争と国民所得の分配 158
第15章 趨勢と景気循環 167
統計付録 186
訳註 195
カレツキからポスト・ケインジアンへのマクロ分配理論の系譜
--訳者解説に代えて-- 209
索引 227
アマゾンレビューより:
ケインズより先に有効需要の原理を見つけた男
投稿者 θ トップ1000レビュアー 投稿日 2008/3/31
有効需要の原理といえば誰もがケインズを思い浮かべるだろう。
だが、ケインズよりはやく有効需要の原理を見つけたのが、このカレツキなのだ。
ケインズの主著『雇用、利子および貨幣の一般理論』と比べてみて、本書は簡潔で明晰である。
ケインズのが難解でまた内容が整理されていない(当のケインズが理解していなかったとさえ言われるくらいだ)のに対し、本書は数式を使って意味と論法を明確にし、内容もまとまっている。
そういう意味では、ケインズよりも先に本書を読んだほうがいいかもしれない。
また、ケインズ本が難解で読めない、あるいは時間がないという人には、本書を読んでいただきたい。
本書は、前半が利潤、所得、投資といった内容で、ケインズと重複するところが多い。
後半は、経済変動の循環の話であり、これもまた興味深い。
最後に目次を記しておく
第1部 独占度と所得の分配
費用と価格@☆
国民所得の分配@
第2部 利潤の決定と国民所得の決定
利潤の決定要因@
利潤と投資
国民所得の決定と消費の決定
第3部 利子率
短期利子率
長期利子率
第4部 投資の決定
企業者資本と投資@
投資の決定要因@
統計的説明
第5部 景気循環
景気循環(のメカニズム)@
統計的説明
景気循環と衝撃
第6部 長期経済発展
経済発展の過程
発展要因
@が日本経済評論社版に新訳で再録。