5つ星のうち 4.0 岩波版全集の最大の収穫, 2008/12/27 (
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レビュー対象商品: カント全集〈17〉論理学・教育学 (単行本)
『オプス・ポストゥムム』は解説のみ、他の講義録は期待はずれだったので、本書の前半に収められた「論理学」は個人的には岩波版全集の最大の収穫だった。
一般的にみても、理想社版では序文,序論、冒頭のみの翻訳だったので、本書は待望の邦訳だろう。
ちなみにハイデガーもそのライプニッツ論で参照している。
カントの弟子であるイエッシェ編集のこの講義録の信憑性に関しては解説に詳しいが、生前1800年の出版、カント自身の委託、といった経緯はこの講義録の重要性を証言するものだろう。
カントらしく量、関係、質、様相(いつもの順番と違う)というカテゴリーを駆使した論理学の解説は第一批判以前に読んでもいいぐらいだ。
むしろ、本家の用語が難しいから用語解説が判りやすいこちらを先に読んだ方が混乱しないだろうとさえ思う。
p25,410を参照し、やや恣意的に論理学を分類すると以下のような第一批判と同じ構造になる。
論 理 学
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理論的な論理学(原理論) 実践的な論理学(方法論)
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純粋な論理学(分析論) 応用的な論理学(弁証論,心理学)
ライプニッツに関してはあまり触れられていないが、ライプニッツによって著名な論理学の主要原則である、矛盾律、十分根拠律、排中律を様相の各契機をあてはめ、それぞれ蓋然的、実然的、確然的な判断だと説明していた(p73)のは参考になった。
また推論に関しては、定言、仮言、選言理性推論というように関係の契機を当てはめている(p169)。
カントの明確な説明にも関わらず、カントの使う形式,実在、実質という用語が紛らわしい気がするが(形式=論理学的,実質=物理学的なのだが、実在と実質が混乱しやすい)、これはカントが普遍論争などとは手を切って,主観的な哲学を模索する最中だったからではないかと思う。つまり訳語のせいではなくカント自身のテクストに内在する紛らわしさなのだろう。
そう考えると結局、カントのライプニッツ批判は自身に跳ね返る種類のものだったのではないだろうか?
(マイヤー版教科書との比較やオリジナリティの検証も含め)多くの宿題を読むものに課すテクストであるが、カントの思考の骨組みがよく分かるのは間違いない。
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