ハンナ・アーレント「何が残った? 母語が残った」
Hannah Arendt "Zur Person" Full Interview (with English subtitles)
Was bleibt? Es bleibt die Muttersprache.
Hannah Arendt im Interview mit Günter Gaus. 28.10.1964.
「何が残った? 母語が残った」――ギュンター・ガウスとの対話
邦訳『アーレント政治思想集成 1』所収
上記動画は後出の引用テキストに対応する抜粋動画。
抜粋元の約1時間の全インタビュー動画は以下。36:40-38:50
http://www.youtube.com/watch?v=dsoImQfVsO4
原文:http://www.rbb-online.de/zurperson/interview_archiv/arendt_hannah.html
Gaus: ... Nun ist die akademische Provinz, der Sie inzwischen wieder angehören – nach der Enttäuschung aus dem Jahre 1933 – international. Dennoch möchte ich Sie fragen, ob Ihnen das Europa der Vorhitlerzeit, das es nie wieder geben wird, fehlt? Wenn Sie nach Europa kommen: Was ist nach Ihrem Eindruck geblieben, und was ist unrettbar verloren?
Arendt: Das Europa der Vorhitlerzeit? Ich habe keine Sehnsucht, das kann ich nicht sagen. Was ist geblieben? Geblieben ist die Sprache.
Gaus: Und das bedeutet viel für Sie?
Arendt: Sehr viel. Ich habe immer bewußt abgelehnt, die Muttersprache zu verlieren. Ich habe immer eine gewisse Distanz behalten sowohl zum Französischen, das ich damals sehr gut sprach, als auch zum Englischen, das ich ja heute schreibe.
Gaus: Das wollte ich Sie fragen: Sie schreiben heute in Englisch?
Arendt: Ich schreibe in Englisch, aber ich habe die Distanz nie verloren. Es ist ein ungeheurer Unterschied zwischen Muttersprache und einer andern Sprache. Bei mir kann ich das furchtbar einfach sagen: Im Deutschen kenne ich einen ziemlich großen Teil deutscher Gedichte auswendig. Die bewegen sich da immer irgendwie im Hinterkopf – in the back of my mind –; das ist natürlich nie wieder zu erreichen. Im Deutschen erlaube ich mir Dinge, die ich mir im Englischen nicht erlauben würde. Das heißt, manchmal erlaube ich sie mir jetzt auch schon im Englischen, weil ich halt frech geworden bin, aber im allgemeinen habe ich diese Distanz behalten. Die deutsche Sprache jedenfalls ist das Wesentliche, was geblieben ist, und was ich auch bewußt immer gehalten habe.
ガウス …1933年に幻滅された後、現在再び属しておられる学術分野にはいまでは国際的な広がりがあります。それでもお伺いしたいのですが、ヒトラー以前のヨーロッパが二度と存在しないことを寂しくお思いになりますか。ヨーロッパにいらっしゃる際、何が残り何が救いがたく失われたという印象をおもちになりますか。
アーレント ヒトラー以前のヨーロッパですか? 何の郷愁もありません。残ったものですか? 残ったものは、言葉です。
ガウス それはあなたにとって重要な意味をもちますか。
アーレント 非常に重要です。私はつねに意識して、母語を失うことを拒んできました。当時うまく話せたフランス語に対しても、今日書いている英語に対しても、私はある程度距離を保ってきました。
ガウス お尋ねしようと思っていたのですが、あなたはいまでは英語でお書きになっていらっしゃるのですか。
アーレント そうです。しかし、距離感をなくしたことは一度もありません。母語と他の言語との間にはとてつもない差があります。私に関してそれは実にはっきりと言い切れることなのです。ドイツ語では、私はドイツの詩の大部分を暗唱でき、それらの詩はいつも in the back of my mind 、つまり私の記憶の背景になっています。それは二度と達成できないことなのです。英語ではできないことが、ドイツ語ではできるということです。いまでは私もずうずうしくなったものですから、英語でもやっていますけれども。しかし、一般的にはこの距離感を保ってきました。いずれにせよ、ドイツ語は残された本質的なものであり、私も意識していつも保持してきたのです。
『アーレント政治思想集成1』齋藤純一・山田正行・矢野久美子訳、みすず書房、2002年、18-19 頁。このインタビューはもちろんドイツ語でなされたが、まだアーレントのドイツ語の著作には収められていない。この日本語訳は 1965 年に出版されたガウスの著書によっているので、ここでは 日本語訳をそのまま引用しておく。
以上、「アーレントとツェラン : ふたりを結ぶいくつかの子午線をめぐって」細見和之
http://hdl.handle.net/10466/9735 を参照。
追記:
以下に所収されているようだ。
(アーレント自身が語る生涯と仕事) Ich will verstehen : Selbstauskünfte zu Leben und Werk. Mit e. vollständigen
Bibliographie. Hrsg. v. Ursula Ludz (Serie Piper Bd.4591) (2005. 341 S. 19 cm)
上記発言箇所はp.60
Arendt, Hannah
価格 ¥1,435(税込)
PIPER(2005/00発売)
海外取次在庫
CD版は在庫なし
この書名は上記インタビュー記事内、
Arendt: Ja, dann bin ich damit fertig. Wissen Sie, wesentlich ist für mich: Ich muß verstehen. Zu diesem Verstehen gehört bei mir auch das Schreiben. Das Schreiben ist Teil in dem Verstehensprozeß.の「私は理解しなければならない」「私は理解したいのです」(邦訳4-5ページ、原文p48)
…
Arendt: Ja, weil jetzt bestimmte Dinge festgelegt sind. Nehmen wir an, man hätte ein sehr gutes Gedächtnis, so daß man wirklich alles behält, was man denkt: Ich zweifle sehr daran, da ich meine Faulheit kenne, daß ich irgend etwas notiert hätte. Worauf es mir ankommt, ist der Denkprozeß selber. Wenn ich das habe, bin ich persönlich ganz zufrieden. Wenn es mir dann gelingt, es im Schreiben adäquat auszudrücken, bin ich auch wieder zufrieden. – Jetzt fragen Sie nach der Wirkung. Es ist das – wenn ich ironisch werden darf – eine männliche Frage. Männer wollen immer furchtbar gern wirken; aber ich sehe das gewissermaßen von außen. Ich selber wirken? Nein, ich will verstehen. Und wenn andere Menschen verstehen, im selben Sinne, wie ich verstanden habe – dann gibt mir das eine Befriedigung, wie ein Heimatgefühl.
からきているようだ。
http://www.youtube.com/watch?v=dsoImQfVsO4#t=7m56s 7:56
Ich selber wirken? Nein, ich will verstehen.(《Ich will verstehen 》p.48、邦訳『アーレント政治思想集成 1』5頁より)
Do I see myself as influential? No, I want to understand.
私が影響力を持ちたいかですって? いいえ、私は理解したいのです。
(古代ギリシャ)
プラクシス 活動 本来的 上部構造
実 践 action
(自己実現) 思想・政治
_____________________________
(ポリス) 仕事
(政治) work
ポイエーシス 非本来的 下部構造
制 作
(オイコス) 労働
(経済) Iabor
ハイデガーは詩作というポイエーシスにプラクシスの徹底を見た。アーレントは古代ギリシャ人の信仰の代替物としてカントの判断力を置く。
アーレントは古代ギリシアの自己理解(古典古代の共和主義政体の理想)を参照しながら、活動的生活を以下のように『活動(action/Handeln)・仕事(work/Herstellen)・労働(labor/Arbeiten)』の三つに分類して、言語的行為である『活動』に高い価値を与えているが、これは“経済至上主義(資本主義及びマルクス主義)の近代批判”につながる現象学的かつ歴史的な考察を含むものになっている。
活動(action/Handeln)……複数の自由で平等な人間の間で成立する自発的な言語的・表現的な活動であり、それぞれの個人がその自発的な活動によって『自己』が何ものであるかを知るという意味で、古代ギリシアのダイモーンの予言や共同体における自己実現と深い相関を持っている。ハンナ・アーレントは古典古代のギリシアにおける共和主義政体の理想が、自由・平等な個人の強制されていない自発的活動(自己確認・自己表現につながる活動)の交流によって実現されると考え、私的利益や国家体制・物質的生産性のみを重視して政治が行われる近代批判の意図も込めて、この非経済的な活動(主に言論活動)に非常に高い価値を与えた。
仕事(work/Herstellen)……仕事とは職人の制作活動に代表される、特定の目的の達成を目指して行われる自発的・能力的な行為のことであり、最終的に誰もがその価値を認識できる生産物を生み出すという『目的的‐手段的な行為』である。『活動』は最終的には言論や政治などの結果として伝承される物語くらいしか生み出さないが、『仕事』はその目的を達成することができれば他者がその価値を利用できる最終生産物を生み出す。その代わりに仕事には精神的な理念性・普遍性のような高尚な価値は宿らない。『仕事』には生産性・経済性があるが、『労働』とは違って企業や他者に強制されて従事するような行為ではなく、自らの能力・意志に従って自発的に行われる行為でもある。
労働(labor/Arbeiten)……労働とは、人間の生存欲求・繁殖欲求やメタボリズム(生理的代謝)に由来する『生きるためにしなければならない行為』や『他者(企業・組織)に強制される行為』のことであり、その非自発性・強制性に眼目が置かれている。人間の生存・生殖と社会の持続のために、延々と終わりなく繰り返される『生産と消費のリズム(循環的行為のリズム)』に労働は従っており、古典古代のギリシア・ローマでは非自発的で従属的な労働は苦役とされ奴隷に労働の必要性が転嫁されることも多かったが、ハンナ・アーレントは強制・反復される他律的労働による人間性(理性的言語的な自己確認)の疎外を批判的に評価した。しかし、『プロレタリア独裁(無産階級の暴力革命)』を説くカール・マルクスの共産主義思想・マルクス主義の理論によって、経済社会(国民全体)に奉仕する労働は最も生産的で価値のある行為へと転換され、共同体(帰属社会)のためにしなければならない労働は、経済的必要を超えて道徳的義務(勤労賛美)となっていった。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~mind/vision/es001/hannah.html
アリストテレス、
アーレント、
マルクス、
ハイデガーの生概念:
ポ イ エ ー シ ス | プラクシス
制 作 | 実 践 (アリストテレス)
|
労働 仕事 | 活動
Iabor work | action
| 思想・政治 (アーレント)
|
下部構造 | 上部構造 (マルクス)
|
非 本 来 的 | 本来的 (ハイデガー)
古代ギリシャでは、
オイコス ポリス
経済 政治
ハイデガーは詩作というポイエーシスにプラクシスの徹底を見た
アリストテレス、
マルクス、
ハイデガー、
アーレントの生概念:
ポ イ エ ー シ ス | プラクシス
制 作 | 実 践 (アリストテレス)
|
下部構造 | 上部構造 (マルクス)
|
非 本 来 的 | 本来的 (ハイデガー)
|
労働 仕事 | 活動
Iabor work | action
| 思想・政治 (アーレント)
古代ギリシャでは、
オイコス ポリス
経済 政治