http://nam-students.blogspot.jp/2016/03/thorstein-veblen-1857-1929.html
ノーベル経済学賞2009 解説記事
https://sites.google.com/site/hideshiitoh/jp/pub-j/nobel2009
http://nam-students.blogspot.com/2019/03/kindle-2019.html
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/blog-post_10.html
The Economic Institutions of Capitalism: Firms, Markets, Relational Contracting, (Free Press, 1985)
取引費用の全体像
https://nam-students.blogspot.com/2018/12/2018_31.html
梶谷懐『中国経済講義』(中公新書) 2018/9
https://nam-students.blogspot.com/2018/12/2018_39.html
NAMs出版プロジェクト: サミュエル・ボウルズ
http://nam-students.blogspot.jp/2017/12/blog-post_92.html
NAMs出版プロジェクト: コースの定理 Coase's theorem
http://nam-students.blogspot.jp/2016/07/coase-theorem.html
進化経済学
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E5%8C%96%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6
イスラム金融関連
http://nam-students.blogspot.com/2016/02/blog-post_17.html
NAMs出版プロジェクト: ベン卜・ホルムストローム 2016ノーベル経済学賞 契約理論
http://nam-students.blogspot.jp/2016/10/2016_32.html
NAMs出版プロジェクト: 宇沢弘文(1928~2014):メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2016/03/blog-post_10.html
青木昌彦「福島原発事故に学ぶ — 危機に強い産業組織築け」2011年8月4日
http://nam-students.blogspot.jp/2016/03/201184.html
ダグラス・ノース
http://nam-students.blogspot.com/2018/07/blog-post_7.html
ウェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』とパーソンズ『社会的行為の構造』(対メンガー)
http://nam-students.blogspot.jp/2015/05/blog-post_13.html
NAMs出版プロジェクト: コースの定理 Coase's theorem
http://nam-students.blogspot.jp/2016/07/coase-theorem.html
NAMs出版プロジェクト: レーン=メイドナー・モデル
http://nam-students.blogspot.jp/2015/06/blog-post_9.html
http://nam-students.blogspot.com/2018/10/john-kenneth-galbraith19082006.html
http://nam-students.blogspot.com/2018/09/path-dependence.html
https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=28938242#editor/target=post;postID=8377818955470111698;onPublishedMenu=allposts;onClosedMenu=allposts;postNum=18;src=link
- ミルグロムはウィリアムソンの以下を評価する
The Economic Institutions of Capitalism: Firms, Markets, Relational Contracting, (Free Press, 1985).ISBN 0-02-934821-8
取引費用の全体像
制度経済学の諸理論:その比較
1諸制度の性質
2(諸)パラダイムをなす(諸)制度
3分析の中心はインフォーマルな制度かフォーマルな制度か
4(制度との関連で見た)諸組織
5進化の理論
6歴史と制度経済学の関係
ウィリアムソン
1取引のガバナンス様式
2市場,ヒエラルキー
3フォーマルな制度
4ヒエラルキー(組織=ガバナンス形態=制度)
5取引費用の最小化にもとづく選択(≠進化)
6大企業について チャンドラー参照
- ノーベル経済学賞2009 解説記事
https://sites.google.com/site/hideshiitoh/jp/pub-j/nobel2009
伊藤秀史
ウィリアムソンの理論は,取引が複雑かつ不確実で,事前に完全な契約を書くことが難しく,当事者間の取引関係に特殊的な投資を伴う場合には,取引のガバナンスを市場から組織に移し,権限関係を用いて取引を統治することが望ましいと予測する.関係特殊的な投資の例には,取引相手の倉庫に隣接した工場の建設,カスタム部品製造に特化した機械の購入,特殊な製品や製造工程等の知識の習得に費やされる時間や費用,などがあげられる.市場ガバナンスの下でこのような投資が行われると,互いに相手との取引をうまく継続したいという意図と,相手に対する独占的な立場を利用して,取引から生じる利益を少しでも多く獲得したいという意図とが絡み合い,交渉が行き詰まる危険が高まるためである.彼の理論予測は,その後多くの事例やデータで確認されている.
またウィリアムソンは,組織よりも市場ガバナンスの方が望ましい可能性についても,単に組織の諸問題を指摘するのみでは不十分であることを指摘し,市場の方がうまく機能するならば,なぜ組織内に市場の機能を取り込めないのか,という問題設定を明確にして,重要な分析を行った.さらに彼の理論は,市場か組織かという白黒をつけられない,グレーゾーンに位置する取引関係(フランチャイズ,アライアンス,企業グループなど)にも及んでいる.
2人の受賞がもたらす共通のメッセージをいくつか指摘しよう.第1に,2人の研究はいずれも現実の事例の観察から出発し,かつ多様な事例を一般化する理論を構築するという方向で発展していった.第2に,彼らの研究は独創的なものだが,経済学の主流から切り離された,浮いた存在ではない.オストロムは自らゲーム理論を利用して自身の知見を精緻化することを試み,さらに経済実験を通して検証を行った.その過程で既存の理論では説明できない発見を指摘し,ゲーム理論,行動経済学,実験経済学の分野にも影響を与えつつある.ウィリアムソンの理論や概念を定式化する試みは1980年代以降爆発的に進展しており,契約の経済理論や組織の経済学という分野の確立に大きく貢献した.ウィリアムソン自身も,それらの研究成果を吸収して,自分自身の理論を精緻化し続けている.
第3に,彼らの受賞は学際的な研究の重要性と,経済学自身の分析対象の多様性を示唆している.オストロムの博士号は政治学であり,アメリカ政治学会会長等も務めた.ウィリアムソンの理論は心理学,法学,社会学など,経済学以外の多くの要素を取り入れている.逆に彼らの研究は,経済学の分析対象が市場やマクロ経済に限定されないことを,改めてはっきりさせたといえる.
しかし,彼らの受賞が,経済学は役に立たない,市場は重要でない,市場は機能しない,といったメッセージを発しているととることも誤りである.「市場原理主義」「経済合理性」といった用語の意味を正確に定義もせずに(もしくは単純に誤解したままで)批判しても,市場の機能への理解を深めることにはつながらないし,ましてや市場を含む異なるガバナンスの間の比較を冷静に行うことなどできない.彼らの受賞が市場の理解にもたらす重要なメッセージは,市場自体にも財産権,法制度や取引慣行を通した契約の強制等について,適切なガバナンスが必要だ,ということであろう.経済学はトレードオフ(二律背反,一方をたてると他方がたたなくなる関係)を明らかにする学問である.彼らの研究によって,共通の枠組みでさまざまなガバナンスの比較が行われ,どのような条件でどのようなガバナンスが望ましいのか,なぜセルフ・ガバナンスが機能するのか,市場よりも組織の方が望ましいガバナンスとなる条件は何か,なぜ市場の優れた特徴を組織に取り込むことが難しいのか,といった問題に取り組むことが可能になった.経済学はよりいっそう「役に立つ」学問へと発展したのである.
取引費用経済学の権威であり、2009年、(エリノア・オストロムとともに)ノーベル経済学賞を受賞した。
経歴
- 1932年 ウィスコンシン州スペリオルに生まれる。
- 1955年 マサチューセッツ工科大学(MIT)のスローンスクール・オブ・マネジメントを卒業する(S.B.)。
- 1960年 スタンフォード大学よりMBAを取得する。
- 1963年 カーネギーメロン大学よりPh.D.を取得する。
- 1963年~1965年 カリフォルニア大学バークレー校の助教授となる。
- 1965年~1968年 ペンシルヴァニア大学の准教授となる。
- 1968年~1983年 ペンシルヴァニア大学の教授となる(1977年~1983年 Charles and William L. Day Professor of Economics and Social Scienceとなる)。
- 1983年~1988年 エール大学の教授(Gordon B. Tweedy Professor of Economics of Law and Organization)となる。
- 1988年~2004年 カリフォルニア大学バークレー校の経営管理学の教授(Professor of the Graduate School and Edgar F. Kaiser Professor of Business, Economics and Law)となる。
- 2004年~現在 カリフォルニア大学バークレー校の大学院の名誉教授(Professor Emeritus of the Graduate School, Economics and law)およびハース・スクール・オブ・ビジネスの名誉教授(the Edgar F. Kaiser Professor Emeritus of Businass)である。
栄誉・受賞
- 1977年~1978年 グッゲンハイムのフェローシップを得る。
- 1977年~1978年 行動科学高等研究センターのフェロー。
- 1994年 米国科学アカデミーの会員と選ばれる。
- 1999年 ジョン・フォン・ノイマン賞を受賞する。
- 2006年 トムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞する。
- 2009年 (エリノア・オストロムとともに)ノーベル経済学賞を受賞する。
貢献
- これまで新古典派経済学では完全合理的に効用を最大化する人間が仮定されてきたが、ウィリアムソンは人間は限定合理的であり、機会主義的な性格をもつものと仮定した。
- そして、このような人間が市場で知らない人々と取引する場合、相互に駆け引きが起こり、多大な取引上の無駄が発生することになる。この取引上の無駄のことを「取引コスト」と呼ぶ。オリバー・ウィリアムソンは、ロナルド・コースとともに取引費用に関する分析を行ってきた。
- 取引コストを節約するために組織が形成され、取引コスト節約原理にもとづいてさまざまな組織のデザインも説明できる。また、取引コストが発生するために個別合理性と全体合理性が一致しないことも生じるが、一致させるためには多くの利害関係者と交渉取引する必要があり、膨大な取引コストが発生するので一致しないと説明できる。
- ウィリアムソンは1980年代から1990年代に、公的と私的の境界について議論した。彼は、市場と非市場の意思決定の同等と相違、管理、およびサービス提供に対して注意を引いた。
著書
単著
- The Economics of Discretionary Behavior: Managerial Objectives in a Theory of the Firm, (Prentice-Hall, 1964).
- Corporate Control and Business Behavior: An Inquiry into the Effects of Organization Form on Enterprise Behavior, (Prentice Hall, 1970).
- Markets and Hierarchies, Analysis and Antitrust Implications: A Study in the Economics of Internal Organization, (Free Press, 1975).ISBN 0-02-935360-2
- The Economic Institutions of Capitalism: Firms, Markets, Relational Contracting, (Free Press, 1985).ISBN 0-02-934821-8
- Economic Organization: Firms, Markets, and Policy Control, (New York University Press, 1986).
- Antitrust Economics: Mergers, Contracting, and Strategic Behavior, (Blackwell, 1987).
- The Mechanisms of Governance, (Oxford University Press, 1996).ISBN 0-19-513260-2
編著
- Antitrust Law and Economics, (Dame Publications, 1980).
- The International Library of Critical Writings in Economics, vol. 9: Industrial Organization, (E. Elgar, 1990).
- Organization Theory: from Chester Barnard to the Present and Beyond, (Oxford University Press, 1990, expanded ed., 1995).
共編著
- Prices: Issues in Theory, Practice and Public Policy, co-edited with Almarin Phillips, (University of Pennsylvania Press, 1967).
- The Firm as a Nexus of Treaties, co-edited with Masahiko Aoki and Bo Gustafsson, (Sage, 1990).
- The Nature of the Firm: Origins, Evolution, and Development, co-edited with Sidney G. Winter, (Oxford University Press, 1991).ISBN 0-19-508356-3
- Transaction Cost Economics, 2 vols., co-edited with Scott E. Masten, (E. Elgar, 1995).
- The Economics of Transaction Costs, co-edited with Scott E. Masten, (E. Elgar, 1999).
主要論文
- Oliver E. Williamson (1981). “The Economics of Organization: The Transaction Cost Approach”. The American Journal of Sociology 87 (3): 548–577. doi:10.2307/27789342012年1月11日閲覧。.
- Oliver E. Williamson (2002). “The Theory of the Firm as Governance Structure: From Choice to Contract”. Journal of Economic Perspectives 16 (3): 171–195. doi:10.1257/089533002760278776 2009年6月6日閲覧。.
関連項目
裁量的行動の経済学 企業理論における経営者目標
著者名等 オリバー・E.ウィリアムソン/著 ≪再検索≫
著者名等 井上薫/訳 ≪再検索≫
出版者 千倉書房
出版年 1982.7
大きさ等 22cm 239,2,7p
注記 The economics of discretionary behavior:
managerial objectives in a theory of the
firm.1964/の翻訳
NDC分類 335.1
件名 経営学 ≪再検索≫
内容 参考文献:p210~220- Corporate Control and Business Behavior: An Inquiry into the Effects of Organization Form on Enterprise Behavior, (Prentice Hall, 1970).
- Markets and Hierarchies, Analysis and Antitrust Implications: A Study in the Economics of Internal Organization, (Free Press, 1975).ISBN 0-02-935360-2
市場と企業組織 単行本 – 1980/1/1
エコノミック・オーガニゼーション 取引コストパラダイムの展開
著者名等 O.E.ウィリアムソン/著 ≪再検索≫
著者名等 井上薫,中田善啓/監訳 ≪再検索≫
出版者 晃洋書房
出版年 1989.2
大きさ等 22cm 399p
注記 Economic organization.1986/の翻訳
NDC分類 336
件名 経営管理 ≪再検索≫
件名 経営組織 ≪再検索≫
要旨 取引コストを中心に市場と企業を比較制度論的に問題把握し、企業理論をはじめ多くの学
問領域に大きな影響を与えた新しい理論の集大成。O.E.ウィリアムソン理論の決定版
。
目次 第1部 内部組織の経済学(経営者裁量と経営行動;階層的組織のコントロールと最適企
業規模;現代企業の内部構造とコントロール装置の評価と分類);第2部 企業および市
場の組織の経済学(生産の垂直的統合―市場の失敗の考察;取引コストの経済学―契約関
係の統御;現代企業―起源、発展、特性;取引コストの経済学とは何か);第3部 公共
政策(反トラストの経済学―取引コストの観点からの考察;反トラストの政治経済―慎重
な楽観主義の論拠;自然独占に対するフランチャイズ式入札―一般論およびCATVにつ
いて)
内容 参考文献:p367~385
ISBN等 4-7710-0419-6
現代組織論とバーナード 単行本 – 1997/6
- Organization Theory: from Chester Barnard to the Present and Beyond, (Oxford University Press, 1990, expanded ed., 1995).
制度経済学の諸理論:その比較
諸制度の性質 | (諸)パラダイ ムをなす(諸)制度 | 分析の中心はインフォーマルな制度かフォーマルな制度か | (制度との関連で見た)諸組織 | 進化の理論 | 歴史と制度経済学の関係 | |
---|---|---|---|---|---|---|
シュモラー | 習慣とルール(慣習,道徳,法)の総体,これらは目的をもって,システムを形成する | 国家 | インフォーマルな制度とフォーマルな制度(習慣・法) | 諸制度からなる「機関」:人々,家族,社会団体,組合,企業,国家 | 歴史的諸段階 | 歴史学派 |
ヴェブレン | 思考習慣と共通行為 | 私的所有 営利企業 有閑階級 | インフォーマルな制度 | 暗に:組織とは制度である | 方法論的ダーウィニズム,制度の自然選択(+歴史的諸段階) | 歴史ヘの直接的依処 |
コモンズ | 個人の活動を制御する集団的活動 | 活動的組織,コモン・ロー | フォーマルな制度 | ゴーイング·コンサーン(組織=制度) | 制度の人為的選択(+歴史的諸段階) | 定型化された歴史 |
メンガー | 全体にたいする機能性をあらわしている社会現象 | 貨幣 | インフォーマルな制度とフォーマルな制度(有機的制度と実用主義的制度) | 暗に:組織とは制度である | イノヴェーション+模倣,見えざる手 | 方法論論争;精密な方法対歴史的方法 |
ハイエク | ルールと秩序 | 貨幣,言語,法(コモン・ロー) | インフォーマルな制度(伝統) | 自生的秩序に対立し,様々なルールにもとづく)組織された秩序 | 文化的進化,群選択を通じたルールの選択 | 長期の文化史 |
ウィリアムソン | 取引のガバナンス様式 | 市場,ヒエラルキー | フォーマルな制度 | ヒエラルキー(組織=ガバナンス形態=制度) | 取引費用の最小化にもとづく選択(≠進化) | 大企業についてチャンドラー参照 |
ノース | ゲームのルール;フォーマルかつインフォーマルな制約,履行 | 所有 | インフォーマルな制度とフォーマルな制度 | (制度というルールにおける)ゲームのプレーヤー;制度の様々な組織 | 権力をもつ集団が新たなルールを導人する;経路依存性,ロックイン | 100間年単位の長期の歴史 |
青木 | ゲームをプレイするやり方に関する共有予想の自己維持的(均衡)システム | 企業 | フォーマルな制度 | 組織は制度であると同時にプレーヤーである | くりかえしゲームの理論,複数均衡 | 国民国家,部門,地域の共時的モデルに依処 |
レギュラシオン派 | 基礎的諸関係のコード化;制度化された妥協 | 賃労働者,国家,貨幣 | フォーマルな制度 | 組織と制度との区別に言及(ノースを参照) | 制度的構図のなかで高まる緊張;危機により時期区分される進化 | アナール学派;歴史的マクロ経済学 |
ホジソン | 相互作用を構造化する,社会的に埋め込まれたルールのシステム | 言語 | インフォーマルな制度とフォーマルな制度 | 組織は制度である | (ヴェブレン的な)普遍的ダーウィニズム | 思考の歴史;「歴史的特殊性」の問題 |
入門 制度経済学 単行本 – 2007/4
青木 昌彦(あおき まさひこ、1938年〈昭和13年〉4月1日 - 2015年〈平成27年〉7月15日 )は、日本の経済学者。 .... 専門分野は、制度理論、企業と組織の理論、コーポレート・ ガバナンス・移行経済論、国際経済論、日本経済論など多岐に .... 新制度派経済学者.
概要-経歴・人物-業績内容-社会的活動
新制度論・新制度学派とは何か? - 社会時評/書評
http://d.hatena.ne.jp/yuki_takao/20111009/1318176016●「新制度論」と「新制度学派」
まず新制度論は政治学における用語だ。経済学では新制度学派、新制度派経済学、組織の経済学などと呼ばれる。
政治学の新制度論は経済学の新制度学派の成果を流用したので、新制度学派と呼ぶべきかも知れないが、自分としては新制度論という言葉を使っている。短いし。
●新制度論とは何か?
さて新制度論の定義は何か。様々な定義が提案されているだろうしどれが最も適切なのか知らないが、自分は大雑把に次のように考える。
新制度論は次のように制度をとらえる立場である。制度というルールがあり個人という複数のアクターがいる。各アクターはそれぞれ自分の目的をもっている。各アクターは制度に制約されながら自分の目的を達成するために最も合理的な行動を選択する。アクターの行動は相互に影響しあう。そして互いの影響の下、アクター全員が自分の目的達成にベストな行動を選択した状態で安定する。この状態が再び制度となる。
ポイントとしては第一に合理的個人主義を採用していること。合理的個人主義というのはホモエコノミクス(経済人)のような合理的な個人を想定するということ。
第二にアクターの行動が相互依存的であること。これは戦略的環境ともいえる。つまりアクターは互いの行動を予想しながら自分の行動を選択するような環境だということ。
第三に制度とアクターの行動が相互依存的であること。言い換えると、制度がアクターの行動を制約し、アクターの行動が制度に反映されるということ。
この3つのポイントはゲーム理論のポイントでもあり、新制度論は方法論としてゲーム理論に依拠する部分が大きいといえる。
●総合的社会科学としての新制度論
ゲーム理論は経済学だけでなく政治学、生物学、心理学、経営学など幅広い分野に応用されている。新制度論・新制度学派はこれらのゲーム理論の応用分野において統一的な理論を提供しうる理論だと思う。よって小室直樹氏のように総合的社会科学が念願である自分としては、総合的社会科学に最も期待できる理論として新制度論・新制度学派に注目しているということだ。
小室直樹氏の最も重要な問題関心は<日本はまだ近代化していない>というものだったと思う。小室氏は近代化のために何が必要かと考え、その答えが総合的社会科学だった。社会科学の一般理論のようなものだ。
この総合的社会科学は小室氏の師である森嶋通夫(1923-2004)氏(LSE名誉教授)の最重要問題関心を受け継いだものだろう。森嶋氏の国際的に評価された主な業績の一つはカール・マルクスの経済学を新古典派経済学で説明した研究だろう。このようにマルクスには経済の外にある社会(≒制度)全体を扱おうという明確な意識があった。それに対し新古典派経済学は社会の要因を与件として経済分析の外に置いた。このような新古典派経済学批判は何度も繰り返されてきた。その一つがソースティン・ヴェブレンらの(旧)制度学派(制度派経済学)だろう。新制度学派はゲーム理論を用いることでこれらの新古典派経済学批判を乗り越え経済と社会(≒制度)の相互依存関係を扱おうとしたものといえるのではないか。
●自分が新制度論を知ったきっかけ
自分は小室直樹氏の本を読んで「早く総合的社会科学が出てこないかな」と考えていた。そのうちにたぶん池田信夫氏の本で読んだ経営学のモジュール理論(過去のエントリ参照)を経由して青木昌彦氏の本を知り、そこで新制度学派(青木氏の言葉では比較制度分析)を知ったのではないかと思う。そして青木氏の本を読み、さらにノーベル経済学賞受賞の経済史家ダグラス・ノースなどを読んでいった。それとは別に政治学の教科書を読んでいたときに新制度論という学派を知り、これが新制度学派の影響を受けているということを知った。ここで経済学・経営学・政治学において同様の方法論で統一的に問題を論じられることが分かった。あとは芋づる式で憲法においてゲーム理論から国家の成立を論じている長谷部恭男氏(東京大)や心理学においてゲーム理論を用いて社会規範の成立を論じている山岸俊男氏(北大)(過去のエントリ参照)などの本に出会い、新制度論は総合的社会科学になる可能性が最も高い理論ではないか、と期待するようになった。
また新制度学派には取引費用、プリンシパル=エージェント理論、契約理論など社会制度を分析するのに有効な理論がいくつも用意されており「これは面白い!」と感心した。取引費用研究で有名なロナルド・コースとオリバー・ウィリアムソンはノーベル経済学賞(それぞれ1991年と2009年に)を受賞した。コースの研究は法と経済学の出発点ともなった。
青木 昌彦(あおき まさひこ、1938年〈昭和13年〉4月1日 - 2015年〈平成27年〉7月15日 )は、日本の経済学者。 .... 専門分野は、制度理論、企業と組織の理論、コーポレート・ ガバナンス・移行経済論、国際経済論、日本経済論など多岐に .... 新制度派経済学者.
概要-経歴・人物-業績内容-社会的活動
新制度論・新制度学派とは何か? - 社会時評/書評
d.hatena.ne.jp/yuki_takao/20111009/1318176016
経済学では新制度学派、新制度派経済学、組織の経済学などと呼ばれる。 政治学の新 制度論は .... 小室直樹氏がマルクスの問題意識と新古典派経済学への批判とそれに 応えようとする青木昌彦氏らの研究に言及している。 モジュール化― ...
第1章 制度とは何か:いかにアプローチすべきか[PDF:188KB] (Adobe PDF) -htmlで見る
www.rieti.go.jp/users/aoki-masahiko/chap1.pdf
しかしながら,旧制度派経済学とは違って,われわれは,単に豊富な. 制度のカタログを ... 1Greif (1994, 1997b, 1998a),Aoki (1995/2000, 1996),青木・奥野 (1996),岡崎 ・奥野 (1995/1999)。 ... しかしながら,最近まで経済学者は,旧制度派経. 済学を別と ...
新制度派経済学・比較制度分析 - 2ちゃんねる
yomogi.2ch.net/test/read.cgi/economics/1316828010/l50
比較制度分析の創始者の一人である青木昌彦は、こうした企業内コーディネーションの 型の違いを捉えて、前者を情報共有型、後者を情報分散型と呼んだ。 ... 2011/09/25(日 ) 02:10:37.32 ID:od9g7Q03: 組織の経済学=制度派経済学
入門 制度経済学
返信削除著者名等
ベルナール・シャバンス/著 ≪再検索≫
著者名等
宇仁宏幸/訳 ≪再検索≫
著者名等
中原隆幸/訳 ≪再検索≫
著者名等
斉藤日出治/訳 ≪再検索≫
出版者
ナカニシヤ出版
出版年
2007.4
大きさ等
19cm 178p
注記
L’e´conomie institutionnelle./の翻訳
NDC分類
331.76
件名
経済学-制度学派 ≪再検索≫
要旨
“制度”をめぐる経済学の冒険。古典的な制度経済学から最新の諸学派まで、“制度”をめぐる経済学の諸潮流をコンパクトに解説。
目次
序章 経済学における制度主義の系譜;1 制度主義の元祖;2 オーストリア学派とオルド自由主義;3 新制度派経済学;4 現代ヨーロッパの諸学派;5 制度主義の統一性と多様性
ISBN等
4-7795-0166-0
ISBN等
978-4-7795-0166-1